（１４１）

　康平は、甲斐に借りた車を運転し谷裕美をラウンドタワーの前に迎えにいった。
　谷の性格らしく人が多く集まり目立つ場所をわざわざ指定してきたのだ。
　康平の運転する深紅のテスタロッサがタワーに着くと若者が一斉に振り向いた。

　康平は、体裁悪そうに車から降りると谷を探した。
　リーク道からクールに歩み寄る女性・・・・谷裕美だ。
　谷は、康平のほうに歩いてくる。
　助手席を開けてやる康平に礼も言わず無造作に助手席に乗り込んだ。
　優雅な服装と美貌、そしてクールな仕草に皆から受ける視線で優越感を味わっているのだろう。
　康平も運転席に乗り込み豪快なエンジンをあげて国道に出た。
「どこへ行きます。」
「移動が面倒だからホテルで食事はどう？」
「解りました。」
　康平は、ウィンホテルに向かった。
　要人も利用する高級ホテルだ。
　車の中で谷が、康平に話し掛ける。
「あんた本名は？」
「え、ああ、康平です。」
「康平・・・・どっかで聞いたことあるわね。」
「よくある名前ですよ。」
「ま、そうね。ところで今日は楽しませてくれるんでしょうね。」
「え、ええ・・・頑張ります。」
「お金なら好きなだけあげるわ。それから当分私と付き合って。私が店に行ったら絶対に私から離れないでね。約束できるかしら？」
「・・・は、はい。」
「月１００万出すわ。文句ないでしょ。」
「そりゃもう。」
　谷は、バッグから康平に小切手を切って渡した。
　康平は、礼を言って受け取った。
「それから、もう一つ。どんな事でも私の言う事を聞いて。」
「どんな事もって・・・」
「安心しなさい。死ねとか、殺せなんて言わないから。奉仕してくれればいいのよ。女王様のようにね。」
「ええ、解りました。」

（ククッ・・・・ずけずけとよく言うぜ。）

　ホテルに到着した二人は、最上階にある高級レストランに入った。
　ワイン、料理、全てを豪華な物で統一していく・・・・
　二人は、グラスを合わせた。
　唐突に谷が質問をしてくる。
「ねえ、あなた一生ホストやるつもり？」
「・・・・いや、まだ先のことは考えていません。」
「そう。・・・・私の祖父が不動産やってるんだけど手伝ってみない。」
「不動産・・・ですか？」
「ええ、といっても留守番だけでいいわ。後は私の運転手で。」
　意味ありげで小馬鹿にするような言い方である。

（マジ、女王様だな・・・・）

「まあ、考えておきます。」
「いい返事を待ってるわ。」

　時間を掛けて料理を食べると満足した谷が、康平に部屋を確認した。
「部屋はとってあるの？」
「一応、セカンドスウィートを予約しておきました。」
「そう、ま、我慢するわ。行きましょ。」
「はい。」
　
　谷は、先に出口に向かって歩き出した。
　康平は、ルームナンバーを注げ谷の後を追う。
　部屋はすぐ下の階にあるシルバーナンバー１００２号室だ。
　部屋に入るなり恥じるでもなく真っ裸になる谷・・・
　まるで海外の本番女優の様な不釣合いの乳房で恥丘の陰毛は脱色され栗色に染められていた。
「何見てんのよ。貴方も脱ぎなさいよ。」
「はい。」
　康平も服を脱ぎ全裸になると谷が康平に近づいてくる。
　徐に康平の肉棒を握って上下し始めた。
「あんたも触ってよ。」
　康平は、谷の言われるとおりに股間を弄った。
「ォゥゥゥ・・・・ァァァ・・」
　谷が低く唸った・・・・・
　そう思うと急に肉棒から手を離しシャワーに誘う。
「一緒に入るわよ。来なさい。」
　康平は、見つからないようポケットから媚薬を持ち出し谷の後に着いていく。
　康平は、鏡の上にある棚に薬を隠すとドアを開けて中に入った。
　浴室は広く浴槽も大理石だった。
「ね、私の身体洗って。」
　康平は、言われるとおりに谷の身体を洗い始めた。
　谷は康平が洗いやすくするため足を開いて康平の肩に両手を乗せている。

（ちっ・・・・後で吠えずらかくなよ・・・・）

「あ、そこは指で洗ってよ。中もよ。」
「はい。」

（いちいち、うるさい女だな。）

　全てを洗い終え泡を流す康平・・・
「早く来なさいよ。」
　そう言うと浴槽に入らずに谷はバスルームを出て行った。
　康平も、身体を洗い終えるとタオルで全身を拭き、そして媚薬をこめかみの下に見つからないように塗り付ける。

　康平がベッドリームに戻ると谷はベッドの上で足を大きく開き女芯を擦りながら康平の表情を確認する。
「どう？ココを舐めたいでしょ。でも、まだよ。指でベットリと濡らして。」

（やれやれ、傲慢どころか奴隷扱いじゃねぇか。）

　康平は、仰向けになり膝を立てて大きく足を開いている谷の女芯に媚薬を気付かれぬよう塗りつけた。
　擦り付けるように女芯に薬を塗りこんでいく。

　しばらくして谷が眉を顰め始める・・・
「・・・ン・・・ア・・ァァ・・・アァァァァー・・・へ、変よ・・」
　康平は、残りの薬を蜜壷の中にも塗りこんだ・・・
「アフゥゥー・・・・・ど、どうして・・・・アァァ・・・」

（さてと、もういいかな・・・）

「・・ハァ・・ハァ・・・・・ねぇ・・オ○ンコを舐めなさい。」
　康平は、既にズボンを穿いてシャツを着始めていた。
「な、何してるの。誰が着ろっていったのよ。」
「いや、あんたと寝る気は全くねぇよ。」
　顔を真っ赤にして怒りをあらわにする谷・・・
「馬鹿言ってんじゃないわよ。お金あげたでしょ！」
　康平はポケットから小切手を取り出すと丸めてベッドに放り投げた
「な、何の真似なの。」
　谷は、快感による苦痛の表情で顔を歪めている。
「谷裕美さん、いや、旧姓、時田裕美さん。」
　谷は驚愕した。
「な、何で・・・何で、その名前を知ってんのよーっ！」
　大声で叫ぶ谷が股間を押さえて立ち上がった・・・・・・・・

（１４２）

　谷がふらつきながらベッドから降りようとした。
　康平は近づいて谷を蹴飛ばす。
　ベッドに尻餅をつく谷・・・・
「谷さん、ちょっと頼みがあるんだ。」
「あ・・・あ・・・あんた・・・・何者なの・・」
「俺か、俺は、ただのホストだよ。」
　明らかに先程までとは違う康平の迫力に谷の身体は硬直していった。
　しかし薬のせいか女芯の痺れが止まらず手で押さえている股間からは蜜が溢れてくる。「・・・・・た、頼みって何よ。」
「太平洋物流の傘下にある提携会社から手を引け。」
「・・・あ、あんた・・・・太平洋の者ね・・・・」
「そんな事はどうでもいい。手を引かないと、また地獄に戻るぞ。」
「・・・・じ、地獄・・・な・・・なに言ってんの。」
「言わなきゃ解らんか？　なら言ってやろう。お前が整形手術で顔を変え胸にもパットを入れて肉体改造をしたことを全てバラすってことさ。」
「・・・・ぁぁ・・・あゎゎゎ・・・・・」
　康平は、バッグから谷の学生時代の写真を取り出し谷の目の前に置いた。
　谷の顔が、急激に険しくなる・・・・
「ギャァァァァァァァァァァァァーーーーッ」
　谷の異常な悲鳴に康平も少々驚いてしまった。
　写真を必死で破り捨てる谷・・・・
「これを今までお前がもて遊んで奴隷扱いした男たちに送ってやるぜ。」
「や、やめてぇ・・・・・やめでぐださぃぃぃ・・・・」
　谷は、尋常ではない泣きかたをしている。
　よほど、以前の自分にコンプレックスを持っていたのに違いない。

　康平は、話を続けた。
「お前は知らないかもしれないが、自分の社長と太平洋物流の営業部長に言いように利用されているだけなんだ。確かに、お前たった一人の実力で提携会社を落とし自社に貢献している事は認める。しかし手口が卑劣だ。それは解るな。自分の実力で落とす事を快感としているのも事実だろう。」
「ぅぅ・・・」
「お前の言いたい事は解る。確かに法をおかしてるわけでもない。だが、企業のルールがある。お前のやり方は卑劣だ。そんな事をしなくてもお前なら簡単にやれる力を持っている。お前は整形してから人生が狂ったんだ。男に仕返しをする事で鬱憤を晴らそうとな。」
「ど、どうすれば・・・・・・どうすればいいの。」
「今まで、仮契約した会社を全て白紙に戻せ。それが出来なければお前が辞表を出して会社を辞めろ。二つに一つ・・さあどうする。」
「でも、でも・・正規手順を踏んでしまってるわ。」
「トラップと言ったろう。ジャパンアドバンスが仮に取引に至っても最後には、また太平洋物流のものなるんだぞ。お前はそれを知らずに利用されてるだけだ。確かに、お前には昇格が待っているだろう。しかし太平洋の子会社としてだ。」
「・・え？・・・・どういう事。」
「太平洋物流の野川という男の描いた筋書きだ。危機に陥った会社を建て直しアドバンスを吸収して更に拡大をする奴の野望なんだよ。」
「そ、そんな・・・・」
「いいか、その野川と、お前の社長はグルなんだよ。」
　谷は、信じられないような表情を見せる。
「・・・・・だ、だから・・・・誰も・・・私に文句を・・・・」
「そうだ。社長の手の平の中で動かされていたんだよ。」
　谷が、俯きながら苦痛の表情で考えているようだ。
「・・・わ・・・・・わかったゎ・・・・・手を引く・・・・わ。」
「約束を破るなよ。」
「そ、その・・・か、かわり・・・」
「お前の整形の事は絶対言わないさ。俺はココも固いが口も堅い。」
　谷は、うな垂れながらも康平の要求を呑んだ。
「・・ぅぅ・・・アァァァァー・・・」
　薬が更に効いて来たようだ。
　谷の指が蜜壷に入ったり出たりを繰り返している。
「か、身体が・・・変になりそ・・・・・た、助けて・・・」
　康平は、媚薬を瓶ごと谷に渡した。
「それを塗ると楽になる。全部やるよ。」
「あ、・・・あなた・・・は・・・・・・だ、誰？」
「ホストさ。」

　康平が、部屋を出ると同時に遠藤から電話が掛かってきた。
　ドアにもたれながら報告を聞く康平・・・・

『局長、大成功です。アドバンスの桂木との密会を確認しました。もちろん写真も撮ってあります。』
「よし、ご苦労っ！　ゆっくり酒でも飲んでくれ。」
『はい。今から桜井君とデートなんです。では・・・』
「頑張れよ。」

（はは、遠藤にも薬をやればよかったかな・・・）

　部屋の中から谷の淫乱な叫び声が耳に入ってきた。
　康平は、笑いながらエレベーターに向かった。

−　翌日　−

　局長室では、康平と黒田、東堂が最終打合せをしていた。
「じゃあ局長、物流のほうには連絡しておきますので。」
「ああ、頼む。北原専務には連絡しておいたから。」
「野川には、言ったんですか？」
「ああ、今から電話してからかってみるかな。」
　黒田が苦笑いをしながら席をたった。
「では局長、私は違う物件で札幌に飛びますんで。」
「おう、ご苦労。気をつけて行って来いよ。」
「はい。」
　東堂も、今件が終了した事で一息つくためにセンター員の教育実習に入った。

（さてと・・・・野川に電話を入れておくか。）

　康平は、煙草に火を付けると太平洋物流に電話を掛けた・・・・・・。
「もしもし、センターの荒尾です。」
『やあ、こんにちは。どうしました降参の電話ですか。』
　笑いながら康平をからかう野川・・・
　康平は、クールに言ってのけた。
「野川さん、残念ながら、あんたの野望は叶わんでしょうな。」
『野望・・・？』
「ええ、トラップ取引ですよ。」
『！・・・・・・な、・・何言ってるんですか？』
「とぼけなくてもいいですよ。ジャパンアドバンスの桂木社長と組んでトラップ取引を企てた事を酒井専務には先程連絡しておきましたから。
　当然、谷も落としましたがね。それと昨日、南が丘の駐車場で桂木と密会しているところも写真を撮らせて頂きました。なにやら分厚い封筒も渡していたようですが、偽装書類と再契約書のコピーのようですね。」
『・・・・・な・・・・・・そ・・・』
「野川さん、あなた自分でも言ってましたが優秀なんでしょ。何とかしてみなさいよ。荒尾の報告はデタラメだとね・・。
　あ、そうそう、もうじき貴方の所にも報告書が届きますので、それをじっくりと読んで、次の対処方法でも考えてください。」
　康平は、そう言って受話器を戻した。
　電話の向こうでは青い顔をして呆然としているのだろう。
　野川もセンターからの報告を虚報であるとは言えない。
　まして、アドバンスの社長とのグルが判ってしまった以上、いい訳など通用しないだろう。

　その後、野川は未遂であったがために退職は免れたが、太平洋グループの理事を解任されたことにより自主退職をした。
　一方、太平洋グループの幹部内では、ますますセンターの株が上がり康平は、もはや太平洋にとって絶対的な存在になっていたのである。

（フッ、フッ・・・・この程度、楽ちん、楽ちん・・・・）