（１２１）

　病院から帰ると、早速、東堂がデータ収集を開始した。
　桜貿易の役員・社員・要注意人物等、隈なく徹底的に洗っていく。
　終業間近に東堂が局長室に入ってきた。
「局長、とりあえず役職者をピックアップしました。」
「そうか。」
　康平が東堂からデータを受け取った。
「まだ完璧ではありませんが２、３日中には詳細を追加できると思います。」
　康平は、一通り目を通していく。
　桜貿易の課長以上の役職者数は１０８人と意外と多い。
　実力主義を伝統とする会社だけあって年齢、性別もマチマチだ。
「東堂、私生活の行動、趣味、他社との関係も全て頼む。」
「はい、既に遠藤と榊原君が調査に入ってますし黒田が、得意のデータ進入を。ちょっとやばいですが黒田なら簡単にやってくれてますので。」
「ああ、構わん。俺は明日、桜の筆頭専務と会ってくる。」
「え？」
「忠告してくる。協力しなければ俺の独断で桜との今後の契約を蹴ると。」
　東堂は、前回の件もあってか康平が先手先手の徹底攻撃に出ることを理解していた。

−　沖縄　−

「荒尾課長、改めて乾杯っ！」
「乾杯！」
「いやぁー、僕もかなりの事前会議に出席したが、こんな事は初めてだよ。」
「そうなんですか？」
「ああ、普通は各社の営業指針の宣伝と内容、将来展望を確認するのがホテル側の趣旨なんだが、今回、他社の持ち込みデータが、いかに雑で用意が不十分であったかと言う事だな。僕は君のデータ説明と宣伝をしている時に、ホテル側の顔色を窺っていたんだ。こりゃ、ひょっとしていけるかもってね。正直、君の説明がホテル側を引き付けたからだよ。」
「そんな・・・・私だけの力じゃ・・・」
「いや、荒尾君、君の大手柄といってもいいよ。」
　礼子は夢野の謙虚な言動に心打たれた。
　確かに自分の説明に注目してくれたのは事実かもしれないが提携規定を打ち立て信用を打ったのは夢野の実力である。
　夢野の自信ある業務指針を理解しホテル側を絶対の納得をさせたのだ。
　自分の力を誇示せず社益に全力を尽くす目に見えない行動だった。
　礼子は夢野がＩＫの役員候補と言われる理由を垣間見た気がした。
「さ、荒尾君、今日は飲もう。」
「ええ。」
　礼子と夢野は、成功の喜びと酒の力も手伝ってか気持ちが意気投合していた。
「んーむ、荒尾君の話は面白い。参考になるよ。」
「フフッ、そうかしら。」
「ふぅー、食ったし、飲んだし。でも酒はまだ飲めそうだな。」
「今日は、お付き合いしますわよ。」
「ははっ、荒尾君、無理しなくていいよ。・・・・でも良かったら僕の部屋で飲みなおすかい。おっと、下心は全くありませんです。」
　礼子は、おどけながら喋る夢野が可笑しくて仕方がなかった。
「ええ、お付き合いしますわ。」
　そう言うと。夢野と礼子は部屋に向かった。
　途中、夢野がつまみと酒をしこたま買い込む。

　部屋に入った二人は、再度、酒を飲み始める。
　夢野は既に体がふらついているが言動はしっかりしていた。
「沖縄にきたら、これを飲まないとね。」
　夢野は泡盛を取り出す。
　種類は豊富でアルコール度もマチマチだが女性に適した酒もある。
　礼子も夢野に注がれて泡盛を口をつけた。
「おいしい、これ。」
「うん、いけるなっ！」
　礼子と夢野の酔い加減も徐々にエスカレートしていく。
　遂に話は私生活までに及んでいった。
「えぇーーっ？　あ、荒尾君、ほ、ほ、本当なのかい・・・」
　礼子は、康平の女性関係や自分の経験話まで喋ってしまっていた。
「ええ、本当よ。」
「す、凄いね。そんな夫婦関係もあるんだなー。」
「でも、主人も私も一心同体よ。愛を超えてるの。」
　夢野は礼子たち夫婦が羨ましかった。
「そうか。・・・いいよなー。俺たち夫婦は・・・・・」
　夢野は愚痴に近い喋り方でポツリポツリと礼子に語り始めた。
　自分の女房は、出世欲と金欲に目が眩み会社でも悪どい事をやっている。
　自分の亭主は放ったらかしで会社の上司を愛人に持ち平気で朝帰りはするし貰った金で若い男性社員を引き連れて毎夜、飲み歩いている生活だ。
　礼子は、夢野のような男が何故、そんな女性と結婚したのかが不思議だった。

「それこそ、女房の会社の上司に勧められたんだ。接待の席で意気投合したんだが女房は、愛人の上司に報告していたんだろうな。僕の勘だが、その上司も女房を結婚させておけば、ヤバイ火の粉は掛かってこず適度に遊べると思ったんだろう。」
「奥さんは、何処に勤めてるの？」
「桜貿易さ。ま、大手だよ。」
「へぇー、でも課長なんて凄いじゃない。」
「だから、言ったじゃないか。専務の愛人だって。どうにでもなるさ。能力は全く無いが、悪知恵だけは働く女だからね。汚い手を使って上がっていったんだろう。そのためには簡単に男と寝る女なのさ。」
　礼子は、夢野が気の毒に思えてきた。
　一気に泡盛を喉に流し込む夢野・・・・・

　礼子は夢野を見つめる。

　夢野は哀しい眼をしていた・・・・・・・・・

（１２２）

「夢野さん、元気出して。」
　礼子の声に顔を上げる夢野・・・
「あ、ああ。・・・・・もう女房とはおさらばだ。明日帰ったら離婚を告げるよ。」
　夢野の決断は正しいと思った。
　礼子は、夢野の気持ちを察し敢えて何も言わなかった。
　夢野の横に移動し酒を注ぐ礼子・・・
「あぁ、ありがとう。」
「夢野さん、飲みましょう。」
　夢野は、酒を注いでくれる礼子の胸元に眼がいってしまった。
　浴衣の間からブルーのブラジャーが見える。
　咄嗟に眼をそらすと足を崩した礼子の真っ白な太腿がちらついた。
　夢野が一気に湯飲みに入った酒を流し込んだ。
　咳き込む夢野・・・・
「だ、大丈夫、夢野さん。」
　その時、いきなり夢野が礼子を押し倒した。
「荒尾君っ！」
「・・・・ぁ・・・ゆ、・・夢野さ・・・・ア・・・や、やめ・・・て・・」
　押し倒された礼子は夢野の身体に覆い被さられる。
　抵抗するにも身体が酔いで思うように動かない。
　礼子が夢野を見ると、哀しい眼が飛び込んできた。
「ゆ、夢野・・・さん・・」
　夢野は、何するでもなく礼子に抱きついているだけだった。
　礼子も夢野の眼がギラついてるでもなく、ただ遠くを見るような想い耽った表情に吸い込まれていく錯覚に陥る・・・・・
　礼子は、このまま夢野に抱かれてもいいと思った。
　何故、そう思うのか礼子自身もわからない。
　ただ夢野の哀しみの塊が礼子の心を打ち付けて来た事によって礼子自身の本能が受け入れを了解していたのだ。

「・・・・・夢野さん・・・・・・・私を抱いていいわ。」
　夢野が、礼子の言葉にハッとする。
　礼子から離れるため起き上がろうとすると礼子が首に手を回してきた。
「あ、荒尾君・・・・・」
　夢野が礼子を見つめた。
　礼子は、艶美な表情で夢野を見ている。
　夢野は引き付けられるように礼子と唇を合わした。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　夢野の肉棒が礼子を貫いていた・・・・・・
「・・ゥゥゥ・・・ウッ・・ウッ・・ウッ・・」
　がむしゃらに腰を振る夢野・・・・
「ぐっ・・・荒尾君・・・限界だ・・・」
「ぁぁ・・夢野さん・・・・き・・・来て・・・」
　夢野は、礼子の言葉に反応し中に爆発した・・・
「ゥゥゥー・・・グッ・・・・あ、荒尾君・・・・」
「ぁぁ・・夢野さん・・・いぃぃー・・」
　夢野は礼子の上に倒れた。
　礼子の耳たぶを唇で挟みながら夢野は余韻に浸っていた・・・
　礼子が力を入れて夢野の肉棒を搾り取っていく・・・
「す、すまない。つい中に出してしまった・・・もし・・・何かあったら・・」
「夢野さん、いいのよ。大丈夫・・・・・」
　夢野は、礼子の身体の心地良さに全身が痺れていた。
「始めてだよ。こんな気持ち良かったのは。」
「ま、変な言い方ね、夢野さん。」
「い、いや、そんな意味じゃ・・・・・でも君の・・・そ、その・・」
　礼子は、微笑みながら夢野を起こす。
「シャワー浴びてくるわ。」
「あ、ああ。」
　夢野は礼子の身体の素晴らしさをつくづく実感した。
　浴室に向かう後姿が夢野の眼に焼きつく・・・・・

　しばらくして出てきた礼子を照れなのか恥かしさなのか夢野は見ることが出来なかった。
　礼子が、微笑みながら夢野の隣りに座った。
「夢野さん、私の身体どうでした？」
　夢野は何と答えたらいいかわからない。
　ただ、礼子をチラチラと見ながら顔を赤くするばかりである。
「夢野さん・・・・もう一度抱く体力ある？」
　礼子はそう言うと夢野の肉棒をいきなり口に含んだ。
「え？・・・ぁ・・荒尾君・・・そ・・・」
　夢野の頭の中が一瞬で真っ白になる。
　夢野は礼子の乳房を下から掴み腰を無意識に突き上げた。
　礼子は、夢野を仰向けにすると上から覆い被さりシックスナインの形になった。
　夢野は必死で礼子の蜜壷に舌を這わせる。
「・・・ァン・・・」
　夢野は礼子の卓越した舌使いに眩暈を覚える・・・・
　自分の肉棒が激しく脈打つのがわかった。
　礼子は起き上がると、夢野のほうに向け四つん這いになった。
　夢野が、礼子に後ろから襲い掛かる・・・
　まるで自分が自分で無いような変貌を遂げた夢野は必死で腰を振り続けた。
　後ろを振り向く礼子の視線に夢野は吸い込まれていく。
　乾いた小刻みな音が部屋に鳴り響いた。
　その夜、夢野は礼子の魅力に魂を奪われていった・・・・・・・