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①
「お電話ありがとうございます。総合商事でございます・・・・はい、おります少々お待ちくさいませ・・・」
「三倉課長、イナセ機器の伊那瀬社長からお電話です。」
営業事務の幸田遥は、そう言うと三倉への転送ボタンを押した。
「ありがとう・・・お電話代わりました、三倉です・・・」
遥は今年入社２年目２２歳の新米営業事務である。短大を卒業し、厳しい就職活動を経て、憧れの総合商事に入社したのだ。配属先は今いる営業一課で、三倉は直属の上司になる。入社以来、三倉の仕事振りには尊敬の念を抱いてきた。大きな契約を次々と決めていく三倉のおかげで、遥の仕事は多忙を極めるが、営業事務がなければ三倉の仕事もうまく回らない。遥はひそかに三倉の片腕であることに満足していた。
”また、大型契約が決まるわ・・・”
遥は、電話の相手であるイナセ機器が、三倉と取引を開始することを確信していた。
三倉純也は今年で４０歳になる営業課長である。総合商事の看板部署である営業一課を率いている。仕事が忙しいせいかいまだ独身であるが、身長１７８センチで細身、自信にあふれた顔つきで、社内でも女子社員のひそかな憧れの的である。遥もそのうちの一人だ。
「・・ええ・・ええ・はい、社長ありがとうございます。では、明日の１３時に御社に書類をお持ちします。」
電話をおくと、三倉は遥の方を振りかえり、右手の親指を立てて見せた。
「課長、決まったんですか？」
返事はわかっていたが、遥はあえて聞いてみた。
「うん、なんとかね。幸田さん、すまないが契約書類作ってくれないか？内容はこれで・・ね」
「はい、もちろんです！課長すごいですね。この契約・・・すごい！」
遥は我がことのように喜び、満面の笑みを三倉に向けた。
「まあ、これで何とか月末の飲み会には大手を振っていけるよ。」
「すごいな～。浮かれて飲みすぎないでくださいね。」
「はは・・そうだな、でも飲み会は金曜日だろ。少々飲んでも次の日は休みだから・・な！」
「ああ、そうかあ～」
今月末は久しぶりに課の全員で、飲み会をすることになっていた。
「課長の酔っ払うとこ、見れるんですね。」
「ああ・・久しぶりに飲むぞ！あ、そうだ・・・」
三倉は遥に近づいて、声を落とした。
「幸田さん、飲み会の後って誰かと二次会行く約束してるの？」
遥も三倉につられて声を落とした。
「いいえ・・・」
「そうか、よかった。いや実は、前から思ってたんだが、君にお礼をしないとな・・って」
「はあ・・・？」
「それで、もしよければだが、飲み会の後、僕の知ってる店で一杯おごりたいんだけど・・どうだろ？」
今のビジネス環境では、こんな誘い方は一歩間違えればセクハラになる。しかし、受け取る側の女性社員が、不快でなければセクハラではない。厄介なご時世だ。遥は・・・不快どころか・・・
「ええ！ほんとうですか！いいんですか！・・・」
「もしよければ・・・だけど・・？」
「もち！OKです！全然・・・OKですよ！」
遥は二つ返事で答えた。ひそかにあこがれている上司である。
「そう、よかった。じゃ、予約しとくよ。・・・じゃ、書類よろしく！」
「はい！」
遥はやりかけの仕事を脇にやり、書類の準備を始めた。
②
月末の飲み会は盛況であった。営業一課は総勢２４名、営業マン三倉を含め１９人、営業事務が５名の大所帯だ。営業事務は全員女性社員である。その全員が参加したのだ。
三倉が２時間に及んだ飲み会の締めをし、みんな店の外に出た。
「課長！課長！いきましょうよ！ねえ、ねえ・・・」
何人もの営業マンや女子社員に、そう声をかけられたが三倉は答えた。
「いや～ワルイ、ワルイ。今日はちょっと・・帰らなきゃ・・だめなんだ。」
遥は、それを聞くたびにドキドキした。”私のために断ってくれてるんだわ・・・”
その時、遥は肩をたたかれた。ビクッとして振り向くと同期営業マンの片桐がいた。
「幸田はどうすんだ？」
若手でカラオケに行こうという話で盛り上がっていたのだ。
「ううん・・今日はだめなの。」
「ええ！マジかよ。何だよ、なんかあんのか？」
「ちょっと・・・帰らなきゃ・・」
「帰るって、お前一人暮らしジャンか！」
「あ、でも、ほんと、今日はだめなの」
「ええ～付き合いワリぃなぁ・・」
「ごめん・・」
「しょうがねえ、じゃ、こんどな！」
「おい、片桐！いくぞう～」
一人の先輩社員が片桐を呼んだ。
三倉と遥を除く全員が、二次会に向かいだした。
三倉は遥のそばに寄りささやいた。
「よし、今のうちだ。いくぞ！」
「は・・はいっ！」
三倉と遥は皆と反対方向に止まっているタクシーに滑り込んだ。
「成功、成功！」
三倉は右の親指をグッと立てた。
「フフッ・・・ですね！」
遥も同じように右の親指を立てた。
「で、課長、どこにいくんですか？」
「ああ、言ってなかったね。ちょっと面白いバーみたいなとこだよ。」
「へ～・・・面白いバーって・・・」
遥が聞こうとしたその瞬間、
「三倉さん、どちらまで・・？」
運転手が聞いた。
「うん・・・クラブノー・アイズまで」
遥は後ろを振り返り、二次会に流れるメンバーたちを眺めていた。
三倉と運転手の短い会話は、遥には届かなかった。
１５分ほど走ると、タクシーはある建物の前に止まった。
「ついたよ」
「・・え、ここ？」
その建物は洋館風の二階建て一軒家である。おおよそ飲み屋には見えない。一階の窓には暖かい色の灯りがともっているが、二階は電気が消えている。
遥は、バーといえばどこかのビルの一室、という想像をしていたためこんな店があるのかとやや不安になった。
「大丈夫、ここは僕がよく行く店でね・・落ち着けるよ。」
「ここ、本当にお店なんですか？」
「ああ、入ればわかる。仕事の接待なんかでもよく使うんだ。」
「あ、そうなんだ。」
そう聞くと、遥は少し安心した。接待で使うからには、それなりの店に違いない。むしろ一軒家が丸ごと店ならば、むしろ、高級な店のように思えた。
”コツ、コツ、コツ”
三倉は玄関の扉についている、鋳物製のドアノッカーを鳴らした。
「はい・・・どちらさまですか？」
中から声がする。
「三倉だ」
ドアが静かに開いた。
店の中は、正面に長いカウンターがあり、壁にはボトルが一面に飾ってある。大きいが低いテーブルとソファのセットが６セットおいてある。さながら高級サロンのようである。しかし、客はいない。
「いらっしませ、三倉様。お待ちしておりました。」
背の低い細身の５０代だろうか、蝶ネクタイをし、真紅のベストを着た小奇麗なマスターが声をかけた。
「久しぶりだね、マスター。」
「はい。」
「今日はかわいいお客さんと一緒なんだ。」
三倉はそう言うと、遥を見た。
「いらっしゃいませ。きれいなかたですね。」
マスターにっこりとし、遥を見た。
「こんばんは。」
遥はペコリと頭を下げた。その様子がおかしかったのか、マスターはさらに大きな笑顔を作り、遥の全身をすばやく見た。
遥はベージュのスーツ姿だ。身長は１６０センチで、体重は５２キロある。ダイエット中である。
バストが９０センチもあり、遥の悩みの種だ。普通に街を歩いているだけで、ジロジロと胸元を見られるのだ。そのため、普段は豊かなバストが目立たないような服を選んで着ているが、今日は、三倉との約束にあわせて、一番のスーツを着てきたのだった。腰元がきゅっと締まるデザインのため、余計にバストが強調される。
「こちらへどうぞ。」
マスターは二人を先導し、階段を上がり始めた。
「二階・・・なんですか？」
遥は三倉を見上げて言った。
「うん、予約したからね。２階がリザーブ席なんだ。」
二人が通された部屋は四畳半くらいの部屋だった。やはり、大きな低いテーブルを大きめのソファが２脚あり、テーブルの上には”リザーブ”と書かれた金属製のプレートと飲み物がおいてある。ひとつはロックグラスに氷と茶褐色の酒が、もうひとつはカクテルだろう、大降りのグラスに氷と鮮やかな水色の液体が入っており、ストローが刺さっている。
「ブルーハワイとワイルドターキーでございます。」
そういいながらマスターは予約のプレートを取った。
「ごゆっくり・・・」
マスターは一礼をすると、出て行った。
ブルーハワイは、遥が必ず注文するカクテルだ。
「わあ～課長～なんで知ってるんですかぁ」
「好きだろ。」
三倉は右の親指を立てた。
③
二人はソファに座り、向かい合った。遥はタイトスカートをはいていて、座ると裾が上がる。膝頭を合わせ、脚を少し斜めにした。
「課長、ここってナンカ不思議ですね。」
一口カクテルを口に含み、遥が言った。
「そうかい？」
三倉はロックグラスの中の氷を人差し指で回している。
「だって、誰かの家みたい・・・それに金曜日の夜なのに・・」
「客がいない・・・って？」
三倉は後を次いで、笑いながらターキーを一口含んだ。
「この店はこれから忙しくなるのさ。」
「あ、そうなんだ。遅くまで開いてるんですか？」
「そう、一晩中ね。」
三倉は笑っている。
遥は部屋に入ってからずっと、気になっていた。
部屋はほぼ正方形である。しかし、その壁は床から１メートル２０センチくらいの高さまではガラス張りなのだ。ガラスの向こうにはベルベットのワイン色のカーテンが見える。その上は白い壁である。
「課長、この部屋の壁って、なんだか・・・」
「不思議・・だろう？」
「ええ・・だって、壁の下がガラスで・・。カーテンがあるし・・」
そう言うと遥は、ピクッと首を上げた。
「カーテン！って、向こうは部屋・・！？」
「いや、部屋じゃない。通路だよ。」
「つう・・ろ？」
何がおかしいのだろう、三倉はさっきからずっと笑っているのだ。
「そう、通路になっているんだ。わかりやすく言うと、漢字の『回』の字があるだろう。」
「はい・・・」
「その『回』の字の字画のような構造になっている。われわれはその中の四角にいるってわけだ。」
「？？」
「わかるかい？部屋の中にもう一回り小さな部屋があって、その中にいる・・・」
「じゃあ、四方は通路・・・？」
遥は四方を見渡した。四方の壁も同じように下がガラス張りで上が白壁である。
「そういうこと。さすが理解が早いね。」
三倉は、うれしそうにターキーをすすった。
遥は落ち着かなくなった。こんな部屋に入るのはもちろんはじめてであるが、それ以上に遥を不安にさせたのは、三倉の表情である。この部屋に入って以来、ずっと笑っている。普段会社で三倉が見せる笑顔とはまったく違う。目を細め、ずっと遥を見据え、口元をニヤニヤさせているのだ。
「あの・・・課長・・」
「落ち着かないんだね？」
「はい・・・」
「そう、みんな最初はそうだ・・・落ち着かないんだよ。」
遥は三倉の言葉に弾かれた。
「！・・みんな・・って・・・？」
三倉はますます笑いながら言った。
「もうすぐわかるよ。きっと君も好きになる・・・」
遥は立ち上がろうとした。その瞬間だった。
周りの通路に人が入ってくる足音が聞こえてきた。
”カツ、カツ、カツ・・・ドン、ドン、ドン、・・・ズ、ズ、ズ・・”
人が歩いて入ってきている。一人ではない、かなりの人数だ。板張りの床がキイキイきしむ音がする。
「うっほん・・えへん・・ぐう」
咳払いをする者もいる。その咳は明らかに男性のものだ。しかし、話をする者は一人もいない。ただ、物音だけがするのだ。
「課長！課長！人が・・人がたくさん入ってきます！課長、どうなってるんですか！」
遥の不安は最高潮に達していた。遥は三倉に向かって叫んだが、三倉は脚を組みソファに深く沈み、ロックグラスを持って笑って遥を見ていた。
「わたし帰ります！」
遥はバッグを取って、ドアに手をかけた。
”開かないわ！”
ドアは鍵がかかっている。
「そんな・・・なんなの・・何なんですか！」
遥は振り返り三倉を睨み付けた。
「どういうことですか！課長！説明してください！」
足音は消えていた。しかし、部屋中をぐるっと取り巻く人の気配がしている。一人や二人ではない。十人以上はいるだろう。しかも全員男だろう・・遥は思った。
「説明が必要か・・・な？」
三倉はドアにへばりつく遥を見て言った。
「当たり前です！」
遥は強く答えた。遥の清楚な顔が、怒りで赤く火照っている。
「まあ、座りなさい。」
「いやです！」
「帰ることはないだろう。今来たばかりじゃないか。」
三倉は落ち着いている。
「説明をするから・・身の危険を感じているのか？」
「だって、男の人が回りにいるじゃないですか！」
「そうだな・・いっぱいいるな・・・今日は盛況だ。」
④
遥は三倉を睨み付けていたが、壁の回りに男がいっぱいいる、という三倉の言葉に
反射的に２，３歩部屋の中央に出た。
「君の好きなプルーハワイもまだ残っているよ。」
「何を言ってるんですか！課長！あのね・・・・」
遥はそこまで言って、異様な雰囲気を感じて口を閉じた。
”動いている・・？”
壁の回りにいる男達はじっと立っている様子ではない。何か小刻みに動いている雰囲気だ。何か小さく音も聞こえるが、何の音かまではわからない。
「今日は２０人くらいだな。」
不意に三倉が言った。
「なにがですか？」
「壁の回りの通路には、びっしり２０人いるってことだよ。」
遥は四方の壁を見た。先ほどまでは、ガラス張りの部分にあるベルベットのカーテンは静止していた。しかし、今は、そのカーテンがユラユラゆれている。四方ともそうだ。しかも、不規則な動きで一辺のカーテンでも部分的にまったく違うゆれ方だ。
「ひとつの壁に５人が並んで立っている。４辺だから２０人だな。」
カーテンをよく見ると、人間の膝の高さのところを中心にゆれている。
「よく見てごらん、彼らの膝がカーテンに当たってるんだな・・」
遥は何かを言おうとした、その瞬間、耳に男の吐息が聞こえてきた。
”ハァー・ハアー・ハアー・・・”
「いやあああ・・」
遥は壁から離れるように、部屋の中央に弾かれた。
四方の壁から男たちの吐息がする。
”ハァー・ハアー・・うぐん・・・ハアー・・・”
唾を飲み込む音が混じる。２０人の男の吐息が部屋に充満しだした。
遥は何が起こっているのかまったく飲み込めなかった。はっきりしていることは、２０人の男に薄い壁一枚を隔てて囲まれていることだ。そしてその男達は吐息を漏らしているのだ。
遥は口を押さえ、突っ立っていた。
「ハルカちゃん、手をそんなにしていたら君の綺麗でセクシーな唇が見えないじゃないか。」
三倉は言った。
「ハルカちゃん・・・て、なに・・・」
そういいかけたときに壁の方から
”おおお・・・おおお・・”
と声がした。遥は背筋がゾクッとし、嫌悪感から鳥肌が立った。声の方向を恐る恐る見ると、そこのカーテンはさっきよりも激しく揺れている。ハア、ハアという男たちの吐息はますますボリュームが上がってきた。
「ああ・・説明の途中だったね。」
三倉はそういって立ち上がった。遥は一歩引いた。
「僕も飲んでるからねえ、うまく説明できるかな・・」
三倉はソファの肘掛に腰を掛けた。
「まあ、百聞は一見にしかずって言葉もあることだし、見てもらうのが早いかな？」
”おおお・・おおお・・”
三倉のその言葉に、壁の四方から男たちのくぐもった声がいっせいにした。
「いやああ・・いや」
遥はそういうのが精一杯だった。
「見てもらう前に、一言だけ言っておこう。」
三倉は顔を赤くし、困惑している遥に信じられない言葉を言った。
「壁を取り囲んでいるやつらは、君を想像しながら、オナニーをしているんだよ。」
⑤
「き・・気持ち・・ワルイ・・・」
遥はそう言うのが精一杯だった。
「それじゃあ、見てもらおうじゃないか、諸君！」
三倉の言葉を聞くやいなや、”パチ、パチ、パチ、パチ”とスイッチを入れる音が４つ聞こえた。
”ブイーーーン”という電動の音がし、カーテンが引かれていった。
４つの壁のガラスの向こうには、裸の男達の腹から下が２０体見えた。男達のペニスはみな最高潮に勃起している。あるものは片手でペニスを激しく上下させ、あるものはペニスを弄ぶようにこねくり回していた。ペニスを握り、腰をくねくね回しているものもいる。
「いやあああああああーーーーっっっ・・・い・いやああああーーーー」
遥は半狂乱のごとく叫んだ。
「おおおおーーっっ！おおおおおーーーーっっ・・」
遥の叫び声に、男達の興奮は高まった。
”ニチャ・にちゃ・ニチャ・にちゃ・・・・・”
さすがに２０人もの男達がいっせいにオナニーをすると、いやらしい音が部屋中に響く。”はぁ・ハア・はぁ・・・・”あちこちで男達の喘ぎ声が聞こえてきた。
「いやっ・・・へ・・ヘンタイ・・変態！」
”ああああーーー・・うぐううおおお・・・”
遥の”変態”という言葉に一層男達は興奮した。
遥は耳を両手で塞いで、その場にしゃがみこんだ。
「ハルカ、どうしたんだしゃがみこんだりして・・・」
三倉は笑いながら楽しそうに言った。
「でも、その格好もいいねえ。会社では見られないポーズだ。タイトスカートの裾が上がって、太ももが半分以上見えているよ。結構ムチムチしてるんだねえ・・・」
「そのまま腕を前に持ってくれば体育座りだな・・膝頭も丸くて女性的だよ。」
三倉は遥の格好を描写した。
”はぁ・ハア・はぁ・・・・””ニチャ・にちゃ・ニチャ・にちゃ・・・・・”
”ああああーーー・・うぐううおおお・・・”
三倉の言葉に、壁の中の男達はさらに大きな喘ぎ声をあげた。
「いやっ・・ヘンタイ！見ないで・・」
遥は両腕で膝をかばうように包み込み、上半身を折って太ももを覆うようにした。
三倉はゆっくりと遥の後方に歩いた。
「その格好も素敵だねえ。脚を抱くような格好だ。そうするとお尻の丸さが際立つねえ。大きなお尻じゃないか。スカートがピチピチに引っ張られているよ。」
「いや・・ダメ・・いやあ・・」
遥は泣いていた。男達は絶え間なく自身のペニスを弄んでいる。
部屋の温度が、男達の体温と熱気で少し上がった。
淫靡な男の性のニオイが部屋に充満しつつあった。
「泣かなくていい、ハルカ。君に危害は加えない。それに、ここにいる男達は絶対に壁を破って入ってきたりはしない。」
「・・・・・・・」
遥は”えっ・・えっ・・・”と嗚咽した。””ニチャ・にちゃ・ニチャ・にちゃ・・・・・”男達はオナニーを続けている。
「ハルカ・・」
三倉は遥の背後から両肩を抱いた。
「・・いや・・」
小さく言った。三倉の腕を振り払いたかったが、あまりの衝撃で遥にはその気力がなくなっていた。体から力が抜けたようだった。
三倉は遥を起こし、ソファに並んで深く座った。
「彼らは絶対に入ってこない。本当だ。それどころか、ハルカ、君の顔や体を見ることも絶対にない。」
「なんで・・なんでそんなことが約束できるの。」
精一杯力を振り絞って、遥は三倉に言った。
「彼らは僕がよく知る人たちだ。約束を破る人はひとりもいない。」
遥は顔を上げ、正面の壁を見た。下半身は丸見えだが上半身は壁で隠れている。狂おしい程、５人の男のペニスは天を向き、亀頭はテラテラとあやしくぬめっている。
「でも、見えるわ・・あの人たちが・・かがめば私が見えるわ・・」
「そんな人はひとりもいないよ。絶対に。」
三倉はいつもの優しい顔でにっこり笑って言った。
「それがクラブ・ノー・アイズのルールだからだ。」
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