※

　ピンポーン。
　夜十一時。の住むワンルームマンションのドアチャイムが鳴った。
（こんな時間に誰だよ、まったく……）
　しぶしぶ立ち上がったがドアを開けると、そこには、いま人気絶頂のアイドル、が立っていた。
　身長百六十二センチ、バスト八十二、ウエスト五十八、ヒップ八十三。小鹿のようなしなやかなボディにちょこんと乗っかっている愛らしくかつボーイッシュなそのおなじみの顔が、へとまっすぐに向けられていた。
「こんにちは、あなたがさんね」
　彼女はにっこりと微笑んだ。
　それはまさにとろけるような本物のアイドルの笑顔だった。テレビドラマや映画でおなじみのものではあるのだが、こうやってナマで間近で見るとなるとまるで存在感が違う。
（うわっ、すげえ。オーラがあるよ。本物のアイドルだけが持つ独特のオーラが）
　何か言おうとするとしどろもどろになりそうなのを必死に抑え、はなんとか口を開いた。
「そ、そうだけど、君は……あの、その……」
「です、よろしくね。それじゃ、お邪魔させてもらいます」
　あまりに予想もしてなかった展開にが呆然としているうちに、はかまわず靴を脱ぎ、彼の横をすり抜けて勝手に部屋の中へと入っていった。
　はあわてて後を追いかける。
「ね、ねえ……君。どうして？　なんかの番組の企画？」
「うわーっ、散らかってるね。男の子の一人暮らしって皆こうなのかな？」
　は部屋の周囲をキョロキョロ見回している。どうも珍しくてたまらないようだ。
　がやっと追いつくと、彼女はを振りかえり、
「で、どうします？　まず部屋の掃除でもしましょうか？」
　と、きいてきた。
（いったい……ど、どうなってるんだ？　俺は夢でも見てるのか？）
　は頬をつねってみたが、結果は普通に痛かった。
「夢じゃないよ、本物だよ。カメラもどこにもないからね」
　はクスクス笑った。
「えっとね。あたしにもよくわからないんだけど、突然ここの住所とあなたの名前だけが急に頭に浮かんで、そしたら、絶対なにがなんでもここへ来なきゃいけないって気になっちゃったの」
「そ、それって？」
「変よね。まるで魔法にかけられたみたいな気分だわ」
（魔法……ま、まさか！）
　それなら、には思い当たることがあった。

　　　※

　話は三日前にさかのぼる。
　熱狂的なのファン、十九歳の浪人生であるは、自室で彼女のグラビア写真が載っている雑誌を見ながら、手でペニスをしごいていた。
　はの同世代では最高の人気を誇るアイドルだった。
　つぶらな瞳。
　魅惑的な唇。
　キュートで愛らしいボディライン。
　すべてがの理想の女の子だった。いったいどんな匂いがするのだろう？　どんな声で悶えてくれるのだろう？　どんな感じがするのだろう？……。
　もしオナニーではなく彼女とセックスできるなら、悪魔に魂を売り渡してもいいとさえは思った。
　しだいに手の運動が激しくなる。
（う……で、でるっ）
　放出の快楽に備え、は足を突っ張らせる。やがて、そのときが来た。
（ああ……ちゃんッ！）
　ぽわわーーん。
　次の瞬間、のペニスからは、慣れ親しんだいつもの液体ではなく、かわりに何やら怪しげな黒い煙が立ちのぼっていた。
「な、なんだっ？　うわあっ！」
　のペニスが放出した黒い煙は、やがて部屋の中央に大きな固まりを作って、しだいに人の形をとっていく。呆然と見ているうちに、それは肥え太った黒い魔人の姿になってしまった。
「わっはっは。呼ばれて参上、ジャジャジャジャーン！」
　魔人は妙に陽気な声で叫ぶと、床に転がってるを真上から見下ろした。まさに、絵本で見たランプの魔人の姿だった。
「わしはマハラジャ大魔王である。人間界に召還されるのはおよそ五百年ぶりかな。やはり下界は気分がいいぞ、わっはっはっは」
　は呆然とするばかり。
「さて、呼ばれたからにはおまえの願いをひとつ、かなえなければならない。なんなりと言うがよい」
（……なんか、お約束っぽいなあ）
　はだんだん状況が飲み込めてきた。きっとこれは夢にちがいない。
「さあ、早く言え。わしも人間界は久しぶりだから、おまえの願いを聞き届けてから早く下界の快楽を味わってみたいのだ」
（願いか……そうだな）
　は思い切って言ってみた。
「来春、東大医学部に合格させてください」
「それは無理だ」
　あまりの即答っぷりに、はずっこけた。
「なんでもかなえるって言ったじゃないですか」
　たまらずが抗議すると、
「わしはおまえの欲望により召還されたことからもわかるように、性愛をつかさどる魔人だ。それ以外の望みは、それ専門の魔人を呼び出してから言うがよい」
　魔人は、口調だけはもっともらしく答えた。だが、なんとなく胡散臭い。
「専門の魔人って、どうやって呼び出せばいいんですか？」
「学問の魔人だったらインク瓶のふたを開けたときにまれに出現することがある。ちょうどおまえがわしを呼び出したようにひたすらインク瓶を開けつづければ、あと数百年もすれば、全世界で一人くらいはひょっとしたら呼び出すことができるかもしれん。すなわち、ただ偶然を待つしかないのだが」
「あー、もういいです」
　は、なんかもうどうでもよくなってきた。
「そうか。だが、わしはわしでおまえの望みをかなえてからでないと自由にはなれないのだ。だから早く望みを言え」
（ずいぶん勝手な奴だな……）
　は呆れた。
「あなたは性愛の魔人でしたよね。いったいなにができるんです？」
「おまえの望んだ相手と、おまえの欲望どおりのことをできるようにするのは簡単だ。それがたとえ男でも女でも、世界中の誰とでもだ」
「ほんとに？」
　は、ふと床に転がってる雑誌を見下ろした。考えるまでもなく望みはひとつしかない。
　彼はまったく迷うことなく、ある名前を口にした。

　　　※

　そしていま、が望んだとおり、アイドルのが彼と二人きりで目の前に存在していた。
（てっきり夢だと思ってたのに……それとも、これも夢？）
　は頭がおかしくなりそうだった。
「どうしました？」
「ええと……いや、部屋の掃除はべつにしなくてもいいや」
「そうですか？　わかりました」
　は残念そうに言った。
「ねえ、ちゃん。俺の名前が頭に浮かんだのって、ひょっとして三日前？」
「そう……なんでわかるの？」
　は目を丸くした。
「いや、なんとなく」
「あのね、あたしちょうど写真集の撮影でグアムにいたんですよ。ホテルの部屋に戻って寝ようかな、と思ってたら急にあなたのことが頭から離れなくなって……すぐにここまで飛んできたかったけど、その夜はどうしようもなくって、次の日ダダこねて日程切り上げてもらってなんとか撮影終わらせて、今日の夕方ようやく成田に戻ったんです。空港からはタクシーで直接……大変だったけど、お仕事よりずっと大切なことだと思ったから」
　そう言うと、はがっくりと床に女の子座りの格好でペタンと尻もちをついてしゃがみこんでしまった。よくよく見ると、表情にかなりの疲労の色があるのがわかった。
　の服装は、上は赤いキャミソールに白いヨットパーカー、下は紺のデニムのミニスカートである。ふとは、その格好に見覚えがあるような気がした。
（そういや……そうか、あの雑誌のグラビアとまったく同じ格好なんだ）
　魔人にリクエストしたとき見ていた雑誌の格好だ。そこまで合わせることはないのにな、とは苦笑した。
「その服は？」
「あー、これ？　前にグラビア撮影したときの衣装なんだけど、気に入ってスタイリストさんから買い取ったんですよ。だから私服です」
「ふーん」
　は狐につままれたような気分だった。だが、目の前にいるアイドルのは、夢というにはあまりにも実在感がありすぎる。
（夢でもいいや。ちゃんとセックスできるんだったら、なんだってかまいやしない）
　彼女こそ、が妄想の中で何度もくり返し激しく犯した相手だったのだ。その妄想がちょっとばかりリアルになったと思えばべつに不思議はない。それに妄想だったら、何をしたって許されるってもんじゃないか。
「じゃあ、ちゃん……」
「なんですか、さん？」
　は生唾をのみこんだ。
「えっと、さっそくだけど。そろそろはじめない？」
「はじめるって、何を？」
　は無邪気にききかえした。
「君とエッチしたい」
「あ……」
「ちゃんとセックスするよ、いいね」
　急には、うつむいて床を見つめはじめた。何かと必死に戦っている様子だった。しかし、しばらくして顔をあげてを見たときには、すっかり頬が上気して熱っぽい表情になっていた。
「あたしは、さんとセックスするためにここに来た……」
　何かに憑かれたような口調だ。
「俺に抱いて欲しいって言って」
「お願い……さん、あたしを抱いてください」
「俺とセックスしたい？」
「さんと、セ、セックス……したいです」
　はちょっと楽しくなってきた。
「ちゃんはセックス好き？」
「あたしは、セックス好き？……たぶんそうです」
「へえ。アイドルのくせにおまんこ好きなんだ。いやらしいね」
「うん。あたし、お、お……おまんこ大好きなアイドルです。だから、お願い……あたしとおまんこしてください」
　ただ命じられるままにエッチな言葉を連発しておねだりをしてくるアイドルに、はたまらない気分になっていく。いまやの表情は、明るく健康的なアイドルのものではすでになく、ただの欲情した一匹の牝犬のものにすぎなかった。
「ああ、たまらない……この気持ちは自分でもどうしようもないの。いまあなたに抱かれないと、あたし……気が狂っちゃいそう」
「それは……俺も願ったりかなったりだけど」
「ほんとに？」
「俺、ちゃんの大ファンだから」
「うれしいっ」
　突然、は立ちあがってに抱きついてきた。はそのままの腕を背中にまわし、しっかりと抱きとめる。がしがみついてきた。
　アイドルの体から立ちのぼる何とも言えない甘い香りがの鼻をくすぐった。それはとてもいい匂いだった。
「ちゃん、キスしていいかい」
「……して」
　は目を閉じた。
　はちょっとうつむいて、うわ向いているの唇に、自分の唇を合わせていった。
　チュッ。
（柔らかい唇だ……）
　は感激しながら思った。それから、の唇を大胆に割るようにして舌を挿し入れてみた。
「ん……んむっ」
　もそれに応えて舌をからめてくる。
　そのまましばらく、はアイドルとのディープキスを心ゆくまで楽しんだ。舌をきつく吸いながらお尻を撫でると、くねくねと身悶えるのがとても愛らしい。さらに調子に乗って胸まで触ってみた。さらにはの口の中に自分の唾液を送り込み、それをゴックンと飲みほしてもらった。
　はそうしたの行為すべてに逆らうどころかすっかり陶酔しきって、首まで真っ赤になって興奮していた。それはの仙骨をしびれさせるほど、うれしくもあり刺激的な光景だった。
「あ……はぁーん」
　やっと唇を解放されたは、とろんと蕩けるような瞳でを見つめ、膝をガクガクさせて必死にしがみついてきた。
（これなら……なんでもさせられそうだ）
　はほくそえんだ。
「ちゃん、フェラしてくれるかな？」
「あ、はい……あたし、フェラチオしたいです」
　すぐさまは床にひざまずき、大胆な手つきでのスウェットズボンを下に引いて脱がせていった。も自分でスウェットシャツを脱ぎ捨ててパンツ一枚の姿になる。
「ああっ、さん……たくましいわ」
　男の裸体を間近で見たせいだろうか、興奮したは熱っぽい口調でつぶやいた。目が完全にイッちゃっている。
「パンツも脱がさせてくださいね」
　そう言うと、ためらいもせずにのトランクスに手をかけた。一気に引きおろす。
　びよーん。
　と、パンツから自由になったばかりののペニスが、とたんに勢いよくそそり立った。
「いやぁーん、素敵ぃ……」
　そのいきり立ったペニスにはうっとりと頬擦りしていく。は小躍りしそうな気分だった。
　なにしろ、これが人気絶頂の清純派アイドル、である。おそらく日本中の男の大半が、彼女のこのような姿を見たら我慢などできっこないに違いない。これはならずとも、たとえようもなく艶めかしい光景だといえよう。
「フェラしてもいいですか？」
　きかれて、焦らすようにが答えた。
「じゃ、がどうしたいか言ってみて」
「おちんちん、しゃぶりたい」
　はにっこり笑いながらおねだりした。
「いいよ」
「わぁい」
　はしゃいだ声をあげたは、すぐさまのペニスの先端にキスをした。それから、いったん舐めおろすと根元から先っぽに向かってペロペロ舐めあげ、さらに雁首に達すると、くびれのところを舌で丁寧にねぶっていった。
（うわあ、ちゃんのフェラ上手すぎ……）
　いくらアイドルとはいえいまどきの女の子である。さすがに処女ではないだろうとは思っていたが、それどころか、まるで熟女なみのねちっこいテクニックである。正直、は驚くばかりだった。
「美味しいよぉ……さんのおちんちん」
「ねぇ、」
「なぁに？」
「これまでいったい何本のちんぽをしゃぶったの？」
「えっと……三本……いや、フェラだけの人も入れたら、五本くらいですね。六本かもしれない」
「……そ、そうなんだ」
「でもね、さんのがいままででいちばん美味しいおちんちんですよ」
「味がわかるの？」
「わかりますよ。あたし、舌で感じながらフェラするのが好きなんです」
　は、三本から六本の誤差がいったいどのようにして生まれるのかについてしばし考えこんでしまったが、やがて、ふたたびフェラに没頭するを見下ろしているうちに、エッチなもそれはそれで魅力的だな、と思えるようになっていた。幻想の中の清らかなアイドルもいいけれど、やはり生身は淫乱なほうがずっといい。
　なによりの口の中があり得ないほど気持ちよかったのだった。
「んぐ、んぐ……」
　亀頭を包みこむようにしゃぶってから、肉幹を舐めあげる。上下に丹念に舐めてからふたたび亀頭に戻り、今度は鈴口をちゅーっと吸いあげる。はいまにも暴発してしまいそうなくらいだった。
「ぷはぁーっ」
　いったん口から吐き出して、息継ぎをする。それからふたたび咥えこんで、次には頭をはげしく上下させての口ピストンだ。
（うわ……もうダメだっ！）
　は唇を噛みしめてこらえようとするが、もうたまらない。
「いくよ……。飲んでおくれ……」
　そのままの頭をがっちりと掴んで、自分の腰にぐっと押しつける。
「んぐー、んーっ！」
「ああ……うう……っ！　出るっ！」
　ごくっ、ごくごくっ。
　は目をまんまるにしながら、それでも一滴もこぼすまいと必死に喉を鳴らして精液を飲んでいる。
　たとえようもない幸福な開放感に包まれながら、はの口腔へと一気に残りの欲望を吐き出していった。

　　　※

　床に四つん這いになった。着ていたヨットパーカーとスカートはすでにによって剥ぎ取られて遠くへ投げ捨てられている。いまの彼女は、上半身は赤いキャミソール、下半身は白いショーツだけの姿だった。
　その布きれ一枚になったお尻を、に向けて高く持ち上げている。
　挑発的なポーズ。こうやって見ると、意外にも胸が大きいのがわかる。そして、なによりも、背中から腰、ヒップにかけてのラインがたまらなくセクシーだった。
「可愛いお尻だ」
　は目で楽しみながら、のヒップを楽しげに撫でまわしている。適度に柔らかいが、若さのせいかすごく弾力のあるヒップだ。
　ふと悪戯心が湧き、ショーツのお尻の部分をずらして尻たぼに食いこませるようにしてみる。まるでＴバックを穿いているように白い尻肉が晒しだされた。
「あん、やだぁ……」
　そのＴバックになった股間の中心部分を指でなぞるようにしていくと、ちょうどスリットにあたる部分が溝に沿うようにくぼんでしまう。はくぼんだ部分に指をあてて擦りはじめた。たちまち、そこからじっとりとした湿り気がにじみだしてくる。
「あ……気持ちいい」
　には布ごしの刺激がちょうどいいらしい。にしても、直接指で触るより大胆に動かせるためちょうどよかった。
　ショーツの布地が破けそうになるほど指を激しく擦りつける。
「ひゃっ、ひゃあっ、ダメぇっ！」
　は全身を弓反らせて身悶えた。彼女にしてみれば、ショーツの布地のザラザラした部分で直接に擦られてるようなものなのだ。
　そのまま狂わんばかりにたっぷりと泣き声をあげさせてから、おもむろには、ショーツをめくっての生尻をあらわにした。
（うわ……キレイなおまんこだな）
　谷間のヘアは薄めで、逆三角形にこじんまりまとまっている。その中央の花弁の色はあくまでもピンクで、少し伸びた襞が複雑に重ね合わさりながら可憐な肉の綴じ目をかたちづくっていた。その綴じ目からは、透明な液がいまにもタラーッと滴らんばかりである。
（すっかり仕上がってるな……どれ）
　はとりあえず指を一本挿入してみる。これはなんの抵抗もなく入った。調子に乗って二本、三本と増やしてみる。
「あ、あああーっ！」
　三本目でが絶叫した。その三本のままで指を少し動かしてみる。クチュクチュと湿った音がひびいた。はしだいに指の速度を速め、ついにはズポズポと大胆にかきまぜるように出し入れをはじめた。
「ふあっ、ふぁあああああん！」
　キュートなヒップがいやらしく上下に揺れ、その指をもっともっとと飲みこもうとしていく。
「……っ！」
　すると突然、は体を大きく弓反らせたまま動かなくなり、すぐさまガクンと首を落とした。
「……はぁ、はぁ」
　どうやら指だけでイッてしまったようだ。それを見て取ったは、しばらく慎重に指の動きを加減しながら、いったんおさまった官能の火を優しく再点火していく。
「……ああ……ああん……」
　がふたたび悶えはじめると、もまた指の動きを激しくする。しばらくするとが「ひぃっ」と叫んで達する。そうしたら、また優しく愛撫する。それをくり返し、何度となくを絶頂の波へと追い上げていく。
「いやぁーん、やん、やーん」
　しまいには、は身も世もないといった雰囲気で完全に泣きじゃくりはじめた。
「もうダメェ、もうダメなのぉ……」
　甘えるような目でを見つめる。
「なにがダメなの？」
「もう、お願いします……ゆるして」
「どうして欲しいの？」
「入れて、欲しいです……」
「何を入れるんだい？」
　そこではわざと意地悪くたずねてみた。
「おちんちんを……」
「どこに入れるの？」
　は一瞬ためらったが、やがて思いきって口をひらいた。
「お、おまんこに……おちんちんを、おまんこに……入れて、ください！……は、恥ずかしいっ！」
「よし」
　その言葉に満足したは、の後ろに膝立ちになると、たけり狂った欲望の象徴をヒップの谷間に押しつけた。
「あ、熱いわ……すっごく熱いのぉ」
「これが欲しいんだろ？」
「うん、ちょうだい、早くぅ」
　はまるでお尻で甘えるかのように腰をクネクネうねらせた。そのポーズがの嗜虐心にますます火をつけていく。
「犬のように犯してやる。ワンと鳴いてみろ」
「わ、ワン！」
　その声と同時に、はの膣壁を強引に掻き分けるように、いきなり挿入した。
「ああん！　いいっ！」
　はもうたまらないといった感じで腰をブルブル震わせる。その腰をは両手で抱えこみ、ぐっと根元まで押しこんでいった。
「うわっ、わっ、わああああーっ！」
　は四つん這いのまま限界までえび反って、もはや悲鳴というより咆哮に近い声をあげた。
　さらには、ペニスが抜け落ちそうになる寸前まで腰を引き、雁首を膣口にひっかける。しばらく焦らしておいて、そこから一気に押しこむ。「きゃん！」とが鳴き、子宮を突かれて背筋をえび反らせる。ふたたび抜ける寸前まで引き抜く。
　そのリズムでゆっくりと腰を前後させた。それをひたすらくり返す。
「あっ、すごい、すご……っ！」
　ものストロークに合わせて腰を前後させていった。そのたびに頭がガクガクと揺れる。髪を振り乱して悶えている。
「犬みたいにバックで犯されて、それでも淫売女のようによがり狂うのか？　まったくスケベ女だな。それでもアイドルのつもりか？」
「ああっ……だって、だって……好きなの、あたしバック好きなんだもんっ」
　言葉で責められるとよけいに興奮するらしい。また、いまのケダモノのような体位で犯され悶えている自らの痴態が、しっかりと見つめられていることがわかっているせいか、の膣口は絶え間なくをキュンキュンと絞めつけ続けている。
　は上から覆い被さるようにのバストに手を伸ばし、タンクトップを胸の上までまくりあげると、一緒にブラジャーまでずらして乳房をじかに掴んだ。
「あーん、おっぱいも気持ちいいのぉ。乳首つねってぇ」
　上から手をかぶせながら、指のあいだに乳首をはさみこんでねじ上げる。
「あっ、おっぱい、いいっ……おまんこも、いいっ！」
　つねるたびに叫び、叫ぶたびに膣壁がうねり、を強烈に締め上げてくる。
（うわ、こりゃいかん。もうそろそろ……）
　たまらずも、もはやこれまでとばかりに短いストロークで、子宮めがけてドスドスと素早く深く強く突きはじめた。
「ああっ……いくぅ、いっちゃいそう……」
「俺も、いくぞ……このまま中に」
「きてぇ、一緒にっ……中に出してぇ……」
「おおっ、おおーっ！」
　は獣じみた吼声をあげながら、の胎内へと突進していった。いくつもの閃光がチカチカきらめき、の目の前ではぜる。
　どぴゅ、どぴゅどぴゅ。
「ぎゃあああああっ……あ、あ……ぁ」
　は最後に一声大きく絶叫し、次にはぶるぶる全身を痙攣させて、その後はスーッと憑き物が落ちたように前のめりに床へと崩れ落ちていった。
　はそのの腰をしっかりと抱きしめながら、子宮奥めがけて欲望のすべてを放出しきった。

　しばらくたってからが確認したところ、は白目をむいて完全に失神してしまっていた。

　　　※

　が気絶したの口に汚れたペニスを突っこんでみると、しばらくして意識を取り戻したが、それをチュウチュウ吸いはじめた。いわゆるお掃除フェラである。
「んぐんぐ……おいちい」
　顔をほころばせながら、愛しげに、丁寧に舌を這わせていく。目もとがほのかに赤く染まり、なんともいえず幸せそうに見えた。それが本当に好きだからなのだろう。
　もそのの行為を、愛撫というよりむしろ愛情表現として受けとめている。それはセックスを目的としない純粋な奉仕、もしくは、赤ん坊が母親の乳首に吸いつくときのような無心の甘え、そういうものだと思っていた。
　とても心が安らぐ瞬間だった。はホッと息をついて天井を見上げた。
（…………!?）
　そこに、いつのまにか漆黒の魔人が浮かんでいて、は思いっきり彼の目線と目線がぶつかってしまったのだった。
『わっはっは、どんな調子だね？』
　魔人は満足げに笑っている。
『げっ……たしか、おまえは……マハラジャ大魔王！』
『どうやらおまえの望みもこれで果たされたようだ。わしもやっと自由の身になれる』
『ってことは、ずっと見てたの？』
『途中からだな。なにせ久しぶりなもんだから、わしの魔法の効き目がどれくらいかってだけ確認してたんだが、まあまあいいようだ。おまえと性交することによって、この娘がしだいに従順になっていくのがわかったろう？』
『うん、すごくびっくりしたよ。魔法って本当にすごいね』
『満足か？』
『うん、とっても』
『そうだな。おまえにとっては無上の性交奴隷なんだから、これからも大事にしろよ』
『え？　魔法の効き目って一回きりじゃないの？』
　は自分の耳を疑った。
『そのつもりだったがちょっと加減をまちがえた。おまえが死ぬまで続くんだな、すまんな』
　それを聞いたは飛び上がらんばかりに喜んだ。
（それって、あのと恋人になれる……いや、死ぬまでっていうからには結婚だってできるだろうし、もちろん子供だって……これはすごいことになるかもしれない）
『あ、そうそう。注意しておくけど、早めに彼女の世話役を探さないと大変だぞ』
『え？』
　一瞬、ものすごくイヤな予感がの背筋を走った。
　そんな思惑を尻目に、魔人はもはや完全な他人事として楽しげに説明をはじめた。
『いまの彼女はもうセックスしか頭にない。だからこそおまえが望むことをすべて受け入れ、それを快楽として感じることができるのだ。同時におまえを満足させるためにならなんだってしてくれるし、これからもおまえが満足できるような体にどんどん変貌していくだろう。だけど、逆に言うとそれだけの存在なんだな。それが性交奴隷ってもんだから』
『えっと……ええっ？』
『しばらく前に中国の皇帝の望みをかなえたときは、宦官、というのがいるから大丈夫だと言ってたな。その前の世界にはハーレムというのがあってそこに世話役の女を置いていたみたいだ。そうしないとダメなのだよ。なにせ主人とセックスすることしか頭にない淫乱奴隷だから、主人がいちいち面倒みていたら気が休まるヒマがないんだよな。まあ、宦官か世話役の女、どっちか一人見つければ大丈夫だと思うぞ』
『ちょ、ちょっと……』
『では、さらばだ。もし偶然があったらまた会うことができるかもしれん。おまえだってひょっとしたら、もう一回偶然を引き当てるかもしれんしな。わっはっは……』
　からは魔人の背後の天井が透けて見えていた。つまりは、魔人のかたちが次第に人のかたちから煙のかたちへと戻っているのだ。それはもう止めようがなかった。
　彼にもう一度会う？　そりゃ、あと五百年も生きられればの話だろう。

　魔人が完全に姿を消してしまうと、は我に帰ってを見た。
　人気絶頂のアイドル、同世代の若者すべての憧れであるは、いまだ一心不乱にのペニスを舐めしゃぶっている。
「ちゃん……ねえ、ちょっと」
「おいちぃ、おいちぃな……おちんちん」
　どうやらには、もうの言葉が言葉として聞こえてないようだ。その顔は、ただひたすらのペニスがふたたび大きくなるのを待ち望んでるようにしか見えない。
　たぶん今夜一晩くらいなら、の期待に応えられるかもしれないな、とはぼんやり思った。

―完―