１

　その日の朝のあたしはすっごく鬱な気分。
　なぜなら、今月はまだ十五日だというのに、お財布には一万円しか残ってないのだ。むろん、銀行の預金残高はもとより一銭もない。
　それでも、食費は切り詰めればなんとかやっていけるかもしれないが、これじゃ家賃はとても払えないし、電話か電気かガスか水道のどれか、というかその全部が確実に止まるだろう。かといって、たのみの綱のバイト代は月末締めの五日払いときてる。
（しょうがないかあ……）
　あたしはため息をつくと、ノートパソコンの電源を入れ、おなじみの出会い系サイトの掲示板に書きこみをはじめた。

『当方二十七歳フリーター。百五十六センチ、超スリム体型。彼氏いない歴一年で、そろそろエッチが恋しくなったところです。割り切り交際ですぐに会える方を募集中。ホ別＠３ｈ＠大２』

　　　２

　最初にアポを取れた相手は、佐藤さんという三十一歳のサラリーマン。メールに記してあった携帯番号に非通知で電話すると、出たのはたしかに本人だった。すぐに渋〇の駅前で会うことにする。
　約束の時刻に現れた佐藤さん本人は、身長は百七十センチくらい、ちょっと太っててメガネをかけてるが、わりと優しそうな人だった。
「美衣です、はじめまして」
「へえ。美衣さんって、本当に二十七？　ずっと若く見えますよ」
「あはは。よく子供っぽいって言われるんですよねぇ」
　さすがにあたしは照れ笑いする。
　それもそのはず、じつはあたしの年齢は五つほどサバを読んで書きこみしておいたのだった。つまり、佐藤さんが嘘言ってないかぎりあたしよりも年下ってことになるわけ。
　なにせ、いくらあたしがいまだによく大学生に間違われるほど若々しいとはいえ、さすがに三十歳過ぎで援助を募集しててはエモノのかかりが悪いではないか。
「ぼくの仕事はＳＥなんだけど、今日は徹夜あけで代休なんです。朝ボーッとネットしてたらあの掲示板で興味ある書きこみ見つけたので、とりあえずメールしてみました。でも、実際あそこで見つけて会うのは、これが初めてなんですよね」
「へぇ。そうなんですかあ」
　どうでもいい話なのだけど、気のない相槌にならないように、あたしは細心の注意を払う。
　そして、佐藤さん、
「まず、先に食事でもしますか？」
　と、誘いをかけてくる。
　まだ十時半だったが、実はあたしもまだ朝ご飯は食べていないのでお腹はペコペコだった。
　ちょっと気持ちは動いたけど、
「うーんと。それよりすぐにホテル行きませんか」
　と、ずばり切り出す。
「あ、ああ……ぼくはもちろんかまいませんけど」
　佐藤さんはあたしの積極性に驚いたようだが、こっちにはこっちでそれ相応の事情があるのだった。
　なにせ、エッチの前にご飯食べたらお腹ぽっこり出ちゃうし、なによりもいろいろと出そうになってしまうではないか。

　　　３

　ホテルに着いたらまずはシャワー。
　そこで、佐藤さんは、どうやらどっちが先にバスルーム入るかで迷ってるようだったので、
「どうせなら一緒に入りませんか？」
　と、あたしから提案してあげる。
「い、いいんですか」
「佐藤さんがかまわないのでしたら」
　あたしは、ちょっとうつむいて恥ずかしがるふり。
　むろん佐藤さんに否応があるわけもない。

　そしてバスルーム。
　佐藤さんには悪いのだが、あたしは胸までタオルをきっちり巻いて完全防備させてもらっていた。でも、佐藤さんだけは当然全裸になってもらう。
　そこで、まずは全身状態を観察だ。
　佐藤さんは、ちょっとお腹がたるんでいて、全体的に色が白い。でも、仕事のせいか不摂生さは感じるのだけど、全体的にはまだ健康そのものといった感じだった。
「背中流してあげますね」
　そう言いながら背後に回って、さりげなく肌の状態などもチェックする。
　佐藤さんは、あたしに身をゆだねながら、だんだんリラックスしてきたようだ。
「ぼくは、こういう出会い系ってずっと十代の女の子が利用するものだと思ってましたよ」
「うーん、そうなのかもしれませんね。わたしが図々しいのかしら」
「いえいえ。でもほら、相手があんまり若すぎると、ぼくなんかじゃどう接していいかもわかりませんからね。だから美衣さんくらいのほうが安心なんです」
「わたしも佐藤さんみたいな年上の人のほうがずっと安心ですよ」
　ぬけぬけと大嘘つきながら、ようやく背中を流し終わる。
　それから、
「じゃ。前を失礼しますね」
　いきなりあたしは佐藤さんの前に回った。膝立ちの姿勢で太腿をチラリと見せつける格好。
「み、美衣さん……」
　びっくりする佐藤さん。
「うふふ、おちんちんおっきくなってきた。でも、このほうが洗いやすくていいですよね」
「う、うん……」
　タジタジの佐藤さん。そのおちんちんは、黒くて短くて太くて、ちょっぴり皮をかぶっていた。
「キレイキレイしますよぉ」
　あたしは指で包皮を剥いてあげてから、根元を片手で支え、素手でシャボンをまぶしゴシゴシしごいていく。もちろん、妙な疱疹や水疱がないかまでを入念にチェックしながら。
「み、美衣さん。そんなことされたら、ぼく、もう我慢できないよ」
　股間をギンギンにして、佐藤さんはいまにもあたしに襲いかからんばかり。
　でも、あたしは肩にかかった手をやんわりと振り解き、
「だーめ。きちんと洗ってからね」
　たしなめながら最後まで作業を続行した。「さあ、キレイになりましたよ」
「ありがとう」
　ご満悦の佐藤さん。
　そこへすかさず、
「じゃ、あたしも体洗うから先あがって待っててくださいね」
　と、あたしは言い放った。
「え？」
「すぐ行きますから。ね？」
「は、はい」
　佐藤さんはあたしの勢いに押される形で、渋々ながらバスルームを出ていった。
　それからあたしは、バスタオルを脱ぎ捨て全裸になり、お風呂椅子に坐って誰に遠慮することなく大股をおっぴろげ、お〇んこをゴシゴシ洗いはじめた。
　念入りに、しかし丁寧にスポンジでヒダの隅々までをきれいにしていく。
　まあ、さすがにこの姿だけは、たとえどんなに親しい男相手でも見せるわけにはいかないのだ。

　　　４

「お待たせしました」
　部屋へ戻ると、バスローブ姿でベッドの上に坐ってる佐藤さんがいた。
「お、おかえりなさい」
　おどおどしてるところが、ちょっと可愛いかも。
　そこであたしは時計をチラリと見て、
「いま十一時半ですから、三時間のうち一時間たちました。午後から用事あるので、一時半にはお別れしなきゃならないんですが」
　と、先に時間について釘をさしておく。
「あーそうか。最初から三時間の約束でしたからね」
　すごく残念そうな佐藤さん。
「ごめんなさいね。あたしに時間あったら、延長してもＯＫなのだけど」
「そうかあ。じゃあせいぜい頑張らないと」
「うふふ、頑張ってくださいね」
　部屋の照明を消してもらい、ナイトランプだけにしてもらう。そこからエッチの開始だ。
　まずはベッドにうつぶせにされ、バスタオルを解かれた。
「うわっ」
　薄暗いランプの中に浮かび上がったあたしの全裸姿に、佐藤さんが感嘆のうめきを上げた。
「すごくキレイだ、美衣さんの肌」
「ありがと」
　おずおずと伸びてきた手が、やや乱暴にオッパイを握ってくる。
「可愛い胸だね」
「ちっちゃいから恥ずかしいわ」
「いや、ちょうどいい大きさだよ」
　掌で乳首をつまみだされ、指先でクリクリいじられた。
「あ……はぁん」
　同時に、佐藤さんのもう一本の手は、あたしの股間を割り、太腿の付け根に伸びて来ている。指がお〇んこの溝を軽くなぞる。それだけで、ゾクゾクするような快感があたしの背筋を這い上がっていった。
「い、いい……そこっ。いいわぁ」
　あたしは腰をくねらせて悶える。
「感じやすいんだね、美衣さんは」
「うん、だって久しぶりなんですもの。もっと、いっぱい感じさせて……」
「じゃ、舐めてあげる」
　そう言うと、佐藤さんはいったん身を起こして、あたしの両膝を両手でがっちり掴んでから、いきなりガバッと左右に大きく押し広げた。
「ああぁ、恥ずかしいよぉ」
　突然、佐藤さんの口が、あたしのお〇んこ全体に覆いかぶさる。そのまま吸われてしまう。
「あ、ああああ……」
　すごい快感で脚がブルブル震えた。
　そして、佐藤さんの舌先が敏感な芽に伸び、ペロンと舐められる。
　あたしは、そこで一瞬、気が遠くなりそうになった。
「ひゃあああ、だめぇ……」
「クリトリス剥いちゃうよ」
　ちょっとマニアックな顔つきになってきた佐藤さん。指でお〇んこをつまむようにして敏感な芽をめくると、そこにも大胆なキスをしてきた。
「ああん、あああああ……」
　あたしは、思わず太腿で佐藤さんの頭を挟みつけていた。
　そのまま下半身が持ち上げられる。頭が下になる。そうして、お尻の穴からクリトリスまでをまんべんなく舐め上げられてしまう。
「すごい、ああ……気持ちいいよぉ……」
「すっかりビショビショじゃないか。エッチなんだね、美衣さんは」
「ああん、言わないでぇ……」
　佐藤さんはその作業をどれくらい続けたのだろうか？
　あたしがよがるのにも疲れてきて、ハァハァと息も絶えだえに喘ぐようになった頃、ようやくお〇んこが解放されて、あたしはベッドに仰向けに投げ出されていた。
「はあはあ。もう我慢できない。挿れるよ」
　佐藤さんの鼻息も荒い。
「うん、来て、来てぇ……」
　そのまま圧しかかって来ようとする佐藤さんの先手を打つように、あたしはよろよろと腰を起こしてベッドに手をつくと、後ろ向きにお尻を佐藤さんに向って突き出した。
「ん？」
「あたし、バックからめちゃくちゃにされるのが好きなの。このまま犯して」
　そうおねだりしながら、プリプリとお尻を振って挑発する。
「エッチなんだな、美衣さんは」
「うん、おちんちん好きぃ。だから早くぅ」
　あわててゴムを装着する佐藤さん。その間も彼の視線はあたしの一点だけに集中してるようで、そこだけが熱く感じられる。
　そして、お尻を両手で掴まれた。ぐいっと引き寄せられた。太腿の付け根に熱い感触が当たった。
　ヌチュヌチュッ。
「あああああ……」
　そして、じわりじわり、佐藤さんのおちんちんがあたしのお〇んこに侵入して来る。欲望に満たされた腰がわななく。
「ああん、おっきいよぉ。一杯になってるぅ……」
「し、締まる、気持ちよすぎるっ」
　その感触に感激したらしい佐藤さんは、いきなり激しいピストンを開始してきた。それに呼応し、あたしもお尻の筋肉をキュッと締めて抵抗を大きくしてあげる。
　肉と肉がぶつかり合う。
　ただ、表面的にはガツンガツンと突かれてるように見えるけど、実際はちょうどお尻の肉がクッションになってくれてるので、あたしはそれほど負担を感じずに肉襞を擦られる快感だけを味わうことができていた。
　目を閉じて、背中を反らせ、その行為だけに没頭していく。
「うん、うん、うん……」
　リズムに合わせて自然と声が洩れる。
　下半身だけで繋がるセックス。たとえば、いまあたしを犯しているのは、お金で一時だけ身を任せた見知らぬ相手ではなく、あたしが大好きな人だと妄想することも可能だ。あるいは憧れのスターと思いこんでもいい。
　そうすることで、あたしは気分を昂ぶらせていく。
　だんだんと、純粋に気持ちがよくなってくる。そうなると、あたしはただ穴の開いた肉の塊だった。その穴を、肉で埋めてくれる相手なら誰だっていい、そんな気分にすらなってきていた。
「あああ……好き、好きぃぃ」
　あたしは誰が相手ということも意識せず、いつしか甘えるような声をあげはじめていた。
　とてつもなく淫らな気分に昂ぶる。昂ぶることであたしはよけいに濡れ、卑猥な音が薄暗闇に響いていく。
　体がドロドロに溶け、どこからどこまでがあたしのお〇んこで、どこからおちんちんなのかがわからなくなる。男のおちんちんがあたしの一部になる。
　自分がどこまで貪欲なのか恐くなってきた。でも、同時にあたしは、恐さを突き抜けたその先に、本物の快楽が待っていることも知っている。そこには、普段はあたしの内部に隠れた黒い生き物が潜んでいることを。
「うぅ、だめだっ……くぅっ」
　そこで、佐藤さんが突然硬直してしまう。
「やだぁ、まだダメェ……」
　あたしの中の黒い生き物が抗議の悲鳴をあげる。でも、あたしがあわてて力を緩めたときには、すでに遅い。
　佐藤さんは、あっという間に達してしまっていた。

　　　５

「ごめんね、先に終わっちゃって」
　恐縮する佐藤さん。
　あたしは首を振ってから、優しく後始末をしてあげた。さらに、早く元気になるようにと、手と唇で慰めてあげる。これもサービスの一部だ。
　佐藤さんとは、それからずっとフェラしてあげたり、シックスティナインの格好で顔を跨いであげたりした。時間までにもう一回、今度もバックから挿入してもらった。
　二回目は最初ほどよくはならなかったが、三十分弱の行為で、一応はイク感覚も味わうことができた。
　もっとも、あたしとしては、
『せっかくするんだったら、楽しんだほうが得なんじゃない？』
　くらいの気持ちの行為なので、それはべつにどうでもよいことだ。

　別れ際に連絡先を聞かれた。どうやら佐藤さんは、月に一回くらいならあたしとまた会ってもいいような気持ちのようである。
　深入りするとちょっと面倒そうな相手だが、それ以外は特別問題なさそうなので、一応、パソコンのフリーメールアドレスだけを教えてあげた。
　気が向けばまた会うかもしれない。

　　　６

　ホテルで佐藤さんと別れてから、すぐコンビニに寄って、とりあえず電気代だけを支払う。

　二時から五時まではいつものお惣菜屋さんでアルバイト。
　時給は七百円だが、鼻歌混じりで料理してればいいだけだから気が楽な仕事だ。それに、余った食材を持ちかえって夕飯のオカズに流用できるのも金額以上に馬鹿にならない。
　でも、やはり立ち仕事なので少し腰に負担が来た。
　むろん昼のエッチのせいもあるかもしれない。なじみの治療院で鍼打ってもらいたくなったけど、いまはそんな贅沢はできる状態じゃない。
　月末を乗り切るまでは我慢だ。

　　　７

「ただいまー」
「お母さん、おかえりなさーい」
　六時ちょっと前に帰宅。息子が玄関で出迎えてくれた。
　どうやら息子は、あたしに今日学校であった出来事を話したくてたまらない様子だった。そんなの本当は、失業中でずっと家にいる夫が聞いてやればいいことなのだろうが、息子は息子なりの考えで、傷心の父親にはなるべく触れないほうがいいと察しているのだろう。
　息子の話を聞いてやりながら夕食の支度。バイト先からくすねたお惣菜があるので、あたためるだけでよいので楽だ。
　支度が済むとお風呂。これだけは沸かしてもらってあったのだ。
　お風呂場の鏡で念入りに全身をチェックする。どうやらキスマークとか歯形はついていないようで、少しホッとする。
　それに、こうやって明るいところで見ると、さすがにお腹の妊娠線は誤魔化しようがないな、と思い、また苦笑する。
　肌が擦り切れそうなほど全身をゴシゴシ洗った。くたびれたお〇んこは、とくに念入りに。
　そして、湯船に浸かって、一日にあったこと全てを忘れようとした。
　今日はちょっと嘘をつきすぎた、と自分でも思った。

　　　８

「おい」
　布団に入ってすぐ、夫が声をかけてきた。
「ん……待って」
　あたしは布団を持ち上げ、ちょっとだけ体をずらして、彼のためにスペースを空けてあげる。すぐに夫がもぐりこんでくる。
　夫が失業してから半年になる。ここ最近は、なぜだか毎晩あたしを求めるようになっていた。結婚して十年、それまでずっと週一くらいのペースだったというのに。
　それはあたかも、夫が、失ってしまった自信をあたしの体を貪ることで取り戻そうとしているかのようだった。
　あたしは、それを歓迎しているのだろうか？
　少なくとも拒否する気はない。

　頭から布団をかぶったあたしは、夫の股間に顔をうずめ、おちんちんを咥えている。
　頭を押さえてもらいながら、なるべくその行為に集中するようにした。口で慣れ親しんだサイズをたしかめるように、そして、そのことで、自分が何者であるかをしだいに思い出していくように。
　本当は夫だけで十分なのだ、エッチが目的なんかじゃない、と自分に言い聞かせる。だって、あたしは夫が相手でもこんなにも興奮できるのだから。
　夫が勃起した。すぐにあたしを押し倒し、前戯もそこのけに性急に挿入してこようとしてくる。こればかりは長年の癖なので、いまさら直しようがない。
　若い頃はその性急さが好ましくもあり、そして、しばらくしてからは疎ましかった。でもいまは、別に意味で好ましくなりつつある。
　あたしは素直に仰向けになり、両腕を広げて夫を迎え入れてあげる。
　慣れたサイズをスルッと挿れてから、すぐキスを求める。夫が応える。キスの後、首に抱きつく。夫の体重を感じ、息と鼓動を耳元で聴きながら、だんだん腰の動きに意識を集中していく。
　あたしはたとえようもない安堵感を感じていた。
　以前と比べると会話はほとんどなくなってしまっている夫婦関係だが、スキンシップの点ではむしろ緊密になってるかもしれない、とも思う。
「気持ちいいよ、パパ……」
「こんなときはパパって言うなよ」
　夫は苦笑し、あたしの名前を耳元で囁いてきた。あたしはずっと夫のことはアナタとしか呼ばなくなってるので、こういうときはやりづらいな、と感じる。さすがに昔みたいに苗字で呼ぶわけにもいかないし。
　でも、あたしはなによりも向い合うエッチが好きなのだ。だから、お互い顔を見合わせ、ときおり笑い合うのはとても楽しい。
　夫はいつものように十分もたたないうちに、
「おい、そろそろ……」
　と合図してきた。
　その性急さもいつものことだが、いまの疲れてるあたしにはそれすらも好ましい。
　あたしは、それまで耐えていたものを解き放ち、夫のリズムに身を任せる。自然と足をつっぱる。
「好き、好きぃ……」
　すぐに軽い絶頂が押し寄せてきた。あたしは全身の力を抜いて、素直にそれを受け入れていった。
「あうぅ……」
　そのまま、安らかな快楽に震える。
　しばらく動きつづけてから、夫もイッた。


　　　９

　翌朝もあたしは鬱だった。
　なにしろ今日は、ガス代と水道代を両方支払わなければならないのだ。
　月末までには家賃も……？


―完―