なにかの雑誌の対談で社会学者が、痴漢する輩は、人を恋することを忘れてしまった可哀相な人だ、と発言していた。ときめく心のある人は痴漢などしない、ということらしい。

　こいつは、馬鹿だと直樹は思った。
　現に直樹が、痴漢をはじめてしたのは、不倫相手とうまくいかなくり、苛ついていたときのことで、その相手と別れた今になっても、直樹は未だに彼女のことが忘れられなかった。

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『毎朝8時ぐらいの電車に乗っている奈美といいます。井の頭線で、渋谷から吉祥寺まで通っています。
　私は大学の非常勤講師で、出会いがまったくありません。
　この前痴漢されちゃって病み付きになっちゃっいました！
　誰か痴漢してくれませんか？
　髪の毛はセミロングで茶に染めています。
　それなりに容姿には自信があります。
　痴漢さん、よろしくお願いね』

　直樹は、ネットの痴漢掲示板でこんな書き込みを見つけ、何度かメールのやり取りをした後、その奈美という女性と私鉄の電車内で痴漢プレイの約束をとりつけた。

　直樹は喜び勇んでその日、電車に乗り込んだ。
　約束の電車に辿りつくまでには、まだ２度乗り換えなくてはならない。
　早くその女性と痴漢プレイをしたくてたまらなかったが、その前にとてもいいターゲットをみつけて、というか、ちょうどお触り出来る状況が舞込んできて、思わず手を伸ばして優しく愛撫してしまった。
　とっても、気持ちいい。
　脳天が痺れるようなこの感じがたまらないのだった。
　不倫相手と　別れてから更に痴漢することに拍車がかかったのかもしれなかった。
　恋する心を忘れたのではない。恋したいのだ。

　直樹の場合は、痴漢する際に女性器に直接触れたいという欲望はない。おっぱいもない。
　お尻は，物ではないが、いうなれば尻フェチだった。男には皆無の丸みを帯びたヒップラインに手を触れるとき、まさに至福の喜びを憶えた。

　触れるといっても、そこはかとなく優しくタッチするのみである。
　しかし、それが実にいいのだ。
　片手で、それこそ刷毛で刷くように、優しく柔らかいヒップラインをなぞるからこそ、ぞくぞくするような快感が全身を駆け抜けるのだった。
　むろん、そこには禁忌を冒しているという背徳的な、あるいは犯罪を犯しているという罪の意識が働いて、快感がいや増しているのかもしれなかったが、とにかく一度この痴漢プレイの虜になってしまったなら、容易にはこの地獄から抜け出せはしない。
　現行犯で、もし捕まったならば、地位も名誉も、職も失い、家族にすら見捨てられ、すべてが水泡に帰すということもわかっている。
　だが、わかっているけれども、朝のラッシュ時の電車に乗り込むと、そんなことはすべて瑣末なことに思えてしまう。常識は吹っ飛んでしまうのだ。
　人生のすべてを失うかもしれないのにもかかわらず、それでもやめる事が出来ない自分は、ほんとうに病んでいるのかもしれないと、直樹は思った。
　だが、直樹を狂わせるほど、それほどに痴漢という行為は、蟻地獄のような恐ろしいものだった。もがけばもがくほど、ずるずると地獄に堕ちてゆくばかりなのだ。

　稀に、直樹は両手に花ならぬ、両手に尻という場面に出くわすこともあった。だが、却ってそれでは集中出来ずに快感が逃げていってしまうだけだった。やはり片手というのが鉄則のようだ。

　触っていると、その手を掴まれることもあった。
　むろん、掴まれたままでは、通報されてしまうので、すぐ振りほどくわけだが、なかには喜んでくれる女性というのも、ごく稀にだが確かに存在していた。
　そういうときには、実に名残惜しげに女性は立ち去っていくのだけれども、そういった女性には、本当に感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。

　今も、直樹が触れている女性は、みじろぎもせずソフトタッチの快感に身を任せているようだった。直樹は、その女性のヒップライン合わせて掌を軽く押し付けていた。
　しかし、いくらヒップに手を這わせても、いっかなパンティラインには触れず、ノーパンなのかと驚いたが、なんのことはない、単にＴバックを身に付けているのだということに思い至った。
　だが、不思議なことになぜかいつものようには萌えない。
　パンティラインに指が触れることによって、どんな形の下着を身につけているかが如実にわかったし、クロッチの部分がまた、なんとも言えずたまらなく気持ちいいのであって、何の抵抗もないつるつるのお尻は、直樹にとって何か物足りなかった。
　つまり、直樹は単にお尻が好きというだけでなく、下着を穿いたお尻が好きなのかもしれなかった。レースの縁取りのあるパンティを穿いているんだなとか、総レースだなとか、手触りではっきりと下着を想像出来て、それがたまらなくそそるのだった。

　通りすがりの女性の素敵なお尻に別れを告げ、私鉄を乗り継いで、やっと約束の女性の乗っている筈の車輌に乗り込んだ直樹は、聞いたとおりの服装をした女性をすぐ目に留めると、ぐいぐいと人垣を押し分けて無理矢理その女性の真後ろに立った。
　すぐさま、挨拶がわりに半立ちの股間をヒップにぐりぐりと押し付けた。これが奈美への合図だった。
　我を忘れ、直樹は、触りまくった。
　だが、つい調子に乗って、いつもならばやらないことまでやりはじめてしまった。
　痴漢プレイを愉しむという約束を取り付けてあるわけなのだから、安心してはめをはずしてしまったのかもしれない。

　むろん、奈美もそのつもりで乗り込んでいたわけだから、抵抗もしないし純粋に？　衆人環視のなかで互いに快感を貪っていたわけなのだけれども、いつもならばソフトタッチだけで、感じてしまう直樹を狂わせる何かを奈美は、持っていた。
　というか、実のところ、彼女の方が積極的に直樹を誘導したというのが、ほんとうだった。
　奈美は、直樹の手を握って、自分の恥ずかしい部分に触れさせたのだ。

　それで火が点いてしまった。
　いつもならば、形のいいヒップを軽く撫でるようにお触りするだけの直樹も、痴女のような奈美のこの振る舞いに一気に舞い上がってしまった。もう頭のなかは真っ白で、脳味噌がふつふつ煮えたぎったようにクラクラした。
　もうなにも考えずに、スカートをたくし上げ、後ろからパンティのなかに手を入れて直接性器を触った。これが、いつもクロッチに優しく包まれている部分なのだと想うと、下半身がずしりと重だるくなりむくむくとチンチンが大きくなって、パンパンになってしまった。

　奈美の性器は、湿っているなんていうもんじゃなく、もうどしゃ降り状態だった。もうたまらなくって指を突っ込んでぐちょぐちょに掻き回した。びらびらもとっても大きくて感激しまくった。いやらしい芽を指先で摘んで、くりくりしてあげるのは、後の愉しみにとっておいて、人差し指をしゃぶって濡らしてから、アヌスに第二間接までずぶずぶと突っ込んで、中指は膣に挿入して愉しんだ。
　左手も遊ばせてはいない。奈美は、かなりの巨乳だったから、どうにも触らずにいられなかった。着衣の上からでは、物足りなかったけれど、豊満なそれは直樹の理性を一気に吹っ飛ばすリーサルウェポンだった。

　だが、なにしろ満員電車のなかなのだ。ヤラセの痴漢ビデオならば、別撮りで性交シーンを撮るところだろうが、そんなわけにもいかない。下半身に人格なしとはよく言ったもので、直樹はもう入れたくて仕方ないほど興奮していた。
　Ｇパンに押さえ付けられている暴れん坊将軍は、もう窮屈きわまりないと悲鳴を上げ、ついに我慢ができずに、挿入だけは絶対しないと心に誓いながら、ジッパーを下げ棍棒のように硬くなったイチモツを苦労して取り出した。

　奈美のお尻に密着させていれば、周りからは見えないだろうと高を括り、指マンはやめて彼女のスカートにこすりつけるようにして形のいいヒップの谷間でペニスをしごいた。カウパーでスカートが汚れようがしったこっちゃない。
　だが、すぐにもスカートが邪魔になってきた。中には決して入れはしないけれども、直接彼女の肌にペニスをこすりつけたかった。

　パンティをずり下げようと躍起になっていると、なんと奈美が後ろ手にペニスを掴んできた。直樹は、うっと思わず言ったまま、夢心地で身を任せた。
　彼女のすらりと伸びた指がしっかりとペニスを掴み、亀頭を親指で弄ると、垂れ下がっている睾丸を揉んだ。直樹は、快感を一瞬たりとも逃さないように、目を固く瞑って、下半身に意識を集中させる。そして、奈美は、一気にしごきはじめた。
　もう、立ってはいられないほどの快感が全身を駆けめぐる。膝からくず折れそうになるのをやっと堪えながら、直樹はふらふらになって奈美の手にすべてを委ねていた。
　
　奈美のしごくスピードが、徐々に早まってくると直樹は、爪先立ちになって射精をこらえる。しかし、もう臨界点が近づいていることがわかっていた。
　このままでは、完全にメルトダウンしてしまう。それも彼女のスカートに。やはりそれはまずいし、なによりも収まるべきところに収まって、中出ししたかった。
　すると奈美は、一瞬しごく手を止めたかと思うと、パンティを片手で横に引き伸ばすや、ペニスをぐいっと引っ張るようにして引き寄せてから、片足を軽く上げ、ヒップを突き出すようにして、亀頭部分を自分の中にぬるりと咥え込ませてしまった。

　直樹が腰を退くはずもなく、本能の命ずるまま、一気に挿し貫いていった。
　それはまさに天国だった。
　至福の時が訪れたのだ。

　乗客同士があまりにも密着している満員電車内で見えるものといえば、自分の視線の高さにあるものだけであり、押されている内に爪先立ちになってしまったり、反り返ってしまったり、尋常でない体勢になってしまうことが多々ある。
　だから、吊革に掴まってお尻を突き出し気味にしている奈美の格好をおかしいとは誰も思わなかった。結合部分は、スカートで覆われて見えないし、直樹の両手はフリーで、奈美の掴まる吊革の吊られている横に走る支柱を掴んでいた。誰の目にもまさか性交を行っているなどとは映らないだろう。

　直樹は、ぴたりと奈美に密着し、電車の横揺れとは明らかに異なる上下の揺れを小刻みに膣内に送り込んだり、少しこねくり回したりした。
　奈美の中は、生温かくて本当に居心地がよかった。それに加えてよく締まる締まる。まるで生き物のように襞襞が蠕動しながら、肉棒に絡みつき、全体で締め付けてきた。
　気持ちが良すぎて、たぶんもうダラダラ出してしまっているかも知れなかったが、直樹は、肛門をきゅっと締め、イキそうになるのを必死にこらえていた。

　この時、どれだけ奈美を抱きしめたかったことか。
　きつく抱きしめて、耳元に愛していると囁きたかった。
　挿入はしているけれども、それは身体の一部分だけに過ぎず
　奈美と、もっと一体になりたかった。むろん出来れば、互いに一糸まとわぬ裸になって抱き合いたかった。
　そんなことを夢想していると、不意に視界の中におばさまが入ってきた。
　押し合いへし合いしている内に、近づいてきたらしかった。

　ごくごく普通の上品なおばさまだったが、直樹が気になったのは、そのおばさまの視線だった。
　直樹と繋がっている奈美のちょうど真横に立ち、乱れてめくれているスカートがどうやら気になって仕方ない様子だった。
　世話焼き好きのおばさまらしく、というか、同性としてスカートのめくれを放っておくわけにはいかないのだろう。おばさまは、スカートの裾を持ち、下に引き下そうとした。　だが、むろん直樹の痛いくらいに勃起したチンチンが邪魔をして、完全にスカートの乱れは直せない。訝しげに思ったおばさまは、あろうことか次にスカートをめくって中を確かめようとしはじめた。

　内心穏やかでない直樹は、必死に腹を彼女の突き出し気味の尻に密着させ、中を見せまいとしたが、逆の方向に電車が揺れて、奈美との間に多少隙間ができ、その時チラリと中を覗かれてしまった。
　おばさまは、途端に目を大きく見開いて、顔を赤らめた。
　直樹の背中を冷や汗が伝い降りてゆく。
　だが、声を上げるのかと思ったら、おばさまは、すぐさまくるりと後ろを向いてしまった。
　直樹は、手を合わせ、おばさまを拝みたいくらいだった。
　見て見ぬ振りをしてくれたのだ。
　さすがに大人の女性は違うと思った。

　実にありがたいことだった。
　その感謝のしるしに、自分が今出来る事を考えると、触れることぐらいしかないと思った。
　というのは、半ば冗談だが、おばさまのそんな反応に、この人ならばタッチしても声を上げないしそれほど嫌がりもしないのではないかと、痴漢の勘が告げていたからだ。
　この見極めが出来るか否かが、痴漢にとって一番重要なのだ。
　アプローチしてみて、反応を窺う。剣もほろろに扱われたとしたら、すぐさま見切りをつけて別のターゲットに進まねばならない。

　というわけで直樹は、痴漢の勘の告げるまま、臆せずおばさまへのタッチを開始した。　実を言うと、ぽっちゃり系が好きな直樹は、おばさまの肉付きのいいお尻にすぐ魅了された。
　勝負パンツというか、Ｔバックなどを身に付けていないおばさまは、大き目のショーツを穿いているようだった。
　ところどころに施されているレースを確かめながら、ぷよぷよと弾力に富むお尻を愉しんだ。
　おばさまの背中からは、緊張し切って全神経をお尻に集中させていることが、容易にわかった。
　そしてたぶん、顔を赤らめているだろう、そんなおばさまが可愛く、いとおしくもあった。
　だが、困ったことに、タッチだけでは物足りなくなってきた。
　ソフトタッチが信条の直樹のはずなのに、奈美に挿入しているせいか、アドレナリンが体中を駆けめぐり、自分でも驚くほど大胆になっていた。
　おばさまのとろとろに熟れ切った性器にも、直接この手で触れてみたい。
　直樹は、マジにそう思った。

　やっかいなパンストを必死になって下し、ショーツのクロッチ部分の脇から、指を中に挿しいれていった。その刹那、身体に電気が走ったかのように、おばさまは後ろにビクンとのけぞった。
　おばさまのアソコはもう十二分に濡れていて、直樹の指で掻き回された。
　すると直樹は、とんでもないことに気付いた。
　おばさまの、女性器は俗にいう数の子天井だったのだ。
　小さな入り口から、指を入れてゆくと膣壁の上側にびっしりと小さな突起があった。
　そして、更におばさまの膣は、まっすぐな構造ではないようで、指に力を入れないでそろそろと進んでゆくと、柔肉が盛上がっていて、指は弧を描くように山なりに曲がり、その先には、更にザラついた膣壁が待っていた。
　おばさまの女性器は、夢のような名器に違いなかった。
　直樹は、この極上のおま○こに人差し指を挿し入れただけで、すでにイキそうだった。是が非でもお手合わせ願いたいと思わずにいられなかった。

　しかし、それには問題があった。
　直樹に限ったことではないけれども、おチンチンは2本ないのだ。
　一本しかない愚息は、すでに奈美のウワバミのような性器にずっぽりと呑みこまれている。
　直樹は、どうしたらいいのか、暫し懊悩した。

　２千人にひとりとも言われている数の子天井を逃すわけには絶対いかないと思った。
　ラブホに誘うという手も考えたが、それもどうかと思った。
　通勤電車の中という、こういうシチュエーションだからこそ、許されるということもあるのだ。
　ラブホというのは、生々しすぎるし、重すぎる。
　痴漢ならば、あとくされなく、ちょっとした当て逃げ事故に遭ったくらいの感覚で許してくれるということがあるのだ。
　ということで、直樹は妙案を思いついた。
　それは、つまり、こうだ。
　数の子天井を充分堪能してから、自分がイキそうになったところで奈美に戻って、彼女のなかにぶちまけてしまえばいい。

　これは、1944年６月以来ドイツ軍に占領されていたフランスを、連合軍の手に奪還した、かの有名なノルマンディ上陸作戦よりも、緻密な作戦だと思った。
　数の子天井を味わった後に、フィニッシュは奈美で決める！
　我ながら本当に完璧な作戦だと直樹は思った。自分を褒めて上げたいくらいだった。

　善は急げ？　というわけで、奈美には悪いけれども、早速名刀を鞘から引き抜くように奈美の中からチンチンを引き抜いて、腰を少し左に振ると、おばさまのお尻の割れ目にあてがい、ずるずるとずらしていって一気にぬるりと挿入した。
　声を上げずにのけぞるおばさまの背中が、実に悩ましかった。
　うぅぅ。
　直樹は、天を仰ぐ。
　溜息が洩れそうだった。
　これが、これが、名器なのか！
　亀頭に当たるブツブツがたまらない。
　山なりの膣壁を分け入ってゆくと、更にそこに天国が待ち受けていた。
　ミミズ千匹だぁ！
　ザラついた襞が直樹の亀頭を苛めぬいた。
　腰を激しく振る余裕もまったくなかった。
　直樹は、挿入したと同時といっていいほど、ほんの三こすり半で、ドクドクと射精しはじめていた。そのほとばしりは、尋常な量ではない。
　射精がとまらない。とまらない！
　直樹は、真っ白になって真ッ逆さまに堕ちてゆく。
　出して出して出しまくりながら、快感の海に溺れて難聴になってしまったような耳に、女性の悲鳴が聞こえた。奈美だ。
　おばさまの性器に入れながら、奈美の性器もいじっていたけれども、何かおかしいと思った奈美が、初めて直樹を振り返って事の次第に気がついたのだ。
　咄嗟に奈美の口から洩れ出た言葉は、直樹の人生を狂わせる恐ろしい刃（やいば）となって直樹に襲い掛かった。

「きゃぁぁああああああああああ、痴漢！」

　おばさまは、その言葉に脱兎の如く逃げ出し、人垣のなかに掻き消えてしまった。
　残された直樹は、あまりの衝撃に動くこともできないまま、固まっていた。

　やがて、誰かの手で手首を掴まれた直樹は、奈美の愛液でてらてらと生々しく照り輝く指先を、他人のもののように眺め下した。