『旅の宿』・『好きだよ』・『再会』・『メイドごっこ』・『痴漢ごっこ』・『代用品』続編です。


　街はずいぶん秋らしくなって来て、あたしは今日、買ったばかりのニットのワンピースを下ろした。駅前のロータリーに立っていると、佐伯さんの運転する車がすぐにやって来た。
　助手席に乗り込む。運転する佐伯さんを見るのって初めてだから、新鮮だなぁ…って思って、ついつい横顔を眺めちゃう。
「ん？」
　運転しながら、ちらっとこっちを見る。
「え…うん。こうやって会うの、初めてだなって思って」
　あたしが言うと、
「そうだね。初デートだね」
　佐伯さんはそう答えて笑った。
　初デートねぇ……今日の目的を考えて、あたしは首を竦める。

　車を停めたのは街中の狭い駐車場。佐伯さんは先に立つと、すぐ隣の雑居ビルへ入っていく。階段を上って２階へ。スナックか何かに見える木製の扉には、看板のような物は何も無かった。
「緊張してる？」
　ドアノブに手をかけたところで、佐伯さんが聞く。
「ん…ちょっとね」
　すこし嘘。昨日から緊張して夜は何度も目を覚ました…けど、そんなことは教えない。
「いらっしゃい」
　扉を開くと、やたら大きな声に迎えられる。
　がたいが大きくて、頭をつるつるに剃り上げて、真っ黒に日焼けしてるおやじがそこに居た。
「なんだ、佐伯じゃないか」
　でかい声が響く。あ…知り合いなんだ。この海坊主みたいなおやじと…。
　二人が「２年ぶり」とか「最近は…」とか話してる間に、あたしはきょろきょろと室内を見回した。
　フローリングの床、シックな感じの応接セット、控えめな照明…それだけなら、お酒を飲むところにも思えるけど、壁際に並んでいるのはガラスのショーケース。その中に並んでいるのは大人の玩具といわれる怪しげな品々で…。
「理香子」
　佐伯さんに呼ばれる。
「これが、この間電話で話した…」
「理香子ちゃんだっけ？よろしくな」
　あたしのことを紹介しようとした佐伯さんの台詞をひったくる海坊主。
「理香子。こっちは桜井。この店のオーナーで、俺の悪友」
「よろしくお願いします」
　友達のお店なんだぁ…。思いながら、お辞儀をする。
「さて、それで今日は何を探しに来たのかな？」
　海坊主もとい桜井氏は、不遠慮な視線であたしのことを上から下まで眺めてからニヤッと笑って聞いた。
「えっと…」
　隣に立つ佐伯さんを見たけど、佐伯さんはあたしを見て首を傾げ、
「理香子は何が欲しいんだっけ？」
　って言う。意地悪だな。
　あたしが言うようにって昨日から決められてはいたんだけど…。
　顔が赤くなるのが分かる。
「うん？なんですか？」
　からかうように海坊主があたしの顔を覗き込む。
　ここで恥ずかしがったりするのって、なんだか悔しい。
　あたしは息を吸い込むと、
「バイブに、アナルパール、リモコンローターを見せて下さいっ」
　半分やけになって言いきった。

　一瞬の間があって、
「これはなかなか気の強そうなお嬢さんだ」
　海坊主は、面白そうに笑い出した。
「ロータは新製品でいいのが入ってますよ。アナル用の商品はそこの棚に。種類はそんなに無いかなぁ」
　示されたショーケースには、不思議な形の物が並んでいた。
　徐々に大きくなるいくつかの球が連なっていて…電動で動くのと、動かないのがあるみたい。ピンクや水色や、可愛い色なんだけど、その使い道を考えると、暑くもない店内なのに汗が出てくる。
「どれが欲しい？」
　ケースを覗き込んで、佐伯さんが聞く。
「どれって言われても…」
　困るんですけど…。
「素材が柔らかいのがいいね」
　そんなことを言われても…。佐伯さんはこういう物にも慣れてるのかな…。
　誰に、どんな風に使ったんだろうって考えてあたしの胸がざわつく。
「初心者？それならこっちが無難かな」
　海坊主が右端の綺麗なピンクのボールがいくつも繋がってるのを指差す。
「それからバイブは…おーい、百合絵〜」
　海坊主が店の奥に声をかけると、
「はぁい」
　か細い声がして、髪をアップにまとめ、チャイナドレスを纏った女性が姿を現した。
　チャイナって言っても…なんつーチャイナよ。
　赤と黒の布地はシースルー素材で、彼女は下に何も着けていないから、細い肢体にしては豊かな乳房の先端にピアスが揺れているのも、恥ずかしい割れ目も全部透けて見える。ヘアを綺麗に剃ってあるのもはっきり分かる。
　見てるあたしの方が恥ずかしくなる。
「百合絵さん、久しぶりだね」
　佐伯さんが声をかけると、淡い笑みを浮かべて百合絵さんは丁寧にお辞儀をした。
　儚い感じの可愛い人だな…。
「バイブをいくつか見せてくれないかな？」
「はい…」
　小さく答えて頷くと、百合絵さんはお店の奥からバイブが何本も乗った朱塗りのお盆を持って来た。
「お嬢さんはどれが好きかな？好きなのを試してみていいぞ！」
　耳元で、でっかい声。そんな大声で言わなくても聞こえます。
　…っていうか、試していいって…。
　あたしがうろたえて佐伯さんを見ると、
「試してみれば？理香子が持ってるのはどんなのなんだ？」
　さらっと言われた。
　持ってるなんて…言ったっけ。あ…言ったことあるかも…。
　頬が赤くなるのを止められない。
「どうする？太いのがいいだろ？手に取って動かしてみれば？」
「わかんない…なんでもいい……」
　からかって楽しんでるのは分かる。分かるのと、恥ずかしいのは別物で…。
「試してみないと、どれがいいか分からんだろ？」
　追い打ちをかけるように、海坊主が言う。
　あたしが答えに困っていると
「百合絵」
　海坊主は百合絵さんの名前を呼んで
「お前が試してお見せしなさい」
　とんでもないことを言いだした。
「はぁ？」
　あたしが間抜けな声をあげるのと同時に
「はぃ……」
　百合絵さんはポッと頬を染めて返事をすると、お盆をショーケースの上に置くと、乗っていた中で一番太いバイブを手に取った。
　え……え……？
　呆気にとられてるあたしと、あたしの隣に立つ佐伯さんを交互に見て、百合絵さんは軽く一礼する。
「百合絵の身体で…お試し致します。こちらの商品でよろしいでしょうか？」
「あぁ、お願いしようかな」
　佐伯さんが軽く答える。
　お願いって…えぇぇ？
　言葉も無く見つめるあたしの目の前で、百合絵さんは大きく開いたスリットに手を差し入れて、チャイナドレスを捲り上げる。
　ヴィ………ン
　反対の手でスイッチを入れると、バイブが細かく震え始める。
「こちらは…スイッチで３段階に動きが切り替わります…」
　説明しながら、さっきまでより脚を少し開いて、バイブの先端を股間に当てる。
「ぁぁ……」
　小さな、甘い声。
　うわ……聞いてるあたしがぞくっとしちゃう。
　きっと、バイブの震えがクリに当たってるんだと思う。
　百合絵さんは、いつもこうやってお客さんに見せてるのかな…。
　なんか…すごい…。
　ドキドキしちゃう…。
　少しずつ、バイブの先で割れ目をなぞってる。
「は……ぁ……震えが…気持ちいい…ですぅ…」
　潤んだ瞳が、あたしを見る。
　あ…やだ……あたしまで濡れちゃう…。
　百合絵さんの腰がゆるやかに前後に揺れはじめる。
「おま○こに…入れますぅ……」
　腰を前に突き出すようにして、バイブを挿入していく。
　まだ、滑らかに入るまで濡れてないのか、少しきつそうに、眉根を寄せて。
「ふぅ……ぁ……ん……」
　ゆっくりと、バイブが百合絵さんの中へ入っていく。
　ウィンウィンウィン…
　音が変わったので、スイッチを切り替えたのが分かった。
「あぁぁ……百合絵のおま○この奥で……動いてますぅ……」
　百合絵さんの細い腰が淫らにくねる。
　すごく……厭らしい眺め……。
　あたしは思わず佐伯さんの腕にしがみついて、唾を飲み込んだ。
「おま○この中で……暴れて……すごいですぅ……」
　また、音が変わる。
　ヴィンヴィンヴィン……
　さっきよりもっと早いリズムで、濁った音で。
「あぁ…ん……クリトリスにも振動が……いぃ……っ……ぁはぁっ…」
　頭を何度も大きく後ろに反らし、百合絵さんは立ったままで挿入したバイブを動かし続ける。
「はぁ…はぁ……ご主人さま……百合絵………逝きそうです…」
　腰を揺らしながら、百合絵さんが海坊主の方を見る。
「もうか？少しは我慢しなさい」
　海坊主は答えながら、あたしの方をチラッと見た。
「っふぁ…はい……ぁぁ……いぃ………」
　腰の動くリズムが速まる。
「百合絵、商品のご説明は？」
　海坊主に促されて
「おま○ことぉ……クリ……一緒に…気持ちいいです……ぁん……太くて…おま○この中……きつくて……ぁぁぁぁ…」
　身悶えしながら説明してくれる百合絵さん。
「ご主人さま……もう……あぁ……百合絵のおま○こ……逝かせてください……」
「ん。じゃあ十数えてから逝きなさい。ゆっくりだよ」
「はい……いち………にぃ……んんっ…」
　なんか…すごくて……見ている間に、あたしのあそこはたくさん濡れちゃってた。
　早く二人きりになって、佐伯さんに抱かれたい…。
　佐伯さんの腕をぎゅっと抱きしめて、胸を押し付ける。
「はちぃ……きゅぅ……ぁぁ……逝きますぅ………っ！！」
　海坊主に言われた通り十まで数えて、百合絵さんは大きく仰け反って絶頂を迎えた。

　こういう気分を『毒気に当てられた』っていうのかな。
　百合絵さんおすすめのバイブと、アナルパール、その他、えっ…こんなのも使うの？みたいな物まで購入してお店を出た時には、あたしは妙にぐったり疲れていた。
　車に戻り助手席に座る。
「どうだった？」
　車をスタートさせながら佐伯さんが聞く。
「どうって…何が？」
「何って…いろいろ」
「なんか…すごくて。ドキドキしちゃった…」
　感想を聞かれても、百合絵さんの痴態しか覚えてない。
「彼女は桜井の奴隷で、あれはお客さん用のパフォーマンスだからね」
　奴隷かぁ…。佐伯さんもあたしに、ああいう風になって欲しいのかな。
「ああいう…儚げな人が好き？」
　運転する横顔に聞いてみる。
「いや…俺は理香子みたいにちょっと生意気そうな子が好き」
　好きって言われたのを喜ぶべきなのか、悩む発言だなぁ…。
「あたし、生意気かなぁ？」
「んー…苛めるとすぐ素直になるけどね」
　むぅ…。あたしがちょっと膨れていると
「買って来た物、開けてごらん？」
　ちょうど信号待ち。佐伯さんは身体を捻り、後部座席に置いてあった紙袋からローターの包みを取って、あたしの膝に乗せた。
「せっかくだから、今日はこれ着けてデートしよう」
「え…」
　佐伯さんの左手が、腿をすぅーっと撫でる。
　スカートの上から股間を指で弾く。
「理香子のここは準備できてるだろ？」
「ぁん…」
　準備……百合絵さんを見てから、ずっとあそこがうずうずしてはいるけど。
「さっきも百合絵さんと一緒に、腰をもじもじさせてたもんなぁ」
「そんなことないもんっ」
　どうしてそういうこと言うかなぁ……顔が赤くなっちゃうじゃない。
「ローター出してごらん」
　あたしが躊躇っている間に、信号は青に変わって再び車は発進した。
「ほら、早く」
「…でも……」
「出しなさい」
　佐伯さんの低い声で、命令形で言われると、なんだかびくっとして…子宮の奥がじわぁっと疼く。
　ペパーミントグリーンのローターを包みから取り出す。勾玉を潰したような、ちょっと変わった形。
　端が少し膨らんでいて、この膨らみがちょうどいい感じに当たるんだって海坊主が説明していたのを思い出す。
「下着をずらして入れなさい」
「え……ここで…？」
　休日の国道。それほど混んでもいないけど、対向車も通る。時々車が並走することもあるのに…。
「そう。スカート捲り上げて、下着の脇から入るだろ？」
「やだ…外から見えちゃうよ」
　助手席で、脚を開いて、ローターを挿入する自分を思い浮かべる。
　すごくやらしくて……きっとすごく感じちゃう…。
「みんなに見せてあげたらいいよ。理香子の脚、綺麗だし」
「だめ…出来ない……」
　声が…小さくなる。欲情してるのが…佐伯さんに分かっちゃうのはイヤ…。
「理香子、見られると興奮するだろ？」
「そんなこと…ないもん…」
　俯いて顔を横に振る。
「入れなさい」
「や……」
「理香子」
　名前を呼ばれただけで、腰のあたりがぞくっとする。
　脚を少し開く。
　ワンピースの裾をそろそろと捲る。
「そうそう。いい子だ」
　運転しながら、あたしの頭をポンポンと叩く。
　佐伯さんと会う時は、いつもガーターストッキングにしてるから、下着を横にずらしやすい。
　入れなさいって命令された時から、あそこは蜜を溢れさせていて、指先で軽く押さえるとローターを呑み込んでいく。
「………はぁ……」
　あたしの中にローターが収まる。内側から圧迫される感じに溜息が漏れる。
「リモコンはこっちに」
　言われて、リモコンを佐伯さんに渡す。
「これ、動かすとどんな感じ？」
　片手はハンドルを握ったままで、片手でスイッチを入れる。
　あたしの中で曇った振動音を発して、ローターが震えだす。
「はぅ……」
　たしかに海坊主が言ってたように、奥の方に振動がいい感じで伝わるみたい。
「変な感じ……」
　とろーんとした気分になってくる。
「理香子、脚はシートに上げて」
　佐伯さんが命令する。
「や……恥ずかしい…」
　あたしは首を振る。
　首を振りながらも、もっと恥ずかしい命令されたい…って思っちゃう。
「ほら」
　軽く、膝の裏を持たれて促される。
「ぁん…」
　運転しながらの手に抵抗できないはずは無いんだけど、あたしは靴を脱いで右脚をシートに上げる。
「反対も」
「やだ……」
　もう一度首を振ると、佐伯さんがスイッチを操作した。
　ローターの動きが一瞬強くなって、すぐに止まる。
「んぅ……」
　ヒクッと膣壁が動いて、ローターを締め付ける。
　振動しないローターは、すごくもどかしい。
「動かして欲しい？」
「ん……」
　今度は素直に頷く。
「両脚、シートに乗せたらね」
「はぃ……」
　脚をＭ字に開いた状態で、シートに乗せる。
　今日の下着は水色で、きっともう色が変わっちゃってると思う。
　シートを汚しちゃったらやだな……。
「よく出来ました。今、対向車の人が笑ってたね」
「え…そうなの…？」
　対向車なんて…気がつかなかった。
　なんて思ったかな…こんな風に車の助手席で脚を広げてる女を見て。
「嘘だよ。このスピードで気付く人は滅多にいないって」
　軽く言うと、佐伯さんがまたスイッチを入れる。
「はぁぁ……」
　振動が、Ｇスポットに当たって…気持ちいい…。
「ぁん……ん……」
　あたしは両膝を手で押さえて、腰をピクンピクンと動かす。
「そのまま、しばらく感じるといいよ」
　佐伯さんは膝にリモコンを置くと、両手でハンドルを握り直す。
　気付くと、少しずつ周りを走る車が増えてる。
「や…佐伯さん……見えちゃう……」
「脚、下ろしたら駄目だよ」
　あたしの訴えはスルーされる。
「………ふぅ……」
　気持ちいいけど……ローターの振動は弱くて、これだけじゃイケそうにない。
　バイブみたいに太くないし、出しいれして膣壁を擦るわけじゃないから、すごく中途半端な気分。
「………ぁ……んぅ…佐伯さん……」
　何かをねだりたいんだけど…どうしていいのか分からない。
　あたしは切なく腰を揺らしては、運転を続ける佐伯さんを見つめる。
　佐伯さんは時々面白そうにあたしを見るけど、そのまま車を走らせる。
「どうだ？ずっと逝けないのも、なかなかいいだろう？」
「意地悪ぅ…」
　あたしの状態、分かっててそのままにしてるんだ。
　意地悪されてるって分かると……余計に蜜が溢れちゃう。
「ね……人が……」
　車は市街地に入って来て、時々歩行者の姿も見える。
「恥ずかしい？これでもかけとくか？」
　信号待ちの時に、ダッシュボードから出したサングラスをかけてくれた。
　ローターの振動はずっと変わらず続いていて、あたしは腰を捩ったり、もじつかせたり。
「自分で逝きなさい。それまでずっとドライブしてあげるから」
「そんなぁ……」
　あたし、泣きそうになる。
　今のままじゃ、いつになったらイケるのか分かんない…。
「これなら逝ける？」
　ローターの振動が強くなる。
「ぁ……はぁぁぁ……」
　腰がビクビク跳ねる。
　いぃ……気持ちいぃ…このまま……逝きたい…。
　あたしが、窓の外に他の車が通ることも忘れて、腰をくねらせはじめた途端、佐伯さんがローターのスイッチを切る。
「んぅ……」
　ひどい…。もどかしくて、もどかしくて…自然に片手が股間へ伸びる。
「…お願い…佐伯さん……動かして……」
　ショーツの中へ手を入れて、指先でクリトリスを摘む。
　溢れた蜜でもうぬるぬる。
　反対の手はワンピースの上から乳房を揉む。
「そう。厭らしい理香子がいちばん可愛いよ」
　佐伯さんは優しく笑うと、ローターのスイッチを入れてくれた。
「ぁはぁ……ぁん……いぃ……」
　腰を揺らし、指先でクリと花びらの辺りを捏ねる。
　脚をダッシュボードに突っ張る。
　恥ずかしい…こんな格好で…車の中で……。
「ぁぁぁ…んん……イっちゃぅ………ぁはぁ……」
　もうすぐ……あと少し……。
　あたしの中で、快感の波が弾けそうになった時、ちょうど車が交差点を右折した。
歩道を歩く、数人の男女が視界に入る。
「ひっ……ぁ………………」
　体温が一気に何度も下がったような気がした。
　楽しそうに笑いながら歩く男女のグループ。
　その先頭…………。
　一瞬、目が合った気がした。
　車はすぐに交差点を抜けて、スピードを上げる。
「んぅ………」
　あたしの中ではまだローターが震えていたけど、あたしの指はクリの上で止まってしまった。
　あれは……見間違いとか、似てる人とかじゃなく、達也だったと思う。
　心臓がドクドク音を立てる。
　達也は、あたしに気付いたかな。
　サングラスしてるし、新しいワンピだし…気付くわけないかな。
　こんな風に、自分の彼女が知らない男の車の助手席でオナニーしてるなんて、夢にも思ってないかな。
「…や……もうだめ………」
　じわっと涙が溢れて来た。
「ん？どした？」
　佐伯さんが車を路肩に寄せて停める。
「緊張しすぎて逝けないか？」
　頭を優しく撫でて、脚を戻してくれる。
「佐伯さん……抱いて…。もっと……ぎゅうって…抱いて……」
「よしよし。ドライブは終わりにしような」
　佐伯さんは、泣きじゃくりはじめたあたしの頬に軽くキスをして、柔らかく抱きしめてくれた。
「二人で、さっき買った玩具を順番に試そうか」
　耳元で囁いて、佐伯さんは再び車を発進させる。
　佐伯さんの低い声…すごく好き。どうしようもなく好き。
　動きを止めたローターを、あたしの膣はヒクヒクと締め付けた。