２．お気に入り

「杉村くん、一緒に来てくれるか？」
　徹が、ひなに声をかけた。ひなの会社は、不動産関係の会社で、主任の高木徹は、ひなの上司に当たる。
「例のマンション、リフォームが終わったらしくて、見にいくんだ。来てくれ」
「はい」
　会社では、あくまで上司と部下、二人の関係を知る人は、いない。少なくとも二人は、そう思っていた。

　目的のマンションまでは、車で２０分だが、徹は、駅の近くに車を止め、そこから歩いた。
　中古マンションの販売は、あっせんが主だが、ここは、自社物件だ。
　徹は、慎重に周りを見ながら、気づいたことを話し、それを録音した。後でそれをもとに、物件紹介の記事を書くのだが、一人でぶつぶつ喋るのは、どうにも胡散臭い。誰かと二人ならば、おかしくはないし、それに、ひとりでなく、女性を含めてなるべく大勢の目で見ておいたほうが抜けがない。そのため、ひなをつれて来たというのが建前で、それは、決して不自然なことではない。少なくとも二人は、そう思っていた。

　築１７年、さすがに概観は多少くたびれているが、リフォームしたばかりのマンション部屋は、きれいだった。
「いい眺めね」
　東に面した窓から外を見ながら、ひなが言った。１０階建てのマンションの８階、眺めも悪くはない。
「そうだね」
　ひなの後ろにいた徹は、ひなのスカートをまくった。眺めに興味はないらしい。
　ひなは、お尻を徹の方に突き出すようにして、少し足を開いた。
　ひなは、普段は、パンストだが、今日は、午後に出かけると徹に耳打ちされて、お昼に履き替えていた。徹は、ガーターベルトの留めをはずすと、ひなのパンティーをくるっと丸めるように降ろした。ひなのお尻が晒された。それが徹のお気に入りだった。
「ひな・・・もう少しお尻を突き出して・・・」
　ひなは、言われたとおり、窓から下がり、窓に両手をついて上体をかがめ、お尻をつんと突き出した。バルコニーに面した南の窓は大きいが、居間の東向きの窓は、腰から上の位置にある。８階のこの窓は、誰にも覗かれない。
　徹の指が、ひなの中に入ってきた。こうなることを予想していたひなは、歩いてここに向う最中からすでに濡れていた。徹の指は、じゅぼっといやらしい音を立て、すっぽりとひなの中に納まっていった。
「濡れてる」
「やだ」
「やだって？・・・濡れてるもん」
　２歳年上の徹だが、ひなの前では、子供のように甘える。
　ひなは、黙って、徹の指の動きに腰を合わした。
「ひな・・・・」
「うん？」
「して欲しい？」
「したいの？」
「うん」
「じゃぁ、して」
「このまま、待って、鍵かけてくる」
　徹が玄関に鍵をかけに行った。
　ひなは、パンティーを完全に脱いで、バッグにしまうと、また、徹を待った。

　徹は、ズボンとパンツを同時に脱いで、下半身裸になった。男の下半身だけ裸の格好というのは、あまりいいものではないが、ひなたは、かなり濡らすので、用心にこしたことはない。
　ひなたは、徹の前にしゃがんで徹のものを咥えた。これも、徹の好みだし、ひなたも嫌いではない。
　ベッドで、さぁ、セックスしましょうっていう感じの行為は、それはそれで、ひなたも嫌ではないが、それよりも、ひなたは、いつでもどこでも、どんな格好でもという交わり方のほうが好きだった。
　しゃがんで、咥えることも、頭を持たれて、性器のように口に突き入れられることも、イスに座った徹の足の間に挟まれて、徹のものを舐めるのも、ひなは嫌いではなかった。むしろ、好きことだった。
　ひなは、徹のそれに、頭から唇をかぶせ、ぐっと飲み込むと、口をすぼめ、ゆっくり引いた。
　よだれが、すーっと流れて真新しい床に落ちた。
　徹は、ひなを立たせると、最初のように、窓に手をつかせ、後ろからひなに差し入れた。
「ああぅ・・・」
　太ももの付け根まで、熱いもので溢れている。
　勢いよく突いたので、徹の下腹部がひなたのお尻に当たって大きな音がした。
「はぁっ・・・」
　ぐいぐいと徹は突いてきた。そのたびに徹のものが、奥に当たった。
「いい・・・・・」
　さすがに、こんなところで大きな声を上げるわけにはいかない。ひなたは必死に声を殺したが、ときどき、予想以上に奥深くはいってくると、思わず声をあげた。
「ああ･・ああ・・・・あああ・・・・・」
　徹の動きが早くなるにつれて、ひなたも制限をやめた。ひなたの声が何もないマンションの部屋に響いた。
「出すぞ」
　徹が言う
「うん・・うん・・・うん・・・」
　ひなは、何度も何度もうなずいた。
「うっ」
　声にはならない声をあげて、徹はひなから離れると、ひなの顔の方に移動した。
　ひなは、顔を横に向け、そこにある徹の物を咥える。
　ほぼ、同時に徹のものは、どくんどくんと脈打って、ひなの口の中一杯に溢れた。

　ひなは、口の中一杯に徹の出したものを含みながら、それでも徹のものを咥えて、ゆっくりと口を上下させた。
「うっ」
　徹は、今度ははっきりと声を出してうめいた。
　ゴク
　ひなが、大きな音をたてて飲み込んだ。

　帰りの車の中で、徹は今日、録音に使ったＩＣレコーダーを店ながら、ひなに言った。
「これ、記事にしないといけないから、今日は行けない。ごめんな」
「いいよ。しょうがない仕事だし・・・・それにさっき、したし・・・」
　ひなは、にっこり笑いながら言った。