（１２５）

　センターに戻った康平は、電話で録音した松山を取り巻く社員の詳細データに眼を通していた。
　隣りで黒田が康平に説明を加えている。
「一番の腹心は、常務の宇野信司と課長の夢野美也子です。」
「んむ。そうみたいだな。」
「宇野は、入社以来、松山と苦楽を共にしてきた親友同士です。夢野は入社時から松山の愛人関係ですが、かなりの悪党です。結婚はしていますが、旦那そっちのけで好き放題に生活してます。」
「なるほど。」

（・・・・ん？　夢野・・・・・確か・・・・礼子が・・・）

『今度、一緒に出張するの。・・・・・ひどい奥さんらしいわ。・・・・・・まだ３０前なのに課長なんだって・・・・・・』

（なるほど、そうか。確か貿易会社に勤めてるって言ってたな。）

「局長、どうしたんですか。」
「ん、ああ、ちょっとな。突破口が開けるかもしれん。」
「え？・・・・・どういう・・」
「ま、任しておけ。」
「は、はぁ・・・」
「それから紺野静香のパソコンから落としたフロッピーをコピーして桜貿易の社長と専務の尾形さんに送っておけ。」
「解りました。」
　康平は、引き続き全ての情報を収集することを黒田に命じて今回の作戦を練り始める事にした。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　礼子と夢野は、専務室で事前会議の報告をしていた。
「夢野君、荒尾君、よくやってくれた。今回の仮契約は我社にとって非常にありがたい話なんだ。ご苦労だった。」
「ありがとうございます。荒尾課長の説明が素晴らしくて。」
「そ、そんな。専務、夢野課長が全て・・・」
　専務が礼子の言葉を制した。
「ははっ、二人とも、そういうところが素晴らしい。」
　礼子と夢野は恐縮し照れ笑いをした。
「夢野君は、部長職に内定しようと思う。９月末の人事で発表する。荒尾君は、現職のままだが臨時ボーナスを支給するつもりだ。」
　二人は、深々と頭を下げ専務室を出た。
　夢野が礼子に握手を求めた。
「荒尾課長、やったね。」
「ええ、私もいい経験をさせてもらいました。少し自信がついたわ。」
　夢野が礼子に礼を言った。
「荒尾君、仕事の件もそうだが、それより今回、君から色々な事を教わったよ。本当にありがとう。僕の今後の目標はＩＫ観光の荒尾康平になる事さ。もちろん、女性にもアタックしていくよ。人生を無駄にしたくないんだ。」
「あら、夢野さん、私も主人を目標にしてるのよ。」
「はは、そうだったね。」
「ところで夢野課長・・・」
　夢野は礼子の表情を読み取り言いたい事を理解した。
「ああ、今日、妻に離婚の件を話すよ。たぶん了解するだろう。」
「頑張ってね。」
　二人は、笑いながら再度、握手をして部署に戻った。

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−　寝室　−

「ほぉー、やったじゃないか礼子っ。」
「うん。でも半分以上は夢野さんのおかげよ。やっぱり凄い人だわ。」
　その時、黒田から電話が掛かってきた。
「黒田、まだ、センターにいたのか？」
『ええ、それより局長、凄い事がわかりました。パーフェクトに近い情報です。』
　黒田が手短に康平に説明をする。
「んむ、わかった。」
『今から直ぐ局長にメールで添付して送ります。』
「ああ、頼む。・・・・黒田、・・・・・ご苦労さん。」
『・・・・いえ、仕事ですから。』

（黒田・・・サンキュー・・）

　受話器を置くと康平は、パソコンのスイッチを入れた。
　そして、メールの着信を確認する。
　黒田からのメールは既に届いていた。
　さっそく中身を確認しプリントアウトする康平・・・・
　康平はしばらく、無言で読み続ける・・・・
　礼子は、気になってしょうがない様子だった。
　康平の顔が、険しくなってくる。
「な、何ぃー・・・・・・そうか、そういう事か。」
「ど、どうしたの？　康平・・・・・」
　康平は、メールの内容を把握すると礼子に夢野の件を話す事にした。
　状況からして夢野本人も妻の美也子に愛想を尽かしていることは間違いない。
　何より、黒田のデータに間違いがない限り礼子の言うとおり夢野自身はまっとうな人物だろう。
　それよりも、美也子とこれ以上生活を共にしていく事自体が可哀想である。

「礼子、実はな・・・・」
　康平は、夢野の女房の話と桜貿易が危機に陥っている事を話した。
　さすがの礼子も、李の件がまだ脳裏に残っているのだろう。
　康平の話に驚きを隠せなかった。
「そんな・・・。それで潜伏しているのは間違いないの。」
「ああ、今まで断定は出来ずにいたがな。それより何故、専務の松山が、なぜ澪が提した情報部の再構築にそれだけ抵抗したかという事だ。」
「・・・・・」
「つまり・・」
「つまり・・・何？」
「桜貿易の最高権限は社長だ。しかし昨年から体調を崩し長期入院しているんだ。来年早々、引退表明し社長の入れ替わりがあるんだが、当然、筆頭専務の尾形が第一候補らしい。そうなると松山は構想が実現しない。情報部を操ることは会社を操る事だからな。となると何かしら松山に不都合が生じてくるわけだ。」
「スワンの吉池さんが襲われたのも・・・」
「間違いなく松山の意図的な考えからだろう。」
「じゃ、筆頭専務の尾形さんも危ないんじゃ・・・」
「もう手は打ってある。」
「でも、康平、仮に松山を・・・・」
　康平は、礼子が話す前に答えた。
「そのとおり。まだ確定できない。しかし桜貿易以外に諜報員や工作員はいるはずがない。いるとすれば間違いなく桜貿易関係者だけに限られる。」
「・・・・わかるの？・・それが誰か・・・」
　康平は、黒田から送られてきた情報で推理した事を礼子に話す。
「まだ断定は出来ないが・・・恐らく・・・・・・・」
「・・・・お、恐らく・・・・・・・・だ、誰・・・・・」
「筆頭専務、尾形の女房だ。」
「・・・・え・・・・えぇぇーっ！」

（１２６）

　礼子は驚いた。
　康平が持ち帰った資料を礼子に見せた。
　主要人物のデータがぎっしりと書き込まれている。
　礼子が松山と尾形のデータに目を通した。
　関係している人物にも資料に眼をやった。
　勿論、私生活や趣味、家族までもが全て網羅してある資料だ。

「康平、何故これだけで筆頭専務の奥さんだと判るの？」
「尾形さんの奥さんも、元桜貿易の社員って書いてあるだろ。」
「ええ。」
「元社員と書いてなければ気付かなかったんだが念のために調べたら出生が空白だったんだ。おかしいと思って更に黒田が調べていくと出身地も結婚前の戸籍も存在しないんだよ。勿論、家族も分らない。」
「え？」
「いや、正確に言うと、あるにはあったんだが別人なんだ。そして、その本人は、もう既に死んでいないんだよ。」
　礼子の背筋に冷たいものが走る。
「じゃ、さっき、手を打ったって言ってたけど尾形さんは危ないんじゃ・・・」
「ああ、尾形さんには当分ホテルに泊まってもらう事にした。当然、奥さんとは別々にだ。護衛は遠藤らに任せてある。」
「でも、康平、その根拠がよく解らないわ。」
「んむ、俺の勘だが説明してやろう。」
　康平は更に黒田から送られてきたメールの情報を礼子に見せた。

「つまり、さっきも言ったが桜貿易の最高権限は社長であり独断的な意見もある意味許されている伝統を持った会社なんだ。次期社長は間違いなく尾形さんだが、不利益なるような事などする人間じゃない。しかし社のためには自分を犠牲にしてでも根を曲げない正義感を持った人間でもある。」
「・・・・・」
「そして、真面目で頭も切れる。仮に尾形さんの女房が工作員だとしても長年一緒に暮らしている尾形さんの性格は知り尽くしている。つまり正義感、経済構想・社営運用を社員以上に理解しているから意見や口答えをできない。」
「・・・・・そうね。」
「となると女房は、危険を冒してまで尾形さんを無理に説得する事は困難と考えるのが普通だ。」
　礼子は康平を見つめて続きを聞く。
「さて、尾形さんの女房は計算が狂ってきた。せっかく長年付き添い尾形がここまで登りつめてきたのに作戦が実行できない。となると尾形に代わるような人材を見つけなくてはいけない。焦ったんだよ。」
「・・・え？」
「だからボロが出てしまった。」
「よく、解らないゎ・・・」
「んむ。つまり・・・・・尾形さんの女房は保険を掛けていたんだ。」
「・・・・・・保険？」
「尾形に何かあったと時のために代わりとなる人物さ。」
「・・・？　意味がよく解らないわ。」
「つまり、尾形に内緒で実力者の愛人になるってことだよ。」
「・・・も、もしかして・・・・」
「ああ、尾形さんの女房は専務の松山の本命の愛人なんだよ。それも10年も前からな。」
「え、えぇぇーっ・・・・・・」
「しかし愛人と言っても今では尾形さんの奥さんが主導権を握っている。一番最後のページを見てみろ。」
　礼子がプリントアウトした最後の紙を見ると写真が映っていた。
「・・・・こ、これは？」
「伊豆にある松山の別荘だが、松山の隣りに映っているのが尾形さんの女房だ。」
「・・・・」
「彼女は、尾形さんと結婚後、昇格を競っていた松山にも接触していたんだ。」
「それが・・・・・・保険ね。」
「ああ。しかし尾形さんの目を隠して連絡を取り合うことは出来るわけない。だから、１0年前に近藤美也子、つまり夢野美也子を何らかの形で買収し、松山に愛人として付き合うよう与えたんだ。あくまで自分の忠誠下としてな。」
「・・・・・凄い推理ね・・」
「これ以外に、情報データとこいつらのつじつまは合わせにくい。推理ではあるが、可能性の高い真実だ。いや間違いないだろう。」
「どうするの、康平・・・・。」
「まずは、尾形さんに全てを説明する。」
「信じるかしら？２０年以上も連れ添った仲なのよ。」
「んむ、だから尾形さんの女房と松山を接触させる。そこで証拠を作る。」
「危険じゃない？」
「だから先手を打つんだ。」
「どうするの？」
「まず夢野美也子を落とす。ついでに企業社会の恐ろしさを教えてやらんとな。」
「どうやって？」
「最悪は、精神的にも社会復帰できないほどに・・・・」
　さすがの礼子も、こういうときの康平の身体から発する迫力には毎度、度肝を抜かれた。
「礼子っ」
「夢野課長と会う事は出来ないか？　突破口を作りたい。」
「え、ええ。出来ると思うわよ。」
「一応、まだ夫婦だ。説明の傍ら了解も得たい。」
「うん。あす話してみる。」
　康平は、口元で小さく笑いながら作戦を練り始めた・・・・・・

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

−　ＩＫ観光　−

「え？君のご主人が。」
「ええ。」
「そりゃ全く構わないが。」
「じゃ、直ぐに連絡してみるわ。」
　礼子は、さっそく康平に電話をした。
　康平は、すぐにこちらに向かうと言ってきた。
　礼子が、その旨を夢野に話す。
「わかった。ご主人が来たら内線で連絡をして。」
「ええ。」

　１時間後、康平がＩＫ観光の近くに到着した。
　康平は、礼子に連絡を入れて夢野にＩＫ観光の前にある喫茶店に足を運んでもらった。　夢野が康平の待つ喫茶店に入る。
　康平が夢野に気付く・・・
「夢野さんですね。」
「こんにちは。夢野です。」
　康平は、夢野を席に招く。
「先日は、出張で妻が大変お世話になったそうで。」
　夢野は一瞬、驚いたが直ぐに返答をする。
「い、いえ、奥さんの実力です。・・・・・ところでお話とは。」
　康平は、李の件と桜貿易の事をまず話した。
　康平の話に驚く夢野だが構わず本題に入っていく・・・・・
　そして夢野の顔色が真っ青に変化していった。
「そ、そんな美也子が関わって・・・・本当の話なんですか。荒尾さん。」
「冗談で貴方にこんな大事な話は言えません。事実、この話は超がつく機密事項なんです。」
「・・・わ・・・私は・・・どうすれば・・・・・」
　　微かに肩の震えを確認した康平が夢野美也子の話に入った。
「まず、今日の私との接触は絶対にばれてはいけません。貴方の命が危なくなります。それから、貴方の奥さんを社会的制裁を加え企業界から追放したいと思ってます。失礼ながら貴方の事を妻から聞かせて貰いました。貴方も苦労してるらしいですね。」
　夢野は、目を伏せながら昨夜の事を康平に聞かせた。
「実は離婚話を持ちかけたんです。あっさり承諾しましたよ。それより話中に誰かから電話が掛かってきて動揺の微塵も見せない始末で・・・。今週中に妻は出て行くそうです。」
「そうですか。」
「捨て台詞で、せいせいしたわ。と・・・・さすがの私も悔しくて。荒尾さん、社会から追放するとは具体的にどういう・・・・・・」
「ちょっと荒っぽい事をしますので具体的にはお話できません。」
「荒尾さん、美也子に前の女房の位牌を捨てられてるんです。私も今までの鬱憤を晴らしたいんです。悔しくってっ！」
「・・・・・・・・」
　康平は、夢野の心情を理解した。
「夢野さん、私が貴方の分まで制裁します。了解していただけますね。」
　夢野は無言で頷いた。
「そこで、私たちがやる仕事を成功させるために協力して欲しい事があるんです。」
「はい、なんなりと・・」
「奥さんのドレッサーの引き出しに銀のコンパクトが入っていると思います。そのコンパクトの更に下を開くとスマートメディアが入っているんですよ。これをコピーして私に渡して欲しいのですが、見つからずに出来ますか？」
「ええ、いつも朝帰りですし、まだ今週中は、家に居るようですから。」
「お願いします。」
「しかし、何故そんな所に入っている事まで知っているんですか。」
「フッ、ま、それは秘密です。」
　そういうと康平は、席を立った。
　立ち去る前に夢野に言葉を掛ける。
「そうそう、夢野さん。礼子、なかなかの身体してたでしょ。」
　夢野がビックリして顔を向ける。
　康平は夢野にウィンクをして店を出た・・・

（１２７）

　喫茶店を出た康平は遠藤に連絡をとった。
「遠藤か。どうだ。」
『はい。苦労しましたが何とか夢野美也子を捕まえました。』
「場所は？」
『西通りの雑居ビルが連なる○○○マンションの３０３号室です。』
「よし、直ぐ行く。道具は揃えておいてくれたな。」
『ばっちりです。』
　
　康平が現場に到着したのは３０分後だった。
　周りを見渡し不信な人間がいないかを確認する。
　康平は念には念を入れて裏口からマンションに入っていった。
　３０３号室をノックする康平
　中から遠藤が顔を出す。
「どうだ。」
「全く、堂々としています。」
「ほぉー。・・・よし交代だ。」
　遠藤は、外に出て見張りを開始した。
　康平が奥に進むと美也子が足を組んで煙草を吸っていた。

（ふぅーん、やはり若いな。）

　美也子は康平を見ると顔を顰めて声をあげた。
「た、太平洋の・・・・」
「さすがに能無し課長でも俺の顔は知っているようだな。」
「な、なぜ、あんたが。」
「あんたに、喋ってもらいたい事がある。」
「な、何をよ・・」
「お前の愛人、専務の松山と松山の本命の愛人尾形夫人のことをだ。」
　一気に美也子の顔色が変わった。
「素直な女だな。そこまで顔色を変える奴も珍しい。」
　康平の馬鹿にしたような薄ら笑いに美也子は血相を変えて反撃する。
「あんたに言う必要ないでしょ。大体、うちの社の事に何で他社のあんたがしゃしゃり出てくるのよ。全く関係ないんじゃないの。」
「やはり、とことん馬鹿だな。桜貿易の契約業務の４分の一が太平洋グループからの受注なんだぞ。」
「それがどうしたってのよ。」
「お前らの行動で太平洋はおろか日本企業がピンチになるんだよ。」
「何故よ。」
　康平は、説明が馬鹿らしくなってきた。
　全く意味が解っていない。説明しても理解する事は出来ないだろう。
「もういい、お前のＩＱじゃ説明しても無理だ。」
　康平は、美也子に近づき服を引き千切っていった。
「何すんのよーっ！」
　反抗をするが、所詮男の力には及ばない。
　康平は、鳩尾にパンチを入れて気を失わせた。

　美也子は目を覚ますと両手両足をベッドの足に固定されている事に気付く。
　全身は、何も身につけておらず横では康平が椅子に座って煙草を吸っていた。
「一体、これはどういう事よ。」
「言っただろう。日本を救うためだ。そして、昨日、別れた旦那、夢野正さんの代わりに制裁を加えさせてもらう。既に了解は得た。」
「こんな事して、ただで済むと思ってるの。」
「お前が開放されたときは、ショックで俺の事はおろか過去の事も忘れてるさ。それより、お前が今までやってきた行為は全て犯罪だ。そして自分の旦那はもちろん、男を馬鹿にしているような態度、あんたは人間的に失格だからな。」
　康平の静かではあるが迫力ある言動と雰囲気に美也子は鳥肌が立った。
　全身が無意識に震えだし顔が徐々に強張っていく。

　康平は、例の薬を美也子の股間に塗りつけた。
「・・ウ・・何すんのよぉー・・・・」
　更に口を手の平で塞ぎ鼻に大量に塗りつけた。
　真赤な顔をしながら康平を睨むが直ぐに鼻から薬と共に息を吸い込んでいく。
　美也子は、数秒もしないうちに腰を振りはじめた。
「ゥ、ゥゥ・・ゥゥゥー・・・・・・・」
　康平は、レコーダーを出しスイッチを押す。
「さて、俺の質問に答えてもらおう。」
「松山は、何故、情報部の人選を白紙に戻す事に反対をした。」
「・・そ、・・それは・・・尾形専務の・・・・喜代美・・・さ・・ぁぁー・・」
　康平が美也子の頬を数発叩いた。
「はっきり言え。」
　美也子は、無表情で話し始めた。
　次々に、質問をしていく康平に美也子は素直に答えていく。
　康平の顔色が徐々に変化していく・・・・・・・
　質問を終えた頃には、康平は全身に汗をかいていた。
　康平は、急いで表に出ると遠藤を呼び寄せた。
「遠藤、このテープをセンターに届けろ。内容を黒田に調べさせるんだ。」
「はい。」
「その後、尾形さんがいるホテルに向かって護衛しろ。」
「解りました。」
　康平は、部屋に戻ると美也子を睨みつけた。

（今から、お前の地獄の始まりだ。）

　康平は、持ってきた薬全てを美也子の口と性器に塗りこんだ。
　蜜壷の周りは、誇張し女芯が異常に膨れ上がっている。
　美也子は、呻き声をあげながら天井を見ていた。
　康平は、遠藤が用意した道具をバックから取り出す。
　牛乳瓶ほどもあるバイブを取り出すと美也子に放り投げた。
「美也子、それを使って言いというまで出し入れしろ。」
　美也子は頷いて康平の命令に従った。
「もっとスピードを上げろ！」
　美也子は言われるとおりにする。
　出し入れする音が部屋に響く・・・・
　康平はクリップを美也子の女芯に挟んだ。
「ギャァァァァァー・・・・・・」
　飛沫を上げながら美也子は失禁を始めた。
　女芯は一気に紫色に変色していく・・・・・
　更に浣腸器を取り出しグリセリンを入れると美也子の腸内に注入した。
　康平は、更にもう１本同じバイブを取り出し美也子に渡すと菊門に挿入するよう命じた。
　なかなか挿入できないでいる美也子に康平は足の裏で一気に押し込むとバイブが根元まで隠れてしまった。
「ウガァァァァァァー・・・グゥゥゥ・・ハァァァァァー」
　更に、顔面固定帯を装着し鼻の穴にフックを差し込み真上に吊り上げると美也子の鼻の両穴が正面に向き上がる。
　康平はベッド上にある目覚し時計を取り２０分後にベルが鳴るようセットした。
　そして美也子のバッグから身分証明を取り出しテープで美也子の身体に貼り付ける。
「美也子、ベルが鳴ったらバイブを持って出し入れを繰り返しながら外に出ろ。そして歩いて駅まで向かうんだ。いいな。」
「・・・ぁぁ・・・は、はい・・・」
　美也子が頷くのを確認すると康平は部屋を出た。

　康平は通りに出てタクシーをつかまえた。
　センターに戻るため、来た道を引き返すと真っ裸の美也子がふらつきながらバイブを出し入れし階段を下りてくる。
「運転手さん、ちょっと止まってくれないか。」
「はい。」
　康平は、運転手を待たせて様子を眺めていた。
　しばらくすると、ふらついて歩く美也子の周りには人だかりができてきた。
　遠藤が、タレ込んでおいた新聞記者やテレビ局も来ている。
　美也子は、バイブを出し入れしながら公道を歩いていた。
　グリセリンが効いてきたのか下腹部を押さえて苦痛の表情を見せる。
　美也子は、菊門に刺さったバイブを抜こうとしていた。

　康平は、それを確認するとゆっくりタクシーに戻る。
「運転手さん、行ってくれ。」
「はい。」
　康平は、煙草に火をつけ紫煙をはいた・・・・・・・・

（夢野美也子・・・地獄に落ちろ・・・・）