『ドスケベな身体』

第一話　「スタートライン」

　ついに、この日がきた。ふたりきりで過ごす90分。

　運ばれてくる料理を楽しい会話と笑顔が、美味さを一層引き立たせる。

　どれほど、この時間この瞬間を待ちわびたことか。

　ようやく、ふたりきりになれる時間がきたのだ。

　それも、隣に座っているこの女を見た瞬間から5年、正しく言えば、この女を自慰行為のオカズにするようになってから5年が経過していた。

　田村は、８年前から出張で２カ月に一度、東京から来る。

　人口も１０万人足らずの田舎町。

　東京生まれ、東京育ち育ちの田村にとって、眩い女性たちは東京にしか存在しなかった。

　しかし・・・。

「こんな田舎町に、あんな身体の女が・・・わからないものだ」

　と、早めに宿泊先のホテルにチェックインし、ロビーで女を待つ。

　偽善的な東京土産を小脇に置き、青い煙の中で目を細めた。

　今日は初デート。あいにくの雨だ。それも、土砂降り・・・。

　初デートの時間は11時半から13時まで。

　昼食をとりに近くの店を選んだ。昼はランチを提供してくれる馴染みのバーだ。

　会話は女を笑わせようと懸命に言葉を選んで口にしている田村の健気な姿と裏腹に、心の視線は常に下品で股間を刺激する単語に満ち溢れていた。

　カウンター席に座り食事を待つ間、女は自分のバックを膝の上にのせて話を続けた。

「バック、隣の席においたら」

「この方が落ち着かない？ここに何かモノがあるって、落ち着くの・・」

　そう言うと膝の上で、バックを軽く持ち上げた。

　田村は、バックに目をやる素振りで、この男好きする恥ずかしいくらいの肉体を軽く撫で回すように見た。

「ふん、相変わらずドスケベな身体だな」

　バックの下には濃いグレーのGパンに窮屈そうに女の口が隠されているのだろう。

　ムッチリとした臀部が椅子の格子の間から顔をだしている。

「長い間待ちわびたのだ、今更慌てたこともない。年内に目的を達成すればいい・・・」

　田村の最終目的とは、この男好きするドスケベそうな身体の主婦を淫靡な世界に徐々に陥れ、同癖の男たちのおかず女として晒すことなのだ。

　その目的達成の為の今日が第一歩。

「俺も蛇か、よっぽどの変態だな」

　と気づかれぬ様にニャッと深み笑みを浮かべ、コーヒーカップに指をのばした。

　これまでの長い5年間をかみしめながら振り返った。

　・・・つづく・・・