|
（７２）
「康平っ・・起きなさいって。遅刻するわよ。」
「・・お・・もぅ・そんな時間か・・・。」
「もぅ康平ったら・・遅くに帰ってきて・・女性の匂いプンプンだったわよ。」
ちょうど着替えている最中だったのか礼子のヒップが見えた。
「おっ、今日は黒のショーツか？」
礼子が康平の手を掴み起こそうとする。
康平は力を入れて礼子を引っ張った。
「キャッ」
康平が礼子を抱きしめて唇をあわす。
「・・ァン・・・康平・・・・」
礼子が、康平の首にしがみ付いた・・・
「・・ね、康平・・・・」
「んっ・・何だ？」
「今度、ゆっくりと旅行にでも行きたいわね。」
「ああ、そうだな。・・・・海外でも行くか？」
「・・・キャァー・・本当っ？ 絶対に行きたい。」
「お前の会社でいいプランがないか調べてみろよ。」
「うん、今日さっそく調べちゃおっと。・・ねぇねぇ康平いっそのこと、皆で行かない？ 楽しくなると思うの。」
「皆って？」
「その・・会社の仲間とか・・お姉ちゃんも誘ってみるわ。」
「そうだなー。行くならゴールデンウィークしかないけどな。」
「美紀さんや、恵美子さんも誘えば良いじゃない。」
「礼子、お前、それって大胆発言だな・・。」
「でも、それも楽しいわよ。外国なら開放的になるし。」
「向こうで白人男性にでも抱かれたいってか？」
礼子が康平の肩に噛み付いた。
「っダダ・・イッタタッ・・・・じょ、冗談だって・・」
「・・もう・・康平ったら。・・・・・でも興味あるわね。」
今度は康平が礼子の鼻を引っ張った。
「・・は、離してよー・・・。」
康平が手を離すと同時に、二人は笑いあった。
「・・でも、冗談抜きにして、色々な人に声掛けて誘ってみたら？」
「ああ、当たってみるよ。」
／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／
礼子は朝食後、康平と亜美を送り出して会社に急いだ。
会社に着くと、さっそく旅行担当の係に電話を入れる。
「・・そうですか。やっぱりゴールデンウィークは一杯ね。」
［荒尾課長、何人位の予定なんですか？］
「人数は決まっていないのだけど出来れば大人数の人でいきたいと思っていたのよ。」
［それなら、一つ、ハワイ行きで、団体１５人のキャンセルがありますよ。］
「１５人？・・困ったわ、そんなに集まるかしら。」
［一応、２日間くらいなら空けておきますけど。］
「じゃ、お願いできるかしら。なるべく早く連絡します。」
［わかりました。］
礼子は電話を切ると康平の会社に電話をした。
［なに、１５人もか？］
「そうなの。やっぱりゴールデンウィークとなるとね・・。」
［わかった。せっかくの事だし何とか集めてみよう。後から電話するよ。］
「うん。お願い。」
康平は、電話を切ると局長室に美紀と恵美子を呼んだ。
二人が部屋に入ってきた。
「なんですか？ 局長。」
「君達、ゴールデンウィークは何か予定はあるのかね？」
美紀が不安げに答える。
「・・えっ、何か？ まさか仕事しろって・・・・」
「ははっ、違うよ。暇な君達を見込んでな・・」
康平は美紀と恵美子に詳しい説明をした。
恵美子が即答で言い放った・・
「キャァー、絶対に行きますぅー。」
「私もいきます。局長っ！」
「よし、決定。」
美紀が口を挟んだ。
「ところで局長、暇な君達って言い方が気に入らないんですけど。」
「いや、スマン、スマン。」
「ま、実際、暇なんですけど・・・」
「そうか。よし、まず君らは決定だな。黒田と東堂は家族で出かけるといっていたからな。」
「でも局長、私たちが行っても１５人になりませんよね。」
「・・・・・そうだ。遠藤に話してみよう。」
康平は遠藤を呼んで誘ってみた。
「そうですか・・ハワイっすか・・・・ええ・・暇といえば暇なんですが・・・。」
「何だ。金の事なら心配は要らんぞ。」
「いえ・・実は・・・。」
「なんだ、はっきり言え。お前らしくないぞ。」
「は、はい。・・実は・・先日、桜井君に付き合いを申し込んで・・で・・ＯＫを貰ったんですが・・ゴールデンウィークに、その・・デートをする約束を・・。」
恵美子が叫んだ。
「きゃー、遠藤係長良かったじゃないぃー・・」
恵美子も遠藤と桜井の事は気になっていたようだ。
桜井が、あんな目にあっても、付き合いを申し込む遠藤の人間性に感心していたが桜井の遠藤に対する返事が恵美子も自分のことのように不安だったからだ。
「ええ、ありがとうございます。」
康平も遠藤と桜井の関係に喜んだ。
「遠藤、桜井君も誘って一緒に行こうじゃないか。今から、さっそく聞いて来い。」
「はい。」
遠藤が局長室を出て桜井の元に走った。
数分後、遠藤が桜井を伴って一緒に部屋に入ってきた。
「局長、本当に私も行っていいんですか？」
「何、言ってる。あくまでプライベートだ。遠慮するな。」
「はい。ありがとうございます。」
「よし、じゃ、とりあえず君達４人は決定だな。」
康平は、さっそく礼子に電話をした。
［そう、まだ少し人数が足りないけど本決まりで予約しておくけど良いかな？］
「ああ、大丈夫だろう。それと甲斐も誘うよ。」
［わかったわ。・・ふふ・・愛子さんも誘ったら・・。］
康平は苦笑いをしながら答える。
「・・ったく・・どういう旅行になるかわかったもんじぇなえぞ。」
礼子は、笑いながら電話を切った。
（・・そうだ、里美と順子にも話してみよ。）
礼子が里美と順子に尋ねてみる。
「うゎぁー・・行く行く。暇だもの。」
里美が即答してきた。
「ゴメン、わたし旦那の実家に帰るのよ。」
「そうなの。・・残念だけど仕方ないわね。」
「ううん、楽しんできて。」
礼子は、さっそく、旅行担当に連絡し予約を決定した。
「じゃ、お願いします。」
（・・楽しみだわ・・早く来ないかなぁー。）
礼子は、気分を変えて仕事に取り掛かった。
「荒尾課長。」
「はい。」
部長の岡本が礼子を呼んだ。
「今から、企画案を持って契約先に行くんだが一緒に同行してくれないか？ 先方の役員連中なんだ。君が来てくれないと、私では説明が難しくてな。」
「はい、わかりました。」
礼子は、早速、支度をして岡本と出掛ける事にした。
廊下を歩きながら礼子が開く資料を覗き込むように岡本が見ている。
その時、礼子は岡本のネクタイの歪みに気付く。
「部長、ネクタイがずれてますわ。」
礼子自身が岡本のネクタイを直していると、偶然にも山岸が前から歩いてきて、その現場を見てしまった。。
「や、やぁ、・・・・う、打ち合わせかい？」
「おお、山岸か。これから荒尾君とデートだ。」
一瞬、顔が引きつる山岸・・
礼子は笑っている。
「な・なにぃ？」
「じゃ、そう言うことで。」
山岸は、気が気でなかった。
山岸は、急いで企画部に行くと岡本と礼子の行き先を尋ねた。
「そうか。契約先へ行ったのか？」
「ええ。説明だけですから昼前には帰ってくると思いますよ。」
山岸は胸を撫で下ろした。
最近、礼子と接する機会が無かったため、顔を出そうと思った矢先の事で思わず早とちりをしてしまった。
（いや、待てよ岡本の事だから分からんな。今日じゃなくても礼子君が、岡本の上手い誘いに乗らないとも限らないし。）
やはり山岸は、苛立ちを隠せない。
山岸は岡本と礼子が抱き合っている姿を想像してしまい頭を振った。
／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／
「以上です。」
礼子の説明が終わった。
相手先の役員達も納得した様子で頷いている。
担当の常務が岡本に話し掛けた。
「しかし岡本さん、ＩＫ観光さんも優秀な部下を揃えておりますね。」
「彼女ですか？」
「ええ。なかなかのやり手ですし、美人ですし・・いや羨ましい。今後も我社と、お宅とは永いお付き合いを願いたいものです。」
「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。」
礼子と岡本は、礼を言って帰社する事にした。
「荒尾君、さすがだよ。」
「ありがとうございます。」
「おっ、もう１時を回ってしまったね。食事でもしていこうか？」
「そうですね。」
礼子と岡本は、外で遅い食事をして行く事にした。
一方、山岸は、苛立ちながら礼子の帰りを待っていた。
何度も企画部を覗いては、礼子の帰社を確認しにいく。
「宮口君、荒尾課長は、まだ帰らんかね。」
「ええ。いま連絡があって、遅くなったので外で昼食を食べてくるそうです。」
「・・・そ、そうか。」
「何か、御用ですか？」
「い、いや、ちょっとね・・。」
そういうと山岸は企画部を足早に出て行く。
里美は首をかしげながら山岸の後を見送った。
山岸も、そうそう顔を出すわけにはいかない。
広報部と企画部では、全く関連性の無い仕事だからだ。
その頃、礼子と岡本は・・・・・
「荒尾君、今度、暇見つけてくれよ。」
「何言ってるんですか部長、奥様に怒られますわよ。」
「・・ま、女房の事はいいんだけどね。」
必死で礼子を口説いているが、なかなかガードの固い礼子に岡本も成す術が無い。しかし、礼子を抱けるならば、どんな事でもする覚悟を持っていた。
「さ、部長、もういきましょう。」
「ああ、そうだな。」
礼子が先に席を立ち出口に向かう。
岡本は礼子のヒップラインを見て唾を飲み込んだ。
礼子たちが、会社に着いたのは、既に３時を過ぎた頃だった。
「順子、私、観光センターに行ってくるわ。」
「あ、例の書類ね。」
「ええ。そのまま帰宅するから後はお願い。」
「ええ。分かったわ。気をつけてね。」
「うん。里美にも言っておいて。」
礼子は、そのまま席に座ることなく観光センターに出向した。
入れ違いざま山岸が顔を出す。
「あれっ、遠藤君、荒尾課長は？」
「観光センターに行きましたけど。もう今日は戻りませんよ。」
「・・そ、そうかね・・・。」
山岸は、がっかりしながら出て行く。
ちょうど報告を終えた岡本と出くわした。
「おう、山岸、何か用か？」
山岸は、妙に元気のいい岡本の顔を見て勘ぐりだす。
「岡本、遅かったな。」
「ん？ 何が？」
「い、いや、お前の事だから荒尾君に手を出したんじゃないかと思ってな。」
岡本は、笑いを堪えて言い返した。
「はは、何、言ってんだ焼きもちか、山岸」
「いや、心配しただけさ。」
岡本は、山岸をちょっとからかってやろうと思った。
「今度、デートの約束をしたよ。いやぁー、意外と軽くＯＫしてくれた。」
「な、何、本当か。」
デスクで部下が岡本を呼ぶ。
「岡本部長、電話がはいってます。」
岡本は、山岸の肩を叩いてオフィスに戻った。
岡本は、ほんの軽い冗談で言ったつもりだったが、山岸は頭が真っ白になった。。
岡本の性格を考えるとデートだけでは絶対済まない。
山岸は、礼子が自分から岡本に寝返ってしまうかもしれないとどんどん想像が発展していってしまう。
礼子の携帯電話に連絡をするが留守番設定になっていて繋がらない。
山岸は、明日、礼子に合うまでの時間が恨めしくてしかたなかった。
／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／
「康平、亜美、ご飯よーっ！」
康平が亜美とキッチンに入ってくる。
「おっ、今日は手巻き寿司か。」
「わぁーい。亜美、おすし大好きぃー。」
康平は、久しぶりに３人で食べる夕食を楽しんだ。
今日の旅行の話に花が咲き、いつもより長い時間を過ごす。
「ね、ね、二人だけの時間も作ろうね。」
「そういえば、外で二人きりになるなんて、亜美が生まれてからはないからな。」
「フフッ・・燃えちゃおっと。」
「いつも燃えてるじゃねぇか。」
「・・・・あのね・・・・・・もーっ・・康平の馬鹿っ！」
夕食も終え康平は亜美と風呂に入った。
礼子も一連の家事を済ませ、風呂から出てきた亜美の着替えをさせる。
「礼子、亜美は俺が寝かせるから入ってこいよ。」
「うん。じゃ、お願い。」
「ママ、おやすみー。」
「おやすみ。明日は遠足だから早く寝るのよ。」
「うん。」
− 寝室 −
礼子が、風呂から出て寝室に入った。
康平はベッドにうつ伏せで本を読んでいる。
礼子は、バスタブのまま康平の背中に馬乗りになった。
「康平・・・・・。」
「んっ・・」
礼子が康平の背中に倒れて、しがみ付くと耳元に囁いた。
「康平・・もう、そろそろ来そうなの・・・・ダ・イ・テ・・」
「・・生理前は疼くって言うけど・・お前も例外じゃないな。」
礼子が康平の脇をつねる。
「イテテッ・・」
康平は起き上がって礼子を抱きしめた・・・・・・・・・・・・・・
「・・ァン・・・・・康平・・・・好きっ・・・」
| 