はちみつ太郎 作
| １３ 顔にモザイクを入れることでその５からその８までの動画投稿に承諾のメールを打ったのは、翌日だった。その昼、あずさと小春は昼食を共にし、継続捜査の時期を話し合っていた。 「時間、空ける？」 「どうしてですか？」 「見知らぬ男との・・・って、消耗しない？」 「んー、意外とそうでも、昨日は少し疲れちゃいましたけど。」 「現代人・・・ってこと。」 「っていうより、早く犯人の目星をって感じです。・・・次の被害者が出ないとも限りませんから。」 「ＭＡＤは少し時間をおく、じゃぁ、次の目星・・・この男。」 モバイルパソコンの画面を小春に見せる。個室の暖簾から従業員の視線が及ばぬ位置に移動する。画面をスクロールさせると、自慢げにイチモツを見せ付ける動画があった。 「若い感じ。・・・同年代？」 「そうねぇ、へたすれば大学生。」 「プロファイリングって・・・どうなんですか。」 「最初の二件の少ない目撃情報の中に、若い二人組みの男ってのがあってね。・・・ホテルから、旅行バッグを運んでいったっていう。」 「で、この男？」 「そう、読んでみて。」 『こんばんは。ブラックの嫁さんの奥さま、とてもキュートですねぇ。ＭＡＤさんの動画、拝見しましたよぉ。私、ビルドの動画もご覧いただければ、旦那さんも満足の寝取られを実現させていただきます。・・・こちらにメールをおまちしておりまーす。』 ビルドと名づけられたページには、二人組みの男が３０後半くらいの女性をやさしくマッサージをしている動画がアップされている。 シングルのホテルの一室で行われている撮影は、声を制するためか猿轡をされた女性が、首と身体をゆすりながら性感の昂ぶりを放散しているように伺えた。 短めの動画で撮影された女性の人数は２人。どれも、性行為自体はあげられていないが、それに類する物より猟奇的な匂いは感じた。 「ちょっと、あぶない感じはしますね。」 「えぇ、コメントに対する、キツメの返しが気になるのと、若い男の自制って・・・できるの？」 「えぇ、動画をあげられている女性に被害はなさそうなコメントですし、旦那さんも登場しないんなら、今回も黒田巡査長がでなくても・・・。」 「その、巡査長にも、そろそろ登場いただかなくちゃならなくなるんだから・・・わかってる？」 「んー・・・エッチは、好きそうなんですけど。」 「３日に一回程度で？。」 「んー、どう言ったら、寝取られに・・・。」 「そうね、少し作戦を・・・黒田巡査長のジェラシーをくすぐりましょうか。」 小春の了承を得たあずさは、『ビルド』のアドレスに返信を打ち始めた。食事の最中の小春はそれを気にすることなく、トマトベースのパスタを口に放り込み始めている。 『ビルドさま。はじめまして、ブラックの嫁です。コメントを読ませていただき、動画も鑑賞いたしました。お二人で、参加なのですか？マッサージはとても気持ち良さげで、妻も喜ぶとは思うのですが、出来ましたら、ビルドさまお一人にてお相手していただければ、了承したいと思うのですが。お返事をお待ちします。』 「さぁ、どうくるかな。」 あずさも同じメニューのランチセットを口にしている。小春は、３分ほど先に食べ始めたため半分を食している。 食後のコーヒーが届いた頃、更新ボタンをクリックすると、メール受信のアイコンに１の数字が点った。 「きたきた、どれどれ。」 『ブラックの嫁さま。キターーーーって感じのメール、サンキュウです。相方、というより師匠なんですあの方。なので、外れてもらうことＯＫですよ。でも、師匠のテクニック、最高なんですよ。と、言うのが師匠のルックスでは、女性に怖がられることが多いんで、甘いルックスの僕ちんに白羽の矢がたったって言うか。でも、僕ちんには腕前が今一つなので、了承いただけたらうれしいんですけど。・・・僕ちんでも、免許皆伝はされてるんで・・・ご心配なくっ。では、お返事と、強面師匠の承諾メール、待ってマァァス。 ビルド 』 「軽いわねぇ。・・・どうする、二人で・・・。」 「その方が、捜査的にいいなら。」 「二人まとめてのほうが、参考人の的が絞れていいんだけど。」 「じゃぁ。」 あずさは、コーヒーを口に含んだ小春に視線を送りながら了承のメールを打ち込んだ。 『ビルドさま。師匠さんとビルドさんを信用し、妻に話してみます。とりあえず出張マッサージを紹介する感じで、師匠が後に登場なんて感じも面白いかなぁって思っています。場所日時は、ビルドさんにお願いたしますので、よろしくお願いいたします。』 「よし、いい考えがある。黒田巡査長、車持ってるよね。」 「えぇ、ブルーのレガシー・・・ワゴンタイプの。」 「それに乗って、送ってもらうのよ。」 「え、内容も言うんですか？」 「はぐらかして、ジェラシー・・・車の中で待っててもらうの。」 「時間がかかっても？」 「そうね、潜入が終わり次第連絡って感じで、待たせるの。そうすれば、小春への嫉妬が目に見えてわかるでしょ。」 「・・・。」 「嫌？」 「ジェラシー感じてくれるかなぁ。」 「大丈夫よ、きっと、もう感じ始めてる・・・小春も。」 あずさは最後の言葉を、小さく言うと小春の聞こえてない感じに笑みを浮かべていた。 |
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| 2012.12.5掲載 |
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