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はしゃいだようなメールは意外だった。その男性とはどうも気が合わないと言っていたからだ。外見は申し分ないという。これまでも子供の進学のことで会話を交わしていたし、志望校に合格したら二人でカラオケ行きませんかなどと、露骨な誘いも受けていたらしい。それでも、親しくメールを交わしてみると感覚の微妙な違いないが気になり始めた、と愚痴っていたからだ。
一度ドライブしたが真剣な交際を申し込まれた。かつての彼女のことを話して聞かせるくせに、別れた男性とメル友として付き合っていることを非難する。あげくに、ご主人とセックスするのは妻の義務だなどと説教までする。そんな男性に抱かれることにしたのは、僕がそうしてみればといったからだ。
「羽田で久しぶりにお会いしてすごくうれしかったです。でも後悔もしました、先生は雪子の中ではイッてくださらなかったから。やっぱりよくなかったんだと落ち込みました」
雪子が塾講師の男性と初めてベッドを共にしたとき、彼は射精しなかったという。フェラをしても、挿入してもついに果てることはなかったのだと。
「落ち込みました。彼は気持ちいいというし、人生で最高のフェラだと言ってくれるのに、射精はしない。挿入して、最高だとか虜になるとか言ってくれるのに出さずに終わりました。先生もそうだったし・・・ 女として情けないです」
そんな彼女の訴えに、僕は見ず知らずのその男性を弁護するために言葉を尽くす。
「男性にとって射精がゴールとは限らない。若者ならわかりませんが、ある程度経験を積んだ男性にとって女性を感じさせることが快感になるし、精神的な快楽を重視するようになるものですよ」
雪子も分かってはいる。
「もちろん、どうして射精しないのとは聞けません。でもそれとなく聞いたんです。すると、最初の射精はコンドームじゃなくて安全日に直接中にしたいからというんです。おかしな言い訳ですよね。そして彼も先生と同じことを言いました。あなたを感じさせたい、乱れる姿を見て満足したいと」
「雪子さんは感じたの？」
「はい、すごく上手でした。何度もイカされてしまいました。でも、女だって男性を満足させたい、射精する瞬間を見て本当の絶頂を味わえるんです。一方通行はいやです。私が感じなくても相手を感じさせたいと思うくらいなのに」
射精できないのは僕と同じだろうか。そう思うと男性の言葉が全て言い訳のように思えてきた。そしてなんだか雪子がかわいそうに思えてきた。
はしゃいだメールはそれから数日後、二度目のデートの直後だった。
「先生、この前は相談に乗っていただきありがとうございます。今日デートしてきました。めちゃくちゃよかったです！ すっかりはまってしまいました。一年後には転勤でいなくなるかもしれない人なのでまずいと思いますが、でももうだめかも、どっぷりはまりました。彼も雪子のからだを絶賛してくれます。とにかく相性ばっちりです！ 今日はお口に一回、中に二回、たっぷり出されちゃいました！」
それは良かったね、とだけ返信する。あれこれ言うのは余計なお世話というものだ。ほんとに良かった、などとまるで親心のような気分になる。別れた女性のセックスを心配している。おかしな感覚だ。
「今日は塾主催の講演会に行ったのですが、途中で彼からメールが来て抜け出してしまいました。私の姿を見たら我慢できなくなったって。今ホテルに来てます」
抱かれる前に、なぜか僕にメールをする。
「一日おきに呼び出されてる感じです」
「情熱的ですね、でも仕事クビにならないようにと彼にお伝えください」
僕がそんな返信をすると、
「一時間しかないけどどうしてもって駐車場でカーセックスとか、コンビニの駐車場でフェラさせられたりとか、そんな感じです」
今、雪子には二人の男性がいる。もちろんそれぞれの関係は秘密で、全てを知っているのは僕だけだ。雪子は新しい男性とすっかり盛り上がり、もう一人の彼との関係を清算すべきではないかと考えているようだった。塾講師とのセックスは予想以上にいいらしい。しかしもう一人の彼には別の思いがある。
「先生と別れて一番苦しい時に助けてくれた人です。先生への思いを断ち切れないことを知りながら私を愛してくれた人ですから、絶対に傷つけてはいけないんです。でも今の状態も申し訳なくて」
この彼とは気持ちは通じているし安心感はあるがセックスでは満たされていない。
もちろんアドヴァイスをする気はなかった。今の雪子は、恋愛にもセックスにも満足している。人妻でありながら夫以外の二人の男性の間で揺れる。もちろん二人とも自分にぞっこんだ。これが女性にとって一番幸せな状態なのかもしれない、と思いながら僕は心の中で安堵していた。充実してくれていれば僕は楽だ。僕の性欲を受け止めてもらうことだってまだできるだろう。そんな妄想を抱いていたときだった。
「色々ご相談に乗っていただきましたが、あっという間に終わりました。一月半かな？ 終わるとなればこんなものです」
突然のメールに驚く。喧嘩でもしたの？と返す。
「昨日、喧嘩というより私の気持ちを言葉にしたんです。相変わらず夫婦のことをあれこれ言うし、説教くさいし、婚外ですから我慢して付き合う気はありませんから」
身体の相性は良くても、もう抱かれようとは思わないと雪子は言う。一度気持ちが冷めたらそんな気にはならないものですよという言葉に、たしかに女性は一度冷めた相手に抱かれる気にはならないだろうと納得しながら、冷めた相手を抱いた自分を振り返る。そして今も雪子を性欲の対象にしている自分を。
「なんだ、エッチな報告期待してたのに残念です」
「残念でした、デート報告のメールで先生興奮したんですか？」
「塾講師に性のおもちゃにされてる人妻を想像したら、ちょっとはね」
本当はこんなやり取りを続けていてはいけないのかもしれない。
「先生は風俗は？ セフレはつくらないんですか？」
風俗にはいかないしセフレも必要ないと答える。
「彼女さんに気を使ってるんですね、真面目なんですね〜あんなに性欲旺盛なのに！」
と雪子がからかう。
「したくなったら自分でします。淫乱人妻をおかずに自分でするから結構ですよ」
という僕に、
「わたし、おかずにされる女なんですね。彼もそう、わたしが初めて塾に行った時からずっとおかずにしてたって」
「それは魅力があるってことだからいいじゃない？」
「そうですね、それで満足しておきます。だって先生、抱いてくれないんでしょ？」
抱くだけならいつでもいいよと調子に乗りそうだったが、やめておいた。
「おかずにしてもらえるのはまだまだ女としてだいじょぶってことですよね？ これ、お役にたちますか？」
こんなメールに添付されていたのは、乳首をつまんだ雪子の画像だった。
「今してるの？」
「違います、何年も前に撮りました、先生見覚え無いですよね？」
「エッチ画像、何百枚ももらったからいちいち覚えてなんかないよ」
冗談のつもりだが、数えてみればそのくらいの数かもしれない。
オナニーやセックスを撮影したビデオテープは数十本あったはずだ。
「そうですよね、じゃこれは？ こんなのも」
そういって淫らな画像が添付されてくる。
「覚えてないけど、これで十分勃起するよ」
少し間をおいて、今度は割れ目を指で開いた画像が届く。かなりのアップで愛液がにじみ出ている様子や膨張したクリがっはっきりと写っている。本文には、
「これは最新版、今の」
とある。
僕は思わずいきり立ったペニスを写し、送りつけた。
「淫乱雪子が欲しいのはこれだろ」
「そうです、大きなので犯されたい、痛がっても奥まで突いて、容赦なくレイプして」
今度はクリにローターをあてがった画像が添付されている。
「今どこ？ 自宅？ 電話できる？」
「はい、自宅です、声で犯してください」
添付されていたのは、握りつぶされた乳房の画像だった。
ワンコールで出る。
「あぁ、せ、せんせい、ハァ、ハァ」
すぐに雪子の喘ぎ声が聞こえる。
「足をＭ字に開いてごらん、指で割れ目を開いて、ここを犯してくだいってお願いしろ」
「あっ、あっ… 犯して、めちゃくちゃにして！！ 太いので無理やり犯して、お願いです！！」
「今度は四つん這いになって、お願いしろ！」
「ハイ、分かりました…、犬みたいに、四つん這いで、お尻振って…、犯してもらえるようにいやらしい声出します、先生に乱暴にしてもらえるように、淫乱女になって、めちゃくちゃに、アッ、アッ、ダメダメ、センセイ… もうダメです、イッちゃう！！」
そういって雪子は絶叫して果てた。絞り出すような悲鳴に続き、乱れた呼吸が伝わってくる。
「勝手に気持ちよくなったのか、俺に奉仕するんじゃないのか、え？ もう犯してやらないぞ、淫乱女はオナニーで我慢してろ！！」
厳しく叱りつけると雪子は従順になる。
「ごめんなさい、先生、お願いです、オナニーだけじゃダメなんです、犯してほしいんです、先生のペニスで犯してほしいんです、無理やり身体だけめちゃくちゃにされたいの、お願い、お願いだから中にしてください！ ここを突いてください！！」
僕は、羽田でのセックスを思い出しながら、言葉で雪子を犯した。危険日に中出しするぞと脅せば、イヤ、それはダメ、お願いやめてと本気の声で応じる雪子。いやがる女を無理やりするのが興奮する、と僕が言ったからだ。
痛いくらい乳首ひねって、バックから突きながらお尻を叩いてと哀願する雪子。僕の声を聴きながら、雪子は自慰によって何度も絶頂を迎えた。そのたびに僕は雪子をなじった。
「イクぞ、ほら雪子！！ 犯してくださいって言いながらお前もイケ！！」
「ああ、あっ！ あっ！ お、犯してください、センセイ、ゆ、雪子をめちゃくちゃにして〜！！ ダメっ、イクイクイクイク…」
しばらくの間、二人は荒い息を受話器に聞かせ続けていた。
「まだ、ヒクヒクしてる… 」
余韻に浸りながら身づくろいをする音が聞こえる。少しだけ世間話をする。
「ねえ、セフレじゃなくていいから、もう一度抱いてほしいな！ 今度はちゃんと中に出してもらっちゃお、三回くらい行けるかな〜 センセ？」
妙に軽い調子の雪子に違和感がある。昔の雪子もこんな風にふざけたが、何かが違う気もする。こんな雪子ならたまに会って抱くのもいいのだろうか。それともやはり、抱けば後悔するのだろうか。抱いても快感は得られないのだろうか。テレフォンセックスで得られるような興奮を、セックスではもう得られないのだろうか。
雪子とはこれからもそういう関係なのかもしれない。
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