（１） 敬一郎

　昭和４１年の５月、早川佐和子は小学３年生の息子健一をつれて実家に戻っていた。数日前、実家の近くに住む叔母から、先日父が風邪をひいてから元気が無いと連絡をもらったからだ。
　実家は３年前に母の美和が亡くなり父の敬一郎がひとりで暮らしていた。日帰りできない距離ではなかったが、二日間の連休を利用して一晩泊まるつもりで帰省した。
　二人を出迎えてくれた敬一郎は思っていた以上に元気そうだった。
　夕食は敬一郎の手料理だった。料理やその他の家事も器用にこなす敬一郎は母が亡くなっても不自由はしていないようだった。
　夕食後も祖父とひとしきり遊んだ健一は疲れたのか１０時ごろにはテレビを見ながら眠ってしまった。
　敬一郎が健一を抱いて行って布団に寝かせた。実家には健一が小学校に入学したときから健一のための子供部屋が用意されていた。夏休みなどに長期滞在をしても宿題ができるように勉強机も置いてある。
　健一が眠ってから、佐和子と敬一郎は久しぶりに一緒に酒を飲んだ。
「元気そうで安心したわ」
「心配ないさ、昔から丈夫なだけが取り柄だからな。それに、健一の顔を見たら病気もどっかに行ってしまうよ」
「じゃあ、病気になったら言ってね。健一と飛んでくるから」
「ああ、そうするよ」

　その夜は、父と布団を並べて眠った。両親の寝室で母の寝巻きを借り、母の布団で眠った。少し飲みすぎた酒のせいですぐに眠りについた。
　佐和子は深夜に目を覚ました。まだ、酒が残っていて夢を見ているようだったが、すぐに自分の布団の中にもう一人誰かがいることに気づいた。
　健一が幼いころはよく佐和子の布団に入り込んできたので最初は健一だと思ったが、侵入者の手は佐和子の寝巻きの中に進入し、乳房を愛撫した。その動きは明らかに幼い子供のそれではなかった。
「あなた・・・・・・」
　手の動きから夫だと思った。しかし侵入者の口からは思わぬ声が出た。
「美和」
（美和、、、お母さんの名前？）
　このとき佐和子は自分が実家に帰っていることを思い出した。そして、侵入者の顔を見た。敬一郎だった。

「美和、帰ってきたんだな」
（お父さんが・・・・・・お母さんの名前を呼んで私を）
　佐和子は父を拒絶する気にはなれなかった。それは妻を失った父を哀れに思う気持ちもあったが、佐和子の中に眠っていた背徳行為に対する願望がそうさせていた。実父と交わる、これ以上の背徳行為があるだろうか。佐和子は体の芯が熱くなるのを感じた。
　佐和子は眠ったふりを続けた。
　掛け布団がめくられ、寝巻きも解かれて白い見事な乳房が現れた。
　右の乳房に唇が吸い付き、左は鷲づかみされ揉みしだかれた。
（いたい・・・・・・）
　乳首に歯をたてられた痛みに思わず声が漏れそうになったが、すぐにその痛みが心地良さに変わっていった。
（ああ、いい・・・・・・すごいわ）
　佐和子は声が出そうになるのに耐えて心の中で歓喜した。
　敬一郎は体を起こすと娘の下腹部を覆う布地に手をかけそれを下におろした。同時に佐和子が腰を少し浮かせた。布地は抵抗無く娘の体から取り除かれた。
　敬一郎は（ごくり）とつばを飲んだ
　母親似の顔、豊満な乳房、大きく骨盤が張り出した安産型の臀部から続くしなやかな両脚は程よく脂肪に包まれていた。
　敬一郎は再び乳房を吸いながら、指を充血している肉ひだの割れ目から娘の胎内に侵入させた。
「ああっ、お父さん、、、いい」
　佐和子は耐え切れずに歓喜の声を上げた。敬一郎はかまわず愛撫を続けた。
「ああっ・・・・・・あっ・・・・・・いい」
　佐和子は夫の単調なそれとは違う巧みな愛撫と、背徳行為への興奮で普段よりも数倍早く高みに上り詰めようとしていた。
「お父さん、、、ちょっと待って」
　佐和子は敬一郎を制して躰を起こした。佐和子は父と交わって高みに上りつめたかったが、脚に触れる父の分身がいつまで経っても佐和子を満足させられる硬さにならないことに気づいていた。
　佐和子は母の寝巻きを脱ぎ捨て敬一郎と体を入れ替えると、敬一郎の下腹部に顔を埋めた。
「おおっ」
　敬一郎が思わず声を漏らした。
　佐和子がこわばりを丹念にしゃぶり、袋を摩りあげるとこわばりに徐々に血液が流れ込み、６５歳の老人の物とは思えないほど硬さを取り戻した。
　佐和子は敬一郎にまたがると固くなった分身に手を添えてゆっくりと腰を下ろした。
「ああっ、ああっ・・・・・・お父さん」
「美和ぁ・・・・・・」
　佐和子の腰が動き始めると敬一郎がその動きに合わせて下から突き上げた。そして目の前で誘うようにゆれる乳房を鷲づかみにした。
「ああっ、・・・・・・すごいわぁお父さん」
　深夜の室内に佐和子の喘ぎ声が響いた。
　しばらくすると、佐和子は敬一郎の上から降りた。そして敬一郎のほうに大きな尻を向けて少し脚を開いて四つんばいになった。菊の模様と赤く充血した肉ひだが父の前にさらされた。
「お父さん早く」
　敬一郎は娘の尻をつかんで、一気に腰を突き出した。
「ああっ・・・・・・すごい」
　敬一郎の巧みな腰の動きに佐和子は今まで一度も経験したことが無い、膣内をかき回されるような感覚に襲われた。
「ああっ・・・・・・お父さんすごいわ、、すごいいっ」
「ああっ・・・・・・いきそう・・・いく」
「お父さん・・・・・・一緒にぃきて」
　敬一郎の腰の動きが早まった。
「あっ、あっ、あっ・・・・・・あああーーーーー」
　佐和子の断末魔を思わせる声と同時に熱いものが膣内に注ぎ込まれた。
「おおおっ、美和ぁ」
「ああーー、おとう・・・さん」
　佐和子と敬一郎は交わったまま動かなくなった。

　佐和子が目を覚ました時は、もう窓の外は明るかった。
　隣の布団に敬一郎はいなかった。時計を見ると７時を少し回っていた。
　佐和子は掛け布団は掛けられていたが、何も身に着けていなかった。そして布団の横には昨夜着ていたはずの母の寝巻きと下着が無造作に置かれていた。
　佐和子は下着をつけずに寝巻きを羽織ると両親の寝室を出た。
　台所に行くと敬一郎が朝食の準備をしていた。
「お父さんおはよう」
「おう、おはよう」
　いつもの父だった。
「風呂が沸いとるからはいりなさい」
「うん」
　定年後の敬一郎は朝風呂に入る習慣があった。
　子供部屋を覗くと健一はまだぐっすりと眠っていた。浴室に行き寝巻きを脱いで、脱衣かごに入れた。
　浴室に入ると躰を丹念に洗ってから湯船に使った。
　乳房に歯型がついていた。
（お父さん、すごかったわ。お母さんはいつもあんな風に・・・・・・）
　目をつぶって指を下腹部に滑らせ、指で突起をつまんだ。
「あっ」
　昨夜の感覚がよみがえり、恍惚の世界に入っていった。
「おいどうした、朝飯ができてるぞ」
「あ、はい。今出ます」
　佐和子は浴室のガラス戸越しの敬一郎の声に現実世界に引き戻された。
　台所に行くと健一が朝食を食べていた。思ったよりも長く浴室にいたようだった。
　佐和子と健一は昼食を終えると帰路に着いた。敬一郎はバス停まで見送り、二人が乗ったバスが見えなくなるまでバス停を動かなかった。
　バスの中からバス停の父を見つめる佐和子の目になぜか涙が出てきた。

　佐和子が父に会ったのはこの日が最後だった。一週間後、買い物中に倒れそのまま帰らぬ人となった。
　葬式の日、敬一郎の棺に、あの日着た母の寝巻きを入れた。
「お母さんにちゃんと届けてね」
　敬一郎を見送って外に出ると健一が火葬場の煙突から立ち昇る煙をじっと見ていた。
　佐和子はその煙が父を母の所まで連れて行ってくれるのだと思った。
「お父さん、お母さん天国でお幸せに」
　（つづく）