（９３）

　礼子は、康平に２度昇天させられた後、ベッドの横でワインに手を伸ばしながら仕事の事を康平に質問をしていた。
「ねぇ、康平、ちょっと教えて？。」
「ん？何を・・・」
「バランス・スコアカードって何？」
「ほぉー、意外な事を聞いてくるな。」
「ちょっとね・・。」
「バランス・スコアカードってのは企業の業績や経営内容を多面的に評価するための管理的手法さ・・でもなんで？」
「専務が私に勉強しろって。」
「ふぅーん・・」
「具体的にどういう方法なの？」
「つまり、業績評価の手法としては、利益やキャッシュフローと言った財務指標を一般の企業は通常用いるけどバランス・スコアカードは、この財務指標に加えて、顧客満足度や顧客維持率などの顧客の視点、品質やサイクルタイムなどのビジネスプロセスの視点や従業員の満足度、スキルなどの学習と成長の視点と言った３つの視点の非財務的指標を含めて総合的に企業の業績評価のみならず、経営戦略の立案やその実行を評価するマネジメント手法と思えばいい。アメリカで作られた手法さ。」
「・・・い、いま何言ったの？」
「・・・お・・・・・・お前・・管理職なら・・これくらい・・」
「いいから、解るように説明してよぉ。」
　康平が、気を取り直して説明を続ける。
「・・・要するにだな、組織のビジョン、戦略を多面的な業績評価指標に落とし込むことで、ビジョン、戦略の確実な展開と定量的なモニタリングが可能になるんだ。
　バランス・スコアカードを用いた戦略の展開とモニタリングにより、戦略目標達成に向けた組織学習が推進され、結果として組織の変革を促進するっていうことだ。」
「・・・・・え？　もう一度言って・・」
　康平は呆れながら礼子に言い放った。
「・・・・お前には、どんな説明をしても無駄だ。経営学の基礎が出来てない。」
「解るように説明してくれないからよ。」
「・・・・・」
　康平は、咄嗟に恵美子の事を思い出した。
「そういえば、恵美子が経済学の博士号まで持ってる人間だから詳しく教えてもらえよ。」
「えぇー、そうなのー？」
「ああ、確かハーバード大学のビジネス・スクールに留学して、そのままハーバード大学経営管理学修士をとったはずだぞ。」
「す、凄いのね恵美子さんって。」
「ああ、さらにビジネス・スクール博士課程に進んで経営情報システムを専攻してたんだよ。ま、センターの係長に抜擢するくらいだからな。」
「康平に聞くより恵美子さんのほうが親切に教えてくれそうね。」
　少々むかついた康平は、礼子の股間に手を伸ばし呟いた。
「・・・・・・・礼子・・・いい加減にパンツはいて足閉じろ。」
「あら、もう一回やってくれるんじゃないの？」
「・・・・・・やる気無くなった。」
「なによぉー。」
　礼子は、康平の肉棒を握って口で奉仕し始める・・・。
「ほらぁ、大きくなってきたじゃない。」
「・・・ク・・身体が正直なのが・・怖い・・・」
　康平は礼子の舌技で３回目のプレーを余儀なくされる。
「・・ァァーン・・・ねぇ康平・・・・・・アァァァァァー・・」
　再度、寝室には礼子の淫声が鳴り響いていった・・・・・・・・・

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「荒尾君、なに読んでるんだい。」
　部長の岡本が礼子に近づいて話し掛けてきた。
「あ、部長、専務から経営手法を勉強しろと言われて。」
「ほぉー、そうか。・・・どうだい、コーヒーでも飲みながら、その話を。」
「ええ、そうですね。」
　礼子は岡本の誘いに応じ社員食堂のラウンジに向かった。
　二人が肩を並べて廊下を歩いていると、またしても山岸がその姿を見つけてしまった。
　礼子が開く本を覗き込みながらやけに親しい間柄に見えてしまうのがもどかしい・・・
　山岸は、何故か今日に限って二人に声を掛けられない。
　部課が違うのを改めて悔やむ山岸だったが気が気でないのは確かだ・・・。
　山岸は二人が社員食堂に入っていくのを確認すると肩を落としながらオフィスに戻った。
　しかし、席についても仕事に集中できない。
　礼子とは、かれこれ１ヶ月以上もご無沙汰だった。

　昼休みも終わりに近い頃、遂に心を煮やした山岸が礼子のいる開発情報課に足を運んだ。
　中を見渡すが礼子はいない・・
　留守番の女性社員に礼子の居場所を尋ねる山岸・・・
「ちょっと君、荒尾課長は何処に行ったか知らないか？」
「あ、課長なら資料室へ・・なにやら調べ事があるとかで・・・」
「そ、そうかね。・・・ありがとう。」
　山岸は、それを聞くと一目散に資料室に走っていった。
　資料室の前にきた山岸は、そっとドアを開けて部屋を覗いてみる。
　中では、礼子が上着を脱ぎブラウス１枚で書類に眼を通していた。

　山岸がノックをし中に入る・・・
「あ、山岸部長。久しぶりですね。」
「礼子君、冷たいじゃないか、その言い方・・」
「え・・・？・・・・・ところで何か御用ですか？」
「あ、ああ、いや・・・そのー・・」
　礼子は、山岸がこういう態度をとる時は、自分を抱きたい時・・・・と解っていた。
　しかし、今日は敢えて笑顔を見せずに焦らしてやろうと考えた。
「何か話でも？」
「そ、そうじゃないんだが・・・その・・・・・ま誰か居るのかなと思って覗いたら君だったから。」
「そうですか。お仕事は大丈夫なんですか。」
「あ、ああ。今日は暇でね。」
　そう言うと礼子が座る机の前に腰掛ける。
　礼子は、軽く微笑みながら資料に眼を戻した。
　何気なくブラウスのボタンを一つ外して呟いた。
「ここは暑いですね。」
「あ、ああ。そうかな。」
　山岸が礼子の胸に眼をやる・・・・礼子のブルーのブラジャーが妖しげに目に飛び込んできた。
　何とか、そっち方面に話を持っていきたい山岸は必死で言葉を考える。
「ご主人は元気かい？」
「ええ、とっても。昨日も遅くまで彼に虐められて・・・」
　山岸は、その言葉で股間に刺激を覚える・・・
　しかし、一度言いそびれてしまうと、なかなか誘い難いものである。
「部長も奥様はお元気ですか？」
「あ、ああ。　まあね・・・」
　礼子は、立ち上がって資料を棚に返すと持ってきた缶コーヒーを開けてソファに座った。
　山岸も何気に礼子の前に移動する。
　礼子は、笑いを堪える事が困難になってきた・・・・
「部長、抱きたいんでしょ？」
「え・・あ・・・・そ、そう露骨に言われても・・・」
　礼子は、足をテーブルの上に乗せると足を左右に開いた。
　スカートの中は、上と同じブルーのショーツだった。
　山岸が生唾を飲み込み礼子の股間に見入っている。

　礼子は、缶コーヒーをテーブルに置くとショーツを横にずらして肝心な部分を山岸に見せ付けた。
「部長、見せてア・ゲ・ル・・・」
「れ、礼子君・・わ、私は・・・・」
　さすがに礼子も山岸が可哀想になってきたようだ・・・
　焦らす事を中止し山岸を誘った・・・・
「フフッ、部長・・・いいわよ・・・まず、お口で気持ちよくさせて。」
　山岸は、言うが早いか礼子の腰をあげてスカートを上に捲し上げた。
　礼子の両足を肩に乗せるとショーツをずらして舌を蜜壷に当てていく・・・
「・・・ァァァァ・・・・ゥゥッ・・・な、中に・・・イ・レ・テ」
　山岸は礼子の蜜壷の中に舌を入れると必死で前後に動かした。
　肉付きの良い礼子の襞が口周りを刺激する・・・
　礼子の蜜を一滴も零さないように吸い続ける山岸・・
　既に山岸の股間は、はちきれんばかりに怒張している。

　絶えれなくなった山岸は立ち上がって下着をスラックスごと脱いだ。
　礼子は起き上げると淫艶な眼差しで山岸を見つめ肉棒を握る・・。
　そして手だけで、ゆっくりと肉棒を上下し始めた。
　目を瞑って唸る山岸・・・
「れ、礼子君・・・」
　礼子は、そっと山岸の肉棒を口に含んだ。
　礼子を見つめる山岸・・・
　礼子のシルバーピンクの唇が自分の肉棒を埋めていく姿を見て山岸は更に脈打っていった。
　礼子は舌を肉棒に絡めながら袋部分を優しくマッサージし頭を上下に動かしている。
「うぅ・・ぜ、絶妙だ・・・！」
　山岸は我慢出来ずに礼子を立たせた。
　そして机の上へ礼子に手をつかせると再度、割れ目に顔をうずめていく・・
「ぁぁ・・部長ぉぉー・・」
　山岸は菊門にも舌を這わせた。
「・・ゥ・・そ、そこは・・・だ、駄目よぉー・・」
　しかし山岸は遠慮しなかった。
　礼子の蜜壷も悦びの液体を大量に放出し始めた。
　山岸は礼子の両足を抱え込み怒張した肉棒を礼子に打ち込む。
「ンアァァァァー・・・ンーッ・・」
　山岸は激しく腰を動かし始めた。いつもよりピッチが早い。
　礼子もさすがに犯されるような格好で貫かれ感度が上昇してきたようだ・・・・・
「ウッ・・ウッ・ウッ・ウッ・ウッゥゥゥゥーッ・・・」
　山岸は、肉棒の先が礼子のザラついた壁に当たり絶えられなくなる・・・
　まだ挿入して間もないが限界に近いづいてきた・・・・・
「れ・・れいこ・・・く・・・ん・・うぅぅー」
　山岸は、礼子に予告無く一気に爆発してしまった。
「・・え？・・そ・んな・・・部長ぉー・・もう・・ですか・・」
「・・・す・・すまない・・」
　そう言いながらも山岸は、まだ礼子の中で放出を続けていた・・・
「・・部長、たくさん出ますね・・！」
　礼子は、机に手をつきながら山岸の終了を待った。
　蜜壷に力を入れながら搾り取っていく礼子・・・
　やっと、山岸はゆっくりと肉棒を引き抜いていく・・・・

　礼子が足を床について起き上がった。
　蜜壷に力を入れて零さないように注意する。

　衣服を整えブラウスのボタンをはめた礼子は化粧を直した。
　山岸は、無言で礼子を見つめ余韻に浸る。
　礼子はファイルを持つと部屋を出る用意をし、そして微笑みながら山岸に向かって囁いた。
「部長、今日は早過ぎですよ。その速さじゃ、とても私は・・。」
「・・す・・すまない・・」
「・・フフッ・・じゃ、又ねっ・・・」
　そういうと、礼子は、資料室を出て行った。
　山岸は、何とか礼子を抱く事は出来たが独りよがりで終わってしまい満足出来なかった。礼子が自分を嫌いになるのではという不安が一層強くなってしまった。

（９４）

　資料室から出た礼子は、トイレに入り山岸が放った分身を蜜壷から吐き出した。
（たくさん出したわねー、部長・・相当溜まってたのかしら・・）

　礼子はトイレから出てオフィスに戻ろうとしていた。
　その時、社内放送で礼子が専務室に呼び出される。
（何かしら？）
　礼子は、急ぎ足で専務室に向かった。
　部屋をノックし中に入る礼子・・・・
「失礼します。」
「荒尾課長、呼び出してすまないね。」
「いえ。」
「どうだい、勉強してるかな？」
「はい。でも難しくて・・昨日も主人に色々と聞いたんですが、何を言ってるのか言葉自体も理解できないんですよ。」
「ははっ、そうだろうな。今までが畑違いだからね。」
「は、はい。すみません。」
「ところで、ちょっと、頼み事があるんだが。」
「はい、何でしょう。」
「いま、言っていた君のご主人に経営手法の講義を頼めないかと思ってね。」
「え？・・・しゅ、主人にですか？」
「ああ、実は去年、近隣の企業懇親会で君のご主人と会った事は話したよね。」
「え、ええ・・そういえば、そんな事も・・。」
「いや、色々と面白い話を聞かせて貰ったんだが、その話に感動してねぇ。最近、経営や経済のツボをついた内容を詳しく話す人間が少ないんだよ。」
「・・・はい、でも・・」
「んむ。すでに製鉄の北原専務には話をしたんだ。彼は私の同郷の後輩でね。自分は構わないので直接依頼してもらってもいいって言ってくれたんだ。」
「そうなんですか。」
「ま、それでもいいんだが、彼の奥さんが、我社にいるのに君の耳に入れないで話を持っていくのもなんだと思ってね。」
「・・・わかりました。私からも一度話してみます。」
「すまんね、荒尾君」
「・・・い、いえ。」
「ん？　何か困る事でもあるかな。」
「・・・・い、いえ。・・その、ちょっと恥かしいな・・・と・・」
　専務の香坂が笑いながら礼子を宥める・・・・
「はははっ、確かに君の気持ちは複雑だろうな。ま、我社のためだと思って。」
「・・・・・解りました。」
　
　礼子は、専務室を出るとオフィスに戻って里美と順子に今の件を話した。
「いいじゃない礼子ぉー。」
「そうよ、康平さんなら違う意味で、みんな喜ぶわ。」
「違う意味って・・？」
「・・え・・ま、その・・・格好良いし・・」
「・・・・・」
「礼子・・康平さんと比較されるのが嫌なんでしょう？」
「・・・え、そ、そんな事無いわ。」
　礼子は、多少、図星かなと思ったが、それよりもＩＫ観光の社員が講話を聞いて満足してくれるのかを不安に思っていた。

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　康平が、飲んでいたビールでむせていた・・・
「・・・何ぃーー・・・俺がぁ？」
「そうなのよ。私も社のためと言われると・・・直断できないし。」
「んーむ・・・・あまり、乗り気はせんが北原専務の先輩となると、おおいそと断るのも気が引けるな。」
「そうよねー・・・どうする、康平？」
「ンーーーーッ・・・やること自体は構わんが・・それより、お前に迷惑が掛からないだろうな？」
「私は、いいわよ。」
「・・・しょうがねぇな。」
「いいのね、康平。明日、専務に話すわよ。」
「・・ああ、わかった。」

　翌日、礼子は専務室で康平が了承したことを報告していた。
「そうか。受けてくれるか。」
「ええ、自分の尊敬する専務の先輩を断れんなと・・。」
「いやー、恐縮だ。さっそく正式に依頼文を送ることにしよう。」
　
　礼子は、専務室を出るとオフィスに戻った。
　順子と里美が礼子に寄ってくる。
「礼子、どうだった？」
「ええ、ほぼ決定みたい。」
「そう。でも楽しみだわ。特に我が社の危機感がない幹部連中に康平さんから活を入れて欲しいものね。」
「反感食らわなきゃいいけど・・。」
　礼子は、一抹の不安を抱いたまま業務に取り掛かった。

−　某日　−

「康平、お願いだから、ちゃんとした格好していってね。」
「ちゃんとした格好って、どういう格好だよ。」
　礼子は、康平に近づくと呆れ顔で呟いた。
「まず、この髪をセットして。」
「してるだろう、いつも。」
「何言ってるのよ。髪なんか、いつもブラシで梳くだけじゃない。」
「・・・・・わかったよ。」
　康平は渋々、洗面台にいきドライヤーを髪に当てた。
　寝室に入りスーツを選んで着ていると、気になるのだろう礼子が入ってくる。
「・・・な、なに、その漫才師みたいな格好？」
　康平は、黄色のシャツに赤いネクタイをはめ青いブレザーを手に持っていた。
「いや、どうせなら目立とうと思って・・・。」
「まるっきり信号みたいじゃない。やめてよもぉう・・。」
　礼子は、康平が着ていく服を代わりに選んだ。
「はい、これでいいのよ。」
「いやにシンプルだな。」
　呆れ顔で康平を見ていた礼子がクスクス笑いながら答えた。
「まったくセンス無いんだから。普通でいいの普通で。」
「・・・・・」
「じゃ、今日はお願いね。」
「ああ、２時からだな？」
「ええ。遅刻しちゃ駄目よ。」
「わかってるよ。」
　礼子は、康平に目で注意を促して会社に向かった。

−　ＩＫ観光　−　

　康平はＩＫ観光の社長室で談話をしていた。
「荒尾さん、本日は無理言って申し訳ない。」
「とんでもありません。ＩＫ観光の発展につながればと思っています。」
「ありがとう。荒尾さん。」
　康平が、お茶を飲み終えるのを確認した香坂が時計を見た。
「それでは、荒尾さん。さっそく大講堂のほうへ。」
「はい。」
　康平は、社長に頭を下げ専務の香坂と講堂に向かった。
　
　講堂には、ＩＫ観光の社員が既に席に座り待っていた。
　康平が壇の隅の椅子に座ると席上が一斉に騒ぎ出した。
「ね、ね、あの人が荒尾課長のご主人？」
「そうよ。格好いいわねぇー。」
「あの若さでトップ企業の取締役って言ってたけど、感じいいわぁー。」
　特に女性達が溜息を漏らしている。

　社長も現れ挨拶が終わると専務直々に康平の紹介を行った。
　康平が壇上にたち、まず挨拶を始める。
（ん？・・・・）
　康平は異様な視線を感じ取った。
　誰かが殺気のある視線を康平に投げている。
　康平は、何事も無いように周り全体を確認した。
（・・・おかしいな・・・確かに・・）
　しかし、いつまでも探しているわけにはいかない。
　康平は気を取り直しさっそく自己紹介を兼ね講話に入っていった。
　康平は面白おかしく、そして引き付けるような話術と体験談を盛り込みＩＫ観光の社員達を満足させていった。
　そして、約２時間の講話を終了し康平は壇上を降りた。
　社員は盛大な拍手を送っている。
　康平が席に座ると、またしても殺気だった視線を感じた。
　康平は、自然を振る舞い周りを見渡す・・・・
（・・・！・・いた・・アイツか。）
　それは、康平と同年輩くらいの男だった。
　康平を確認すると目を伏せて視線を外した。

　康平は、専務、香坂の再度に及ぶ感謝の言葉をもらい席を立つと頭を下げた。
　背中に拍手を受けながら講堂を出た康平は香坂に社長室に通された。
「荒尾さん、ありがとうございました。素晴らしい講演だったよ。」
　社長が康平に礼を言う。
　隣には専務の香坂と礼子が座っている。
「荒尾君、さすが君のご主人だ。素晴らしいよ。」
「いえ、聞いてる私はドキドキでした。」
　礼子が照れながらも無事、講話が終了したことに胸を撫で下ろしている。
　再度、社長、専務から礼を受けた康平は、礼子と社長室を出た。

「康平、ご苦労様っ。」
「ああ、あれで良かったか？」
「ええ、みんな感動していたわ。」
「そうか。そりゃ良かった。」
「ところで康平、私の部課の人達が、今夜一緒に飲みたいって。」
「ああ、構わんよ。」
「ほんと？喜ぶわ。」
「でも一旦センターに戻らんとな。」
「じゃ、センタービル前の居酒屋に６時でどう？」
「わかった。行くよ。」
　その時、講話中に康平に向け異様な殺気ある視線を投げていた男とすれ違った。
　二人に、軽く頭を下げて通り過ぎていく。礼子も頭を下げた。
　康平が後ろを振り向きながら小声で礼子に聞き出す。

「礼子、いま、すれ違った男は？」
「え？・・ああ、あの人は、本社から来ている小野口次長よ。」
「次長・・・？」
「ええ、この４月から単身赴任で来てるの？　意外と格好いいでしょ。」
「・・・ふーん。」
「何で？」
「ん、観光会社の次長にしては、雰囲気に凄みがあるからな。」
「そうかしら。・・・・小野口さんは、海外勤務が多かったそうよ。」
「へぇー・・」
　康平は礼子には言わなかったが、かなり凄難を経験してきた男の雰囲気を持っていると感じた。

「・・・・じゃ、俺はいくから。」
「ええ、６時にね。」