（５６）

　康平が、美紀と恵美子を起こす。
「おい、二人とも目を覚ませよ。」
「・・・・んー・・うぅーん・・」
　恵美子が康平の声で目を覚ました。
「・・あ、局長・・おはようございます。」
「おはよう。美紀も起こしてやってくれ。」
「・・は、はい。・・・・美紀・・・美紀、起きて、もう朝よ。」
　美紀が眠たそうに眼を開けた。
「・・あ、局長・・おはようございます。」
　康平が笑いを浮かべて二人に言った。
「二人とも、下の毛が張り付いてるぞ。」
「あぁー・・やだぁ、バリバリになってるぅぅー。」
「いっその事、剃ったらどうだ？」
「何、言ってるんですか局長、生えてくるとき痛いじゃない。」
　美紀が反論してくる。
　康平は苦笑いしながら答えた。
「ま、それはいいから早く支度しろよ。太平洋商事に行くぞ。」
「は、はい。」
　二人は大急ぎでシャワーを浴びに行くった
　康平は、煙草をふかしながらコーヒーを啜っている。

　先に出てきた恵美子が、大きなバッグから黒のＶカットショーツを出して穿いた。
　後ろから微かに亀裂を覗かせ、ショーツを穿く恵美子。
　康平は、思わず下半身に疼きを覚えた。
　美紀も慌てて浴室から出て来ると、美紀は真ん中にチャックがついた変わったショーツを穿きだした。
　ちょうど恥丘部分からヒップの真後ろまで開ける事が出来る構造になっているようだ。「美紀、そのショーツ面白いな。」
「でしょ。昨日、買ったのよ。」
「でもチャックを上たり下げたりすると毛を挟んで痛いだろ。やっぱ剃れよ。」
「いいの。チャックなんて触らないから。」
　康平は、少々がっかりした。
　二人は、化粧をし、身なりを整えると、昨夜までの淫艶さが消えキャリアレディーに変貌する。

「局長、お待たせしました。」
「よし、朝食を済まして出かけよう。」
　３人は部屋を出た。
　２階のレストランでの朝食はバイキング式だった。
「君ら、たったそれだけでいいのか？」
「ええ、十分です。」
　美紀と恵美子のトレーにはサラダと小さなパンが一つしかない。
　後は大き目のマグカップにカフェオーレがあるだけだ。
　その点、康平はライスこそ少なめだが味噌汁と焼き魚に煮物が並び更に、大皿にはサラダが盛られていた。
「・・・・腹減らないか？」
「全く大丈夫です。慣れてますから・・」
「うちの女房とは大違いだな。」
　二人は康平の女房と聞いて興味がそそられたようだ。
「局長の奥さんって沢山食べるんですか？」
「いや、量っていうよりバランスよく食べるな。本人曰く肌の若さを保つには食事が一番大切って考えてる女だからね。確かに肌はツヤツヤしてるぞ。」
　恵美子が康平に問い掛けてくる。
「局長の奥さんって、確か私たちと歳は変わらないですよね？」
「ああ、君らより一つ上になるかな・・なんで？」
「あの・・失礼ですけど・・奥様の体型・・・は・・」
「んーっ。そうだな・・恵美子と似てるな身長も体型も。」
　美紀も追問した。
「子供も産んでて・・ですか？」
「ああ。・・・なんなら今度、女房も加えて４Ｐでもやるかい？」
　恵美子が眼を輝かせながら聞き返した。
「え・・？・・・・あ、あの・・・・ほ、本当ですか。」
　美紀も、その気があるようだ。
「局長・・私、・・是非・・・」
　意外な返事が二人から返され康平は、少し驚いたが内心、言って良かったと思った。
「そうか、じゃ今度話しておこう。」
　美紀も恵美子も康平夫婦の話は何度も聞いた事があるし自分らが経験した事のないような壮絶なＳＥＸライフや愛欲を求めているという事から一度康平の妻、礼子を見てみたいという興味もあったのだ。
「さ、そろそろ行くか。美紀、商事の社長室長に電話を入れておいてくれ。」
「わかりました。」
「近藤専務の在勤も確認しておいてくれよ。」
「はい。」
　美紀が電話での確認を終えると康平ら３人は、タクシーで太平洋商事に向かう。

　太平洋商事に着くと社長室長が康平らを出迎えにロビーに下りていた。
「ご苦労様です。」
「社長さんには、話はしてありますので、さっそく部屋を用意して頂いて近藤専務を呼んでいただけますか？」
「解りました。それでは第一応接室にご案内します。」
「お願いします。」
　康平らは、室長に案内され応接室に入った。
　康平は敢えて上座のソファに座り専務の近藤を待つ。
　美紀と恵美子もソファに腰掛けた。

　しばらく待つとドアがノックされ専務の近藤が入ってきた。
　康平は立ち上がり名刺を差し出して挨拶をする。
「始めまして。製鉄所属でセンターを任されています荒尾です。」
「センター長さんですか。それも、お若いのに局長とは大したものですね。」
「・・・この二人はセンターの係を受け持つ榊原と三林です。」
　美紀と恵美子がお辞儀をする。
「ま、どうぞ。」
　康平らは近藤に促されソファに座った。
「で、お話とは？」
「近藤専務、わざわざ、我々センターの人間が大阪まで出向いてるんですよ。なぜ来たのか見当はつくでしょう。」
　近藤の顔がわずかに引きつる。
　少々、間をおいて近藤が言葉を返す。
「荒尾さん、君も製鉄の役員だが私も、ここの専務ですよ。その横暴な口の聞き方は遠慮してもらえないだろうか。」
　美紀と恵美子が緊張しながら二人のやり取りを聞いていた。
　康平は、冷笑しながら堂々と答える。
「近藤専務、私は、製鉄の局長ですが太平洋グループの役員理事でもあります。」
　近藤の顔が驚きの表情で見る見る変化していった。
「・・え・・・グループ役員・・・・し、失礼しました。」
　康平が、近藤を見据えて話を始める。
「実は、製鉄の大阪支社に妙な噂が流れましてね、私どもが内密に商事の社内監査を極秘で調査したところ資金流用の疑惑が持ち上がりまして。」
　近藤の足が震え始めた。汗もかき始めている。
「・・そ、それが・・・私に・・・」
「近藤専務、とぼけなくても結構。既に証拠も掴んであります。」
「・・・・」
「それと、彼方の親友で元製鉄常務の桑原から、とんでもない話を持ち掛けられていますね。」
　近藤は、身体が硬直した。
「そ、それ・・・は・・・」
「近藤専務、事態は深刻ですよ。お分かりでしょうがインサイダー取引など実行すれば太平洋商事だけの問題ではありません。太平洋グループ全体の信用問題になります。」
　康平は、徐々に近藤の精神状態を窮地に追い込んでいく。
　近藤は完全に観念したようだ。
「あ、荒尾局長・・・わ、私は・・・ど・・」
「近藤専務、全て話していただきますよ。」
　近藤は、静かに頷き康平に全てを話し始めた。

　近藤と飯田のやり取りはこうだった。
　康平の睨んだとおり、久しぶりに会った桑原との酒席で、つい自慢話のように口が滑り、資金流用のことを喋ってしまったらしい。
既に製鉄をクビになっていたのを知っていた近藤は、隙を見せてしまったのだ。
　そして、ずる賢い桑原に脅迫まがいに迫られ高額の口止め料を要求してきた。
　しかし、桑原が要求する金額を払うには、一度や二度の流用では間に合わない。
　桑原は、金を手に入れるためには、近藤の事などを考えてはいないのだろう。
　金払いが悪い近藤に苛立った桑原は絶対に成功するとインサイダーの話を持ち掛けたのだ。近藤の地位なら株を操る事は可能だ。
　しかし、あまりにもリスクが高すぎ、まだ返事をしていないとの事だった。

　康平が近藤に桑原を呼び出すよう促す。
「取り合えず桑原を今日、呼び出してもらいます。」
「わ、わかりました。し、しかし・・」
「・・しかし・・何ですか？」
　近藤が俯く・・・
「近藤専務、全て話してください。」
「荒尾局長、私・・どうなるでしょうか？」
「こちらとしては、今回の件を公にすると困るし新聞沙汰にもしたくないのです。しかし貴方は、当然ながら会社を辞めてもらいますよ。」
「そ、それは覚悟していますが、実は、桑原の連れ合いの女が・・・・」
「ん？」
　康平は、恐らく飯田の妻、千賀子の事だと思った。
「その女がどうしたんですか？」
　近藤は、正直に康平に話をした。
　千賀子は、大金を手に入れた桑原に靡き、既に自分の夫、飯田に見切りをつけたがっていたのだ。
　驚く事に千賀子は、流用した事を内緒にしておいて欲しかったら自分の夫を殺すよう依頼していたのだ。
　飯田には、多額の保険金が掛けてあり夫を殺し桑原と一緒になるつもりらしい。
　近藤は、二人の会話の中で飯田という男が肉体的にも不能という事を聞いていた。
（そうか・・それであの時・・・・）
「そうですか・・・・。でも近藤専務、殺人者にならなくて良かったですね。」
「私は・・・今から社長に事情を話し退職願を出してきます。」
「そうしてください。貴方を警察沙汰にしないことは約束してあげましょう。」
「・・す、すいません。」
「ただし、今夜は協力してもらいますよ。」
「はい。解りました。」
「後で、作戦を指示します。」
「承知しました。」
　そう言うと近藤は、席を立ち部屋を出た。
　康平が美紀と恵美子を付き添わせる。
「美紀、恵美子、一緒に近藤専務に着いていってくれ。」
「えっ？」
「専務の態度がおかしい。社長室には行かんかもしれん。」
「え、、は、はい。」
　美紀と恵美子は急いで近藤の後を追った。
　社長室は最上階のこのフロアーだ。
　周りを見渡しても、いま出たばかりの近藤の姿はない。
　美紀と恵美子が目を合わせると、二人は喋ることもせずに屋上に駆けていった。
　美紀と恵美子が屋上に出る。
「い、居たわ。」
　近藤は、手すりの方に歩いていた。
　美紀が叫ぶ。
「近藤専務っ！」
　近藤は走った。美紀と恵美子が追う。
　近藤は焦りからか足がもつれて倒れてしまう。
　美紀と恵美子が近藤を押さえた。
「ご、後生だ・・・死なせてくれ。」
「近藤専務、死んだら桑原の思うツボなんですよ。」
「・・・」
「貴方から騙し取ったという負い目が桑原になくなるじゃないですか。」
「・・・・私は、３０年間務めた会社を裏切ったんだ・・・・・せめて、その責任を・・取らなければ・・・桑原なんぞに・・」
「近藤専務。」
　いつの間にか康平が美紀と恵美子の後ろに立っていた。
　３人が振り向く。康平が話を続けた。
「失礼ですが、貴方が死んでも何の解決にもならないし会社にも報いた事になりません。まして詫びた事にもなりませんよ。」
「・・・」
「正直言って、死ぬなんて無駄な事です。・・家族も居るんでしょ。」
　家族という言葉を聞いて近藤は涙を浮かべた。
「・・・・・は、はい。」
「会社に奉仕することが企業人の目的じゃありません。共に生活する家族のために男は頑張るんです。貴方の奥さんだって、死ねば確かに悲しむかもしれませんが時がたてば馬鹿な人間だったと嘲笑いますよ。家族がいるから頑張ったんでしょう。」
　近藤が地に手をついて泣いた。
　美紀が口を挟んだ。
「生きていれば、必ずいい事あると思いますよ。」
「そう、こういうのも拝めるしね。」
　康平が、そう言って恵美子のスカートを捲った。
　Ｖカットのショーツが近藤の目の前で露になる。
「ちょ、・・きょ、局長、何するんですか。」
　恵美子が慌ててスカートを押さえる。隣で美紀が笑いを我慢していた。
　康平は顔色を変えずに近藤を立たせて社長室に一緒に付いていく事にした。
　恵美子が康平を見てムスっとしている。
　康平は、後ろを振り向いて恵美子にウィンクをした。

　康平と近藤が社長室に入り、近藤の退社を説明した。
　近藤は涙を浮かべながら社長に深々と頭を下げ社長室を後にする。
　康平は社長に未遂であった事を報告し、後は関係する人間の始末をした後、帰社する事を伝えた。
「そうですか。荒尾さん、ありがとうございました。」
「いえ。・・今後の処置として株関連の問い合わせには一切手落ちがないと言い張ってください。後は我々が処理をして全ての事を片付けます。」
「はい。では町田社長に宜しくお伝えください。」
　康平は軽く頭を下げて部屋を出た。
「さ、近藤さん打合せをしましょう。」
　康平は近藤を連れてホテルに戻った。
　近藤は康平の指示に従い、この後、直ぐに桑原を誘い出す事にした。
　美紀は予約しておいた料亭に電話し準備を整える。
　近藤は桑原に連絡をし、上手く呼び出すことに成功した。

「じゃ、近藤さん、先に行って待機しましょう。」
「はい。」
「美紀、恵美子、忘れ物はないな。」
「はい。」
　康平らは、さっそく予約先の料亭に足を運んだ。
　店に着くと１０畳間の個室に通され近藤を一人で席に待たせる。
　康平らは隣の和室で待機する事にした。
「荒尾さん、店の者が貴方達が居る事を桑原に言わないでしょうか。」
「ふっ、近藤さん、言ったでしょう。全て万全だと。」
　康平は、美紀に指示して店の女将に話をつけさせておいたのだ。
　当然テーブルの下には、録音機が設置してある。
　後は、全ての内容を桑原と会話して貰うだけでいいのだ。

　１時間ほどして仲居に付き添われ桑原が到着した。
　案の定、千賀子も同伴している。
　千賀子はピッタリと桑原に寄り添っていた。
「近藤、こんな所に呼ぶと言う事は決心がついたようだな。」
「桑原・・まぁ座ってくれ」
　桑原が席に着くと、その横に千賀子も座った。
　まずは料理が運ばれるまで桑原は世間話しかしない。
　元、大会社の役員だけあって、その辺は心得ているようだ。
　仲居が料理と酒を運んできた。
　近藤は仲居に、後は呼ぶまで部屋に来ないように告げる。
　仲居が丁寧にお辞儀をし部屋を出て行った。
　少し間を置き近藤が話を始める。
「桑原、やはりインサイダー取引の件は無理だよ。」
「何を言ってるんだ近藤っ！」
「実は、本社のセンターの者が嗅ぎまわっているらしい。」
「何、だれだ、そいつは？　俺が話をしてやるぞ。」
「桑原、お前は既に太平洋とは関係ないだろう。誰がお前の言う事を聞く人間が居るんだ？」
「太平洋のやり方は熟知している、心配するな。」
　康平は隣の部屋で笑いを堪えていた。
　桑原は康平が居る事も知らずに悪事をペラペラと喋り続けている。
　挙句の果てに千賀子までもが口を挟んできた。
「近藤さん、困るわよ。そんないい加減な返事じゃ。それに飯田の件はどうなったのよ？　ちゃんと始末してくれるんでしょうね。」
　近藤は、千賀子に肝心な部分を喋らせようと、とぼけながら聞き返す。
「始末って？　」
「何、言ってるのよ。消すのよ・・殺すの！」
「人を殺して普通の生活は出来ませんよ。」
「だから言ってるでしょ。それなりの報酬は払うって。」
「いえ、断ります。」
　桑原が怒ったようにけしかける。
「近藤、直接手を掛けなければいいだろう。方法は色々あるぞ。」
「・・・・」
「どうだ？　千賀子を抱いてもいいぞ。お前、寝てみたいと言ってただろう。」
「いいわよ近藤さん。お尻、やらせてあげる。経験ないでしょ。私、口も上手いのよ。どんな男でも私の虜になるわ。ねっ。」
　隣で話を聞いていた康平は、そろそろいいだろうと、ふすまを開けて部屋に入っていった。
　桑原と千賀子は、部屋に入ってきた康平を見て驚愕した。
　康平が桑原を睨んで威圧を掛ける。
「桑原さん、久しぶりですね。相変わらず悪事を働いていますな。」
「き、貴様は・・・荒尾っ・・・・近藤ぉーっ！　裏切ったな。」
　桑原はテーブルを叩き怒鳴った。
　近藤が桑原に言い返した。
「桑原よ。今の俺とお前の会話も録音してあるんだ。もう無駄だ。それに俺は今日・・会社に辞表を出した。全てを白状してな。」
「・・・な、なんだとっ！」
　康平は桑原に追い討ちを掛けていく。
「さて、桑原よ、どうする。近藤さんは警察に行く覚悟だぞ。」
「ふんっ、製鉄の課長無勢が、何を偉そうにしてるんだ。ええっ！」
「桑原さん、私、この度、局長職に就任いたしましてね。で、新しい部署もセンターなんですよ。それで来た訳です。」
「お、お前が・・や、役員だと・・・。」
　近藤が、更に追説をする。
「桑原、荒尾局長はグループの役員理事でもあるんだ。」
「な、なんだと・・・・・ぐ・・っ・・・」
　千賀子の顔が見る見る青くなっていく。
「わ、わ、私は関係ないわよ。関係ないから・・。」
「馬鹿め、殺人を依頼してるだろう近藤さんに。お前も刑務所行きだ。」
　千賀子は席を立って店を出ようとした。
　桑原が千賀子の腕を取って止めるが強引に腕を振り払って部屋を出ようとする千賀子・・美紀と恵美子が千賀子の前を塞ぐ。
「逃がさないわよ。おばさん。」
「小娘が生意気よっ！」
　千賀子が美紀を蹴飛ばし恵美子を鞄で殴りつけた。
　後ろから康平が千賀子の腕を掴み上げる。
　千賀子は康平を睨むが、康平の迫力ある雰囲気に力を失っていった。
「困りますね、暴力をふるっては。取り合えず傷害罪も増えましたね。」
「恵美子」
「はい。」
　康平の合図で恵美子が廊下に待たせていた飯田を呼び出した。
　桑原と千賀子は目が飛び出るくらいに驚きを示す。
「あ・・・あ、あな・・た・・」
　飯田は無言で桑原と千賀子を睨む。
「ち、違うの、、あなた・・・違うのよ、私、騙されたのよぉぉぉー・・」
　美紀が千賀子に吐き捨てるように言い放った。
「今、アナルに入れさせて口で男をいかせるのが得意って言ったのは誰だったかしら？」「・・・ぅ・・」
　飯田は何も喋らない。
　康平が飯田に再確認をした。。
「飯田さん。これで解りましたね。後は私のほうで決着をつけます。」
　飯田が静かに頷き部屋を出て行った。
「あ、あなたぁぁぁーっ！」
　千賀子が崩れ落ちた。
　康平が桑原と千賀子に言い放つ。
「桑原よ、刑務所に行くか？　それとも近藤専務・・いや会社から巻き上げた金を返すかを選べ。足りない分は別れた女房にでも工面してもらえ。それが無理なら千賀子を風俗に売るか？　ケツの穴に牛乳ビンが入るんだ。見世物で稼げるだろう。」
　桑原が身体を震わせながら小さな声でうわ言のように呟く。
「・・・わかった。わかったよ・・・金は直接、近藤に渡す。」
「いや、それは駄目だ。私の部下を受け取りに行かせる。」
　桑原が悔敏に反応した。
「お前の魂胆は見え見えだ。その間に千賀子と逃げるつもりだろうが無理だぞ。３日以内に巻き上げた金を準備しろ。でなければ警察に行く。お前は指名手配だ。」
　康平はテーブルの下に取り付けた録音機を外しポケットにしまい近藤と共に部屋を後にした。

　既に手配したタクシーが外で待機していた。
　康平は近藤をタクシーに乗せると当分の間、身を隠すように助言する。
　桑原の事だから腹いせに危害を加えないとも限らないからだ。
「荒尾さん、色々とご迷惑をおかけしました。」
「近藤さん、礼はいいです。これが私の仕事ですから。それより家族を大切にしてあげてください。」
　近藤が康平に頭を下げて帰宅していった。
　美紀と恵美子が康平の腕に寄り添ってきた。
　康平が二人を見て呟く。
「美紀、恵美子、どうだ？これからこういう事は日常茶飯事にあるぞ。ついて来れるか？」
「はい。」
「勿論です。」
「よぉーし、今日で大阪の夜は最後だし楽しもう。」
　康平は、そう言いながら二人に笑顔を見せ歩き出した。
「晩飯でも食いに行こうぜ。そして、その後は・・フッ、フッ・・」
　美紀が、呆れた顔で康平に問い掛けた。
「なんですか、そのフッ、フッというのは？」
「ん・・あ、いや・・その、美紀のショーツのチャックをおろしたくてな・・。」
「チャックは駄目、毛を挟むから。」
　恵美子が横で大笑いする。そして美紀に言った。
「美紀、二人で剃っちゃおうか？」
「えぇー、嫌よ、恵美子が剃ったら？」
　３人は、下ネタを繰り返しながら繁華街に消えていった。
　その夜、美紀と恵美子は昨夜に続き康平に淫楽の底に落とされていった。