今年の春に高校進学したばかりの中村健一にとって、朝霧結衣は特別な教師だった。二十三歳。若くて美人で、痩せすぎなくらいに細い体形と手足。そのくせ、胸と尻だけは高く盛りあがっている。
　美形の教師にありがちな冷たい印象もなく、ファッションや音楽の話題にも精通していて、女子生徒からの評判もいい。そして健一を含めた多くの男子にとって、彼女は、もっとも身近で魅力的なセックスシンボルであり、オナペットでもあった。その美人教師が、今、中村健一の前にいる。学校の一室で正対している。夏休みの補習授業である。
「さっき秋山さんから電話があって、彼女、今日は風邪でこれないそうなの。大木くんは親戚のお葬式。ほかの子たちは……たぶんサボリでしょうね」
　ため息混じりにそんなことを言うと、次に、この若い女教師は、
「仕方ないから、今日の補習は進路指導室でおこないます」
　と、癖のある間延びした口調で健一に告げたのだった。教室よりも勉強に集中できるだろうから、という理由だそうだ。
　しかし、健一にとっては勉強どころの話ではない。
　夢想のなかで毎夜のように情事を重ねた女と狭い室内でふたりっきりなのだ。シャンプーの香りの残った黒髪が、ブラウスの巨乳が、すぐ手の届く場所にあるのだ。緊張のあまり英単語の発音がおぼつかなくなって、彼は、女教師から何度も注意を受けた。
　長文読解の作業を終えてひと息ついたところで、健一は、小さな勇気を秘めた言葉を発した。以前から気になっていた噂があったのだ。
「朝霧先生、昔、グラビアに出てたって本当なんですか？」
　私立高校で英語を教える教師は目を丸くした。
「グラビアタレントやってたんですか？」
「やだァ、何それ」
「先輩に聞いたんです。インターネットで先生の画像を見たって」
　グラウンド奥の体育館が窓の外に見える。今ごろはバスケ部が練習中のはずだった。しかし、校舎内からは物音ひとつ聞こえない。
「本当なんですか？」
「うーん……ほかの先生には内緒よ？」
　結衣は小悪魔めいた微笑を浮かべた。悪戯を打ち明ける少女の顔である。
「グラビアといっても、小さな雑誌に一回だけ出ただけなのよ」
「水着で、ですか？」
「あと、セーラー服も着たわ」
「すごいな、俺も見てみたいなあ、その雑誌」
「だめよ、そんなの。恥ずかしいわ」
　常におっとりとした口調でしゃべるのが朝霧結衣の癖だった。生徒を叱るときも柔らかい笑みを崩さず、決して語気を強めたりはしない。その顔が、健一を覗きこんだ。
「撮影のときだってすごく恥ずかしかったんだから」
「そうなんですか」
「水着だってかなり大胆なデザインだったし」
　そんなふうに言われると、よけいに目にしてみたくなる。
　健一は視線を下に落とした。椅子を並べて座っているから、その気がなくても女教師の太腿に自然と目がいく。心なしか、タイトスカートの丈が普段よりも短い。
「じゃあ、ポーズとか見せてくださいよ」
　軽い気持ちの言葉だった。
「グラビアのポーズです。それくらいならいいでしょう？」
「え、でも」
「お願いしますよォ、先生」
　せっかく憧れの女とふたりきりなのだ、彼女と小さな秘密を作ってみたい。勉強を中断させたいという口実の裏側にそういった欲求があった。
「もう、仕方ないわね」
　モデル体形の女教師はキャスター椅子を引いて立ちあがった。
「ポーズって、どんなふうにすればいいの？」
「ええと……とりあえず、先生の好きな感じでお願いします」
「好きにって言われてもねえ……」
　少しばかりの逡巡のあと、彼女は背中までの黒髪を両手でたくしあげた。
「こ、こんな感じでいいのかしら」
「うん、す、すごいや」
　背筋をピンと張っているから、胸を強調する恰好になっている。男子学生の視線がいやでもブラウスの前に注がれる。
「すっごく綺麗で色っぽいですよ、先生」
「色っぽいだなんて……だめよ、教師に向かってそんなこと言っちゃあ」
　咎めるふりをした照れ笑いの口調だった。
「じゃあ、次は……」
　健一は、つい調子に乗ってさらなる要求を口にした。
　最初は仕方なくといった感じの結衣であったが、何度かポーズを作っていくうちに、徐々にその気になりはじめたようだ。そのことが健一にもわかった。教師ではなく女の表情になってきているのだ。
　恥じらいの仕草でブラウスのボタンを外すふりをしたり、細腰を大胆に折り曲げたりする。指を噛んで流し目の微笑を少年に注いだときなど、健一のほうがドギマギとしてしまったくらいだ。彼の知らない朝霧結衣がそこにいた。
「今度は机に両手をついてくれませんか」
「ウフフ、女豹のポーズね？」
「う、うん」
「男の子って好きよね、そういうの」
　聖職者らしからぬものいいをしながら、結衣は、教え子の注文を快諾した。ほんの少しの躊躇もなかった。立場や状況を忘れはじめているのは彼女も同じだった。
　健一は胸を躍らせた。牝犬と同じその姿勢なら、女教師の巨乳を真正面から観察することができる。胸の谷間だって拝めるかもしれない。
　だが、事態は彼の期待とは別の方向へと進んだ。机の奥や横ではなく、男子学生と机の狭い隙間に彼女は身体を割りこませてきたのだった。そんな姿勢で背筋をのけぞらせれば、自然とタイトスカートの臀部が彼の眼前に迫ってくる。
「これでいいの？」
　平然とした口ぶりで女教師は言った。
　健一は言葉を呑みこんだ。違うなどと言えるわけがなかった。歩くたびにムチムチと左右に揺れる、美人教師の果実的な尻。それが、椅子に座った彼のすぐ鼻先にあるのだ。
　彼女はじゅうぶん距離を置いたつもりなのだろうが、実際には三十センチも離れてはいない。触れることはもちろん、容易に顔を埋めることだってできる近さなのだ。これ以上に刺激的な眺めなどなかった。
　しかも、驚きはそれだけではない。十六歳の身体に衝撃が走った。動いているうちにそうなったのか、黒いタイトスカートの裾が腿まで引きあがっている。
　彼女はそれにも気づいていないのか、スカートを直すそぶりさえ見せない。
　健一は、息を殺しながら上体を低くした。
　尻のすぐ下までが見えた。だが、臀部そのものや下着までは露見していない。首を斜めにして覗きこんでも同じだった。
　椅子からおりれば見えるのだろうが、それでは彼女に窃視を気づかれてしまう危険性がある。だが、それでもという気持ちもあった。それでも見たい。朝霧結衣がどんなパンティを履いているのか見てみたい。
　意を決して腰を浮かせようとした矢先、目の前の尻がモゾリと動いた。
　たぶんかすかな身じろぎだったのだろうが、健一にとっては幸運だった。角度の変化によって視界が開けて、尻の下半分までが丸見えになったのだ。そして、新たな衝撃が彼を襲った。
　臀部にあるはずのパンティが見当たらないのだ。いや、ノーパンではない。よくよく見ると、尻割れの谷奥に白く細長いものが渡っている。いわゆるＴバック下着というものをこの女教師は身につけていたのだ。
　朝霧先生がこんなパンティを履いてたなんて……。
　健一は生唾を呑みこんだ。ほとんど紐同然の布地が、深い尻溝の谷間にぴったりと吸いつき、股間の前面までを覆っている。いや、かろうじて隠している、といった感じだ。
　こんなに極小の下着だというのに、大陰唇や陰毛のはみだしは見当たらない。つまりは、この女教師が細身で慎ましやかな女性器を持っているという証拠だ。品のある恥毛を持っているということだ。それとも、陰毛の手入れをしているのだろうか。浴室で、あるいは鏡の前で、全裸のまま股に剃刀を当てたりしているのだろうか。剃っているうちに妙な気分になって、自慰をはじめてしまうこともあるのではないか。
　朝霧結衣はどんなオナニーをするのだろう。天然キャラと評判のお嬢様教師だから、きっと触りかたもお上品なものに違いない。あるいは、ヒイヒイ声をだして乱れるのだろうか。指だけじゃなく、道具も使ったりするのだろうか……。
「中村くん、何をしてるの？」
　突然に柔らかい声が落ちてきて、健一の妄想が途切れた。
「ねえ、中村くん」
「あ、いえ。別に」
「別にって……」
　不安げな声をもらしながらも、教え子に尻を奉じた姿勢は崩そうとしない。首を捻って背後を向く気配もない。まるで、何かを待ちわびているような感じだった。
　結衣がこの体勢を維持している以上、健一もへたに身じろぎをするわけにはいかない。動けるわけがなかった。いつ身体の一部が密接してもおかしくない距離なのだ。
　喉元にナイフを突きつけられているのと同じである。けれども、実際に突き入れを待っているのは結衣のほうだった。Ｔバックの尻が、男の持つ肉の刃物で刺殺されたがっている。そう誤解されても仕方のない姿勢なのだ。
「……先生、今日はストッキングつけてないんですね」
　狼狽のあまり、つい思いつきの言葉を口走った。
「伝線しちゃったから、さっきトイレで外してきたの」
「スカートもいつもより短いし」
「それは……そんなの偶然よ、たまたまよ」
　状況がそうさせるのか、ふたりの声が低く細いものになっている。
「若い子には目の毒だったかしらね」
「え」
「なんでもないわ。それより中村くん、さっきから何をしているの？」
　健一は言葉に窮した。ありのままを説明すれば、女教師の憤激を浴びることになる。
「急に黙りこんじゃうし、なんだか怖いわ」
「そ、それは」
「ねえ、何をしているの？」
「俺、別に何も」
「先生のどこを見ているの？」
　きつい口調の詰問ではない、からかいを含んだ甘声である。
「正直に言って。中村くん、わたしのどこを眺めてるの？」
　Ｔバックの股間が眼前に迫った。身じろぎにしては不自然な動作だ。
　見て。先生のお尻をもっと見て。お尻もいやらしい下着も全部見て。見るだけじゃなく、食べたり入れたりだってしていいの……。
　無言でそう訴えているような姿態なのである。いや、誰が見たってそうとしか思えない光景だ。健一は、室内の空気が不穏な色に染まりはじめていることを理解した。
「ちゃんと答えて」
「それは……先生のスカートを」
「わたしは正直にって言ったはずよ」
「せ、先生の」
「わたしの、何？」
　ささやきの口調で話すときの彼女は、濡れ場を演じる女優と同じ声になる。
「ねえ、はやく言って」
「先生の……スカートの奥にあるもの、見てます」
　朝霧結衣の尻が小さく動いた。
「……先生のパンティを覗いてたのね」
「う、うん」
「全部見えてるのね、見てるのね」
　無言で頷く健一の前で、結衣は、上半身ごと首を後ろに捻った。
　健一は、女教師から厳しく罵倒されることを覚悟した。だが、次に彼女の口からこぼれた台詞は、彼の予想とはまったく逆のものだった。
「わたしの下着で興奮しちゃったの？」
　期待を秘めた目で男子学生を見つめながら、結衣は、今度は大胆に尻をくねつかせた。もはや教師の言動ではない。教師に扮した娼婦の嬌態である。
「見るだけでいいの？」
「え……」
　女教師の間延びした声が頭のなかで反響した。見るだけでいいのか。つまり、見る以外のことだってしていい、ということだろうか。
　健一は、半信半疑のまま手を伸ばした。そして、さんざんの躊躇のはてに太腿に触れた。
　結衣は、悲鳴をあげたり教え子を叱咤したりはしなかった。かわりに「ああン」と悩ましげな声をもらして、Ｔバックの尻を震わせた。
　その反応を愛撫の認許と受け取って、彼は、下着を履いているのに裸同然の尻へと指を進めた。
　はやくもハアハアと荒息をもらしながら、丸く大きな臀肉を両手で掴み、左右にひろげ、上下に揺さぶった。やや硬めの餅に似た感触だった。もっと明快かつ低俗的な表現でたとえるならば、エロい感触だった。
　健一は、さらにスカートの奥へと指を潜らせようとする。しかし、ぴっちりとしたタイトスカートでは物理的に無理があった。ならばと裾を捲ろうとするが、今度は布地が尻に引っかかり、押しあげることができない。それほどまでに左右の張りだしが大きな尻なのだ。
　かまわず健一は手に力をこめた。ここが学校内だということなど、とうの昔に忘れている。
「あンだめ、破けちゃうゥ」
　結衣の手が背後にまわった。タイトミニのホックを器用に外し、ファスナーをさげる。
　すぐに健一は裾を引きあげた。今度はあっさりと腰の上まで捲れた。あらわれたのは、巨大な梨のような白臀だった。
「す、すごいやッ」
　歓喜の叫びを発したときには、もう指を押しつけていた。憧れの女教師の生尻を夢中になって揉み倒し、さらに彼は、Ｔバックの股間にも指を伸ばした。
「いやン、だめ……だめよ」
　下着の内側に潜ろうとしていた指が離れた。結衣が突然に身体を引いたのだった。
「わたしはそんなとこまで触っていいとは言ってないわ」
　彼女にしてはめずらしく強い口調だった。けれども、目は妖しく笑っている。
　手を伸ばしてキャスター椅子を引き、結衣は、彼と正対する形で腰をおろした。互いの膝が密接するほどの近さである。
　スカートの裾は腰に溜めたままだというのに、結衣は腿を閉ざそうともしない。どころか、健一の両膝を挟む形で左右に足を開いている。当然、パンティの股間も丸見えだった。学校の進路指導室で、女教師が決して他人に見せてはいけない姿をさらしている。
「すごいや、先生。まるでＡＶみたいだ」
「中村くん、そんなの見てるの？」
「……先輩が貸してくれたんです」
「どんな内容なの？」
「え」
「そのＡＶはどんな内容なのか、って聞いてるの」
　キャスター椅子ごと身体を接近させてくる。自然と白い腿も左右に割れる。股を見せびらかす姿になる。
　圧倒されながら、健一は口を開いた。
「それは、あの……フェラチオしたり、本番したりとか」
「そんなことを聞いてるんじゃないの。女の人はどんな職種を演じていて、どんな服装だったのか、シチュエーションはどんなふうだったのか、ってこと」
「先生です。女の先生が、学校で男子生徒を誘惑する話です」
　朝霧結衣の目が輝いた。
「誘惑って、どんなふうに？　詳しく教えて」
「ええと……教室で、男の膝の上にまたがって」
「うん」
「それで、ブラウスのボタンを外して、オッパイを……」
　そこで不意に言葉が途切れた。朝霧結衣が、身を乗りだして健一の頭に両手をまわしてきたのだった。
「せ、先生」
　心地いい重みの尻が太腿にのしかかる。女教師の美貌が乳房が眼前に迫る。教え子の膝にまたがりながら、結衣は、彼の顔をじっと見つめた。
「こんなふうに？」
「そう……そ、そうです」
「次は？」
　丸い目で少年を覗きこむ。授業中とは別人の顔だった。女子生徒と気さくに話す休憩時間の顔でもない。彼女のなかに潜む牝の一面が黒い目に顕現している。
「次は……ブラウスを脱いで、お、オッパイを見せて」
「うん」
「それで、男にオッパイを揉ませるんです」
　言葉を発するたびに、息をするたびに、女の甘さが鼻孔に流れこんでくる。蒸した林檎のような匂いだった。
　朝霧結衣は、またもや彼の言葉通りのことを実践した。ブラウスの胸元に指をかけ、ひとつ、またひとつとボタンを外していく。
　そして四つ目を外したとき、女教師の唇から短い声がこぼれた。健一の手がブラウスの内側へと潜りこんできたのだった。
　無許可でブラジャーの胸を掴まれても、結衣は、彼を咎めたりはしなかった。咎めるどころか、まったく逆のことをこの女教師はしたのだった。少年の手首に指を添え、自分からブラウスの奥へと導いてくる。
　だから健一も、遠慮なしの手つきで女教師の乳房を揉み潰した。
「ああン、乱暴にしないで」
　本気の拒絶ではない。拒絶のふりをした挑発だから、甘く笑っているのだ。嬉しいから、必要以上に腰をくねつかせているのだ。
　胸を苛める指の動きにあわせて、前の開いたブラウスが肩のあたりまで捲れはじめる。彼女は、邪魔なそれを肘まで引きおろした。いまや朝霧結衣は、学校内でブラとパンティをあらわにした淫らこの上ない姿だった。健一は、巨乳を包む白いブラジャーを首の下まで引きあげた。
「うああ、す、すっげえ！」
　感動に胸を詰まらせながら、彼は、生の乳房に指を押しつけた。生徒たちからＥカップともＦカップとも噂される巨乳を握り、こねくり、上下に左右に、あるいは丸く揺さぶった。
「すごいよ先生。大きいよォ、柔らかいよォ」
「ンンゥ、だ、だめよ……女性の身体を、そんな、オモチャみたいに……」
「こんなエロいオモチャ、ほかにないよ」
「ねえ、次は？　次はどこを苛めるの？」
　甘えたがっている仔猫の口調で言うと、結衣は、男子学生の前で腰を浮かせ気味にした。
「次はどこをオモチャにしたいの？」
　願望を言葉にする必要などなかった。健一が口を開くよりもはやく、結衣が、彼の手をＴバックの股間へと誘導したのだった。
「ここを触りたいんでしょう？」
「うん、触りたい。先生のオマ×コ触りたい」
「いいわよ、今度は許してあげる。先生のオマ……ッ、ンンゥ」
　認許の途中でパンティの奥に指をねじこまれ、結衣の首が後ろにのけぞった。
「うわァ、ドロドロだッ……」
　淫裂の溝を飽きるほど擦ってから、指が膣口へと沈んだ。
「ハアゥン……ねえ、内緒よ？　ほかの子には内緒に……ッ、あ、あァう」
　泥沼の膣内を突きえぐられて、女教師の声が甘くたわみはじめる。普段がおっとりとした口調の美声だから、裏返った音色の喘ぎも、途切れがちの吐息も、何もかもが恐ろしく色っぽい。そんな声で泣かれては、指以外のものを挿入したくなる。
　不意に、結衣の身体が前のめりに崩れた。性感のために体勢を支えきれなくなったのだ。自分から少年の顔に乳首を寄せる形となり、すぐさま健一は、そこに口を押しつけた。
「はンゥ……だめ、あン、そこォ……そこ弱いの……ァ、ああーン」
　尖った乳首を強く吸われる。淫裂も指で苛められる。書棚やパソコンの置かれた進路指導室が女の淫臭で満ちる。
「中村くん、ああッ……中村くんッ」
　教え子の頭に両手をまわしてしがみつきながら、結衣は、少年の首筋へと赤い唇を寄せた。耳たぶを甘く噛み、うなじや頬に接吻を注ぎ、尖らせた舌先で喉仏を舐める。今やりたいことを躊躇もせず実行した。ワイシャツのボタンを手早く外し、あらわとなった鎖骨や胸板にも舌を這わせる。
　いい匂いをプンプンと漂わせた女の身体はさらに沈み、やがて、床に膝をつく恰好となった。女教師のすぐ鼻先には、少年のすっかりと膨らんだズボンの股間がある。
　結衣は、それを手のひらで包んでそっと擦った。
「ウフフ、こんなにおっきくしちゃって」
「あァ、せ、先生……」
　白い指がズボンのベルトを外し、ファスナーを引きさげる。その光景を、健一は驚愕の目で見おろした。
　檻から解き放たれた猛獣のように飛びだした勃起を、女教師の唇が包んだ。
「先生ってすごいや、平気でこんなことができるなんてさあ」
「平気なんかじゃないわ」
　太幹を指で上下に擦りながら顔をあげる。
「平気じゃないからできるの」
　そう言ってふたたび勃起を口に含んだ。熱心に、ときに虫をいたぶる鼠のような弱さで、顔を前後に揺さぶる。男慣れした咥えかたである。
　結衣は、自らの大胆さに愕然とした。教え子の男性器を口に含んでいる。学校で、ほとんど全裸同然の姿で、若いペニスに心酔している。
　最初は軽い誘惑だけで終わらせるはずだった。教師の道を逸脱するつもりなど毛ほどもなかった。けれども気がつくと、道を踏み外すどころか、完全にころげ落ちてしまっている。いまや夢中になっているのは彼ではなく彼女自身のほうだった。
　この子がいけないのよ、この子がいやらしいポーズなんてさせるから……。
　言いわけを頭にめぐらせることで、欲望も加熱する。意志を秘めた舌が茎に亀頭に絡みつく。彼女の意志とは、教え子のペニスを挿入されることだ。
「先生。俺、入れたいよ」
　勃起性感のためにかすれた声で健一は言った。
「先生とセックスしたいよ」
「え……だめよ、そんなの」
　本心とは逆の言葉がつい反射的にこぼれた。セックスという単語を彼の口から聞いたとたん、自分が教師だということを思いだしたのだった。
「だめなの……絶対にだめ」
　結衣は、勃起から視線をそらした。このまま熱視をつづけていたら、別の言葉がもれ出てしまいそうだった。わたしもしたいの、今すぐこれを入れてほしいの。そう叫んでしまいそうだった。
「これで終わりなんていやだよ、俺」
「無理を言わないで、ここをどこだと思ってるの？」
「学校だよ。学校のなかで裸になって、生徒のチ×ポ咥えてるんだぜ、先生」
　興奮のせいか、健一の口調が馴れなれしいものになっている。
「でも、セックスは無理よ」
「口だけで満足できるわけが……」
　そこで健一は言葉を切った。部屋の外から足音が聞こえたのだった。
　男子生徒たちの話し声が進路指導室の前を通りすぎ、廊下の奥へと消える。安堵の息を小さくついて、結衣は顔を起こした。濡れて頬に張りついた黒髪を指で払う。
「……カーテン、開きっぱなしのままだわ」
　乳房をあらわにしたセミヌード姿のまま立ちあがると、結衣は、窓際へと歩んだ。
　手を伸ばしてカーテンに指をかけようとする。背後から足音が迫ってきたのは、そのときだった。
　気づいたときには、もう強い力で腰を引き寄せられていた。尻の谷間に勃起が当たる。
「やだ、ちょっと……だめよ、だめ、中村くん」
「入れたいんだよォ、先生」
「でも、こんな場所で」
「先生だってヤリたいんだろ？　ヤリたいからカーテン閉めようとしたんだろ？」
「そんなの……ッ、ンン」
「最初に誘ってきたのは先生じゃないかよおッ」
　Ｔバックの生地を横へと押しやって、亀頭が内側へとねじこまれる。
「だめえ、こんなところじゃあ……見えちゃう、見られちゃうゥ」
　咄嗟に結衣はカーテンを掴んだ。外からの視姦を防ぐための動作ではない。何かを掴まなくてはならないほどの衝撃が下半身に走ったからだった。
　膣口に亀頭を挟んだまま、健一は、ひと思いに突き入れた。
「ォオオン……ゥゥ」
　柔らかい声で流暢な英語を話す美人教師の口から重い呻きがこぼれる。
　腰に絡まったタイトスカートを両手で掴み、健一はさらに腰を進めた。勃起が、女の肉体に深く突き刺さる。
「すげえや、先生、入ってるよ。オマ×コにずっぽり入ってるよォ」
「ああァ……だめって言ったのに」
「見てみなよ、先生。下を誰かが歩いてるぜ」
　グラウンドわきの遊歩道を数人の女子生徒が歩いてくる。スポーツバッグとテニスラケットをかかえている。遊歩道の先には運動部のクラブハウスがあった。
　窓は閉ざしたままだというのに、少女たちの笑い声が三階にいる結衣の耳にも明瞭に届いた。ならば、へたに声をだすわけにはいかない。もし気づかれたら、見られることになる。窓際で乳房を丸だしにした女教師の姿を見られることになる。
　健一の腰が前後に動きはじめた。充塞感を味わうための緩慢な動作ではなかった。射精へとひた走る無我夢中の腰振りである。
　揺らめきのなかで結衣は唇を引き結んだ。しかし、容赦のない勃起挿入の途中でどうやって声を殺していられようか。平静と沈黙を保っていられようか。
「ンうう……だめ、そ、そんな、激しく……ゥ、ッあああ」
　突き入れの動きに押されて美顔と乳房が窓に当たる。窓枠がガタガタと音をたてる。彼女が室内で何をしているのか、外から眺めたらもはや一目瞭然の光景だった。
　犯される女教師の真下を女子生徒たちが通りすぎる。
「だめえ、あンッ、あンあンああン……太い、お、おっきい……壊れるゥ」
「俺もいいよ、気持ちいいよォ」
　少女たちの姿がクラブハウスへと消えた矢先、健一は、絶叫とともに膣内で射精した。
「なあ先生、もう一発。もう一発だけ頼むよ」
　両手で乳房を掴まれたまま催促されても、結衣は無反応のままだった。窓ガラスに裸身を預け、枯れた喘ぎを延々と繰りかえしている。極度の緊張のなかでの性交で、彼女もまた絶頂を知ったのだった。
　気がつくと、結衣は学習机の上に仰向けで横たわっていた。いつの間に脱がされたのか、一糸まとわぬ全裸である。
　開いた太腿の先には健一の姿があった。結衣の両膝をかかえて腰を揺さぶっている。勃起の出入りする淫裂は大量の愛液にまみれ、机上までをしとどに濡らしていた。
「やばいよ、先生。俺、やめらんないよ」
　突き入れながら健一はつぶやいた。獣の唸り声のような口調だった。
「最高だよ、先生の身体。オッパイもケツも、オマ×コも、最高にいい。すげえよ、こんなのはじめてだよ。高校生の女なんて話になんないや」
「あーン……だめだめェ、い、いやらしいこと言わないでッ」
「声もすげえ色っぽいしさあ」
　職員室にある業務サイズのスチール机でもなければ、長机でもない。生徒用の小さな机に背中を乗せているだけの恰好である。抗えるわけがなかった。しかも、足を担がれたままペニスを挿入されているのだ。
　机上からはみだした首と両手がきしみながら揺れる。男を誘惑するために作られたような曲線の裸身が跳ねる。彼女の知らない性熱が体内で発火する。
「ゥあ、ゥあ、ッああン……やン、すごい……い、いいッ！」
　自然と声が出た。もっとも危険な場所でいいことをしているから、喘がずにはいられなかった。夏の盛りの八月である。交接する男女の身体はおびただしい汗に濡れ、うっすらと湯気がたちのぼるほどだった。
「ゥああ、せ、先生ッ」
　渾身の力をこめて淫裂を打ち抜き、健一は、ドクドクと牡液を注いでから勃起を抜いた。
　結衣は、大きな乳房を上下させて息をしている。姿勢と性感のために上体を起こすこともできない。突き入れのなかで何度ものけぞったから、頭部がすっかり机上からせりだし、長い髪の毛先が床まで垂れている。
　天地さかさまとなった視界を黒いものが遮った。
　それが男の股間だと気づいたときには、もうペニスを口内に押しこまれていた。精液の味のする亀頭が喉を圧迫する。
　女教師の乳房を片手で掴みながら、健一はゆっくりと腰を前後させた。けれども、すぐに動きを止めてしまう。動く必要がなくなったからだ。
　不自由な姿勢のまま首を揺らして、結衣は、教え子のペニスを赤い唇でしごいた。器用に舌を絡ませたりもする。若い男茎はすぐに強度を取り戻した。
「ああッ、また出そうだ……出るゥ」
　小さな処刑台の上に乗せられた生贄の姿のままで、結衣は苦悶の表情を浮かべた。口内に噴出された白濁液を喉を鳴らして嚥下する。
　嵐のすぎた室内に静寂が戻った。
　しばらく荒い息をついたあと、結衣は、やっと机からおりた。暑さと疲労で足元がおぼつかない。意識もひどく朦朧とする。
　ずっとのけぞった姿勢のままだったから、口内からもれ落ちた精液が鼻筋や瞼までを濡らしている。身体じゅうも汗でベトベトだ。すぐに衣服を身につける気にはなれなくって、結衣は、全裸のままキャスター椅子に腰かけた。何度も肩で息をする。
「教師にこんなことするなんて……」
　ペニスを露呈したまま床に座りこむ健一を甘く睨んだ。
「あなた、生徒が決してやってはいけないことをしたのよ」
「先生。お、俺……」
「言いわけなんて聞きたくないわ」
　顔に張りついた精液を指で拭うと、結衣は、濡れたその指を口へとはこんだ。息を呑んで注視する男子生徒の前で、ペロペロと舐めた。
「罰が必要ね」
　スラリと長い足を組み、独特の間延びした口調で全裸の英語教師は告げた。
「明日、もう一度補習をおこないます。先生のマンションにひとりでいらっしゃい。いい？　絶対よ。絶対にサボッちゃあだめだからね」