「凄い！・なんで・？？？」わたし、呆気に取られてたわ。
　目の前に繰り広げられたライブショー！
　わたしの目の前で重厚に続けられる男女の交合。
　見ている方が恥ずかしくなります。
　カメラのレンズはわたしの羞恥の表情を捉えて逃、シャッターの音が響き続けています。

「思いっきりエロチカルな眼の画が欲しいんだ！」それが真咲さんの言い分でした。
　写真家としては、今回の真咲さんより遙かに有名なヌード撮りの写真家さんのモデルをした事もあるから。と、引き受けたセミヌードでした。
　今は２０歳前後の頃のスリムさは失なってしまい、十数年の時の移行がわたしを肉感的にしていたわ。テレビドラマには出ることも少なくなって、映画と舞台が殆どです。
　その映画は、数年に一本のペースでしょう。売れっ子とは云えなくなってしまったわ。
　舞台の方もそう大きな劇場でのものではないのです。
　こうなると、「落ち目」ですよね。
　で、起死回生の常套手段。
　・・・スキャンダルか、何かしらの話題作りです。
　事務所の方がそこいら辺を先読みして、ヌード写真集となったのです。

　今まで水着にもなった事の無いわたしでしたけど、「セクシーな大人の女」として表現することになって、エロティシズムを一人で表現しなければならなくなりました。
　３０にもなった女が乙女ティックな事ばかりも云っていられないし、現実にも多くの事を経験して来ていると思い、事務所の強い圧しに承諾したのです。
　それでも、多少の演技は経験あるものゝ、セクシャル表現をどう表せば良いのか？本当の処が分かっていませんでした。

　大体ヌードに「自然態を出したい。」とか、「リアリティーが・・・！」なんて、カメラマンと編集者は云うんですけど、わたしが自然に衣服を脱ぎ捨てた場面を思い返してみると、お風呂にはいるとき以外は下着の着替え位しか思い浮かばないんです。
　・・・って事は、ヌードになる事自体が不自然だって事でしょう？

　彼を誘惑する時だって、始めからフルヌードにはなりませんもの！
　その時だって、彼がチャンとわたしのお相手をしてくれるって分かってからだわ。
　だって、それ以前に裸になると、退かれちゃう危険もあるもの！
　必然が無いんですよね、生活上でヌードになることは・・・
。
　・・・それなのにリアリティー・・・？

　ともかくヌード撮影を承諾してしまった以上、これはお仕事ですから何か考えない訳には行きません。
　カメラマンさんは、「屋外で自然の中の息吹を・・・。」と、望まれたのですが、わたしにはどうしてもその必然を思い付かないのです。
　納得できませんでした。

　出版社と事務所からの「セクシーな大人の女」との要望ですから、「屋外」にも「自然の中」にも必然性が無いのです。
　今までのわたしのイメージは「都会的」であったと思っていますので、余計に必然を感じないのかも知れません。
　「ギャップのおもしろさ・・・」となりますと、「バラタレになれっ！」と云われているようで、「抵抗を感じます。」と、わたしは賛成できない旨を伝えたのです。

　プロデューサーさんの提案で、読者を彼に見立てて、誘惑するストーリー仕立てに落ち着きました。
　ですが、わたしは今までの数人の彼との場面でも、わたしがフルヌードになるのは、やはりお風呂に入るときかベッドの中でした。
　殆どの女性はわたしと同じではないかと思っていましたし、友達との話でもこれは裏付けられていました。

　殆どの女性は自身の姿態に自信を持てない処を持っています。
　フルヌードではその部分を含めて晒け出す事になりますので、身を切られるような恥ずかしさを感じるのです。
　相手の方がわたしの好きな方。なら尚更、自信の無い処は見せたくないものですもの。
　ですから、『恋人を誘惑する。』としても、フルヌードは不自然です。

　わたしも「女性」ですし、「女性」は人間ですから性欲も人並みにはある積もりです。
　それでも羞恥心は大事な感情ですし、羞恥心無しにはエロティシズムは表現出来ないとも思っていましたの。
　それで、随分考えたのですが、幾ら考えても、「開ッ広げなエロティシズム」って、思い付かないんですよ。
　それは、秘められたモノであるからこそ、エロティシズムが生じるからではないでしょうか？

　スタッフに云われるままではキッチュ（猥褻）になってしまいます。裏通りの娼婦が日の当たるところで同じ事をさせられているような、あり得ないシーンばかりをイメージしてしまって、とても自然だとは思えないんです。
　「エロティシズム」は秘められた中でこそエロティシズムなのよ。「秘める処の無いヌードは猥褻。」と云うのが、わたしのイメージだったのです。
　それは多分、間違ってはいないだろうと、思っています。

　撮影は、新宿副都心にあるビルの最上階、ロマンティックなレストランの一角から始まりました。デートの食事シーンからです。レンズが彼の目の変わりです。
　幸いカメラマンの真咲さんは、チョット彼には歳を取りすぎていましたけれど、わたしのかつての隠し恋人だったのです。
　タレント魂で、カメラマンの真咲さんを「今でも彼氏」と思うようにすると、演技することが楽に出来る筈でした。

　フラッシュの連続発光には、演技を停められてしまいそうでしたが、一回だけのＮＧで、ホテルのお部屋へ入るシーンからが本当の正念場になりました。
　お部屋の中での撮影でも、定常光の補強程度にフラッシュを使うようにお願いしていました。
　お部屋の雰囲気を壊したくなかったのですね。

　わたくしの全身をハッキリ見せることより、お部屋の中の雰囲気を生かして下さらなければ、「自然な誘惑」の雰囲気は無くなってしまいますもの・・・。

　お陰でアシカメさんには、大きなブーム付きフラッシュの移動が大変になってしまったのですけど・・・。見せて頂いた、映画の中の１シーンのようなポラロイドに殆ど満足でした。

　エロティシズムですけど、女性の一番エロティカルな表情って、やはりセックスの最中でしょう？それもエクスタシーの中・・・。
　本来、見せるためにその表情をしたことの無いわたしには、どんな表情がその表情なのか分かってはいませんでした・・・。
　あの最中の自分の顔を見詰める事なんて、全く無かったんですもの。

　「嵌め撮り？・あんなのは『その最中だよ！』って云う状況作りで、表現としては満足できない。」って、真咲さんも云って下さっていたんです。
　正直「ホッ！」と胸を撫で下ろしていました。
　わたくし・ＡＶの女優ではありませんし、お仕事で、最もプライベートな部分まで犯されては溜まりませんもの！

　で、あの最中の人の顔って、一人一人表情が違いますでしょう？・同じ人でも状況によって表情が違ったりするモノだと考えています。お相手が誰でも、どんな状況であろうと、いつも同じ表情でいる訳ありませんものね。
　「本当のエクスタシー中の表情」なんて、存外普通の顔しているものですよ。
　でも、それらしい表情をしなければならないのです。
　自忘失の表情ですよねぇ・・・。
　それでいて身体は緊張している・・・？
　・・・理屈は分かっています。わたしだって経験無い訳ではありませんから。
　想い人に抱かれて満足する恍惚感・。
　それは心の通じ合った満足感だと思っています。

　それでも女の性の悲しい部分も認めない訳にもいきません。
　心が刎ね付けようとする人に抱かれても、エクスタシーに墜ちることはあるのです。
　悲しみ一杯の忘失・・・・。
　余程の事でもなければ、これに出会うことは先ず無いでしょう。
　トップゝロのジゴロでも、心を寄せない女性を頂点に導くのは、至難の業だと聞いていますもの。

　女性一人ひとりの意識も、男性のそれと同じように非常に個性的です。・・・人間なんですから。
　ですからわたしはわたしのエクスタシーを表現しなければならないんです。
　「この女性なら一夜を共にしたい！」多くの男性達にそう思って貰えるような・・・。
　いいえ！・たった一人で良いわ！・・・私が愛する人・・・だけで。
　でも、「どうすれば良いかしら？」って思っていました。
　わたし自身がエロティックな気分に浸っているだけでは、多くの女性も、女性同士では色っぽい話もする事があります。
　見た目の良い人もそれ程でもない人でも関係なく、男性の加わらない処では、かなり辛辣な話になる事さえあります。
　虚言としか思えないお話もありますし、誇張し過ぎの事も・・・。
　でも、それがエロティックな気分にさせてくれるかというと、必ずしもそういうものではないのは、男性でも同じだと思うんですよ。

　可成りかたくなだと思われていましたわたしに、そんなポーズをさせるには、何が出来るか？わたしに男性を誘惑するポーズと表情をさせたい真咲さんは、色々考えたようです。
　カメラマンさんとは云っても、初めてお会いした訳でもありません。
　それどころか、かつて何度か肌を合わせた事さえある人なんです。
　２０年以上前とはいえ、わたしの性愛での反応の仕方をある程度知っている訳ですから、わたしのこの点に関しては、他のカメラマンさんより長じているのは当然でした。

　真咲さんは、昔はいろいろな人と浮き名を流したのです。
　それも仕事柄、見目麗しい諸世の女性との出会いが豊富でした。カメラマンとは云っても男性ですから、毎日出会う美人についフラフラと・・・？
　それは、責められない感情の働きかも知れません？
　市井の人々が垂涎の的とする女性達が撮影の為とは云え、真咲さんの前で霰も無い姿を疲労する事もあるのですから！
　わたしも、そう云う多くの女性の中の一人だった。のだと思って、諦めていました。
　だって、本当は真咲さんの、わたしの機微に触れる思い遣りに凄く惹かれていたのです。

　昔は天成の女優と呼ばれたほどわたしは、仕事とプライベートの境の無い演技の中に居ました。今は昔程ではありませんが、それでもプライベートでも演技している部分はあります。
　「一頃ほどはパパラッチ天国ではなくなった。」とは云いましても、プライベートの無い仕事です。プライベートの部分にこそ、注意を怠る事ができないからです。一瞬の油断がわたしの他人眼に曝してはならない姿を写真にされ、総てを奪い去る事にもなるかも知れないのです。
　それがパパラッチの仕事です。

　そんな部分を持つ女優のお仕事をしているのですから、プライベートとは云っても完全なプライバシーの秘匿は難しいのです。
　事務所から云われるまでもなく、何処から狙っているか分からないパパラッチ。
　どんな時であっても、人様に見せてはならない行動は見せない様に演技していました。
　真咲さんと会った時だって例外は許されないんです。
　女優って、そんなお仕事なんですもの！
　上手くパパラッチには餌食にされないで済みましたお付き合いでしたけど・。
　
「レイさん、・・・チョット違うんじゃない？」情緒を富ませるＢＧMが静かに流れ、る中、カメラマンの真咲さんの声が混じって聞こえました。
「えっ・・・？」わたしの心が止まりました。
「ご主人の事を考えていたでしょう？」
　ＢＧMが止まりました。・アシスタントさんが止めたのです
。
「この写真集ね、一応メイン購買者を２０代後半と考えているんです。・レイさんより大分若いでしょう。・レイさんの方から誘惑してくれないと動けないんですよ。」
「どういうこと？」
「ご主人をお誘いする控えめな誘惑では、若い人には通じないんです。・若い人はダイレクトでないと・・・。」
「そうか！・でも、わたしがそんなにダイレクトに誘ったら、引かれちゃうんじゃない？」
「わたしだったら、今のレイさんの演技の方が良いんですけれど、やっぱりこの手の誘惑演技は難しかったんですよね？」
「アシさんは、傍に居るだけで良いんだものね？・・・そう・？もっとダイレクトにねぇ・・・？」
「若い人たちはわたし達より遥かにビジュアルに浸かっていますし、今の世はお誘いビジュアルが氾濫していますからねぇ。ちょっとやそっとじゃ反応しませんよ。」アシさんは続けました。
「・それって、若い人を軽く見ていない？スタジオさんどう思う？」どう見てもまだ２０前後のスタジオ・アシスタントさんに、目を見て声を掛けたの。
　カメラマンさんのアシタントさんは、こんな時にはカメラマンさんの意見に賛成しなければならないでしょう？
「俺はぁ・。ゾクッとしたんですけどねぇ。・レイさんのファンだったんでその所為かも知れません？俺は、レイさんでしたら、傍に来られただけでゾクゾクしてしまいますから・・。」アシスタントさんがファンだったなんて！・・・そう云われても、わたしはどう云えば良いのでしょう？
　プロデューサーさんは、細かい部分にはあまりタッチししてくれないんです。それでも眼を見ての感じでは、カメラマンさんに近い思いの様でした。

「レイさんの云う方が納得出来ますか？」カメラマンの真咲さんは少し不満そうです。

「だって、・奥様ってイメージのレイさんがいきなりダイレクトに迫って来たら・・・俺なら、引いちゃいますよ！・・・なんかあるんじゃないか？って・。俺達と違う世界の人の考えって、悪く考える方が多いじゃぁないですか。・・・まだ始まったばかりで、これから流れて行くんでしょう？」そう、スタ(ジオ)アシ(スタント)さんはコンセプトミーティングなんて出ていないから、どの様な流れになるかは知らないんです。
「それでもあなた達若い方を誘惑するとしたら、どうすれば良い？」スタアシさんに直接聞いてみたわ。
「さっきアシスタントさんが云った様に、あんまり直接的な挑発だと引くでしょうね。俺、気が弱いもの。・でもそう云う奴の方が多いんですよ。おふくろの様に包み込んで来られたら・ぁ、グラグラしちゃうでしょうね。・・・失礼な云い方して良いですか？」
「なぁに？・なんでも云って・・・。」
「レイさんをオナペットにしようとするときは、ブルジョア階級に反抗する様な気分があると思うんです。」
「・・・・・オナ・・・！・・・そう？」ここまで直接的に云われると、言葉が詰まってしまう・・・。
「そうなんです！ヌード写真集ってその為でしょう？・・・綺麗なだけじゃぁ、小遣いハタきませんよ！・・・レイさんは魅力的な威厳がありますけど、腕力なら俺の方があります。・・・まだ若いですし、男です。・・・レイさんに澄まし込んでいられたら、無理矢理を想像するでしょう？・でも、包み込まれる感じだと、甘えたくなるだろうと思います。」スタアシさんは必死の思いで話しました。
　・・・スタアシさんもこの写真を大きなものにしたいと思っているのがヒシヒシと伝わってきました。
「本当にわたしのファンでいらしたのね？」
「ええ・。」スタアシさんの顔はもうこれ以上は紅潮出来ないほど真っ赤でした。
「忌憚の無いご意見だと思いません？」プロデューサーさんに向い直して云いました。
「・・・思う様にやって！」あまりに簡単な答えだわ・・・。
「でも困ったわぁ・。わたしそんなにエロティックじゃぁないわ！・・・このお話があってから、いろいろ考えては見たんだけど・、他人様に見せる為の濡れ場なんて、まだ良く分からないのよ・・・。」
「・・・やっぱり来たか？」カメラマンの真咲さんでした。
・で、『やっぱり』って何？
　真咲さんが顎をしゃくったのが見えた気がしたんです。
「みなさん！・驚かないでください。レイさんに性的興奮を起こさせる手立てが必要になりました。・ミニイベントを始めます。」真咲さんが大きな声で言いました。
　今度は『イベント』ですって？・・・わたしの為に？

　イベントって、いわゆる白黒ショーだったのです！
　わたしが演ずるべきシチュエーションの反対側にベッドが据え置かれました！
　ラテン系の男女が音量を上げたＢＧMに乗って現れると、ランバダの様な濃厚なダンスを始め、スペイン風な顔立ちの男性、女性のストリップが始まりました。
　呆気に穫られましたよ！
「なっ・・・！・なんなの？」
「レイさんの中の男を呼び出すのさ。」真咲さんはシラッと言い放ったのです。

　そう云えば大昔、真咲さんにはアダルトヴィデオに興奮するわたしを、知られてしまった事がありました。
　ビデオの中の男女の激しい愛し合いを見せられる内に、全くフォアプレイの必要がない程ショーツをしとど濡らしてしまった事があったのです。
　プライベートでも滅多に見せた事の無い、わたしの中の男性的感覚。
　主人にだって見せた事の無い部分です。
　そのわたしの性を、真咲さんは覚えていたのです。
　目の前で白黒ショーを見せ付けて、わたしをエロティックに沈めて、レンズの向うにいるだろう読者を、誘惑させようと云うのです。

　お付き合いのあった当事者の真咲さん自身の記憶の中には、わたしの細かな性癖、わたしの中の男性的性癖まで含まれていたのでした。
　それも２０年近くも覚えているなんて！

　多分ストリップショーのプロなんでしょう？・踊りのドレスを無駄な動きの一つも無くスムーズに脱ぎ去ります。
　男性の方もリズムに乗って、まるで焦らすかの様な脱ぎ方を披露しています。
　男女のストリップが前後に重なり、妙な調和を見せるので、わたしの中にもエロティックな気分が昂揚されて来ました！
　普通の女性なら、目を背けて終わりなのでしょうけれど、変な弾性的感覚を持っていますわたしには、只のストリップより、この先に睦合ショーが待っているだろう事の方が想像され、エロティック気分が先走りを始めました。

　全てを脱ぎ去った男女が踊るエロティックなランバダ！
　男女が触れ合い、重なり逢う毎に濃厚になって行く気がします。
　イメージはセックスそのものです。
　まだ膨張してもいない男性の自身が異常に大きく、『あんなのわたくしには・・・！』と、わたしが圧し拡げられる処を想像してしまったのです！
　『いやらしい！』頭では思っても、男性感覚を持つわたしの身体は反応を示していました。・・・わたしの女の部分が完全に濡れそぼってしまっていました！

　身体の全てが熱くなっています。
　濡れそぼったそこを、満たしてくれるのを期待しているのです！
　そして、目の前にわたしを満たしてくれた事のある人がいるのです！
　上目遣いで真咲さんを見詰めていました。
　こんなに、大勢のスタッフの人に見詰められているのに、わたしは真咲さんを欲しくなっていたのです。
　視界の端に真咲さんを捕らえたと思った途端、スタジオにセットされたフラッシュ群が光りました！
「アッ！」・・・スタジオ用の大形ストロボの光がわたしの身体を貫いた気がしました。
　セックスの悦びそのものゝ様な感じが、わたしの中心から拡がって行きました。
　わたしの身体が貫かれた反応をするんです。
　連続して光ると、強烈なリズムがわたしの身体を貫いて行きます！
　わたしの女そのものが強烈な刺激に震えます。
　本当に貫かれたとしか思えない喜悦が全身に伝わり、大きく震わせるんです。

　それはどう解釈すれば良いのか？わたしには理解出来ませんでした。
　わたしの反応が見え始めた頃から、スペイン風の男女はダンスのスペースをベッドの上に移していました。・・・このダンスカップルが、わたしの性欲に火を付けた事。だけは確かなのでしょうけれど、一切の接触さえ無い状態で、わたしが性に欲求するなんて考えた事も無かったのです。

　ベッドの上のカップルダンスはまた、過激で濃厚になっていました。
　目の前に、全裸で繰り広げられる過激なダンスは、まさにセックスそのものなんです！
　お互いの身体を固定しないセックス！
　だって、踊っているんですよ。・・・全てがリズムに乗っていました。リズムはわたしの身体にも直接振動を伝えていましたし、周りのスタッフにもそれは同じ事でしょう？
　男の人達のズボンがテントを張っているのが分かるんですもの！
　そんなのを眼にしてしまったわたし・、周り中にいる男の人に愛撫されている気分なんです！・大音量のリズムの低音が響く度に、薄衣を通してわたしの肌が、直に細かく震わせられます。
　ゾワゾワァって、全身が愛撫されている感じです。
　今迄に受けた事の無い愛撫！・・・凄い甘美な震えに、わたしの中心が空洞になっているのをもの足りなくさせるんです！

　これ・・・、真咲さんの魔術・？
　わたしの中で性欲と理性が戦いを始めてしまいました。
　わたしは女優なのよ！・・・ここで性欲に負けたら、週刊誌の良い御飯になってしまうわ！・・・演技で済ませるのよ。・写真集のコンセプトを思い出しました！
　真咲さんとの昔の性愛を思い出して、わたしの中心は泉の様に溢れそう・・・。
　多分、真咲さんはシャッターに集中する筈だわ！・・・それが目的・。
　わたしは本気で真咲さんを誘えば良いのね？

　身体中全ての性感覚が全開になっていますわたし、自然に上目遣いで、薄く唇が開いてしまっていました。カメラの大口径レンズの向こうに真咲さんの眼が見えている気がするんです。その眼に集中しました。
　わたしに武者振り着きたくさせて上げる！
　あなたの目的でしょ！

　いつの間にか？リズムに乗った侭、なだらかな大きな動きになって、全身をくねらせていました！
　本気で真咲さんが欲しいんです。
　かつての真咲さんに抱かれたイメージ。それがみずみずしさを伴って、真咲さんの向う側でのダンスに重なります。
　ダンスの二人は既に繋がっていました！
　リズムに支配された空間に、本気でダンスの侭のセックスショーが・・・！
　わたし・息苦しくて、・呼吸が浅く早くなっていました。
　これ以上ショーツを履いていると、溢れ出した愛腋がショーツを濡らしているのがフィルムに残ってしまいます。
　それでは、わたしのイメージが違うものになってしまうでしょう。
　そんな積もりは無かったのですが、リズムに身を任せたままショーツを脱ぎ去ります。
　つま先でベッドの外へ落として・・・。
　スリップだけになってしまいました。
　
　ちょっとガードには頼り無さ過ぎるスリップでも身に付けている事が、意味が違ったとしても安心感になっていました。
　ホンの取るに足りない様な安心感でしかないのですが、それはポーズを自由にしてくれます。・全くの無防備にはなっていない。と云う事だけなのですが・・・。

　わたしの視野の中に真咲さんと白黒ショー！
　それらは一体となって、わたしの官能を昂揚させるのです！
　レンズの奥の真咲さんの眼を見て、意識しない誘惑が出て行っているのが分かったわ。
　シャッターを着られる度にフラッシュが光り、レンズの奥の眼が見えなくなります。
　その眼がどんどん大きくなって来るんです。
　わたし・レンズの奥の眼に呑み込まれそう・・・。
　『呑み込むのは女の役目でしょう？』視線に乗せたメッセージ・・・。
　理解してくれるかなぁ？
　デジタルパックなのかしら？・・・随分パック交換してないわ？
　フィルムだったらとっくに撮り切っているはず？
　こんなに続けられたら、わたし昇り詰めちゃう！
　身体が熱いわ・。・・・昂奮しきってる？

　前に撮られた時もそうだったわ！
　設定された妖精のコンセプト・・・。
　精神的にも幼かったわたし・・・。
　真咲さんに乗せられてた・・・。
　本当に妖精になった気がしたもの。

　やられた！
　本気で真咲さんを誘惑してるじゃない！
　全部映像で捉えているのね？

　わたしの中に熱い固まりが・・・！
「ァアッ！」凄い官能が・。
　わたし破裂する！

「お疲れさん！」
　唐突な真咲さんの声・・・？
　ダルい。
　交合の後よ！・・・これじゃぁ・・・。
　わたし・上り詰める寸前で、置いて行かれた感じだわ！

　真咲さんスポンサーとパソコンのディスプレーの確認・・・。
　気ダルさがわたしを直ぐには立ち上がらせてくれない・。
　白黒ショーの二人はサッサと引き上げてしまったのに・・・。
　なんてこと！・・わたしは「素」を見せてしまったの？
　真咲さん・・・、ただは返さないわよ！