（３２）

　翌日、康平は、仕事を終えると愛子の待つ居酒屋に向かった。
　店に入ると愛子が、頬を染めて康平に手を振る。
　康平は愛子の座っている席に歩いていき愛子に声を掛けた。
「待ったか？」
「ううん、大丈夫。いま来たところなの。」
「そうか。・・愛子、今日は大事な話があるんだ。」
「えっ？」
「ああ、・・実は・・・」
　しかし、康平は何から話したらいいか判らなかった。
　康平の雰囲気から感じ取ったのだろう、愛子から言葉が掛けられる・・
「私との・・ことね？」
　康平が愛子を見つめて率直に切り出した。
「ああ、そうだ。このままズルズルと関係を続けるのも良くないと思ったんだ。」
　愛子は、顔を歪めていく・・・
「・・あ・・・あの・・私を・・捨て・・・・」
「いや、違うんだ。そんな事じゃない。」
「じゃ、じゃぁ・・・」
「愛子・・俺は、お前を苦しめたくない。それに、ご主人にも悪気がある。」
「アイツなんか・・・。」
「昨日、会社辞めたらしいの・・母が私に言ったわ・・武彦さんを責めちゃ駄目よって。家の仕事を旦那に任せたらって。でも断ったわ、その時点で家は潰れる様なもんよ。」
「・・・・」
「この間からアイツ、康平さんの事をしつこく聞くの・・・あのビデオは本気でいってるのかって。俺とどこが違うんだって・・全てよって答えてやったわ。」
「何て言ってた？」
「俺も、お前が喜ぶように努力するから別れないでくれって・・。」
「・・・で、愛子は、どう答えたんだ。」
「いいわよって・・でも私は好きな事やらしてもらうわって言ったら・・」
「・・・ん？」
「俺を捨てないのなら構わないって言うのよ。」
　康平は愛子の話に、こんな落ちぶれて女に縋るような男は愛子に限らずどんな女性も落とせる筈がない・・所詮この程度の男なのだ・・と思った。
　愛子が武田を見下すのも当然だ・・・いずれ武田は・・・
　その時・・・
　愛子の携帯電話が鳴った・・・母親の恵美からだった。
「え・・なに・・なに言ってるの・・？」
　しばらく会話が続いていた。
「えぇ・！・・・な、、う・嘘でしょ・・・・・・わかった・・・すぐ行くゎ・・」
　愛子が真っ青な顔をして電話を切った。
「どうした、愛子？」
「主人が・・・死んだって・・すぐ警察に行ってって・・・。」
　康平は耳を疑った。まさか自殺・・・・・・
「・・・なんで・・・だ。」
　康平は、直ぐに愛子を車に乗せ警察に向かった。
　車の中で詳しく話を聞くと、かなり酔った状態で車を運転していたらしい。
　運が悪い事に隣に女性を乗せていたが、その女性は足を骨折し病院に搬送されたが命には別状ないとの事だった。

　康平の車が警察に到着すると愛子は走って中に入っていった。
　愛子は警察の者と何か話している。そして遺体安置所に案内される。

　康平は、警察に詳細を尋ねた。
　警察の説明いわく一緒に乗っていた女性の証言から、飲んでいたクラブでかなり愛子を罵倒していたらしい。その女性は、武田の愛人だと言っていた。
　もう、金を払えないが俺と付き合いを続けてくれと、かなり強引に迫ったようだ。
　女性は、断ったが武田に無理やり車に乗せられ脅かそうと暴走した挙句の事故だった。

　数分後、中から愛子の泣き声が漏れてきた・・・

　愛子が警察に抱きかかえられて部屋から出てくる。
　廊下の椅子に座って顔にハンカチを当てていた。
　康平が愛子に近づく。
「・・康平さん・・ごめんなさい、今日は帰って下さい。」
「・・いいのか？」
「ええ、・・すぐ母も来るので・・」
「・・わかった。」
　康平は愛子を残し警察署を出た。
　複雑な気持ちだった。そして武田に怒りが湧いてきた。
（あの男はどこまでも・・・馬鹿な奴なんだ・・愛子には悪いが死んで当然だ。しかし、宮口さんの他にもいたとはな・・でなきゃ、あんな大金は使えないか。）

　康平は帰宅すると礼子に、この事を告げた。
　礼子は、驚きを隠せなかった。
「ある意味、悲惨な男だよ・・・」
「死んだのは気の毒だけど・・でも・・最後まで迷惑かけていったわね・・」
「愛子には悪いが、武田がいなくなったほうが愛子のためかもしれん。」
「・・・・そうね。」

　康平は、愛子が今どういう心境なのか想像が出来なかった。
　あれだけ武田を毛嫌いし、別れたいと常に漏らしていた愛子だったが遺体安置所から聞こえてきた泣き声は、何を意味してたのだろう・・・異性を想う愛の種類は色々ある。武田と愛子は・・・・・。

／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／

　翌日の朝刊の三面記事に小さく事故の事が書かれていた。
　康平は、さっと眼を通しただけで新聞を閉じた。
　また今日から昨日とは違う日が始まる。
　康平は想った。きっと、愛子も立ち直るだろうと・・・。

「康平、会社遅れるわよ。」
「ああ。お前は？」
「今日は、午前中、亜美の学芸会だからお昼から行くわ。」
「そうか、、ビデオ撮って見せろよ。」
「ええ、わかったわ。」
　康平は、気持ちを入れ替え会社に出掛けた。
　康平は車に乗ると甲斐の事を思い出した。
（そういえば甲斐に礼を言ってなかったな）
　康平は甲斐に携帯から電話を掛けた。
「もしもし、甲斐か？」
［おお、荒尾、どうだった？］
「ああ、上手くいったよ。お前に礼を言おうと思って・・・しかしな・・」
　康平は、昨日までの事を甲斐に説明した。
［荒尾、それは、ソイツの自業自得ってもんだ。気にするな。］
「ああ、気にしてないよ。」
［それより、終わった事だし・・・んーーっ・・ははっ。］
「ん、何だ？・・・」
　康平は甲斐の言いたい事が一瞬わからなかったが、咄嗟に気付く。
「おぉ、そうだった。お前を招待する日を決めなきゃな・・。」
［おい、おい忘れてくれるなよ。］
「すまん、今、礼子は月一が来てるから来週当たりどうかな？」
［ああ、俺はいつでもいいぞ、いつでもな・・はは・・］
「よしっ、さっそく今夜にでも礼子に話しておくよ。」
［わかった。期待して待ってるよ。］
　康平は、電話を切った。

　会社に到着しデスクに座った康平は礼子にメールを送った。
　数分後にレスが帰ってくる。
『ＯＫ！来週金曜日はどう？』
　康平もすかさず了承するメールを再度、礼子に返した。
（さてと・・仕事すっか・・。）
　そう思った時、康平に内線が入る。
「はい、荒尾です。」
「町田だが・・」
「・・あっ、専務、おはようございます。」
［いま、暇かね？］
「は、はい。暇と言えば暇ですが・・」
［誰にも見つからないように私の部屋に来てくれんかね。君に頼みたい事があるんだ。］「わかりました。すぐ伺います。」
　康平は、専務の部屋に向かった。
　専務の町田は、今季限りで会長職に座る現社長の後釜で４月から新社長になる事が既に決まっていた。

　康平が専務室をノックをした。
「入りたまえ。」
「失礼します。」
「すまんね荒尾君、まぁ掛けたまえ。」
「はい。」
「あの、専務・・頼みとは？」
「うむ、実はね、君を見込んでやってもらいたい事があるんだよ。」
「は、はぁ・・」
「ある女性を落としてもらいたい。出来れば肉体関係までいってほしい。」
「ええーっ・・」
「勿論、君が妻帯者と言う事は承知してる。実は君に目をかけている北原常務は、私の知恵袋のような存在なんだ。彼から君の事を色々聞いてね。悪いとは思ったが色々と調べさせてもらった結果、今回依頼する件は君にしか出来ないと思ったのさ。」
「はあ・・あのぅ・・専務自信の個人的なことですか？」
「いや・・実はな総務部の山口君が、我社が１０ヵ年計画で進めているＡ製品企画のシークレットデータを他社に流しているようなんだ。」
「何ですって・・あのプランの初期企画は私も参加していたんですよ。」
「ああ、知っているさ。起案も君だったからな。だから余計、君に頼みたいんだ。彼女はそのデータを他社に漏らし、かなりの報酬を得ているようなんだよ。」
「・・・？」
「彼女は、君も知っていると思うが、かなりの実力もあり女性ながら出世コースを歩き続けている。そして美人な上に知能派だ。その辺の男性社員には見向きもしないプライドの高い面も持っている。」
「ええ知ってます、しかし男性社員も慕っている者がかなりいるそうです。」
「ふむ、その通りだ・・・・我社の命運が掛かっている。荒尾君、やってくれんか？」
「つまり・・漏洩事実を探り証拠を掴めと・・・・・・」
「そうだ。そして、そういう危険因子を社から追い出さねばならない。まず、何故、山口君が、そのような事をするかということだ。」
「漏洩する理由も探るんですね。」
「やってくれるかね。掛かる費用は全て会社の経費でいい。２本使っても構わん。」
　康平は息を飲んだ・・トップ企業で言う１本とは一億円単位である。
　それを２本も・・・それくらい、この依頼は重要な意味を含んでいるのだ。
　専務の町田は、この企画を４月に正式発表するつもりだ。
　そうするからには康平は失敗するわけにはいかない。
　社員１４００人の生活も掛かっているのだ。
「専務、わかりました。できる限りやってみます。」
「そうか、何とか会社を助けてくれ。君の報酬は１本と残った経費全てだ。」
「えぇー・・・」
「ん？・足りんかね。」
「い、いえ。解りました。」
　康平は驚いた。しかし、それくらい重要な事なのだ。
　データの漏洩による社の損失は何百億にも達する・・。
　町田は康平に封筒を渡した。
「これが、彼女を疑い始めてから探偵を使って手に入れた資料だ。」
　康平は町田から封筒を受け取った。中から資料を出し目を通す。
　山口慶子３２歳　独身
　平成４年　Ｋ大学法学部卒業　同年、当社に入り幹部秘書を経て現在は総務部の総務課長補佐が職位だ。
　業務成績は優秀で上部の信頼も厚い。
　私生活では特定の恋人はおらず同姓の友人もいないようだ。
　両親は慶子が幼い頃、交通事故で失ったが、兄に育ててもらい大学まで出してもらう。兄は結婚しており夫婦で故郷の大阪に住んでいる。
　家は港湾沿いの高級マンションに一人住まい。
　２年程前から遊び方も派手になってきたようだが、自宅に人の出入りする様子は無いようだ。
　しかし、かなりの性好きで週１のペースで、あるマンションにある
　ＳＭクラブへ通っており最近では会員制のＳＭクラブに入会するほどのＭ女でもあるらしい。しかし、それらしき雰囲気はまったく見せず、
　むしろ静粛さえ感じさせる雰囲気が彼女を高貴に見せ社内では誰もが彼女をそういう風に見る事もなかった。
　山口恵子は社内では一切隙を見せないほどガードは固いと有名だった。
　特定の男もおらず３２歳という女盛りにしては妙だなと康平は思ったが、ＳＭクラブに通うくらいだからＳＥＸが嫌いというわけではなさそうだ。
　レポートにはＳＭクラブの名や山口慶子が良く行く店のリストも全て記入してあった。
（ＳＭクラブ・・・アルル・・か。）
　康平は、わずかに腹の中で笑みを見せ資料を封筒にしまって専務に問い掛けた。
「専務、期限はありますか？」
「私が社長に就任するまでには何とかしてもらいたい。」
（ゲッ・・あと２ヶ月も無いじゃねぇか・・・）
　しかし康平は、自分の手がけていた仕事を漏らす山口を許せなかったし北原も慕う町田専務からの直々の依頼に何とか解決をしたいと思った。
「解りました。」
「金以外にも、注文があったら言ってくれたまえ、出来る事は何でも聞く。これは、私の携帯電話の番号だ。社内電話だとバレてもやばいからね。」
　康平は町田からクレジットカードに挟んだメモを預かると専務室を出た。
（さて、とりあえずはどうするかな？このカードでバーボンでも買ったろかい・・。）
　独り言で冗談を言いながら康平は考えた。
　やはり、まず山口慶子に接触しなくてはならない。
　康平は、社内では男に隙を見せない慶子を、どうやって引き付けるかを考えた。

　デスクに戻った康平は、会社内の山口慶子の同期を全て調べた。
（なんだヒラ社員ばかりか・・駄目だな。）
　次に総務部の社員全員を調べた。自分の知っている者がいれば協力を仰ぐためだ。
　康平は名簿をめくっていく・・。
（ん・・この女性は・・）
　康平は、一人の女性に目をつけた。　総務課主任　榊原美紀　３１歳
　以前、康平の部下であった女性だ。当時は大学出たての美紀と何度か飲みに行ったこともあるし、美紀は康平に惚れて不倫付き合いをしつこく迫った事もあった女性だ。なかなかの美人なのだが康平も結婚して間もなかったし部下に手を出すほど不自由もしていなかった。
（んーっ、とりあえず彼女から接触してみるか。）

（３３）

　康平は、さっそく総務部に電話をした。若い女の子が出る。
「もしもし、建設部の荒尾ですが、榊原美紀さんをお願いしたいのですが。」
［お待ちください。］
［もしもし代わりました。・・フフッ、荒尾課長から電話なんて珍しいわね。］
「やぁ、久しぶりだね。ちょっと思い出しちゃってね。」
　美紀が笑いながら康平に応答する。
［我社のエースが私に何の用かしら？　なにか、怪しいわよ・・］
「そんなことないさ。しかし姓が変わっていないところをみると、まだ独身かい？」
［なに、課長・・その言い方。それに私は結婚なんてする気ないの。］
「はは、ゴメン、ゴメン・・いや、ちょっと喋りたくなってね。どうだい今夜？」
［えっ、嬉しい、飲みに連れてってくれるの？　当然おごりよね。］
「ああ、もちろんだ。」
　榊原美紀は、康平の誘いに喜んで承諾した。
　康平は、総務部に一人、諜報者を置かなくてはいけないと思っていた。
　榊原美紀なら口も堅いし以前、自分に惚れていたこともあり適任と判断したのだ。
　何とかして榊原美紀に協力者となってもらいたかった。

　康平は、仕事が終わると玄関ロビーで美紀を待った。
　少しして美紀が走り寄って来る。
「課長・・オ・マ・タ・セ・・」
「ヨッ、相変わらず綺麗じゃないか。」
「お世辞？　それとも、行かず後家のお悔やみ言葉かしら・・・？」
「はは、何言ってんだよ。本心で言ったのさ。」
　確かに美紀はハーフっぽい顔つきで背も１６８と高く、モデルと比べても遜色なかった。
　二人は歩きながら康平の車に向かった。

「でも、本当は荒尾課長から、そう言われると嬉しいわ。ねっ、課長、私も昔とは違うし今夜は大人の付き合いでエンドレスしてくれるんでしょ？」
「ん・・ああ、・・そうだな・・」
「・・奥さんに怒られるかな？」
「はは、そんなことはないさ。」
「ふふっ、強がり言っちゃって・・」
（まんざら嘘でもないんだよね・・。）
　康平は美紀を乗せて駅前の繁華街に入った。
　康平が地下駐車場に車を運ぶ。
　二人はエレ―ベータ―を使い地上に上がった。

「さ、何食おうか？」
「美味しいもの食べたいわ・・んー・・日本料理。」
「よし、わかった。じゃ行こう。」
　康平は美紀に腕を上げて促す。美紀も遠慮せずに康平に腕を組んだ。
　二人は高級料亭にはいった。
「うわーっ、高そうなお店・・いいんですか課長・・」
「ああ、君みたいな美人を連れて入る店はこういう店じゃなくちゃな。」
「私、いつも居酒屋なんですけど・・。」
　康平は笑いながら店員に案内された席についた。
　美紀の期待していた料理が次々と運ばれてくる。
　二人は、酒を頼み乾杯した。
「乾杯ぁーい。」
　二人はグラスを合わせて酒を飲んだ。
　色々な話で楽しむ康平と美紀は昔の話になると更に盛り上がってきた。
「だって課長、格好良かったんですもの。クールだし、反面ジョークは上手いし。」
「いきなり不倫して下さいといわれた時は、正直ビビッたよ」。
　美紀が顔を染める。まだ康平が係長になったばかりで結婚して１ヵ月後に入社してきた美紀に、いきなりこう告げられたのだった。
「でも、課長・・本心で言ったのよ。それに私・・いまでも課長に惚れてるわ。」
「はは、ありがとう。嬉しいよ。」
「奥様と仲いいんでしょ？」
「ああ、まあね・・。」
　美紀が一瞬、寂しそうな目をした。康平はそれを見て取りすかさず質問をした。
「君は、結婚しないのかい？」
　美紀が笑いをこぼしながら答えた。
「ええ、全くするつもり無し。それに夢があるの。」
「へぇー、何？」
「お店やりたいの・・小料理屋を・・・。」
「小料理屋・・？」
「ええ、和服を着てカウンターだけの小さなお店・・でもこの都会じゃ、なかなか夢は実現できないわ・・物価も高いし・・あーぁ、嫌になっちゃう。」
「今の時代は特にな・・・」
　康平は、ふと専務の経費の事を思い出した。美紀の協力如何では手助けしてやってもいいと思ったのだ。
「今の仕事場はどうだい？」
「えっ・・総務課？」
「ああ。」
「そうねぇー、結構、のびのびやってるわ。山口女史が頑張ってるし・・」
「そうか・・彼女は社でも有名だからな・・。」
「荒尾ウーマンって言われてるわよ。」
　美紀が笑いながら話す。
「何だそれ？」
「女版の荒尾課長よ・・課長に負けず劣らずの凄い業績よ彼女は・・。」
　康平は、なるべく山口慶子の話は避けようと思ったが美紀から話す分には問題ないだろうと思った。
「私と一つしか歳違わないんだけどエリートコースまっしぐらよ。私と理由は違うけど結婚する気が無いのもわかる気がするわ。」
「・・なるほどねぇー。」
　出来れば康平は、今日中に美紀に協力を頼みたかった。
「ところで課長・・何か私に用があるんでしょ？」
　美紀は、率直に康平に問い掛けてくる。
　康平は、勘も鋭くなり大人の雰囲気を醸し出す美紀を改めて見直した。
「何故、そうと判る？」
「フフッ、なんとなく・・でもそうなんでしょ。」
「・・・・・」
「課長・・」
「美紀君・・さっき君が言ったエンドレス・・・今晩いいぞ。」
　美紀が驚いて咳き込んだ・・
「えぇー・・課長、私、あれは冗談で・・・・で、でも・・」
「いや、俺が君を抱きたいんだ。」
　美紀が考え込んで返答する。
「・・・私を抱かないと話せない事なんですか？」
（やはり成長している・・勘も鋭くなったな）
　康平は、やはり美紀しか社内では協力相手はいないと思った。
「君の口の堅さを信用して、はっきり言おう。実は町田専務から直々にある調査を頼まれてるんだ。君がいる総務課の山口補佐をね・・・・」
「えっ・・・？　何か・・あったんですか。」
「君も総務課なら知っているだろう、１０年計画で遂行してきた、うちのＡ製品企画の事を・・・このデータを彼女が他社に漏らしているようなんだ。」
「え、えぇーっ・・・ほ、本当ですか？」
　美紀は驚きを隠せない。
「ああ、やっている事は間違いないのだが証拠がないんだ。」
「要するに私を利用して補佐を探る・・と言う事ね。」
「利用と言うか・・協力と言う意味合いが強いけど・・・。」
「ふふっ、そうでなきゃ課長が私を誘うなんて事しないものね。」
「い、いや、そんな意味じゃないよ・・君の・・」
　美紀が康平の話を切って喋りかける・・
「いいわ。私の憧れの人の頼みですもの。」
「・・・すまん。協力してくれ。俺だけじゃない、社の命運も掛かってるんだ。」
「課長、頭なんて下げないで下さい。私、課長のためなら何だって協力します。」
「美紀君、感謝するよ。でも本当に君を抱きたいのは本心さ。」
「ふふっ、ありがとう。・・ご褒美何貰おうかなぁー。」
「何でも言ってくれ。」
「本当に？　・・嫌って言わない？」
「ああ、勿論だ。」
「もし・・もしよ、私がお店開いたら毎週来てくれる？」
「ああ、絶対に行くよ。」
「そしてね・・閉店まで居てくれて終わったあとに私と二人だけで・・・。」
　康平は美紀を愛しく思った。
「美紀君、約束するよ。そして、その夢を叶えてやってもいい。」
「えっ、そんな意味で言ったんじゃありませんよ。それに課長から出資してもらおうなんて気は全然ないし。」
「いや、俺が出すんじゃない。会社が出すのさ。それも公認で。」
　康平は、意味ありげな笑いを美紀に向けた。
「・・・どういうこと？」
　康平は、町田から預かったカードと自由に使える経費の話を美紀に聞かせた。
　そして一切、使用した用途も報告する必要がなく余れば成功報酬にできる事も。
「課長・・そ、それ・・・・凄い」
「美紀君、それだけ重要で大きな問題なんだ。」
「・・・・課長、私、頑張るわ。」
「ああ、期待してるよ。」
　康平は美紀の協力を得る事ができた。
　そして美紀も事の重大さに改めて山口の脅威を感じたのだ。
「ま、具体的な行動は追って話すよ。今日は飲もう。」
「ええ。ところで課長・・さっきのエンド・・レス・・」
「ハハッ、本心だよ。嫌かい？」
「ううん、そうじゃなくて・・・課長の言い方ストレートすぎて恥ずかしいゎ。」
「そ、そうかな？」
「でも・・本当に、奥様いいの？」
「ふっ・・ああ、大丈夫。君を不倫相手だと紹介しても怒らないよ。それに今回の件が無かったとしても君と関係を続けていく事に問題はない。」
「えっ・・ほん、・・な、何故ですか？」
「俺達夫婦はそういう仲なんだ。」
　美紀は信じられないという顔をしている。
　更に康平は続ける。
「妻も他の男性と、そういう関係を持ってるよ。」
「あの・・でも・・仲が良いって・・さっき・・」
「ああ、いいよ。お互い愛し合ってる。俺達夫婦の愛は違うところにあるんだ。」
「・・・・・」
「ま、追々、説明するよ。」
　美紀は、まだ信じられないという表情だったが、しかし、そこは大人の女性だけあって、それ以上追求しなかった。
　二人は酒を飲み料理をつまんだ。
　普通の会話に戻り美紀も康平の話に熱中していた。

「さ、美紀君、そろそろ出ようか。」
「ええ。」
「車は置いていくからタクシーで行こう。」

（３４）

　康平と美紀は店を出るとタクシーに乗った。
　康平は携帯でホテルを予約する。
　美紀は康平のダブルでという言葉に身体を寄せていった。

　ホテルに到着し二人はボーイに案内され部屋に入った。
　康平は、ボーイにウィスキーと軽いつまみを注文した。
　美紀は、少々緊張しているようだ。
　康平は美紀を抱き寄せ唇を奪った。
　美紀は康平の首に手をまわし反応を示す。
「課長、長年の思いが今日やっと・・。」
　康平が美紀の緊張を取ろうと冗談っぽく返答をする。
「美紀君、まさか今日、私に抱かれるまで守っていたなんて事は・・・」
　美紀は笑いながら康平に言った。
「課長、それって言いすぎよ。３１歳の女が処女に見えます？　男性と付き合った事もあるし、私にだって欲求はあるわ。」
「ハハッ、すまん。」
　今度は美紀が康平に唇を合わせてきた。康平が舌を絡める。
　二人の長い接吻が続いた。

「さ、シャワーでも浴びようか？　先に入るかい。」
「ええ、そうする。」
　美紀は、康平から離れるとソファにコートを置き服を脱ぎ始めた。
　ブラウスのボタンを外しスカートを脱いだ後、丁寧にストッキングを降ろしていく。くびれたウェストと足首にはめているレッグチェーンがセクシーだ。
　美紀は上下ブルーの下着になると康平を見つめた。
「美紀君、素晴らしい身体だ。凄いセクシーだよ。」
「恥ずかしいわ。」
　そう言うと美紀は下着も外しバスタオルを巻いて浴室に入っていく。
　直ぐその後、ドアがノックされボーイが注文の酒とツマミを運んできた。
　ボーイがテーブルに丁寧に並べ部屋を出て行く。
　康平はウィスキーをグラスに注ぐと一口で喉に流し込んだ。
　着ている物を脱ぎ上半身裸になる。しばらくして美紀が出てきた。
「さ、俺も浴びてくるよ。」
「ええ。」
　康平もズボンを脱ぎバスタオルを纏って浴室に足を運んだ。
　美紀はガウンを羽織りソファに座る。
　自分で水割りを作り康平を待った。
　ふと、さっきの康平の言葉が蘇ってくる。
　康平が自分に協力を求めてきたのは山口に接触するためだろうか・・。
　美紀は複雑な心境を言葉に表わせなかった。
　でも自分が康平を好きなのは間違いない。
　康平も自分を抱きたいのは本心って言ってたし・・・
　美紀は康平の協力に全力を尽くそうと決心した。

　美紀は一口飲むとガウンを脱ぎベッドに入った。
　自分で身体中が火照ってくるのが判る。
　康平が浴室から出てくる。美紀は思わずシーツを顔に覆った。

　康平は、それを見て取ったのか微笑みながらベッドに座る。
「美紀君、今日から呼び捨てで呼ばしてもらうよ。」
「えっ・・・？」
「敬語で呼んでいては親密になれそうにないからな。」
「・・・・・」
「たぶん君が不安と思っているだろうから言っておくよ。俺は、美紀が好きだ。そして裏切らない・・・。利用するためだけに君を誘ったんじゃないんだ。この件が終わっても美紀と関係を続けたいと思ってる。だから美紀も俺を信用してくれ。」
　美紀は飛び起きて康平に抱きついた。
　自分の気持ちをここまで読み取ってくれる男は今までいなかった。
　美紀は心底、康平に従事する事を誓った。

　康平はシーツをはがし美紀をベッドに倒した。
　唇を合わせ舌を絡める。
　康平は手を美紀の股間に持っていった。
　美紀の蜜壷は既に潤っている・・・
「ァァ・・」
　康平は美紀の全身に舌を這わせる。
　首筋・・乳房・・腹部と移動し、形の良い恥丘の陰毛を過ぎると肝心な部分に到達した。
「・・ゥ・・アァ・・・課長・・」
　康平が美紀の亀裂に舌を這わせた・・
　小さな女芯を舌先で突付く・・・
「んーーっ・・ァァ・・・・イィ・・アァァァー」
　感度がいいのだろう、美紀の蜜壷からは次から次へと透明な蜜が流れてくる。
　康平は、上に移動し美紀の首筋まで舌を這わせた。
　自然と美紀の手が康平の肉棒を掴む・・
　康平が、美紀を見つめた。美紀も目をあけて康平を確認する。
「課長の・・固いゎ・・それに大きい・・」
　潤んだ眼で康平に告げる・・・

　康平は美紀の足を広げ真ん中に割って入った。
　美紀は膝を立てて康平を迎える準備をする・・・・
　そしてゆっくりと康平は美紀の中心を貫いていった・・
「ァ・・ァ・ァァァー」
　康平は完全に埋没させるとゆっくりと腰を振りはじめた。
　美紀の内部の襞が康平の肉棒に絡みつく
　美紀は淫艶で甘い呻き声を上げ始めた・・・
「・・・アァ・・ンアァァー・・・フゥ・・ゥ・・ゥ・・」
　康平はスピードを上げた。激しく美紀の壁を突き始める。
　美紀は今まで経験した事のないような快感が全身を襲ってきた。
「アァゥ・・ウッ・・ウッ・・・アァーーイィィィ・・」
　更に康平は美紀の乳首を指先で摘み優しく愛撫し始める。
　美紀の蜜壷が新たな液体を湧かせたのか康平は肉棒に暖かさを感じた。
　感度の良い美紀の身体に康平も満足している・・・

　美紀は早くもイキそうな表情を見せた。
「アァーッ・・イキ・・アァ・・イ・・イクッ・・イ・・クゥ・・」
　康平が美紀の足を下から抱え込み激しく奥に打ちつけた。
「イヤァーー・・イクゥゥー・・・ンァァァァァァーーーーッ・・」
　美紀が淫声を張り上げて昇天した・・・
　美紀の内部が小刻みに収縮を繰り返している。
　美紀は康平の首に手を回し自分に引きつけながら舌を絡めてきた。
　息を弾ませながら美紀が口を開く
「・・課長・・凄い・・・・私、こんなの初めて・・」
「美紀、まだ俺は抱き足らないよ・・」
　そう言うと康平は上体を起こし再度、美紀を自分に跨がせた。
　美紀は康平にしがみつき肉棒に腰を沈めた。
　自ら腰を振り美紀が小さく喘ぐ・・・
「課長・・・・私、・・・もっと・・もっと欲しい・・」
「美紀、俺の前では淫れていいんだぞ。俺もその方がいい。」
「課長・・私・・淫れたい・・・ァァ・・狂いそーーっ・・」
　康平は、仰向けになると美紀を上に乗せて腰を突き上げた。
　美紀も腰を激しく動かし康平の肉棒の上で踊り続ける・・・・・
　髪を振り乱し自分の本性を曝け出し始めた美紀は自ら女芯を摩り液体を迸せた。
「アァゥーーッ・・ウッ、ウッ、・・・キ、気持ちイィィー・・課長ぉ・・気持ちいいのぉーー・ァァ・イィィィィィーー・・」
「美紀・・俺もいきそうだ・・」
「キテ・・キテェーー・・お願いぃ・・ぃ・・」
　康平は、美紀を四つん這いにさせた。
　そして再度挿入し美紀の身体が移動してしまうくらい強く腰を打ち突ける。
　康平は下から美紀の乳房を思いっきり握った。
「ウアァァー・・・も、、もう駄目・・イク、イク、イックゥゥゥゥーー、ァゥゥゥッ」　美紀は、首を起こしながら絶叫する。
　そして康平も、美紀の中に思いっきり爆発した・・
　美紀は康平の熱い分身を奥の壁で感じる取ると前に倒れこみ下腹部に力を入れて康平の肉棒を締め始めた。
　締め付けるたびに美紀の菊門が盛り上がったり締まったりする。
　康平はゆっくりと肉棒を引き抜いた。
　美紀がうつ伏せに倒れる。
　大きく開いた美紀の亀裂から白い分身が流れ出してきた。
　美紀が、身体を反転させ康平の手を引っ張った。
　康平は美紀に覆い被さり唇を合わせる。
　美紀が虚ろな眼で康平に語る・・・
「課長・・こんな気持ちいいの初めて・・・」
　康平は、悪戯っぽく美紀に問い掛けた。
「そうかな・・美紀は今まで、どんなＳＥＸしたんだい？」
「もぉう、意地悪っ・・」
「はは、でも感度最高だな・・美紀は。」
「それより・・課長、・・言い難いんだけど・・・今日、私・・危険日なの。」
「ははっ・・大丈夫だよ。」
「えっ？・・なんで・・」
「・・んー・・要するにパイプカットしてるから・・。」
「えぇぇーー、そうなんですかぁー？」
「そんな驚く事かな。」
「だ、だってぇー・・。」
　康平は立ち上がって裸のままテーブルに移動しウィスキーを一口飲んだ。
　美紀が康平の後姿を見つめる。
「課長って、いい身体してますね。」
　康平はグラスを二つ持ってベッドに戻った。
　一つを美紀に渡すと笑いながら答えた。・・・
「ＳＥＸは体力いるからね。」
「じゃ、もう１回、デ・キ・ル・・？」
　康平は美紀をからかった。
「して欲しいんだろう。」
「私・・物凄いスケベかも・・・。」
　二人は笑いあった。