第五章 決心

　数日後、ラブホテルで撮った映像を啓子の部屋で楽しんだ。
　最初は恥ずかしがっていたものの、自分が犯される映像を見た彼女は異常に興奮してしまい、途中で自分から求めてくる始末だった。
　カメラを直接テレビに接続していたので、そのときの絵が撮れなかったのが残念だったが、彼女から積極的に求めてくるのは初めてだったので、それだけでも、ビデオカメラを買った価値があると思った。
　しかし、ラブホテルの暗い照明だけでは、隠微な雰囲気は出ているものの、啓子の白い肌や、俺のお気に入りのオ○ンコがきれいに撮れていない不満が残った。それに、どうせビデオを撮るなら、もっと条件が整った場所で、思い切り撮ってみたい。
　そこで、伊豆高原にある貸別荘で撮影をすることにした。ここは、現在、俺の勤め先の福利厚生施設になっているのだが、バブル時代、アパレルの社長が贅をこらして建てた豪華な別荘だったのだ。
　管理人もおらず、鍵を総務で受け取るだけというシンプルなシステムを利用して、褒められない用途に使っている奴もけっこう多いらしい。
　有休を取った俺は、車に乗って隣の駅で啓子と待ち合わせをすることにした。マンションの駐車場で彼女を乗せてしまって近所の人間にでも見られたらマズイ。外で会うには苦労が多いが、最近はそれだけ価値のある女なのだ。

　ラブホテルで必要だと感じた広角アタッチメントの他、照明機材も買いそろえ、プレイに使うバイブやロープなどの一式を車に積んでスタート。啓子には数種類の服装を用意するように言ってある。
　待ち合わせ場所で彼女は、スエードっぽい黒のジャケットにジーンズ、手には大きな紙袋を二つという買い物帰りのような姿で立っていた。短くクラクションを鳴らした俺に気がつき、ドアを内側から開けてやると、素早く助手席に滑り込む。
「ごめん。待った？」
「ううん。それより、二人でどこかに行けるなんてうれしい」
　Ｗ不倫の後ろめたさなど俺たちには無くなってしまっている。恋人同士と言うより、共犯者といった絆ができあがってしまっていた。
　小旅行。啓子は今回の撮影を、そんな風に表現していた。未来のことを考えると、一瞬、少し薄暗いものを感じることもあるが、今の二人には欲望に任せて突っ走ることしか頭にはない。
　東名高速に入ると俺は左手を啓子の膝の上にのせた。その手を包むように彼女の手が重なる。そのまま、指を内股へ這わせるようにして、手をオ○ンコの方へ移動させる。
　大きく息を吸いながら、啓子はシートに背中を押しつけるようにして目を閉じた。
　クリトリスのあたりを、ジーンズの上から、カリカリと引っ掻くように刺激を与える。こんなのはガキのイタズラみたいなものだが、彼女は目を閉じて、けっこう感じているようだ。
　二人っきりで出かけているというシチュエーションに酔っているのかも知れない。
　ちょっとしたアイデアを思いつき、俺は、港北のパーキングに入った。ビデオカメラを助手席のダッシュボードに置き、ガムテープで固定すると、録画スイッチを入れる。買ったばかりの広角アタッチメントもレンズに装着する。
　走り出し、スピードを上げて本線に戻ると、俺は啓子に命令した。
「ジーンズの前を開けて」
　彼女は俺が何を目論んでいるかを悟ったらしい。黙って、ボタンを外しファスナーを下げると、腰を浮かせて、少しジーンズをずり下げた。淡いピンクのショーツが顔をのぞかせている。俺は中指で布地の上から感触を楽しむ。
「カメラを見て」
　目を開けた啓子は、恥ずかしげにレンズを見つめる。
「じゃあ、こんどは自分でやるんだ」
　きっと、触ってもらえると思っていたのだろう。啓子は、一瞬、裏切られたという表情をしたが、右手をつかんであそこへ誘導すると、おとなしく従った。ショーツの下で指がモゾモゾ動いている。想像の世界に入り込もうとするせいか、すぐに目を閉じようとするので、
「目を開けて！　カメラを見て！」
　と、何度も命令する。
　やがて、本気で感じてきたらしく、息づかいが荒くなってきた。
「どうせ、周りに聞こえないんだから、バッチリ録音できるように声をあげていいんだぞ」
　その言葉に反応して喘ぎ声を漏らす啓子。車高の高いバスかなんかに並ばれたら丸見えかもしれないが、それはそれで一興だろう。
「何を想像しながらやってるんだ？　言ってみろ！」
「あなたが‥‥あなたが、欲しい‥‥」
「もっと大きな声で！」
「欲しいの。あなたが欲しい！」
　叫びながらオナニーをする啓子がたまらなく愛おしい。車は厚木のＥＴＣゲートを抜け、小田原厚木道路に入るが、そんなことにはまったく気がついてないようだ。
　俺は、港北でカメラを用意したとき、一緒に取り出しておいたバイブレーターを彼女に渡す。このバイブレーターも新規に購入したアイテムだ。
　本体の真ん中あたりには真珠のまがい物が並んで、それが回転しながら、頭の部分がくねり、別の突起にもモーターが内蔵されていてクリトリスを刺激するというものだった。おまけに、いつも使っているヤツより、ひとまわり大きい。
　その乳白色のバイブレーターを見て啓子は泣きそうな顔になった。スイッチを入れて動き出したそいつは、恐ろしいくらい卑猥で、禍々しい悪魔のような印象だったからだ。
「早く入れるんだ。嫌なら、ここで車を止めるぞ。みんなに見られたいのか！」
　たぶん、見られることへの羞恥心が強かったのだろう、啓子はショーツをずらして、バイブレーターを飲み込みはじめた。そして、泣くような声で言った。
「意地悪ぅ‥‥」
　二つ目の料金所を通過する時分には、別の世界に入ってしまった様子で、彼女は、ただ、ただ、喘ぐだけになってしまった。新型のバイブレーターの機能か、それとも、公道上でこんなことをさせられているせいか、啓子はビクン、ビクンと体を震わせ、何度も絶頂を迎えた。
　ターンパイクに入っても、彼女の目は虚ろなままだ。まだ、あそこにバイブレーターが入りっぱなしなのだから、無理もない。
　さすがに料金所の前でいったん停車して腰のあたりにバスタオルをかけてやったのだが。
　途中の駐車場で、カメラを外し、ちゃんと録画できているかを確認したのだが、啓子の顔から腰のあたりまでがフレームに収まり、想像以上の絵が撮れていた。
　虚脱状態になった彼女からバイブレーターを抜くと、少し酸味のある、懐かしいような啓子の臭いが車中を満たした。
　まだ、先は長い。シートを少しリクライニングさせてやり、バスタオルで彼女の下半身を覆い隠すと、俺は貸別荘へと車を走らせた。

　一般道に出てしばらく走ると、古い民家を改造した蕎麦屋があったので、早めの昼食をとることにした。これからやることを考えれば、しっかりと腹ごしらえをしておかないと保つわけがないし、啓子を一休みさせる目的もあった。
　まだ、余韻醒めやらぬ啓子を連れて店に入った俺たちを、店員のオバチャンはどう思っただろう。仲の良さそうな夫婦か、それとも、恋人同士か。こんなことを考えるようになったのも、どうも、ビデオを撮り始めてから、俺の中で彼女に対する感情が変化してきているのを自覚しはじめたからだ。

　蕎麦を食う啓子は俺の好みにぴったりだった。
　食と性は同根なのかも知れない。欧米では女を夕食に誘うことはベッドに誘うのとイコールの意味があるそうだが、言葉を交わさなくても差し向かいでものを食う二人には、通じ合う何かが芽生えつつあった。彼女も同じように感じているらしい。そういえば、外で啓子と飯を食うのは初めてだった。
「行こうか」
　伝票をつかんだ俺に黙ってついてくる彼女の顔は、なぜか幸せそうで、弥勒菩薩像を連想してしまうほど輝いて見えた。
　貸別荘に到着するまで二人は無言だったが、それは不快な沈黙ではなかった。

　小高い丘に建った白亜の宮殿。そんなコピーがぴったりくるほど、ヨーロッパ風にデコレーションされた貸別荘に着いた。
　鍵を開けて中へはいると、撮影場所を決めるため、部屋をチェックする。
　二階の広いテラスに面した二十畳くらいある寝室が最高だった。テラスに通ずる大きなガラス戸が南側にあり、カーテンを開けると秋の陽射しが部屋全体に差し込む。フランス製とおぼしき真鍮製のパイプベッドも優雅な雰囲気で、アンティークっぽいソファーやテーブルが大理石の床に置かれているという豪華さだ。隣にはジャグジー付きのバスルームもある。
　イミテーションの暖炉の脇に床暖房のスイッチがあり、それを最強にセットする。これからは裸で過ごすことになるのだから。
　そして、啓子のコスチューム選びだ。
　ベッドの上に、彼女が持ってきた衣装を広げる。レースがあしらわれたシルクのインナーが目を引く。ガーターベルトまでがセットになったインポートものらしい。色は上品なワインレッド。聞けば、この日のために新しく買ったものだそうだ。ストッキングは黒にした。バックにバラの花の柄の入ったものだ。それに赤いミュールを合わせることにした。
　スカートは迷ったあげく、少しフレアーが入ったキャメルのセミロング。これは、俺がロングスカートの中に顔を突っ込みたいという望みを叶えたいから決めた。上はジャケットっぽいブラウンのカーディガンに白いブラウスを選ぶ。
「バスルームで着替えてこいよ。俺はカメラの準備をしてるから」
　何事にも順番が大切だ。着替えているところを見てたんじゃ、あとの楽しみが減る。
　窓から入る光線が強すぎるのでレースのカーテンを閉める。これで光が柔らかくなった。三脚にカメラをセットして、邪魔なテーブルを片付け、テレビにケーブルをつなぐ。これで、啓子にもどんな絵が撮れているか分かるという仕組みだ。
　着替えてきた啓子は、セレブな若奥様といった感じで、部屋の雰囲気にもぴったりだった。
「ソファーの前に立って一回転してみて」
　ファッションモデルのようにクルリと回る啓子。
「じゃあ、こっちを向いて。そのまま少し足を開いて」
「さあ、次は両手でスカートをめくってみようか！」
　少し口調を強くして命令する。
　腰のあたりまでめくられ、逆三角のショーツが顔をのぞかせる。ガーターとストッキングが艶めかしい。
「もっとよく見えるように！」
　両手が胸の方まで上がり、ガーターベルトも露わになる。その部分にズームアップ、画面いっぱいにショーツとガーターベルトが映し出される。啓子の目はモニターにしているテレビに釘付けだ。うっすらと頬が染まってくるのが、画面でも分かる。
　啓子は、前回のように順に脱いでいくものと思っているらしいので、趣向を変えることにした。ズームボタンを操作して、ふたたび全身が入るようにカメラをセットし直した俺は、彼女の前にひざまずいた。腰の両脇をつかんでショーツの上からあそこにキスをする。
「ああ‥‥」
　啓子はため息のような声を漏らした。
　唇でクリトリスをある場所をはさんだり、まさぐったり、息を吹き入れたりすると、プンと雌の臭いがしてきた。どうやら、溢れてきたようだ。
「スカートを俺の頭にかぶせて」
　薄暗いスカートの中で見る啓子の下半身、それは、なんとも卑猥な眺めだった。
　指で、クロッチの部分を横にずらしてオ○ンコを露わにすると、クリトリスを舐めあげる。太股が震え、喘ぎ声が聞こえる。
　啓子は、いったい、どんな顔でカメラと対峙しているのだろう。あとで、ビデオを見るのが楽しみだ。そんなことを考えながら、舐め続け、両手で太股の感触を楽しんでいると口の周りは彼女の愛液でベトベトになっていた。
　うしろに回り込み、こんどは尻穴を舐めてやる。喘いでいる啓子の声がひときわ高くなった。
　そのまま立ち上がって、服の上から両胸をまさぐり、なめらかな曲線を描く首筋にキスをする。頤をのけぞらせながら喘ぐ啓子。うしろから唇を奪う。上目遣いで、二人の姿を映しだしているテレビを見ると、他人のような俺自身と目があった。
　せっかく、ここまでセッティングをしたのだからと、俺は彼女から離れ、次のシーンに取りかかることにした。
　啓子をソファーに座らせピンクローターを渡す。
「まずは、ブラウスのボタンを外して。そう、こんどはローターのスイッチを入れて、乳首にあててごらん」
　ブーンと蜂の羽音のような音が響く。啓子のしなやかな指でつままれたローターがブラジャーの先端に触れるシーンを、上半身のアップで撮る。半開きの口、焦点が定まらないような潤んだ瞳が艶っぽい。
　ローターが頂の先端に触れるたび、腹筋がヒクッと収縮する。俺が何も言わないでいると、啓子は命令を守り、ひたすら乳首を責め続け喘いでいる。
「オーケー。じゃあ、ローターを置いて、こんどは上着とスカートを脱いでみようか」
　次の命令に期待してか、彼女は、いそいそと上着を脱ぐ。
　ガーターベルトは正解だった。クッションを枕にして左半身を下に、カメラの方を向いて横になった彼女の姿は映画のワンシーンのようだ。ミュールを履かせたままの右足を左膝のうしろにおかせると、腰が正面を向き、さっき俺がずらしたショーツから陰毛が顔をのぞかせている。その姿をアップで足下から舐めるようにパンする。ブラジャーの肩紐が落ちて左の乳首がこぼれている。
「せっかく顔を出したんだから、ローターで可愛がってやれよ」
　啓子は、おとなしく命令に従い、ローターで乳首を弄んでいる。俺はソファーの背後に立ち、うしろの方から、車の中で使っていたバイブレーターをオ○ンコに突き刺した。
「ああ〜〜〜っ！」
　ひときわ高い声が部屋中に響く。ローターの突起部分がクリトリスにあたっていることを確認すると、スイッチを入れ、コントローラーを最強にした。
「あうっ！」
　ほとばしるように、喘ぎ声をあげる啓子の右手をバイブレーターへ導き、俺はカメラに戻った。
　数分後、ガクンガクンと腰を何度も突き出すようにして、彼女は絶頂を迎えた。アクメの表情をアップで撮り終えた俺は、放心状態の啓子を抱き上げ、ガラス戸の脇に敷いてあるシャギーマットの上に横たえ、カメラをそちら側に向けた。逆光に浮かび上がり、産毛までが光り輝いて、胸を上下させながら大きく息をしている彼女の姿が、モニターに映し出される。恥骨の盛り上がりがなだらかな丘のようで、また美しい。
「全部、脱ぐんだ！」
　横になったまま、のろのろとブラジャーのホックを外し、ストッキングを脱いで、一糸まとわぬ姿になった啓子は、まだ向こうの世界からは帰っていない様子だ。
　俺はカメラをガラス戸の方へ移動させ、この姿を舐めるようにビデオに収めてから、彼女をうつぶせにさせた。尻を持ち上げ、膝をつかせて脚を広げると、バックからオ○ンコと菊蕾が丸見えになった。太陽光線が、まだ少し開いている膣口の奥まで照らし出す。道具を入れたバッグから今日のために買った樹脂製のクスコを取り出す。オ○ンコをアップにしてカメラを固定すると、クスコをゆっくりと差し込む。レバーを握ると先端が開き、ピンク色に濡れ光る内襞が露わになった。
「なに？　なにしてるの？」
　初めての感覚に不安を覚えたらしい。
「道具を使って、啓子の奥の奥まで見ているところさ。子宮口までばっちり見えるぜ」
「あぁ‥‥そんな‥‥」
「ばっちり撮れてるから、あとで見せてやるよ。きれいだよ。啓子のオ○ンコ」
「そんな‥‥　いや‥‥」
　奥までのぞかれている羞恥のせいか、また蜜が溢れてきたようで、中の肉襞が蠢きながら光っている。ちょっとした悪戯を思いつき、ピンクローターのスイッチを入れクスコにあてる。
「ジ、ジ、ジ、ジ、ジッ」
　ローターの振動がクスコを伝わって奥まで届いたらしく、啓子は息を飲み、身体を震わせた。そのまま、ピンクローターをオ○ンコの中へ放り込む。
「いや、ダメ、感じるぅ‥‥」
　尻の穴が、キュッと閉じたり、開いたりする。この女は膣の奥でも感じてしまうようだ。
　バッグからアナルバイブを出す。これも新しく買ったものだ。直径二センチほどの真珠色の玉が数珠繋ぎになった形をしている。先端を舐めて湿らせてから、尻穴に押し入れると、プルンといった感じで最初の玉が沈んだ。
「あっ、なにそれ？」
　いつも使っているやつと違うことに気づいたらしい。玉がひとつ沈むたびに声を出して悶えるのがおもしろい。最後まで挿入してスイッチを入れる。
「いや！　いやぁ〜！」
　もちろん、ピンクローターは、あそこに入ったままだ。うしろと前の穴を、細かい振動で襲われた啓子はマットに顔をうずめながら悶えている。
　アナルバイブを抜いたり，差したりする。どうやら、抜くときの方が感じるらしい。穴のまわりに肉が盛り上がり、玉がひとつ出ると、大きな声をあげて悶えている。
「だめぇ〜！　死んじゃう〜！」
　そんなことを続けている内、彼女は腰をグラインドさせながら叫んだ。ものの三分ほどで、啓子は絶頂を迎えてしまった。
　くぼみがあるおかげで、手を離しても落ちないアナルバイブを見ると、スイッチのあるうしろの部分が、内部の動きを伝えヒクヒクと動いている。
　マットレスを握りしめて押し寄せる波にたえている様子を撮りながら、カメラを反対側に移動さ固定する。これで、彼女の表情が撮れる。
「さあ、カメラを見るんだ！」
　と命令して、服を脱いだ俺は、クスコとピンクローター、アナルバイブを引き抜いて、うしろから攻めたてた。
　パンッ、パンッ、パンッ、肉を打つ音がリズミカルに響き、啓子の喘ぎ声がだんだん高くなっていく。
　背中に電流が走るような感じがして、熱い固まりが息子の根本へ押し寄せ、俺はドクドクと精を放った。その熱さを感じた彼女も、長い一声を発して果てた。

　ぐったりしている啓子にグレープフルーツジュースを口移しで飲ませてやる。よほど喉が渇いていたらしく、ゴクリゴクリと飲み干すと、恐ろしく艶っぽい眼を俺に向ける。
「おいしい‥‥」
「もっと飲む？」
　コクンとうなずく彼女。
　また、口移しで飲ませる。そのあとは、むさぼるように唇を求め合った。啓子の方は臨戦態勢に入ったようだったが、俺の方は、まだ回復してない。
「ちょっと、ひと休みしよう」
　彼女を抱き上げ、ベッドに寝かせると、これまでに撮ったビデオをチェックする。もう、テープの残り時間も僅かになっていたので、いいタイミングだった。
　まずは車の中のシーン。路面の凸凹を乗り越えるとき、ノイズが入ったりするし、思いの外エンジン音を拾っているが、流れる景色や、その都度変わる光線の状況が味付けになってなかなかの出来だ。ただ、身体の線が見えない秋の服装なのが残念なところ。温かくなったら、キャミソールかなんかを着せて再挑戦することにしよう。
　この部屋で撮ったものは計算通り光りがまわって、肌の色や、微妙なトーンもしっかり再現されている。クスコで開いたオ○ンコの中もよく撮れている。不満があるとしたら、三脚を立てての撮影なのでアングルが固定されている点と、手持ちで撮影しているときには二人が入った絵が撮れないことだろうが、第三者に撮影を頼む気にもなれない。
　テレビに見入っていると、いつの間にか啓子が身をすり寄せるように隣に座ってきた。
「すごくきれいに撮れてるよ」
「もう‥‥　意地悪なんだから‥‥」
「こんどは風呂で撮ろうか？　ここのバスルームはすごくゴージャスだし」
　テープを入れ替えると、バスルームへ入る。ここも大理石貼りで、窓が二面あり十分明るい。本当は足のついたバスタブだったりするとムード満点なのだろうが、片側はジャグジー付きのバスタブ、もう一方はトイレと洗面台という贅沢といえば贅沢な作りだったので、まあ、文句はない。八畳ほどの広さで、撮影するスペースはたっぷりある。
　お湯をためながら啓子を呼ぶ。
「まずは湯船に浸かってるところを撮ろうか。もう、スッポンポンだし」
「エッチ」
　冗談を軽く受け流した啓子は俺の横をすり抜けて湯船に入る。ジャグジーのスイッチを入れると、細かい泡の水流が吹き出す。
「わぁー！　気持ちいい！」
　啓子がはしゃいでいる。カメラを構えている俺に向かって笑いながら水をかける振りをしたりする。この女が、こんなにうれしそうな顔をするのを初めて見た。そして、あまりに無防備な姿を無邪気にさらす彼女を見ていると、胸が苦しくなるような感情が押し寄せてきて、俺は戸惑ってしまった。しかし、そんな気持ちをかき消そうと、強い口調で命令する。
「ジャグジーの泡をオ○ンコにあてて」
「もう。エッチなんだから」
　軽く、俺を睨むと、啓子はなんのためらいもなく、ヒップを突きだして、あそこを吹き出し口の方へ向ける。
　ビデオを撮り始めてから、彼女は変わりつつある。それは、ビデオのせいなのか、外で会っているせいなのか、それとも彼女自身の何かが変わってきただけなのか、自問自答しながらビデオを撮り続ける。もしかしたら変わってきたのは俺なのかも知れないなどと考えながら。
「きゃあっ！　ちょっと強すぎるぅ」
　最初、そんなことを言って笑っていたのだが、次第に感じてきたらしく、眼を閉じてため息をついた。バスタブの縁をつかんでいる指先にも力が入っていく。俺は啓子の正面にまわり、頬を桜色に染めながら快感に酔う彼女の顔をアップで撮る。
「ああ‥‥　ねえ‥‥　お願い‥‥」
「なに？」
「来て‥‥　欲しいの‥‥」
　今まで、覚えていた違和感は、この、いつになく積極的な態度のせいなのか‥‥
　ふと、出発するときに浮かんだ「共犯者」という言葉が頭をよぎる。
「ちょっと待って」
　俺はベッドルームに三脚を取りに戻った。別に、こんなことをしないでも、そのまま抱いてしまっても良かったのだが、まだ、うまく気持ちの整理がつかず、何か別のことをしていないといられなかったのだ。
　バスルーム全体がフレームに入るようカメラをセットして、啓子をカメラの正面に立たせ、手にボディーソープをたっぷりつけると、俺は彼女の身体を背後から洗う。まずは、胸を揉みしだくように。手の中で弾けるように滑る乳房。指の間で固くなった乳首が踊る。
　首筋に唇をあて、そのまま背中まで舌を這わせる。
　啓子は口で大きく息をしはじめ、喘ぎ声ともため息ともつかぬ声を漏らす。
泡だらけになった手を、こんどは凹んだヘソのまわりに移動させ、さらに、その下へ。
「ああ‥‥　ダメェ‥‥」
　太股の内側を撫でるように洗っていると、とうとう、耐えられなくなってきたようだ。クルリと啓子の体を回すように、こちらへ向けキス。抱きしめると、彼女もそれに応えるように俺の身体に手を回してきた。
　弾力に富んだ乳房、息子にあたる下腹、ぴったりと合わさる肌の感覚に、俺は再び勃然としてくる。
ちょっと腰を落とし、両手で円を描くように、ゆっくりと尻の双丘を撫で回しながら、石鹸など構わず乳首を口に含む。舌先で乳首を転がし、軽く歯をあてて噛んだりすると、ギュッと尻に力が入る。右手の中指を尻の割れ目に沿って滑らせていくと、石鹸のぬめりのおかげで、第二関節までが尻穴の中へスルリと入った。
「ああ〜〜ん」
　啓子が甘い声をあげて悶える。
　しばらく、その体勢で愛撫を続けると、
「早くぅ‥‥　お願い‥‥　早く、ちょうだい‥‥」
　と、絶え絶えに、懇願する。
　その言葉を無視するように、俺は体を離し、横を向くとそそり立った息子を突き出した。
「まずは、口でやってもらおうか」
　啓子はひざまずき、両手で俺の息子を包むようにつかんでから、その先端を口に含んだ。
　カメラから見れば、二人の姿が、横の方からバッチリ撮れているはずだ。
　両手でしごくようにしながら、亀頭をなめ回すフェラチオは、俺が教えたやりかただ。ときどき、上目遣いに俺の方を見ながら、熱心にしゃぶっている。息子はどんどん硬度を増し、背筋に電流が走り始める。このままでは一分も持たないだろう。しかし、もっと啓子を喜ばせたかったし、同じ果てるなら、彼女の中の方がいい。
「もういい」
　俺は、腰を引いて、ふたたび、うしろから啓子を抱くと、カメラの方に向き直った。バスタブの縁に座って、彼女を抱き寄せ、足を開かせて、その間に両膝を割り込ませると息子を蜜壺へあてがう。啓子が腰を落とし、十分潤った蜜壺の中へ息子が収まった。
「あああ〜〜〜っ！」
　さんざん焦らされ、やっと、欲しいものを手に入れた啓子の声は絶叫に近かった。硬い大理石の床や壁面に、彼女の声がこだまする。
　俺は、右手の人差し指と中指の間でクリトリスをはさむようにして、小さく円を描くように愛撫する。さっき、彼女が自分を慰めていたときのやり方だ。そして、左手で乳房を包むようにして揉む。
「いやぁ〜っ！　そんなにしたら‥‥　いくぅ〜‥‥　あなたぁ〜、いっちゃう〜」
　それを聞いた俺は、指の動きを早くして、腰を浮かせ、突き上げるように責めたてた。
「ああ〜〜っ！　だめ〜っ！　もう‥‥　もう‥‥　いっちゃう〜！」
　膣の中がグウッと締まる。
「あ〜〜〜〜〜〜〜っ！」
　悲鳴のような高い叫びがバスルームに響きわたる。
　すばやく息子を抜いて、尻穴に突き立てる。ズブズブッという感じで根本まで入ってしまった。
「だめぇ〜〜〜〜〜っ！」
　ふたたび絶叫する啓子。
　崩れ落ちるように前のめりになって床に手をついた彼女を、うしろから激しく攻めたて、俺は尻の穴の中で果てた。
　三脚からカメラを外す。大理石の床に横たわり、ヒクン、ヒクンと痙攣する啓子を、俺はあらゆる角度から撮り続けた。やがて、のろのろと身を起こした彼女は、俺の方を向いて微笑む。その妖しい表情を見て、胸を締め付けられそうな、なんだか分からない感情がわき出るのを押さえることが出来ない。
　すでに、陽は傾き、外の光りはオレンジ色になりつつあった。
　録画をやめ、シャワーで丹念に啓子の身体を洗う。張りのある肌が、水を弾き、水滴が玉になってこぼれる。
　啓子を立ち上がらせ、一緒にバスタブに浸かると、唇を求め合った。
「もう、帰ろうか？」
　日帰りなら、という条件で彼女を連れ出したのだし、これ以上やったら、体力的に帰るのはつらい。いや、それ以上に、俺は満足してしまっていたのだ。
　ところが、啓子は、それに答えようとせず、何かを考え込むように黙り込んでしまった。
「あのね」
　やがて、決意したように彼女が切り出した。
「私をあなたのものにして欲しいの」
　一瞬、俺の息が止まる。目眩のようなものすら感じた。
　とうとう、ここまで来てしまった。でも、どうしろというのだ。しかし、しかし、それはさっきから俺が望んでいた答えではなかったか‥‥
「啓子。好きだよ」
　自問自答している間、俺は無意識に、そう答えてしまっていた。
　啓子は、俺にしがみつきながら、耳元でささやく。
「ロープで縛って。そして、あなたの好きなようにして欲しいの。あなたのものになりたい‥‥」
　強烈なストレートパンチのような愛の告白だった。この女は、何もかも捨てて、ここで一夜を過ごすつもりなのだろうか？
「あのね、これは言うまいと思っていたんだけど」
「なに？」
「真梨子さん、あなたと私がこうなる前から浮気しているのよ」
「えっ？」
　驚愕といっていい事実を突きつけられた割に、俺はそれほどショックを受けていないのが意外だった。
「料理教室の帰りに、よく迎えに来てる男の人がいて、変だなぁって思っていたんだけど」
「誰？　そいつ」
「一度、聞いたことあるんだけど、なんとかセミナーの人だって言ってた。私と一緒に帰ったあと、あなたの部屋で変なことしてたみたい」
　俺は合点がいった。それは、女房と、どうしても相容れない部分であったからだ。俺は精神世界になど、まったく関心が無く、結婚当初、女房はいつも不平を漏らしていたものだ。しかし、一年ほど前からは、その話題については何も言わなくなっていた。浮気が始まったのは、そのタイミングではなかったか？
「いつも、明るくって、こんなに素敵な旦那様がいながら、もったいないって思っていたの。だから、あなたに奪われたとき、本当はうれしかったの。あのときしていたオナニーだって、あなたが帰ってくるドアの音が聞こえたからなのよ」
　俺は、ただただ黙って聞くだけだったが、女房の浮気より、こっちの言葉の方に驚いてしまった。
「こんなことを言う私って悪い女でしょ？」
「‥‥」
「だから縛って」
　もう、拒む理由は何もなかった。

　風呂から上がった俺は、啓子の手足をベッドの四本の柱につないで、カメラを片手に考えつく限りの陵辱を加えた。バイブレーター、ピンクローター、アナルバイブ、クスコ、持ってきた道具すべてを駆使して、自分でもあきれるほどの残虐性を発揮して責めた。
　そして、その間中、啓子はなめらかに泣き続けた。
　もしかすると、それは、女房に対する復讐だったのかもしれない。あるいは、啓子が自分のために企んだ告白だったのか。しかし、行為の最中に、そんなことを考える余裕すらないほど、俺は啓子を責め尽くすことに夢中になっていた。
　そして、バッグの中から、最後まで使うのを躊躇していた浣腸を取り出し、フラフラになっている啓子を後ろ手に縛り上げ、腰を高く持ち上げて、尻穴に突き刺した。
　浣腸液を注入された彼女は狂ったように悶える。苦痛なのか、快感なのか、オ○ンコから愛液がしたたり落ちた。
　手を縛られたまま啓子はトイレに走る。苦悶の表情を浮かべると、次の瞬間、破裂音が響く。
　その一部始終を俺はビデオに収める。
　こっちを見つめる啓子の顔が微笑んでいるように見えた。その表情を見た途端、俺は、この女を名実ともに自分のものにしようと決意した。
「啓子、愛してるぞ！」
　そう叫んだ俺は、便器に縛られたまま座っている彼女を抱きしめていた。