（18）

　田所は麻美の髪を掴んだまま、その表情と三島とを交互に眺め「ククククッ…」とほくそ笑む。

「それじゃあ、奥さん…旦那の前で、はっきりと言ってみな？…奥さんが心の底から望んでいる事をなッ…」

　そう言うと田所は、踏み付けていたドレスの裾を離し、再び麻美の隣りに腰を下ろす。そうして耳元に唇を近づけ、生暖かい息を耳孔へと吹きつける。

「ハゥッ！…ァァアァッ…」

　たったそれだけの刺激で、麻美の背筋にはゾクゾクとした悦楽が駆け上がり、グググッと背中を反り返らせてしまう。

「ほら…言ってみな？」

　田所とは反対の隣りへと腰を下ろした大男の声が、耳孔へと粘つくような吐息と共に流れ込む。

「ヒウゥッ！…そ、そんなッ……そんな…恥ずかしいこと…い、言えな…ッ…」

　それは無意識のうちに零れた麻美の言葉であった。しかし、それを聞いた男たちは
「ヒャハハハッ！」と声を上げて大笑いする。

「クククッ…聞いたか恭二…そんな恥ずかしいことだってよ…」

　田所は麻美の髪の毛を掴み上げたまま、大男へと声を掛ける。そして再び麻美の表情を覗き込み。

「奥さん、あんたが望んでいることは…そんなに恥ずかしいことなのか？あ？」

　ニヤニヤと嘲るように言う田所の声に、自分の発した言葉の淫らさに初めて気が付く麻美であった。

「アッ…い、いえ…そ、そんな…そんなの…じゃ…」

　懸命に取り繕おうとする麻美の耳孔へと、再び大男が唇を近づける。

「クククッ…言い訳はいいんだよ…遂に奥さんの淫らな願望が露になったってわけだ？」

　大男の言葉に、「そ…そんなことッ…」と言葉を漏らす麻美であるが、田所がもう片方の耳孔へと息を吹き付ければ「ヒウンッ…ッ！」と首を仰け反らせ、言葉を続けることはできない。

「どうした、奥さん？…そんなに身体をビクビクさせてよぉ…ほら、言ってみな？…奥さんの、恥ずかしい願望をな…」

　田所がそう囁けば、二人の男は息もピッタリに麻美の耳孔を舐め上げる。

「クウゥンッ！…ウッ、クウゥゥッ…ッ…フウゥンッ！」

　耳だけである。既に全身の性感帯を剥き出しにされ、その一つ一つまでもを発情させられた麻美の肉体は、耳を舐められただけで、信じられないほどの快楽を味合わされてしまう。。

　懸命に声を抑えようと唇を閉じ合わせても、零れ出る喘ぎは押さえる事はできない。Ｍ字開脚の恰好で縛り付けられた肉体の、背筋はギュンッ…と反り返りビクンビクンと震え、熟れ腰は自然と浮き上がり、大きく広げられたその股間をクイッ、クイッ…と突き出してしまう。

「ウグググウゥゥッ！…グッ！グウウウゥゥッ！！」

　突然、下の方から呻き声が聞こえる。それは、ソファーの前の絨毯に放り出された三島のものであった。

「クククッ…どうだい三島さん？…目の前で最愛の女房が嬲られる気分は…たまにゃぁいいもんだろうが？」

「グウッ！…ウググウゥッ！！」

　蔑み、からかうような田所の言葉に、三島は精一杯の視線で睨みを返す。懸命に何かを言おうとしているようであるが、猿轡を噛まされた口からは悲痛な呻き声しか聞こえない。

　そんな三島の肩口を大男が踏み付ける。

「うるせえな…てめえは黙って見てりゃあいいんだよッ…」

　大きな脚に押し潰され「グググッ…」と唸る三島の姿が、仰け反った麻美の視界の隅に入る。
　
「クウゥッ…や、やめてッ…ッッウンンッ…ゥゥッ…しゅ、主人に…酷いことは…ッ…」

　ゾクゾクと肉体を蹂躙するするような快楽に苛まれながらも、麻美は懸命に夫を気遣う。

　もはや限界に達しているはずの麻美のそんな姿は、陵辱者達に崇高な女神を連想させた。そして、そんな神秘的にまで気高い女が、今から味合わされるであろう倒錯した快楽に溺れていく姿を想像するだけで、得も言えぬ興奮を覚えてしまうのだ。

「ククッ…旦那の心配をしてる暇なんかねえんじゃねえのか？あ？…奥さんこそ、もうどうにかなっちまいそうなんだろ？」

　田所が言いながら、耳孔へと舌先を指し込みヌルリと舐め上げる。

「ハゥウッ！…ウンッ…イッ…ィィァアアッ…」

　耳の穴から脳みそまで嬲られるような感覚に、麻美の肉体がビクビクと戦慄く。

「それとも…旦那の目の前で嬲られるほうが、興奮も倍増しちまうか？…ククククッ
…」

　耳孔を舐め上げながら続ける田所の言葉に、麻美は頭を振って抵抗しようと試みるが、髪の毛をガッチリと掴み上げられていてはそれも侭ならない。その上、今度は逆の耳へと大男が舌先を伸ばして、ヌメヌメと舐め回してくるのだ。

「ヒイッ！…ハッ…アアアァァッ！」

　Ｍ字開脚にガッチリと拘束された麻美の肉体がしなるようにのた打ち、拘束した縄とソファーがギシギシと軋みを上げる。

「クククッ…奥さん…あんたマゾなんだろ？…やっぱ、旦那の前で嬲られる方が、興奮しちまうのか？」

「もっともっとヨガリ狂うところを…旦那に見てもらいてえんだろ？」

　大男が舌先で耳孔を穿るように言えば、田所が耳孔へと唾液をまぶすように続ける。

「ハアッ！…そ、そんなッ！…アッ…アアッ…アアアアッ！…イッ…イヤアァッ！」

　頭を押さえ付けられたまま、両側から挟み付けられるようにして耳孔を責め嬲られる麻美の表情は、苦悶と快楽の狭間で悶絶する様をまざまざと見せ付けていた。

――マゾなんだろ？・興奮しちまうのか？

（アアアッ！…ち、違うッ！…そ、そんなことッ…）

――ヨガリ狂うところを、旦那に見てもらいてえんだろ？

（ハアァッ！…そ、そんなのッ！…だ、駄目ぇッ！…アアアッ！…イ、イヤァッ！）

　男達の言葉が思考を蹂躙するように、麻美の頭の中で這いずり回る。その間にも、男達の舌先は耳孔の奥にまで差し込まれ、ジュルジュルと言う卑猥な音と共に麻美の脳髄を蕩けさせる。

　男達は麻美の耳以外には触れていない。しかし、それだけでも今の麻美の肉体は途方もない悦楽を感じているのだ。

　もし今、他の場所を触られでもしたら――そんな思いが麻美の脳裏をよぎる。

（アアアッ…だ、駄目ぇッ…そ、そんなのぉッ…）

　もし今、疼き続けるバストを捏ね回されたら。もし今、蕩けきった股間を弄られたら…そうなればどうなってしまうのか、性経験の少ない麻美でも如実に想像ができた。

　夫の目の前で、陵辱者にバストと股間を弄られ快楽に乱れ狂う己の姿が、麻美の頭の中でイメージされる。

「イ…ヤァ…ァアアッ…」

　イメージの中の己の姿に煽られた欲情と肉体の疼きが、声となって麻美の口から零れ落ちた。
　
（ハアアァァッ！…だ、駄目よッ！…そんなこと…考えちゃッ！）

　しかし、一度イメージしてしまった淫らな姿と快楽は、決して麻美の思考から消えようとはしない。それどころか、更なる欲情のスパイスとなり、焦燥感を募らせる疼きとなり、麻美の精神を逆撫でるように膨れ上がっていくのだ。

「ア…アア…ハアァァッ…」

　頭の中で膨れ上がる淫らな妄想と快楽に、麻美の肉体はビクビクと戦慄き、ワナワナと震える唇からは熱く甘い吐息が漏れる。

（アアアンッ…駄目ッ…だ、駄目なの…に…ッ…）

　焦らしに焦らされて、欲情を横溢させられてしまった肉体は、妄想の中の愛撫だけで蕩けてしまいそうだった。しかし、所詮は妄想の中の愛撫である。昂ぶるばかりの焦燥感を癒してくれる事は決してないのだ。

　いつ己の身体に伸びてくるか判らない男達の愛撫――しかしそれは、今この瞬間にも起きることかもしれない。そんな考えが過ぎった途端、麻美の全身にゾクリとした寒気が…いや、寒気にも似た悦楽が駆け巡る。

　もしかしたら、今すぐにでも触られるかも知れない。男達の手が、今すぐにでもバストを捏ね回し、股間を弄ってくるかもしれない――そう思えば思うほど、破裂するほどに張り詰めた乳頭はズキズキと疼きを強め、剥き出しにされた秘芯はドクンドクンと脈打ち、濡れ塗れた肉襞をビクビクと蠢かせてしまうのだ。

　それはまるで、焦らし抜かれた性感帯が一刻も早く刺激を求めているような…そんな淫らな反応であった。

「クッ…ア…アッ…アアッ！」

　肉体の反応と共に、拘束された麻美の身体はビクンビクンと仰け反り、どうにも堪らないと言った感じの喘ぎが零れる。

（ハアアッ…だ、駄目ぇッ！…こ、こんなの…こんなのッ…アハアァァッ！…アアッ！…で…でも…クウゥッ…も…もう…）

　限界を超えた肉の欲求に、麻美の精神は陥落寸前であった。狂うほどの焦燥感にこれ以上耐え続けることはもはや不可能であろうと、麻美自身認めるしか術がなかった。

　麻美は喉を突き出すように首を反り返らせたまま、身を揉むように肩幅を縮込ませ、熟れ腰をクイッ、クイッ…と突上げる。

「ハアッ…アアッ…アアッ…ァンンッ…」

　淫らな痴態を晒す麻美の全身が、ヒクヒクヒクヒク…と小刻みに痙攣する。もはや全身に横溢しきった欲情が、毛穴の一つ一つから滲み出すような感覚を麻美は味わっていた。

（も…もう…駄目ッ…このままじゃ…本当に…狂っちゃうッ…）

　麻美は「クゥウンッ！」と、鼻に掛かったような甘い喘ぎ声を上げると、ワナワナと震える唇を開く。

「…ァァアッ……も…もうッ…おね…が…い…です…ゥッ…も…もう…どう…に…か…ッ…」

　しかし――それは遂に麻美が屈服の言葉を吐こうとした瞬間の出来事であった。

――ボゴッ！！

　柔らかな物に何かを激しく叩き込むような音。そしてその後に続く悲痛な呻き声…

「グゴオオォォォッ！！…ゴフッ！…グウウウッ！」

　大男が、三島の鳩尾を蹴り上げたのだ。

「グゴッ！…グウゥッ！…ハグッ…グッ…ウグゥゥッ……」

　嘔吐でもするような三島の呻き声がリビングに響く。

「…………！！」

　焦燥と快楽に蕩けきっていた麻美の表情が、途端に青褪める。咄嗟に夫へと向けた視線の先では、雁字搦めに縛り上げられた夫が、蹴られたところを押さえる事もできずにのた打ち廻っているのだ。

「嫌ぁぁッ！！…あ、あなたッ！…あなたッ！」

　今度は麻美の悲痛な叫び声が木霊する。

　縛り付けられて身動きのできない身体を、それでも懸命に揺すりながら、少しでも夫の元へと近寄ろうとする。

「ヒググゥゥッ…ヒイッ…ヒィッ………ッ……グゥッ…ヒッ……ィィィィ…ッ……ヒゥゥゥ…」

　窒息しかけているような様子で、白目を剥きながら絨毯の上でのた打ち回る夫を見て、麻美は拘束された不自由な身体をガタガタと揺らす。

「ど、どうしてッ！…そんな酷い事ッ！…アアッ…あなたッ…あなたぁッ！」

　拘束した縄とソファーをギシギシと軋ませながら、麻美は夫へと身体を乗り出そうとする。

「おい恭二…ちったあ手加減してやれよ…」

「ヘヘッ…これでもかなり手加減してるつもりなんすけどねぇ…」

　苦しそうにのた打つ三島と、それを悲痛な表情で気遣う麻美をよそに、男たちはヘラヘラとした笑みを浮かべながら会話を交わす。

「お願いッ！…もうやめてッ！…もう…これ以上酷い事をあの人にしないでッ！」

　発情しきった肉体を疼かせながらも、懸命に夫の安否を気遣う美貌の人妻――そんな麻美の様子を、二人の男はニヤニヤとした表情のまま見遣る。

「クククッ…そんな酷い男に身体を弄られて…気分を出してるのは、何処のどいつなんだ？」

　田所の言葉に麻美はキッ…と睨み付けるような視線を返す。

「そ、そんなことありませんッ！…誰が…誰があなた達なんかにッ！」

　麻美の眼差しと言葉からは、もうこれ以上の醜態は見せるわけにはいかないと言う強い意志が覗える。それでも男達は余裕タップリの笑みを浮かべたまま麻美の表情を覗う。

「クククッ…さっきは何て言い掛けてたんだ？あ？…もうどうにか…とかって言ってなかったか？」

　田所の言葉に麻美の表情が曇る。つい先ほどまでの己の醜態を思い出し、カッと頬を赤らめてしまう。それでも麻美は気を取り直したように再び田所を睨み付け口を開く。

「も、もうやめてって言いたかっただけよ！…別に、あなた達の考えているような事を言うつもりはないわ！」

　声を荒げる麻美の口調には、男たちに対する憎悪が見て取れた。こんな卑劣な男達に絶対屈する事はできないと言う強い意志が、メラメラと燃え上がっているようだ。

「ククッ…まあいい…まだ時間はタップリあるんだ…じっくりと、奥さんの身体に聞いてみる事にしようか…」

　田所はそう言うと大男へと目配せをし、ニヤリとほくそ笑む。

「勝手にすればいいわ！」

　麻美がそう言い捨てたと同時であった。両側から伸びる男達の手が、両のバストの膨らみをグイッ…と掴み上げたのだ。

「…ヒィッ！…ッッハゥンッ！」

　不意に襲いくるバストへの力強い刺激に、呆気なく麻美の身体は仰け反り、声が漏れる。

　丹念に性感を掘り起こされ剥き出しにされた挙句に、殆ど強い刺激を与えられないまま執拗に焦らし抜かれたバストへの刺激であった。膨らみの内側に横溢しきった欲情の塊を捏ねるように揉み解される感覚は、麻美が想像していた以上に強烈な快楽をもたらすのだ。

「クゥッ…ッ…ウ…ア…アッ…ハァッ…ァッ…ァァアアッ！」

　男達の掌が衣服越しの膨らみをグニャリグニャリと揉み解す度に、麻美の口からは堪えきれない喘ぎが零れる。

（アアッ！…だ、駄目ぇ！…こ、こんな卑劣な男達に…感じたりしちゃ！…駄目よッ！…た、耐えるのよッ！）

　愛する夫に残酷な仕打ちをした男達の手により快楽を感じさせられる事など、決してあってはならない事なのだ。夫のためにも、そして自分のためにも、こんな男達の思いどおりになってはなるものかと心に誓う。。

　しかし、現実は麻美の考える以上に残酷であった。

　グニャグニャと形を変えるように強く揉み込まれるバストの膨らみからは、麻美の想像を遥に凌ぐ快楽が湧き上がってくる。はちきれんばかりに横溢しきった欲情が押し潰され、揉みくちゃにされる度に、蕩けゆく官能がジワリと滲み出してしまうような悦楽を味合わされてしまう。

「アッ…ハアァァッ…ッッ…クウゥッ…」

　いくら声を漏らすまいと思ってみても、震える唇はワナワナと開き、熱いと息を零してしまう。拘束された身体はビクビクと戦慄き、知らず知らずのうちに背筋を仰け反らせ、弄られるバストを突き出してしまうのだ。

　突き出された膨らみの頂点では、更に硬度を増した乳頭がドレスの生地を突き破らんばかりに押し上げている。膨らみを搾り上げるように押し潰されれば、蕩けた欲情が快楽の渦となり先端へと押し寄せる。

――ジュワリ…

　乳頭に張り付くドレスの生地が更に湿り気を帯びてゆく感覚に、麻美は「ヒッ…！」と声を上げる。搾り出されるように分泌した乳汁が生地を濡らし、纏わり付くようにして乳首を刺激するのだ。

「アッ…アアアッ…」

　乳汁を分泌するほどにまで発情させられた乳首は熱を孕んだようにズキズキと疼き、そこを中心にしてゾクゾクと寒気までもを催すような快楽の渦が、波紋のように全身に広がる。

　バストを揉み解されるだけで、麻美は背筋から首までもをギュンッ…と仰け反らせ、広げられた股間の中心をグイグイと突き出してしまう。身体はビクビクと痙攣するように震え、脛と足の甲が一直線になるまでに伸ばされたつま先は、与えられる快楽に内側へとギュッと丸め込まれている。

　その姿は、全身で快楽を受け止める牝の姿に他ならなかった。麻美自身は気付いていないにしても、麻美の肉体は確実に淫らな物へと作り返られつつあるのだ。

「奥さんよぉ…さっきの威勢はどうしたんだ？」

　淫らに悶えゆく麻美の姿をニヤニヤと眺めていた田所が、不意に耳元で囁く。

「………ックゥッ…ッッ…」

　身体を震わせて身悶える麻美は、眉を顰めて懸命に表情を取り繕うのが精一杯と言った様子で、何も言葉を返す事ができない。

「ククッ…旦那が見てるって言うのによぉ…気持ちよくってしかたがねえって感じだな？」

　麻美のバストをグニャグニャと捏ね回しながら、嘲るような口調で田所が続ける。

「クッ…ア…アアッ…い、言わない…でぇ…ッ…」

　やっとのことでそれだけを口にする麻美に、今度は大男が囁きかける。

「ククッ…気持ちいいってえのを、もう否定しねのか？…そりゃあ、旦那がかわいそ過ぎるってもんだぜ？」

　大男は空いた方の手で麻美の髪の毛を掴むと、仰け反らせた麻美の顔を強引に三島へと向ける。

　三島はと言えば、未だに苦しそうに大きく息をしながら、絨毯に顔を埋めるようにして喘いでいる。

「ア…アアッ…あ、あなたッ…」

　苦しそうな夫の姿を見れば、否応なしに麻美の理性は引きずり起こされる。

「また…蹴り上げてやろうか？」

　大男はほくそ笑みながら麻美に告げると、爪先を三島の鳩尾へと宛がいチョンチョンと突付いてみせる。それと同時に、息苦しそうに深い呼吸を繰り返す三島の身体がビクリと震え上がる。

「や、やめてぇッ！…も、もう…酷い事はしないでぇッ！」

　麻美が悲痛な叫び声を上げるのと同時に、二人の男は更に力強くバストの膨らみを掴み上げる。

「ヒウゥッ！！…アッ！…そ、そんなッ！」

　男達の手は、バストの膨らみの根元を鷲掴みにすると、まるで搾乳でもするように先端へと向かって搾り上げる。

「アッ！…アッ！…ヒィッ！…ハァァンッ！」

　溜まりに堪った欲情の疼きがまるで濁流のように先端へと押し寄せ、乳頭から滲み出る乳汁は更に濃さを増し、ドレスの生地をネットリと濡らしていく。

「ハアッ！…アッ！…ハアンッ！…イッ…イ…イッ…イァァッ！」

　夫へと顔を向けさせられたままの麻美の肉体が、まるで捻じ切れるようにくねる。息苦しそうに苦しむ夫の姿を目の当たりにしながら、襲いくる快楽のうねりを懸命に押さえ込もうとするのであるが、ここまで執拗に性感を剥き出しにされてしまえば、もはやそれは無理であった。

（アアッ！…駄目ッ！…駄目ぇッ！…も、もう…これ以上感じちゃ！…駄目えぇッ！）

　終わることなく続けられる男達の執拗な責め苦に、強引に引きずり起こされる麻美の理性が悲鳴を上げる。

　それでも男達は、苦悶の表情を浮かべ身悶える麻美の姿をニヤニヤと見遣りながら、バストの膨らみを更に先端へと搾り上げていく。

「ヒイッ！…イッ！…ハアァッ！」

　膨らみをギュンッ…と先端へと搾り上げられれば、全ての欲情を詰め込まれたかのような乳頭が破裂せんばかりに膨れ上がる。

　男達の親指と人差し指で作る丸い輪から、モッコリと盛り上がった乳肉がはみ出し、乳輪はまるで小さな肉まんのようにドレスの生地を膨らませている。その先端の乳首は、これ以上無理と言うほどにコチコチに凝り固まり、ドレス越しにも判るようにビクビクと戦慄いている。そして、搾り出される粘っこい乳汁を生地の隙間からジワリと滲み出してしまうのだ。

「クククッ…どうだ奥さん？…もう、気持ちよくって気持ちよくって、仕方がねえんだろ？…我慢せずに、認めちまえよ？」

「もうたまんねえんだろ？…こんなに淫らに乳首発情させちまって…早くどうにかしてもらいてえんだろ？」

　男達はギュッと乳頭を搾り出したまま膨らみだけをブルブルと揺さぶり、麻美の焦燥感を煽る。

（アアアッ！…も、もうッ…どうにか…してぇッ…クウゥッ…も、もうッ…たまらないッ！）

　麻美は声には出さぬまでも、胸元を男達の手に押し付けるように突き出し、少しでも刺激を与えて貰えるように膨らみをブルンブルンと揺すってみせる。

「クククッ…」

　男達はニヤリと表情を歪めるともう片方の指先で、ドレス越しに搾り出された乳輪のギリギリを、まあるくなぞり始める。

「ヒアッ！！…アッ！…ハアアァッ！」

　ひときわ大きく、拘束された麻美の肉体が仰け反るように弾み、縄とソファーをギシギシと軋ませる。

「アアアッ！…お、お願いッ！…も…もうッ…は、はやくぅッ！」

　夫の存在など忘れるほどの焦燥と快楽のうねりに、麻美は肉体を痙攣させながら悲鳴にも近い声を迸らせる。

　しかし、男達はまたしても麻美の身体から全ての愛撫を取り止めてしまうのだ。

「イヤッ！…アッ…アアッ！…ど、どうしてぇッ！」

　痛みさえも伴うような焦燥の疼きに、麻美は拘束された肉体を仰け反らせ、バストの膨らみをブルンブルンと突き出しながら訴える。

　と、その時…大男が三島の後頭部をグニャリと踏み付ける。

「ウグゥッ…ググォォッ…」

　絨毯に埋め込まれるように顔を押し付けられた三島が、苦し気な声を上げる。

　麻美は襲いくる焦燥の疼きに全身をビクビクと震わせながらも、苦悶する夫の姿を見せ付けられればそれを気遣わないわけにはいかない。

「アッ…アアアッ…あなたッ…あなたぁッ…」

　もはや麻美の思考は混乱していた。募りに募る快楽と焦燥感に、我を忘れて流されてしまおうとすれば、強制的に理性を叩き起こされてしまう。その行為を何度も繰り返されれば、理性を失うことなく、限界を超えた快楽と焦燥を肉体に蓄積させられてしまうのだ。

「や…やめ…ッッフンッ…やめ…ッッ…て…ぇッ…ンンッ…」

　催淫剤と執拗な焦らし責めにより極限まで発情させられてしまった麻美の肉体は、どうしようもないほどに刺激を渇望していた。それでも目の前でいたぶられる夫の事を想えば、絶対に屈するわけにはいかないと言う思いが蘇ってくるのだ。それは麻美にとって、無限に続く色地獄の螺旋のようであった。

「クククッ…恭二のやつも、酷えことするなぁ？…見てみな…こんなヤクザ男に踏み付けられて…あんたの旦那も、哀れなもんだぜ…」

　限界を超えた焦燥感を苦悶の表情で耐える麻美に、田所が蔑むように囁きかける。大男はと言えば田所の声に合わせるように、未だに三島の後頭部をグニャグニャと踏み付けている。

「こんな酷え男達に嬲られてるって言うのによぉ…奥さんは感じて感じて仕方がねえみてえだな？…あ？」

　嘲け笑う田所の言葉に、麻美は渾身の力を振り絞って睨み付けるような視線を返す。

「…そ…そんなこと…ありませんッ…ウッ…ッ…か、感じてる…な…なんてッ…ッンンッ…」

　男達の卓越した淫戯に、麻美の肉体がどうしようもないほどに快楽を感じていることは誰の目から見ても明らかである。しかし、目の前で最愛の夫をいたぶる相手にそれを認めてしまうことはできなかった。

　ここまで追い詰められても尚、快楽を認めることを拒む麻美に田所はニヤニヤとした視線をかえす。

「ククッ…そんな事言ってもなあ…見てみな？奥さんの身体…全身から快楽が溢れてるみてえだぜ？」

　そう言うと、麻美の視線を自らの肉体に促す。

「…………！！…アッ！…アアァッ…」

　まず麻身の目に映ったのは、淫らなほどに張り詰めたバストの膨らみであった。

　根元から縛り上げられたバストはドレスの生地をパンパンに押し上げ、欲情を物語るように一回りも二回りも大きく迫り出している。その先端では、乳輪が恥ずかしいほどに盛り上がり、想像もできないほどにそそり立った乳首がドレスの生地をビクビクと突上げているのだ。そしてその突起を中心に、見た目にも判るほどの粘着質な液体が布地をジットリと湿らせ、乳頭の色まで透けて見えそうなほどに、ベットリと張り付いているのである。

「アッ…アアアッ…」

　視界から入り込む己の肉体の淫らさが、更に麻美の官能を蕩けさせる。肉体の余りの変わりように視線を逸らしたくなるも、先ほどからジクジクと蕩けるような疼きを感じる下半身へと、自然と視線は移ってしまう。

「ヒッ！…アァッ…ヤァァッ…」

　自分で想像していたよりも遥に淫らな有り様に麻美の官能は揺さぶられ、ゾクゾクとした甘い疼きを背筋へと駆け上がらせる。釘付けになっていた視線は、仰け反る肉体の動きと共に、ハッと我に返ったように逸らされるのだった。

　Ｍ字に大きく割り裂かれた股間には、ゴールドのドレスが垂れ下がっている。普段なら滑らかにはためくような柔らかさを見せるドレスの生地であるが、今はどうだろう。柔らかい生地はベットリと水分を含み、股間を中心に大きな濡れ染みを広げていた。

　濡れた薄い生地は広げられた股間へとベッタリと張り付き、その下に隠されている黒いショーツの色も形もはっきりと浮き上がらせている。皺を作るように張り付いた布地は、その下のショーツまでもがグショグショに濡れ塗れている事を如実に物語っていた。

　股間の中心部は一際濡れが酷く、ドレスとショーツの二枚の布地越しにも、はっきりとその下の秘肉の形を浮き上がらせている。水分を含みきった二枚の布は、肉襞の山と谷にベットリと張り付き、その上の秘芯までもをプックリと形作っている。

「クククッ…奥さんよぉ…これでも、感じてねえって言い切れるのか？」

　余りにも淫らに変貌した己の姿に視線を逸らしながら、それでも湧き上がる官能の疼きをドロドロと蕩けさせ、拘束された肉体をヒクヒクと震えさせる麻美の耳元で田所が囁く。

「もう、何処も彼処も発情してますって感じじゃねえか？あ？」

　耳を舐めるように囁く田所の唇から逃れようと、麻美は不自由な身体を捩る。

「……ンンッ…そ…そんな…ことッ…ッンッ…あ…ありま…せん…ッ…ンンンッ…」

　己の肉体がもはや快楽を隠しとおせる限度を超えるまでに淫らに変わり果てているのは、自分でも判りきっていた。しかし、それを言葉にして認めることはできなかった。

　目の前では、未だに大男の足に後頭部を踏み付けられた夫が、絨毯に顔をめり込ませるようにして喘いでいるのだ。

（クククッ…大した女だぜ…ここまで追い詰められても、未だに堕ちねえとはな…）

　田所は満足気な笑みを浮かべてほくそ笑むと、大男から踏み付けられたままの三島へと視線を移す。

「三島さんよぉ…あんたも幸せ者だぜ、これほどの女を嫁さんにもらって…だがな…」

　と、そこで一度言葉を切り、ニヤリとした笑みを三島へと送る。

「…あんたにゃ無理だぜ…これほどの女に、本当の快楽を教えてやるのはなぁ…ククククッ…」

　下品で卑猥な笑みを向ける田所へ、三島は怒りのこもった力強い視線をかえす。

「ウググゥウウゥッ…グウウゥゥッ…」

　懸命に搾り出すような呻き声を上げる三島であるが、猿轡を噛まされたままの状態では何も伝えることはできない。

　田所はそんな三島の様子をさも愉しげに見遣った後で、再び麻美へと視線を戻し。

「それじゃあ奥さん…俺たちが確かめてやるよ…奥さんがどれほど発情しちまったかを…素っ裸にひん剥いてなぁ…」

　田所の言葉に、麻美がギクリと身体を強張らせる。夫の目の前で、発情しきった裸体を晒すことなどできるはずもなかった。それも、夫を足蹴にするような卑劣な男達に弄られて発情させられてしまった裸体である。

「い、いやッ！…いやですッ！…そ、そんな…恥ずかしい事ッ…お、お願いッ…も、もう…許して…くだ…さい…」

　何を言っても無理だとは判っていた。それでも、懸命に哀願するしか麻美にはなかった。

「クククッ…そりゃあ無理な話しだぜ…奥さんは今日一日…俺達の言いなりになるしかないんだからな…」

　無情な田所の言葉であった。麻美は「アアアアッ…」と嗚咽を零しながら、しかしそれでも尚哀願を続ける。

「…お、お願いですッ…せ…せめて…夫の前だけでは…許して…くださいッ…」

　いくらお願いしたところで、悪魔のような男達がそれを受け入れてくれるはずはないであろう事は百も承知であった。この卑劣な男達は、夫の目の前で自分を慰み者にしようとしているのであろう。

　しかし、田所から返ってきた言葉は意外なものであった。

「そんなに言うんだったら…旦那には見せねえでおいてやるよ…」

　その言葉に、麻美は「エッ…？」と声を上げ、まるで何かを聞き間違えたように訝しげな表情を浮かべる。

「クククッ…旦那には見せないでいいって言ってるんだよッ…」

　田所は、自分の言った事が良く理解できないでいるような麻美へと念を押すように告げれば、大男へと視線を移しニヤリとほくそ笑む。

「おい恭二…旦那の目を塞いでやれ…」

　田所の指示を受けた大男も同じように卑猥な笑みを浮かべると、「へい…」と頷き返し鞄の中を弄る。

　取り出した物は、風呂敷のような形をした黒い布であった。大男は、おもむろにそれを三島の顔へと巻き付ける。猿轡の噛まされた口から上を、スッポリと覆うように幾重にも幾重にも巻き付け、後頭部できつく結ぶ。

　完全に視界を奪われた三島が、「ウグググッ…」と声を漏らしながらもがく。

「ククッ…これで旦那からは…奥さんの姿が全く見えなくなったって訳だ…」

　田所は麻美へとニヤけた表情で告げると、再び大男へと指示を出す。

「よ〜し、恭二…旦那は部屋の隅にでも放っておけ…とりあえず、目の届くところになッ…」

　大男は雁字搦めに縛られた三島の足首を掴み上げると、ズルズルと引き摺るようにして部屋の隅へと放り投げる。

　壁に背中を打ち付けた三島が「ウググググッ…」と苦しげな呻き声を漏らしたが、そんな事にはお構いなしと言った様子で、二人の男は麻美へとにじり寄る。

「奥さん、知ってるか？…人間の防衛本能ってぇやつをよぉ？」

　田所はゆっくりとした口調で麻美に囁き掛ける。

「視界を奪われても…どうにかして周りの状況を確認しようとする…そうすると、聴覚が急激に敏感になっちまうんだぜ？」

　そう続ければ、卑猥な笑みを浮かべながら麻美の表情を覗き込み、チラリと三島へと視線を流す。

「まあ、旦那のところまでは少し距離があるからな…小声で話す分にゃ、はっきりとは聞き取れねえだろうけどな…ククククッ…」

　田所がそう言い終えると、次に大男が麻美の耳元へと唇を寄せる。

「人間、目に見える物だけに頼ってると、そいつの上っ面だけしか見えなくなっちまう…だがな、耳が敏感になってくると…声だけで相手が何を考えてるか判ってくるんだぜ？」

　大男の言葉に、麻美の身体がピクリと反応する。

「ククッ…声色ってやつぁ、人間の心の想いを如実に表すからなぁ…奥さんの恥ずかしい願望が旦那に悟られねえように、せいぜい頑張るんだな…」

「心臓の鼓動ですら、伝わっちまうかもなぁ？…もしかしたら、マ○汁の溢れ出す音も、聞こえちまうかもしれねえぜ？」

「ほら、耳を澄ましてみな？…何にもされてねえ今でも…奥さんのオマ○コがクチュクチュと淫らに蠢いてる音が聞こえるだろ？」

「ククッ…声だけじゃなく、ソファーの軋み具合などもな…それに、身体の反応までもが旦那に伝わっちまうぜ？…目で見るよりも、遥に明確にな…」

　薄ら笑いを浮かべながら告げる男達の言葉に、麻美の精神は震え上がった。

　視界を奪われた人間の聴覚が敏感になることは、普通に日常生活を送っていても感じる事がある。

　夜、ベッドに入った時に聞こえる遠くの物音。キッチンの蛇口から漏れる、ポトン…ポトン…と言う僅かな水音。木々の葉が風に揺れるカサカサと言う音。小さな側溝の僅かな流水の音。小さな虫の囀り。その虫たちの移動する羽音。足音。

　昼間の明るい生活の中では決して耳を傾ける事はない僅かな音でさえ、暗闇の中でははっきりと聞こえてくる。

　そして今、視界を奪われた夫は、全神経を聴覚に集中させて此方の様子に聞き耳を立てている筈である。

「アアアッ…そ、そんな…」

　聞き取れるか聞き取れないかほどのか細い声で呟く麻美の様子を、男達はニヤニヤと眺めながら

「さ〜て…それじゃあ今から…奥さんのドレスを引っ剥がして…身体の隅々まで調べてやるとするか…」

「クククッ…オッパイもオマ○コも…じっくりと調べてやるからな…覚悟しとけよ…」

　部屋の隅に放り出された三島に聞こえるように、わざと大きな声でゆっくりと告げる。

（クククッ…奥さんには、気が狂うほどの快楽を…そして旦那には、死にたくなるほどの絶望を味合わせてやるぜ…）

　田所がニヤリと表情を歪めれば、それを察したように大男も卑猥にほくそ笑む。

　男達の陵辱は、夫である三島をも巻き込み、更にヒートアップしようとしていた…

（つづく）