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（３７）
秋も深まり、街の並木も鮮やかに色をつけている。
沙良は、半年振りに、平岡一馬と身体を求め合っていた。
沙良は、ホテルの一室でベッドに座る一馬の腰の上に跨っていた。
一馬の頭を抱え込み、きつく目を閉じて快感を満喫している。
蜜壷には、一馬の怒張した肉棒が、根元まで埋まっていた。
「ンー・・・ンゥゥゥゥ・・・ンゥゥ、ゥゥゥゥゥゥゥー・・」
左右のヒップを両手で抱えられ前後に揺すられる沙良・・・
既に、一馬の股間は蜜で、ビッショリと濡れている。
「ウゥゥゥァァァァァァァァァァァー・・・もう、駄目ぇぇぇぇー・・」
沙良は、一馬の肩に手をあて自ら腰を上下し始めた。
湿った摩擦音に、沙良の快感も一層増していく。
「・・・沙良・・・・沙良・・・・」
「ぁぁぁ・・・一馬さ・・・ん・・・」
一馬は、沙良を仰向けに押し倒し激しく肉棒を腰を打ちつけていく。
「ウグゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・だ・・・・駄目・・・・も、もぅ・・」
「沙良・・・・お前の・・こ、ここは・・・・・ウッ・・・」
一馬は、限界を迎えていた。
沙良に覆い被さり強く抱きしめる。
「ウグッ・・・」
「・・ア・・ア・・アァァァァァァァァァー・・・・・・」
一馬は、沙良の中に大爆発をした。
沙良は、熱い分身を受け、身体を震わせていた・・・・
しばらく結合したまま、二人は抱き合っていた。
力を失った一馬の肉棒が沙良の蜜壷から自然と抜け分身がシーツに滴ってくる。
一馬は、沙良から離れて横に移動した。
「・・・・・・・・・・沙良・・・・」
「・・・・ん？・・・なぁに、一馬さん・・」
「沙良・・・君は結婚はしないのか？」
「・・・え？・・・ぇ、ぇぇ・・・何故？」
「・・・・な、俺と一緒に暮らそう。 俺は、君が好きだ。一緒に居たいんだ。」
「一馬さん・・・・」
「それとも、伊武という男の方がいいのか。」
「・・・・わ、私は・・・・」
「彼は、君に結婚を求めてこないんだろう。５年以上も一緒に居るのに不自然じゃないか。」
「・・・・・・」
「君は、彼に遊ばれてるんじゃないのか？ 単に都合がいい女って・・・」
「ち、違うっ！ 剛士は・・・・」
「・・・・・目を覚ませ、沙良っ・・・そんな生活で一生を終わるのか。俺と一緒に暮らして、幸せをまっとうしよう。俺は、愛してるんだ。」
「・・・・一馬さん・・・ありがとう・・・でも、私・・・・結婚は・・・」
「俺の事を好きじゃないのか？」
「好きよ・・・でも、意味が違うの・・・・」
「意味って・・・俺は、単なるセックスフレンドか？」
「そ、そんな・・・私、そういう意味で言ったんじゃ・・・」
一馬は、ベッドから起き上がって隣のソファに腰掛けた。
「俺は、君が何を考えているのか・・・・解らないよ。・・・君は、俺と彼とどちらが好きなんだ。はっきり言ってくれ。」
「・・い、言えない・・・・・うぅん・・・答えられないの。」
一馬は、溜息をつきながら立ち上がった。
「解った。もういいよ・・・・俺も学会のある時にしか、こうして君に会えない。だが、君の事を忘れた事など一度もない。俺は、君から求めてくるまで待つよ。」
「・・・・一馬さん・・・・」
一馬は、沙良に振り向く事無く浴室に向かった。
沙良の目からは、自然と涙が流れてくる・・・・・
（・・・・私・・・・どうなのよ・・・・優柔不断なの・・・・）
沙良は、自分を責めていた。一馬から求婚されても答えを出せない。
決して一馬を嫌いではない。しかし、剛士を捨てて、着いていく勇気もない。
（どっちが好き？・・・・そんな事が解れば苦労しないのよ・・・・）
沙良は、涙を拭ってベッドから起き上がった。
ホテルを出ると、沙良は、一馬を駅に送るため車を走らせていた。
先程の話は一切せず、二人とも終始無言だった。
沙良は、駅に到着すると一馬を降ろして見送った。
「じゃ、沙良・・・また連絡するよ。」
「ええ。・・・今日は楽しかったゎ。」
「俺もだよ。・・・・沙良、俺は、絶対に君を諦めないぞ。・・・・じゃ。」
そう言って、一馬は、改札口に歩いていった。
一馬は、改札を通り抜けると、沙良に振り向き一度だけ軽く手を振る・・・
沙良は、それに応えて軽く手を上げた。
（・・・・一馬さん・・・・）
沙良は、暫し、思い耽ったあと、車をスタートさせた。
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「剛士ぃー、ただいまぁー！」
沙良の声に返事は返ってこない。
（おかしいわね・・まだ寝てるのかしら？）
沙良は、荷物をテーブルに置いて剛士の部屋に上がっていった。
「剛士っ・・・居るの？」
部屋をノックする沙良・・・
「開けるわよ。」
沙良は、ドアを開けて部屋に入った。
剛士は、毛布に包まって寝ているようだ。
「何よ、剛士、返事くらいしてよ・・・まだ、具合悪いの？」
沙良は、毛布を捲って剛士の頬にキスしようとした。
ところが・・・
「つ、剛士ぃ・・・どうしたのっ？」
剛士の全身は、びっしょりと汗をかき、顔は赤黒く変色し、荒い息を繰り返していた。
かなり苦しそうに顔を顰めている・・
「や、やだっ・・・剛士ぃっ・・・」
沙良は、剛士の額に手をのせ、もう片方の手を顎下の頚動脈に手をあてて脈拍を測った。
（凄い熱だわ・・・・・脈も速すぎる・・・）
元医師であるだけに、沙良は、自己処置では危険と判断し、急いで救急車を呼んだ。
その間、剛士の身体を拭き、汗の吸収が早いバスタブで体を包んでいく。
数分で救急車は到着し剛士は、ストレッチャーに乗せられた。
救急隊員が剛士に酸素マスクをあて聴診器を胸に当てている。
沙良は、剛士の手を握って祈るように見つめたいた。
（出かけるときに・・・・私が気づいていれば・・・）
≪ねえ、剛士、本当に大丈夫なの？≫
≪ああ、ちょっと頭痛がするだけだ。≫
≪飲みすぎじゃないの・・・・≫
≪・・・・・心配しないで行って来い。・・・相手も待ってるぞ。≫
≪う、うん・・・・・じゃ、気をつけてね、夕方には戻るわ。≫
沙良は、剛士の様子に気づかなかった事を悔やんだ。
よくよく考えれば、前日、剛士は酒など飲んでいなかった。
まして、調子が悪いと口にした事など、今まで一度もなかったからだ。
（・・・わ、私って・・・最低・・・・・・）
その時、剛士が大声を上げながら酸素マスクを外した。
「うおぉぉぉぉぉー！」
「剛士ぃぃーっ！・・・ど、どうしたの？ 剛士、剛士ぃーっ！」
剛士は、幻覚に襲われていた。ＳＡＳ時代の夢を見ていたのだ。
人質に取った子供を救助するために剛士と部下６人が現場を仕切っていた。
凶悪犯は、２名・・
しかし、麻薬を常用しているため、何をしでかすか解らない。
剛士は、この緊迫した状況では、子供の命は危ないと判断した。
≪ママ・・・ママ・・・怖いよぉ・・・≫
≪クッ・・・イ、伊武隊長・・・どうします？≫
剛士は、あらゆる想定を考えシュミレートを重ねていた。
しかし、この状況では、まったくといっていいほど手が出ない。
犯人は、子供の真ん前に立っているため射殺は難しいからだ。
≪・・・よし、俺が単独で上から飛び込む。あの子たちの盾になるから奴らを撃て！≫
≪えぇっ！・・・し、しかし・・・・隊長が・・≫
≪防弾チョッキを２枚着たから大丈夫だ。≫
≪し・・・・しかし、我々の銃は・・・・≫
≪黙れっ・・・命令だっ。いいなっ！≫
≪・・・・・・・・・・ィ・ィ、イエッサー・・≫
剛士らの班は、凶悪犯が位置する頭上に身を隠していた。
一斉に射殺位置に移動し準備は整った。
機会を伺いながら、部下に指で合図をする剛士・・・・
そして、剛士は、天窓から真下に飛び降りた。
子供らを全身で包むようにして覆い被さっていく。
≪！こ、このやろうっ！ 撃てぇっ！≫
驚いた、犯人のライフルが何発も剛士にめがけて撃ち込まれた。
弾は、防弾チョッキを貫通して剛士の肉体に食い込んでいく。
跳ね返った弾丸の破片が頭部にも食い込んだ。
≪ウグッ・・・≫
そして同時に剛士の部下達が、一斉に犯人を射殺した。
≪隊長ぉーっ！≫
部下の隊員たちが、剛士を取り囲んでいく。
子供達は、無事だった。
剛士自信も、運良く、命は助かったが、１ヶ月間もの間、意識を失い生死の境を彷徨っていたのだ。
幾多もの作戦を成功させ、国家や軍部からも絶大なる信用と実力を認められていたものの、妻、ケイトとの喧嘩は耐えなかった。
ケイトにとっては、愛する夫が何度も命を失いかけ、毎日、無事帰って来ることだけを祈りながら、精神的苦痛の日々を送る事にストレスが限界に来ていたからだ。
その事件後、剛士は、妻、ケイトと離婚した。
剛士は、救急車の中で背中に手を当て、当時撃たれた銃創を掻きむしっていた。
必死で剛士の身体を押さえる救急隊員・・・・
病院に着くと剛士は、ＩＣＵに運ばれた・・
処置台に乗せられると２、３人の救命医が剛士を囲んでいく。
数本の注射が剛士の腕と首筋に打たれた。
剛士は、グッタリとしながら意識を失った。
「ふぅぅー・・・・彼の家族はいるのか？」
医師が問いただすと看護婦が、沙良を呼びに表に出て行った。
看護婦と中に入ってくる沙良・・・
「ご家族ですか？」
「ぇ・・・ええ・・・」
「どういう状況でしたか・・・」
「あ・・あの・・」
沙良は、専門用語で的確に剛士の状態を説明していった。
「ん？・・貴女は、医者ですか？」
「今は、従事していませんが・・・・大学病院の循環器内科で・・・」
「・・どおりで・・」
医師は、心電図やレントゲン等の検査をし身体中を観察した。
医師は、再度、沙良に質問を投げかけた。
「ところで、彼の身体中には銃創の傷跡が所々にありますね？ 彼は何者です？」
「５年前まで。イギリスの軍隊でテロ部隊の隊員を・・・・」
「なるほど・・・・・」
医師は、沙良に剛士の状態を説明した。
「今、レントゲン、ＣＴ、血液等を全て調べましたが異常無いんです。」
「え？・・・どういう事ですか？」
沙良の質問に医師は答える事をせず看護婦に声を掛けた。
「神経内科と脳外科のドクターを呼んでくれ。」
沙良は、処置室から外に出された。
剛士は、別室に移され、神経内科と脳外科の医師による診断が行われた。
既に、剛士が運ばれて８時間が経過した。
夜中の２時を過ぎても医師たちは出てこない。
沙良は、一睡もせずに剛士の処置が終わるのを待ち続けた。
そして、更に５時間がたった朝方・・・
医師が、廊下で待つ沙良の元に歩み寄った。
沙良は、椅子から立ち上がって医師に問い掛けた。
「剛士は・・・大丈夫ですか？ 原因は？」
「ご心配なく。身体自体には何も異常はありません。熱も下がり意識も戻っています。ただ・・・・・」
「た、ただ・・・・何ですか？」
「昨日から、神経内科と脳外科のドクターが彼の過去や出来事を聞き出し質問や応答診断を行い、精神的な分析をはじき出したんですが、彼は・・」
「・・・・」
「フェアナチュレシック症候群の可能性があります。」
「・・・・フェアナチュレ・・・シック・・・しょ、症候群？」
「別名、恐怖回想性症候群とも言いますが、つまり死の恐怖を何度も味わい自信の持つ思考、行動、経験を根源に脳が突如反応を起こしてしまうんです。」
「・・・・・い、意味が・・・よく・・・」
「んー、つまり・・解り易い言い方をすれば、それによって原因不明の高熱や発作、或いは、幻想が起きてしまいます。」
「それは・・・・死の恐怖による・・精神機能障害で・・・・・ですか？」
「いえ、彼の場合、少々、違います。」
「・・・？」
「色々と話してもらいましたが、離婚した奥さんや、作戦で失った部下、その家族への罪悪感、つまり自分は、人を幸福に出来ないのではないかという焦想意識が、なんらかの原因で彼の身体に急に現れるんです。」
「・・・・・こ、これからも・・・・」
「それは、今のところ我々にも判りません。何かが刺激しているはずなんですが。」
「い、今は？」
「ごく普通の状態です。」
そこへ、脳外科の担当医がＣＴスキャンの写真を持って現われた。
「見逃しそうでしたが、恐らく刺激を誘発する原因はこれでしょう。」
そう言って、沙良ともう一人の医師に写真を見せて説明した。
「頭頂部から撮った２２５枚目の写真の一部に、金属片が、確認できますね。ほんの１ミリ程度の金属片ですが、刺激するには十分過ぎる大きさです。」
沙良が恐る恐る、その医師に質問をした。
「こ、これを取り除けば・・・・」
「ええ。フェアナチュレシック症候群は回避できると思います。しかし・・・・・当然ながら、危険を伴うオペになりますが。」
「オペの成功率は？」
「あなたも医師だからお判りでしょうが、成功率をはじき出すことは出来ません。」
「・・・・」
沙良は、剛士に説明しようかを迷っていた。
成功率をはじき出せないという事は、沙良には判っていた。
恐らく、２０パーセント、いや、それ以下かもしれない。
沙良は、処置室の前にある廊下の長椅子に座り込んだ。
（剛士・・・・わ、私・・・どうしたら・・・）
頭を抱え込みながら必死で考え込む沙良・・・・・
目からは自然と涙が零れてきた。
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