「ねぇ……寝ちゃったの？」
　声をかけても返事が無い。裸のまま隣に転がってる達也の足を軽く蹴ってみる。反応なし。顔を近づけてみると、すぅすぅ寝息が聞こえて来た。
　なんだかなぁ……。コトが終わって、腕枕でピロートークを楽しむとか…そういうのは無いわけ？いささか憮然として、あたし布団を這い出した。さっき達也に脱がされた浴衣を羽織り、上に丹前を着込む。身体がベトベトするし、お風呂行って来よう…っと。
　タオルと下着の替えを持って廊下に出る。夜になってだいぶ冷え込んでいるけど、さっきは行かなかった離れにあるっていう露天風呂を目指す。両側の紅葉が綺麗な渡り廊下を渡りながら、せっかく二人で旅行に来たのに、食事を終えて半分酔っ払って一方的なＳＥＸしてとっとと寝ちゃうって……達也とは長くないな…なんて考える。
　夜も更けてるせいか、脱衣場も内湯も誰もいない。身体の相性って大事だよね。うん。身体を洗いながら、一人で頷く。
　小さめの木戸を抜けると、露天風呂。思ってたより広くて、湯煙で向こう側がよく見えない。少しぬるめでいい感じ。
「ふぁぁ…」
　思わず小さく吐息を漏らすと、奥の方で水音が。あ……誰か先客が居るんだわ。湯気の向こうにうっすら見える人影に頭を下げる。
　人影も頭を下げ、
「こんばんは」
　えっ…。聞こえて来たのは低い声。
　今の声って……男の人？野太い女の人の声ってことは……無いよね。焦ってる間もなく、お湯をかき分けて近づいて来たのは、４０代前半？って感じ、紛れもない男の人。
「ここ、混浴だったんですね。よろしかったですか？」
　丁寧な口調で聞かれる。よろしかったも何も、あたしが後から入ったわけだし。
「え…はい…」
　返事をしながら、タオルで胸元を隠す。お湯が白いから見えないとは思う…けど。
　しばらく無言の時間が続く。
　こういうのも気まずい…でも、先に出るわけにもいかないし……なんてあたしが考えてると
「彼は一緒じゃないの？」
「え？」
　唐突な質問だなぁ…。
「あぁ……夕食の時に食堂で近くの席だったんですよ。可愛らしいカップルだなと思っていたので」
　この人の声、低くて渋くていい感じ。口調も落ち着いてる。
「そうだったんですか。彼は、もう寝ちゃってます」
　不満そうなのが声に表れちゃったかな。
「可愛い彼女を残して、先に寝ちゃいけないねぇ」
　笑いを含んだ調子の答えが返って来る。
「そういう奴ですから」
　あたしが言うと、男性は面白そうに笑った。
「物足りなかったの？」
　からかうような口調。一瞬、なんのことを言われたのかと思ったけど、あれのことだよね。話題がいきなりそっちに行ってドキっとして……身体の奥が少し疼く。冗談でうまくかわせるといいんだけど、裸だってこともあってドギマギしちゃう。
「艶かしい痕があるね。十分楽しんだ？」
　彼の視線があたしの首筋に向けられている。あと？あ……達也がつけたキスマーク？
　はっとして、首筋を手で押さえる。
「いえ……あのぅ…」
　はいって答えても、いいえって答えてもおかしいでしょ。答えに困っていると、彼の手が伸びて来て首筋の痕を指先で撫でた。
　う…わっ…すっと撫でられたら、背筋がぞくぞくってして、あたし抵抗するのも忘れてじっと相手の顔を見ちゃった。
「満足できなかった…のかな？」
　視線を合わせて聞かれると、身体の疼きがもっとはっきりどくんっってして、のぼせてるわけじゃないのに顔が熱く火照ってくる。
　彼が身体を近づけ、あたしの顎に手をかけて持ち上げると、目を閉じちゃって……自然に唇が重なる。達也が悪いんだからね……あんな中途半端で寝ちゃうから……心の中で達也に責任転嫁しながら、あたし初対面の人と舌を絡ませていく。達也のキスとは全然違う。柔らかく彼の舌があたしの唇をなぞり、口内へと侵入して…ゆっくりと這い回っていく。
「……ん……」
　覆っていたタオルをどけて、大きな手があたしの乳房を優しく掴み、揉みしだき、指先が乳首を挟んで刺激する。重なっていた唇が静かに離れたかと思うと、首筋へ吸い付き、軽く舌を動かしながら愛撫されて…。
「ん……やん……だめ……」
　言いながらもあたしの手も彼の身体の上を這い、股間にある逞しいモノへと触れる。
「これで満足出来そうかな？」
　あたしの指が触れると、彼が耳元で囁く。彼の片方の手があたしの脚の方へと下りて来る。
「ぅん……満足させて……」
　お湯の中で屹立しているモノを掌で扱きながら、反対の手で彼の首筋に抱きついて。彼の指が触りやすいように脚を少し開いていくと、太いごつごつした指がアソコをそっと撫ではじめる。
「お湯の中でも、濡れてるのは分かるね」
　少しずつ指が挿入される。愛液とお湯が入り混じっていて、いつもより滑りが悪い感触。きしむような感じがするの。
「ぁ……ん……」
　指を中で動かされ、思わず彼のモノをぎゅっと握っちゃう。
「ん……っ…もう欲しい？まだ、だめだよ」
　一瞬びくんとした彼が、あたしの中に入れる指を増やしたのが分かる。
「あ……はぁ……」
「なかなかきつくて、いい感じだね」
　指の出し入れが早くなって来ると、彼のモノを扱くのがおそろかになって来ちゃって。
「ぁんっ…んんっ…ぁぁ…ぁぁんっ……」
　喘ぎ声をあげては、身体を捩って悶えてるだけになっちゃう。
　彼の指が、すごく感じるところに当たってる。達也には指でこんなにされたことないから…彼にしがみついて、お湯の中で身体が半分浮いてるようで。
「ぁぅ…そこ……いぃ……」
　彼の指を締め付けながら、あそこがヒクヒクしちゃう。
「ここ…？」
　指先が的確に感じるところを責めて来る。器用に他の指でクリも刺激しはじめて…
「ぁ…んっ…くぅっ…だめぇっ……っ」
　変な…おしっこが漏れちゃうような感覚が身体を走り抜ける。お湯の中でも、弾けるように愛液が溢れたのが分かって…
「潮…噴いたのかな？」
　少し、指の動きを弱めながら、彼が質問したけど、答えられる状況じゃない。
「感度良さそうだね。若い彼じゃ満足出来ないだろ？」
　あたし、喘ぎながら彼の言葉に頷いた。

「続きは部屋で」
　っていうことになり、佐伯さん―名前は、部屋まで移動する間に聞いた。42歳、出張ついでに温泉に寄った東京から来たサラリーマン…だって。っていうか、名前も知らないうちにああいうことしちゃったのよね―の部屋へと移動。
　敷いてあった布団にすぐに押し倒され、浴衣の帯を解かれてしまう。
「あ…ちょっと待って。電気……」
　露天風呂は薄暗かったけど、お部屋はかなり明るくて。明かりを消して欲しいと思って、彼の身体を押し返す。
「ん…？」
　首を傾げて、彼があたしの顔を覗き込む。
「明るいのは嫌い？」
　彼の目を見つめると、それだけで背筋がぞくってしちゃう。愛しそうに見つめてくれるんだけど、すごくやらしぃ感じがするの。
「ん……恥ずかしい…」
　彼の腕の中、身体を捩って肌蹴られた胸を隠そうとしながら答えると、
「だめだよ。全部…見たい」
　そう囁いた彼、浴衣の帯を手に取るとあたしの両手首を押さえ、頭の上で万歳させた状態で縛っちゃったの。
「や…やだ…っ」
　縛られたのとかって初めてで……それも初対面の人だし、あたし軽くパニックになって。声を上げようとした唇を、彼がキスで塞ぐ。
「ん……んん……ぅ……」
　さっき露天風呂で交わしたのと同じように、柔らかく舌が唇を割り口内を辿っていく。キスしながら、彼の掌が乳房をまさぐって来て、あたし…乳首が硬く尖っていくのを自覚する。
「大丈夫…痛くしたりしないから」
　唇を離し、もう一度目を見つめて囁くと、彼は身体の位置をずらし首筋から胸元へと唇を這わせていく。
「ぁ…ん…待って……っ」
　舌で擽るようにしながら、彼の唇が乳房を少しずつ上ってくる。乳首は痛いくらい硬くなっているんだけど、舌先はそこには触れないで、ゆっくりゆっくり周辺を回っていて。手首を拘束されたまま、彼の様子を見下ろすと、差し出した舌で乳首の近くを舐めながら、彼が悪戯っぽく笑って視線を合わす。
「……っ…んっ……ぁんっ…」
　身体を反らして、乳房を突き出すようにしちゃう。
　明るくて、恥ずかしくて、手首も縛られていて……乳首に触れてもらえないのって…たまらないの。
「可愛いね……理香子…」
　彼が、教えたばかりのあたしの名を呼ぶ。
「や……ん……お願い…」
　焦れたあたしが身体を捩ると、彼の唇がやっと乳首を捉え、軽く歯をたてながらきつく吸われて…。
「んっ…ぁぁ…っ…」
　乳首から子宮へと快感の波が走る。あそこがもうびしょ濡れなのが分かる。乳首を吸われただけで、身体がびくんって仰け反る。
　反対の乳首を指先でコリコリと転がし、彼の唇が、舌が、微妙なタッチで乳首を刺激し続ける。
「んぁ…ぁぅ…やぁ…ん…」
　あたしは身悶えるだけしか出来なくて、びくっびくって身体を何度も反らす。そのうちに彼の片手が、あたしのお腹を、太腿を、そろそろと這い回り、たくさん濡れてるあそこを優しく触りはじめる。
「お湯の中より濡れてる」
　くすっと笑いながら彼が指摘するから、あたし、もっといっぱい溢れちゃって…
「だって……」
　恨めしそうに彼を見ると、彼は見上げながらかりっと乳首を軽く噛むから、
「ぁぅっ…」
　また、身体が跳ねるように動いちゃう。
「だって…何？ここがこんなになってるのは、理香子が淫乱だからだろ？」
　彼が指を動かして軽く叩くようにすると、ピチャピチャって小さな音がする。
「んっ…んっ…解いて…お願い……」
　あたしばっかり責められるなんてずるい…。
「今日はこのまま…理香子を苛めたい」
　彼の言葉に身体の奥が鼓動を打ち、とぷんって愛液が溢れるのが分かる。触れていた指がそれを感じたのか、彼はふっと小さく笑うと、指先でクリを摘んで震わせる。
　そのまま身体をずらし、あたしの腿を大きく広げて、恥ずかしいところへ顔を寄せる。
「ぁっ…ぁんんっ…だめっ…んぁっ……」
　喘ぐ声が大きくなっちゃう。びしょびしょに濡れてるあそこ…見られてると思うと余計に溢れて来ちゃって。脚を閉じようにも、彼の両手が腿をしっかり押さえていて無理。達也に、こんなことされたことないから…
「や……お願い……恥ずかしいっ……」
　捩ろうとする腰を押さえ、指先で開かれ、とろっと溢れる愛液を彼の舌が掬い取っていく。彼が頭を動かして、あそこの入り口を何度も舌で辿る。
「ぁん…ん…や……蕩けちゃぅ……」
　あたし、恥ずかしく脚を開かれたまま、腰を浮かせ、彼の顔に押し付けるように動かしちゃう。
　彼の唇がクリを包み込み、ちゅって音を立てて吸い上げる。同時に、指があそこに挿入されて。
「ぁぁぁ…ぁはぁぁ…だめぇ…」
「だめ…じゃなくて、いい…だろ？」
　舌先でクリを刺激しながら、彼が指を出し入れする。
　愛液がくちゅって溢れる音がする。イっちゃう。指を入れられただけで…。
「んっ…んくぅっ……っ…」
　指を深く突き入れられ、ちょっと刺激されただけで、あたし指を締め付けながら達しちゃって…。
「感じやすくて、いい身体だ…」
　彼、身体を起こして浴衣を脱ぎ、あたしの手首を拘束していた帯を解いてくれた。そのまま身体を重ねてくる。彼の重さが心地良くて、あたし背中に手を回してぎゅっと抱きついて。
「佐伯…さん…」
　彼も強くあたしを抱きしめてくれて
「可愛い…理香子……」
　硬くなった彼のモノが、腿に当たってる。ねだるように腰をすり寄せると、彼は手を添えてあそこに当てがって、ぐいっと腰を突き出すようにして一気に入って来た。
「ぁぁぁぁぁ…いぃ…いっぱぃ……」
　押し開かれる感触。息を吐いて、彼の背中に指を立ててしがみついて、もっと奥まで欲しくて腰に脚を絡めて。
「いいよ…理香子…」
　彼が腰を動かすたびに、あたしの中で擦れて、厭らしく水音がして、あたしも合わせるように腰を動かす。
「んっ…んっ…ぁんっ……ぁぁぁ…んっ…」
　あたしの喘ぎ声と、くちゅくちゅっていう音、肌がぶつかる音が響いてる。
　彼の腰の動きは、緩やかになったり激しくなったり、奥までいっぱいになって動きを止めたり、浅く焦らすように退いたり…。
「や…っ…ぁん……いぃ…佐伯さん……いいのぉ……」
　何も考えられなくて、彼にしがみついたまま彼の動きに翻弄されて…
「もぉ…だめ…っ…だめぇ……んくっ…んくぅっ」
　何度も何度も絶頂へ押し上げられて、あたしのあそこ、ずうっとヒクヒクと震えていて。
「あぁ…いい……」
　彼の動きが一段と激しくなる。
「お願ぃ…も…だめ…んっ…だめ……お願ぃ……」
　同じ言葉ばかり繰り返して、腰を振って、おねだりして…。これ以上はおかしくなっちゃぅ…っていう時になって、
「いきそうだ…中で大丈夫…？」
　彼が動きを緩め、見つめられて…あたし、無意識に頷いちゃって…。
　ぐいっと抱き起こされ、座ってる彼に跨るようになり、彼があたしの身体を揺らしながら下から突き上げる。
「ぁはぁぁっ…いぃっ…佐伯さんっ…んっ…んんっ…ぁんんっ…」
　彼に抱きついたまま、腰を前後にやらしく動かす。
「いいよ…いきそう……理香子……っ」
　彼もあたしをぎゅぅっと抱きしめてくれて、ぐぅっと奥を突き上げたままで身体を硬くする。
「んっ……くぅぅぅぅ………っ…！！」
　あたし…何度目か、数えられないくらいの絶頂を迎え……身体の中に佐伯さんの熱いものを受け止めながら、意識が遠のくのを感じてた…。