籠女、籠女。籠の中の鳥は、いついつ、出やる？
　夜明けの晩に、鶴と亀がつぅべった。後ろの正面、だぁれ？

　僕は彼女の瞳を見て、衝撃を受けた。
　いや、つまらない表現はやめよう。素直に言う。
　僕は彼女を犯して犯して、壊したいほどに彼女に惚れてしまった。
　いや、壊したくなんかない。壊れないで欲しい。
　だが、壊してしまいそうなほどに惚れたのだ。

　格子の向こうで少女がうつむく。
　仕事仲間に誘われて、毎夜通う、舞や踊りの吉原遊郭も、今となってしまっては、僕の心に刺さるのは彼女の瞳と泣き声だけ。

　少女おすずは暗い表情だった。これでは売れない。
　酒を呑み、舞を眺め、踊りをはやして、一番下手だった少女に折檻をした。
　その下手な女がおすずだったから、折檻したのかもしれない。
　他の艶女ならば、女として、人として、僕は愛してあげられたのに、おすずのつぶらな瞳はいつでも逃げたいと訴えて、それが叶わない程に濡れて染まって深みが増す。

　おすずを膝に抱きかかえて、尻を丸出しにさせながら酒を呑み、鼓の代わりに尻を打つ。
　ぺしりとなって、舞妓は笑い、踊りが佳境に入れば真っ赤に染まった尻におすずの咽び泣きが重なった。

「平八はん。今宵のお供はどうなさいますおつもりですやろ？」
　紫色の襦袢を首元に覗かせて、僕を魅了するこの芸者をこれまで何度抱いただろうか。

　仕事が調子に乗り始め、技術を買われて城作りにまで参加すれば、先輩方に感謝を込めて酒を贈り、江戸流行りの茶菓子を贈り、感謝しきれないほどではあるが、贈られた言葉はただの一つ。
　俺が教えたことを１０人の若者に伝えるのがお前の恩返しだ。
　そう聞いて、若者を鍛えれば鍛える程、仕事は面白みを増し、仲間は増えて、金回りもよくなった。

　それでもと、先輩方と遊郭に通い、良い時は驕り、悪い時は御馳走になり、僕は人生を楽しんで輝かしい程の未来を喜んでいた。
　そして、一人の晩はこの少女を苛めては笑いものにして、山の色も染まる秋の夜、その少女の始めての客になった。

　芸者は一瞬、唖然として心の底に嫉妬だか怒りだかを抱いただろうに巧い者で、
「御酔狂でんな、今晩の平八はんは。ではあちきはここで失礼します。」
　華麗な捌きで身を起こし、僕の膝の鼓を置いて部屋を出る。

「やぁ、おすず。君は初めてなのだろう？怖がることはないよ。僕に任せておきなさい。」
　そうは言うものの、おすずを嬲って嬲って泣き叫ぶほどに、壊して壊して狂い死にするほどに、僕は犯したい欲情が瞳と腹の底に現れていた。
　膝の上に腹這いの少女は、真っ赤に腫れた尻をなでられながら、臍の辺りをこずいているものを知っては震えまなこに涙を溜めて、それが一層に、僕の欲情をこれでもかと昂ぶらせていた。

　二人きり、蝋の火消えて月明かり、尻をぺしりとはたくほど、毀れる小さなうめき声。

　少女の腫れた尻をなでながら、薄闇に酒を啜る。
　ひっくと泣いた声が耳に付き、そろそろ喜ばせてやろうかと、つまらぬ詩を吟じて笑う瞳はもののけの如しといったところか。

　膝に抱きかかえたまま尻から割れ目へと指を伸ばしていけば、さすがの少女も恥ずかしいのか怖いのか、後ろ手に腕を伸ばして恐れおののく。
「あぁ、可愛いね。おすず。良い反応だよ。うん、可愛い。」
　少女の尻の穴に指をかけて反応を懲らしめれば、大泣きに泣いて許しを請う少女を見下ろした。

　ごろんと投げ出して、布団に寝かしつけ、帯を解いて真裸にする。
　薄い明かりに薄い乳房の膨らみが陰を作り、割れ目を隠す指先の上から、これも薄い僅かな縮れ毛がはみ出していた。

　瞳は伏せて涙をこぼし、観念すればするほどになんて嬲り甲斐のある女。
　腹に指を這わせれば震えてよじる腰の蠢きに、僕は見境なくしゃぶりついた。
　大切な割れ目を隠す邪魔な手をのかし、唇と舌で吸い尽くす。
　逃げようとする腰を逃さじと腕を伸ばせば両肩を押さえつけた。

　じゅるじゅると涎をまぶして吸えば吸うほど少女は恐れて逃れようとする。
　嫌だ嫌だと泣いていたおすずもついに観念して耐える表情に涙を一筋こぼす頃に、僕の腕は膨らみ小さな乳房を嬲り、乳首に指先絡めて弾いて、涎と蜜に溢れる唇とあいまって、おすずは腰を柳のように揺らしながら、内より迸る雷鳴に驚き慌てて、腰をはねさせた。

　ぐぐぐと持ち上がる尻を両腕で押さえつけて、逃がさないぞとにたりと笑い、僕はおすずの蜜を啜って泣かせて啜り続けた。
　あぁ、なんて甘美な少女だろう。

　ビクビクと震えることしか出来なくなって、初めて棹を割れ目に沿わせる。
　気付いた少女は抵抗する余力もなく貫かれては激痛と官能に我をなくした。

　芸者の世界は悪夢のようで夢現。
　盗られた客に嫉妬して、嬲る指先、少女の割れ目。
「ねぇ、おすず。初めてのお客はんはどないでした？」
「おねえさん。お、おねがい。もう。」
「あらぁ、吉原のお勉強会でっしゃろ？もっと気持ちええなってええんよ。ほら。」
「あ、あ、許してぇ。おねえ・・あ・・・。」
「あらまぁ。お早いことで。そんなんじゃ毎晩の客取なんてできまへんで。ほらもう一回。」
「ああああ、やだ、やだ。許してぇ。うあっぁあああ。」
「駄目駄目。もう一回。こんどはここですやろ？どない？」
「ああああ。それだめえぇ。いやぁ。」

　明け方、少女を嬲りつくして、仕事に出かけて帰り道。
　女の薫りにムラと来てはあの少女を思い起こして耐まらなかった。
　あぁ、犯したい。あの少女を・・・、いっそ身請けしたい。
　だが、僕には妻子がいる。あぁ、どうすれば良い？

　迷いながらもその日は自粛して我が家へと戻る。
　小さな娘は大きな瞳で転がっていて、妻は主人の早い帰宅に頬を喜ばせてくれる。
　あぁ、こんな良い家庭を捨てられるものか。
　妻の色気と来たら花魁（おいらん）だってたまげるほどだ。

　娘を一人で遊ばせて、妻を奥間へ連れ込めば、驚きながらも喜び迎えてくれる。
　しゃぶれば知った味、美味、甘露、妖絶。
　溢れるほどに濡れてくれば、僕は溜まらず突き刺して、妻の艶気に遮二無二なった。
　あぁ、吉原なんぞに通う暇なんてあるもんか。
　掻き出しながら、突き入れながら、妻の内なる襞の滝を、登って降りて昇り尽くす。

　震える可愛い妻の頬に舌でぺろりと一舐めして、そのまま吸い付く唇は、涎を垂らす妻の唇をも嬲り者にしようとした。

　妻の鳴き声がくぐもる頃に僕の肉棹から吹き出る、白濁した情欲の臭いで妻の子宮を染める。

　僕はどうすれば良い。愛する妻と娘、そして吉原のおすず。
　迷えば迷うほど、道は複雑だった。
　吉原へ行けば、おすずは逃げ出したいほど僕を恐れて僕を欲情させる。
　家へ帰れば、妻は愛らしい瞳と妖しい唇で僕を誘う。

　月日は過ぎて、おすずを抱いては嬲りつくし、妻には二人目の子が腹に。
　妻と交われない分だけおすずを抱きに通い、ある日、おすずが店から逃げ出した。
　酒を呑みながら、おすずを嬲り、舞妓を舞わせて女の前で震えるおすず。

　笑う舞妓に嬲る男。
　舞妓が帰り、その後、夜明けまで嬲り者にされて、狂いそうな程に震えた後でおすずが見たのは、絶望。
　人生の晩だった。朝は来ない。きっと来ない。
　おすずはとうとう逃げ出した。

　はだけた着物の前を掻き抱きながら、裸足で走る女を僕は必死で追う。

　嫌だ。嫌だ。こんなの嫌だ。
　お母ちゃん。お父ちゃん。お姉ちゃん。助けて。
　ざくざくと土を蹴りながら走って、足の裏が痛い。
　でも、止りたくない。怖い。走って。息が苦しい。でも走って。

　疲れて勢い落ちた頃、後ろから追い来る足音を聞く。
　嫌だ。逃げないと。逃げないと。誰？誰なの？振り向く暇もない。
　足が痛い。木の枝が当たって体中も痛い。

　ざくざくと追いかけてくる足音。
　怖い、怖い。お店の人？あの人？怖い。

　山の中まで逃げ込んで、泥と枯葉に滑りながら走っては四つん這いになり、四つん這いになっては走って、逃げた。

　ガクリと膝が落ちて白い襦袢を鶴翼に広げて倒れれば、後ろから抱きつかれ、長く首を伸ばした亀頭が子宮の奥にぶつかった。
　やっぱりあの人だ・・。こ、こんなところでも、嫌だ。嫌なのに・・・。

　山奥に叫び声が木霊しても、獣の声か人の声か、山人でもなければわからない。

　日が昇るまで後ろの男は腰を振り、疲れ果てて突かれ果てて、あぁ、気持ち良い。
　私は追われて犯されて欲しがられて・・・、あぁ気持ち良い。
　誰なの？私を欲してくれているのは？アハハ。

　・・・後ろの正面・・・だぁ〜れ？

完