投稿写真　しょうた 作
２　決行
　
　午前６時、啓吾は尿意を感じ浅い眠りの中から目覚めた。
　パイプベッドから降り、薄い木製の扉を開き、狭い廊下に出るとダイニングルームの明かりがついている。妻はいつものように起き、朝食と自分のお弁当を準備しているようだ。
　ダイニングへ通じる扉を開くと、ガスコンロの前で卵焼きを作っている妻が振り向いた。
「おはよう」
「おはよう。今日は、ずいぶん早いのね」
「あっ、あぁ。今日は午前中にお客と会う約束をしててね」
「あら、珍しい。朝、弱いからって、いつも午後にしか約束しない人が……」
「まぁね。大事な仕事なんだ」
「ふぅん。そうなの。あなたの仕事のことはよく解らないけど、頑張ってね」
「あぁ……」
　啓吾にとって妻は悪い女ではないし必要な存在だ。また、今の生活を壊そうといった気持ちは全くない。だが、一つだけ不満があった。いわゆるセックスの相性というものが、最悪だと感じていた。
　啓吾は自分でも性的な欲求が強いと自負していた。３２歳になった今でも１０代の時と変わらず毎日のように精液を放たなければ眠れなかった。
　しかし、妻は違った。妻は啓吾が求めても、ほとんど応じることがない。また応じたときでも、さっさとやってくれとせかす。濡れはするのだが、心から感じていないが伝わってくる冷めたセックスだ。
　啓吾にも原因があるのだろうが、そんな妻を求めることが次第に億劫になり、自らの手で慰めたり、こっそりと風俗などで肉の欲求を満たすようになっていた。
　
　午前８時、妻と息子がでかけた。
　２人が帰宅するのは夕方六時を過ぎたころだ。保育園児の息子は、妻が仕事帰りに迎えに行く。在宅での啓吾の仕事を気遣ってのことだ。当然、親と遊びたい盛りの小さな息子が傍にいては仕事に集中することなどできない。
　在宅ワークの啓吾にとって時間はたっぷりとある。
　普段なら、お気に入りのキリマンジャロの豆を挽き、香りを楽しみながらい熱いコーヒーを飲み、朝刊を読むのだが、今朝は落ち着かない。
　寝る前に立てた計画が啓吾を興奮させていた。
　今すぐにでも、佐伯さんの家へ行きたい。そして、佐伯さんの肉体を存分に味わいたい。肉竿が膨らむ。
　だが、実行する時間にはまだ早すぎる。しかも、肝心な佐伯さんの家の正確な位置がわからない。近所に住んでいることは間違いないのだが。
　啓吾は考えた。
（確か、元旦に佐伯さんから年賀状が届いていたはずた）
　それを見れば簡単なことだ。
　啓吾は立ち上がり、年賀状が収められていると記憶するリビングボードの引き出しをひいた。
（ビンゴ！）
　記憶は間違ってなかった。プラスチック製の年賀状ホルダーがあった。
　早速、手にとり、パラパラとめくった。
　そして、見つけた。
　ディ○ニーランドで家族三人が笑顔で写っている。この年賀状を見たときは、奥さんのことしか見ていなかった。改めてよく見た。
　旦那は男目から見てけっして美男子であるとはいえない。こんな男が毎夜のごとくあの美しい女の肉体を好きなようにしていると思うと軽い嫉妬が芽生えた。
　もちろん、啓吾が腹立たしく思うのは理不尽なことであるが。
　年賀状には住所と電話番号が記載されている。また家族三人の名前もプリントされていた。
　啓吾はそのとき初めて佐伯さんの下の名をしった。
　佐伯久美……久美、昔付き合っていた女と同じ名前だ。
　久美……淫乱な女だった、と久美との淫らなセックスが脳裏に走ったが、直ぐに打ち消した。
　しょせん、それは過去の出来事だ。過去の快楽を思い出してもしかたがない。これからが肝心だ。
　啓吾は当初の目的どおりに、佐伯家の住所と電話番号をメモに控えた。

　午前９時。
（そろそろ、いいだろう）
　この時間ならば、啓吾の息子と同じ保育園に通う娘を送り届けて用事がなければ帰宅しているだろう。また、旦那も仕事に出かけた後に違いない。つまり、久美は一人だ。もちろん、仕事をしていて留守という可能性もあるが……。そうであれば、仕方がない、彼女の生活パターンを調査して、再挑戦するしかない。
　調査もせずに佐伯家を訪問する、計画の安易さを感じながらも、じっとしてられなかった。
　啓吾はプリントアウトした久美の痴態画像の入ったＡ４判茶封筒と、 スーパーの袋に入れたみかん20個、そしてローター、デジタルカメラをディーバッグの中に無造作につっこんで部屋を後にした。
　佐伯家は、歩いて、10分ぐらいの所にあった。
　比較的新しい家だ。たぶん、築３年といったとごろだろう。
　ざっと見た所、築３年ぐらいの約30坪ほど思われる2階建てで駐車スペースが2台ある家だった。 駐車場には濃紺の軽自動車と娘のものだと思われる黄色い三輪車があった。
　全ての窓にはレースのカーテンが引かれている。
（誰もいないのであろうか？）
　正面から見ただけでは知ることはできない。
　心臓がバクバクと脈打っている。探偵にでもなったような気分である。 高ぶった気持ちを落ち着かせるためタバコに火をつけ、吸った。
「ふー」
　その時である。
　２階のベランダ側の窓が開き久美が姿をあらわした。 啓吾は今見つかるとやばいと思い、すかさず煙草の火を消し、素早く電信柱の影に隠れた。
　密かに様子をうかがう。
　久美は洗濯物を干している。バスタオルにティーシャツと次から次へと洗濯ものを干している。
　そして、久美の手に濃いパープルの布が握られているのが見えた。
　それを、両手を使って広げていく。
　はっきりと形がわかった。
　それは、間違いなく久美のショーツだった。
　紫色……確か、欲求不満をあらわす色。旦那では満足してない、だからエロサイトに久美の痴態を投稿した男と不倫に走っている。
　啓吾の肉茎はいつの間にか膨らんでいた。外から見ても、肉茎が勃起しているのが明らかにわかる。
　もし、誰かに見られたら、不審な人物がいると通報されてもおかしくは無い。
　啓吾はふと我に返り、その場所にとどまっていること自体、不自然だと思い、まだベランダにいる久美の様子を伺いながら道を歩いた。

　午前９時４５分。
　啓吾はそこから少し離れた公園のベンチに座っていた。
　いよいよ、計画を実行する時が来た。
　まず、現在あの家に久美が一人でいることを確認する必要がある。二台ある駐車スペースに車が一台しかなかったので、おそらく、彼女一人であるとは思うのだが、もしかすると車は一台しか所有してないかもしれない。旦那が平日休みの仕事で自宅にいる可能性もある。また、可能性は低いだろうが、風邪をひいて休み、有給休暇を使って休んでいる可能性もないとは言えない。
　慎重になるに越したことは無い。

　啓吾はあの家に久美が一人であることを確認するため、携帯電話を取出し、佐伯家の電話番号を押した。 プルプル…プルプル…7コールほどした時、久美は出た。
「はい、佐伯ですけど」
「もしもし、私、ご主人の学生時代の友人の山本というものですが、ご主人様はいらっしゃいますか?」
「主人は、仕事に行っておりますけど……」
「ははっ……仕事、そうですよね。普通は仕事へいってますよね。実は、わたくし出張でこっちにきておりまして、せっかくだから久しぶりにご主人とお会いしたいと思いまして……ご自宅の電話番号しか知らなかったものでしてね」
「そうなんですか。それなら、主人の携帯の番号を教えますので、そちらへ賭けてみてください」
「いやぁ、すみませんね」
「えーとですねぇ。あっ、ありました。いいですか、090-○○○○-○○○○です」
「ちょっと待ってください。今メモしますので。えー、090-○○○○-○○○○でいいんですよね？」
「はい、間違いありませんよ」
「ところで、つかぬ事をお聞きしますけど。大体何時ごろご自宅にお戻りになられますか？」
「はぁ、いつも通りなら９時ごろには帰宅すると思いますけど……それが何か？」
　久美は怪訝そうな声をだした。多分、どうしてこんなこと聞くのだろうと思ったのだろう。
「いやぁ、たいした意味は無いんです。ただ、これから電話する時、何時ごろならいるのかなぁと思って……」
「そうだったんですか。大体その時間には帰ってきてますよ」
「有難う御座います。早速、携帯の方へ電話してみます。それでは、失礼します」
「失礼します」
　ガチャリと受話器を切った音がし、つづいてプープーと無機質な連続音がした。

　受話器を置いた久美は今日も夫である秀人は遅くなるかもしれないなと思った。
　実は久美の夫の秀人は、結婚当初はいつも７時ごろには帰宅していたが、３ヶ月程前から午前様は当たり前で午後９時に帰ってくる日は月に一度あれば良い方で、帰ってきても、すぐ風呂に入りビールを飲んで書斎にこもりパソコンばかりいじっていおり、ほとんど 会話の無い日々が続いていた。
　また、休みの日も朝早くから出かけ夕方にやっと戻ってくるという状態が続いていた。 もしかして、浮気しているのではと久美はなんども考えたがそのことを問う勇気が久美には無かった。

　午前１０時１２分。
　啓吾は近所を一回りし再び佐伯家の前に立った。その風景は、さっき見たものとなんら変わらない。心臓が漠々と脈打つ。破裂するのではないかと思うほど高鳴っている。
　啓吾は、気を静めようと大きく深呼吸して脚を一歩踏み出した。
(よし！　やるぞ！)
　玄関扉の前にたった。呼び鈴に人差し指を当てた。
　指先が震える。
（落ち着け、落ち着くんだ。まだ興奮する場面ではない。演技するんだ。お前なら大丈夫。必ず成功する）　　
　呪文のようにこころの中で呟くと指の震えが止まってきた。今だ。
　ついにボタンを押した。
　ピンポーン、ピンポーンとチャイムが鳴り響くのがドア越しに聞こえる。
　プツッ。
　スピーカーから音がして、つづいて久美の声がした。
「はい、どちら様ですか」
「あっ、ごめんください。私、葛西ですけど」
「かっ、葛西さん？　失礼ですけど……どちらの葛西さんでしょうか?」
「あっ、すみません。ちゃんと名乗らなくて。私、啓太郎の父です」
「えっ、啓太郎君のお父様ですか。少しお待ちください」
(どうして　葛西さんの旦那さんが?)
　久美は不思議に思いつつも玄関の扉を開けた。
「おはようございます」
「おはようございます。いつも妻と息子がお世話になっております」
「それで、なんの御用ですか？」
「はい、実は……女房にこれを届けてくれと頼まれましてね」
　啓吾は玄関の扉を閉め、久美にみかんの入った袋を差し出した。
「えぇ、そんな困ります」
　久美の顔から怪訝そうな表情から一転し、笑みがこぼれた
「いえ、いえ。実は、女房の実家から山ほど送られてきましてねえ。家だけでは食べきれないんで……それで、女房からいつも、佐伯さんの所からお裾分けしてもらっているから、もって行ってくれと頼まれましてね」
「あら、そんなの気にしなくて良いのに」
「味は保証しますよ。美味しいみかんですよ」
「わかりました。ではご好意に甘えさせていただきます」
　久美は微笑んだ。
(素敵な笑顔だ）
「でっ、もう……」
　と言いかけたとき　
「よろしかったらお茶でも飲んでいきませんか?」
　久美の口から願ってもいない言葉が出た。
「いいんですか?　」
　(こんなチャンスをミスミス逃すことはない)
　 啓吾は玄関に男物の革靴が一足綺麗に並んでいることに気がついた。
「どなたか、いらっしゃるんでは?」
「いいえ　私だけです」
「そうてすか。だったら、お言葉に甘えさせてもらいます」
「どうぞ」
　啓吾は靴を脱ぎそれを揃えてから、家にあがり久美の後に続いた。
　白のタートルネックのセーターと紺のジーンズ姿の久美のお尻がプリプリっと蠢く。
(くぅぅ、いい尻してやがるぜ)
「どうぞ」
　ＬＤＫに案内された。
「こちらにお掛けになって」 久美に言われるままソファに腰掛けた。
「コーヒーでいいですか？　それともお茶になさいます」
「あっ、すみません。コーヒーお願いします」
「少し待ってくださいね」
　久美が手の届くところにいると思うと、肉棒がむくっむくっと蠢き膨らんでくる。
（落ち着け、クールに行動するんだ）
　興奮を抑えて部屋を見まわした。
(あった……あのカレンダーだ。やっぱりあの画像はこの部屋で撮られたものだ)
　啓吾はあの痴態がこの部屋で行われていたことを確信すると、急に悶々とした性的な欲望に支配されていった。肉棒は更に膨らみ鋼のように硬くなった。
　もう間違いはない。必ず久美をものにできる。これから、時間の許す限りたっぷりとあの肉体を味わってやる。
「すっ、すみません。トイレお借りしたいのですが」
「あっ　お手洗いは玄関へ向かって右側になります」
「すみません」
　立ち上がりながら言ってトイレへ向かった。トイレにはいった。だが、尿意はなかった。トイレへいくというのは口実で、実は玄関の鍵をかけたかったのだ。
　トイレから出て、靴下のまま冷たい床におり、施錠した。
　そして、何食わぬ顔で部屋に戻りソファに座った。
「いやぁ。どうもすみません」
「いいえぇ」
　少しすると、久美は丸いお盆にコーヒーを２つ乗せてきた。まず啓吾の前にカップを置いてからもう１つを 自分の方へ置いた。
「どうぞ」
「いただきます」
「美味しいコーヒーですね。キリマンジァロですか?」
「ええ、コーヒーおくわしいのですか？」
「いやー。それ程でもないんですがね。実は私キリマンジァロが好きなんですよ。この酸味のあるところが特にね」
「うふっ、気が合いますね。私も、この酸味が好きなんですよ」
「ところで今日は、お休みなんですか?」
「いえ、実は私今はやりの在宅勤務というやつでしてね」
「あぁ、ＳОＨОっていう…」
「そうなんですよ、毎日休みなんだか仕事なんだか自分でもわからないんですよ」
　しばらく他愛も無い会話が続き、ふと時計を見ると時計の針は午前１１時を過ぎていた。
　この美しい人妻との会話が楽しくて、何時の間にか欲望が後方へおしやられていた。
(なんかこのままだといい人で終わりそうだなあ……。いかんぞ、目の前に久美はいるんだ)
「でねっ」
　久美が話をづつける。
　その度に啓吾は頷く。タイミングをつかめない。
　そのとき電話が鳴った。
「あっ、ごめんなさい」
　久美は立ち上がって、電話口へ向かい受話器をとった。
　啓吾は聞き耳をたてた。
「すみません。家はそういうの興味がありませんし、今来客中なので失礼しますね」
　といい受話器をおいた。
「ごめんなさい。お話の途中で」
　今がチャンスだ！
「いえ、いいんですよ。ところで、奥さん」
「はっ、なんでしょう？」
　久美はとぼけた声をあげた。
　啓吾の心臓は張り裂けそうなほど漠々している。勇気を振り絞り喉の奥の方から声を押しだすように切り出した。
「実は、今日来たのはもう一つの理由があるんですよ」
「り、りゆう……それってなんですか…」
「まあ、言葉よりこっちを見てもらった方が早い」
　ディーバッグから無造作に角0の茶封筒をとりだし、リビングテーブルの上に置いた。
「なんですか、これ？」
　久美は不思議そうな表情で尋ねた。
「まあ、いいですから、中を見てください」
　久美は言われるまま封筒から中に入っていた久美自身の猥褻な写真をを取り出した。
「…………」
　久美の表情がだんだんと強張っていく。と同時に頬が赤く染まった。
「なに……なに、これ！　どういうつもりなんですか」
　久美の声が怒りに震えている。
「そんな顔しないで、よく見てくださいよ。ほらっ」
　震える久美の手から写真をとり一枚一枚とテーブルへ並べていく。
「なんでこんな事するんですか！　変態！」
　久美はそれを払った。写真が宙を舞った。
「へ、変態だって……奥さん、何を言っているのかなあ……」
　啓吾は床に散乱した写真を手にとりながら呟いた。
「もう、いいかげんにしてください！　出てってください！」
　久美は啓吾の腕を力強く掴み立ち上がらせようとした。
　しかし、啓吾はその手を振り払い、逆に久美の腕を掴み引っ張り目の前へ跪かせた。
「いたい！　なっ、なにするんですか！」
「よーく見るんだ！」
　久美の目前に写真をつきつけた。
「変態！」
　久美はすかさず目をそらす。
　啓吾はそんな久美の顎を右手でがっしりと掴み写真へ向けた。久美は固く目を閉ざす。
「さあ、奥さん。よく見なさい。他人の画像じゃないんだから……」
　久美は薄く目を開いた。
　啓吾はそれを見逃さなかった。引き続き口を開いた。
「なっ、奥さん、あなたでしょ。くっ、くっ……こんな太いものをくわえ込んでいる……変態はどちらかな……」
「ちっ、違います……こっ、これはわたしではありません……変な言いがかりはよしてください……それに、手を離して……今なら、間に合います」
「おや、おや。まだ、シラを切るんですね。じゃあ、ここに写っているものはなんでしょう」
「………」
「さあ、奥さん。どう説明します？」
(ど……どうして……こっ、これが)
　久美はようやくこの写真が自分であることを理解した。
　そう、この写真は今から三月ほど前、久美の夫がデジカメを買って来たときの日だ。夫はセックスしている写真をとりたいと要求してきた。久美は恥ずかしくて拒否した。しかし、夫が『簡単に消せるから大丈夫。だから、一度だけ……』という強い言葉に説得されて撮影を許した。恥ずかしながらも撮影されてることに、異常な興奮を覚え、いつものセックスより女の身体が熱くなった日、その時のものだった。
　その後も、夫は写真を撮ることを要求してきたが、久美は断りつづけた。そんな抵抗があってか、今では夫は諦めたようだ。しかし、それと平行して夫とが肉体を要求することもなくなっていった。
(どっ、どうして、この男が持っているんだろう)
「奥さんだよね。こんないやらしい格好で写っているのは」
「………」
　久美は頷き、それを認めた。
「でも……どうして？　あなたが」
「いいよ。教えてあげるよ……コメント:昨日テレクラでゲットした人妻です。 旦那の留守中に奥さんの家で撮影しました。 非常に淫乱な女で、自分から腰を振ってきます…… 」
　啓吾は画像を見つけた経緯を説明し、続けて言った。
「奥さん、俺は奥さんが寂しいと思って身体を慰めに来たんだよ」
「ち……違うのよ……」
「何が違うんだ！　奥さん！　こんな太いバイブまで入れてるくせに！」
　啓吾はバイブが挿入されている画像を指差しながら大声をだした。
「違うのよ！　浮気なんかしていない！　こっ、これを撮ったのは主人なのよ！」
「！？」 啓吾は絶句した。
(そっ、そうだったのか)
「しかし、私のことを変態とは言えないでしょ。自分の女房のこんなイヤラシイ姿を ネットに流すなんてあんたの旦那の方がよっぽど変態じゃないか！」
　啓吾は再び怒鳴った。
　久美はビクッと身体を震わせ、俯いた。
「……」
　顔をあげようとしない。
(よし、こっちのペースだ)
「さあ、奥さん……どうしようか……」
　啓吾は久美の傍らに寄り添った。
「ショックで口も聞けなくなったのかな……」
「……あの……このことは誰にも言わないでください……」
「もちろん、誰にも言うわけないさ。けどね、一つだけ条件があるんだ」
「……条件って……」
「なぜ、この写真を持ってきたか、もう一度考えてごらんよ……」
「……わ……かりません」
「ふっ、わからないかな。本当は恥ずかしくて言葉に出来ないんだろう？　まあっ、いいさ。俺もまどろっこしいことは嫌いだ。だから、ズバリ言うよ。奥さん、あなたとセックスしたい。ずっと、前からあなたを抱きたいと思っていた」
　啓吾は言いながら、久美の震える肩に手をまわした。
「いやっ……」
　久美は身体をよじった。
「好きだ……奥さんを見たときから、ずっと」
「だったら、それを処分してください」
「こんなもの捨てたところで、奥さんのいやらしい姿は既にネット上に氾濫しているんだよ」
「………」
「ねえ。奥さん、君は、ご主人に裏切られたんだ。だから、ねっ」
「どうして……こんな……こと……」
　啓吾は再び久美を引き寄せた。そして、いきなり唇を唇へ寄せた。
「いや、やめ……」
　久美は唇から逃れた。
「俺が黙っていればこのことは誰にもわからない……だから、一度だけ夢をかなえさせて欲しい」
「……ほっ、本当に……」
「あぁ、誰にも言わないし、これは二人だけの秘密にする」
「……ぜっ、絶対、誰にも言わない？」
(落ちたな…)
「ああ、誰にも言わないよ。１回だけでいい。１度限りでこの事は忘れる」
「……ほっ、本当に１回だけよ……」
　久美は主人のした事がショックであったし、また、主人との生活もすれ違いばかりだったので もうどうでもいいやと思った。
　啓吾の唇が久美の唇に重なった。
【次】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
しょうたの作品集→しょうたの作品集"
2000/11掲載作品。2003/10加筆訂正済。
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