（５９）

「さらわれた？」
　夕方も近い頃、剛士の事務所に、一人の男性が訪れていた。
「ええ。」
　男の名は、下山洋、金融業を営んでいた。
「しかし、・・・それなら警察に行ったほうがいいじゃないですか。」
「行けないから、ここに来たんですよ。」

　下山の依頼は、金を貸した男に自分の婚約者を連れ去られたため居所を探して欲しいというものだった。
　下山の婚約者は、菅原由紀といい、高級クラブを経営する女だ。

「誘拐なんだから警察の方がいいと思いますがね。」
「ここの探偵事務所は、依頼を断わるんですか？」
「いや、そうじゃないですが、もし手遅れになったら？」
「手遅れとは、殺されるという意味でしょうか？」
「まあ・・・・そうです。」
「それは、絶対にありえません。」
「何故、そう言えます。」
　下山は、溜息をつきながら剛士に答えた。
「とにかく、その心配は一切ないので・・・」
　剛士は、何となく裏がありそうな気がしたが、止む無く承諾する事にした。
「解りました。で、連れ去った男の名前は？」
「加藤龍治という男です。会社が倒産して、うちから金を借りたんだが、期日を過ぎても返金しなかったんです。再三、足を運んだんですが、結局、姿をくらましまして。気がついたら由紀を連れ去って反対に脅迫してくる始末でして。とにかく居場所さえ見つけてくれれば。」
「・・・・居場所さへ？」
「ええ。後は、私が自分で・・・・」

（・・・んーむ・・・臭いな、こいつ・・・）

「報酬は、１００万、払います。」

（たかが、居所突き止めるだけで１００万ってか・・・・）

「それから、これが由紀の写真です。」
　剛士は、写真を受け取った。
　さすがに、高級クラブを経営するだけあって品のいい客好みの顔立ちだ。
「ところで下山さん、加藤の家族は、いないんですか？」
「・・・さ・・・・さぁ・・・・」
「さぁって、家に何度か取立てに行ったんでしょ。」
「そ、そういえば、女房が、居たが今は知らないですね。借金もあるし、肩代わりが嫌で逃げたんじゃないですか。」
「・・・・そうですか。」
　剛士は、下山が何か隠していると確信した。
「じゃ、見つけたら、ここへ連絡してください。」
　下山はテーブルにメモを置いて立ち上がった。
「じゃ、頼みましたよ。」
　下山は、席を立って事務所を後にした。

「沙良っ！」
　沙良が、隣の部屋から姿を現した。
「解ってる。後をつけるわ。」
「一度、連絡を入れる事を忘れるな。」
「うん。」
　既に尾行の用意をしていた沙良は、裏口から出て行った。

（んー・・・・怪しいぜ・・・）

　剛士は、下山も加藤の女房を囲んでいると推理した・・・・・

（いや・・・・おそらく間違いないだろうな・・・）

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　一人の男が、廃屋となったビルの一室で若い女を監禁していた。
　下山の婚約者を連れ去った、加藤龍治である。
「いいかっ、もし、女房に何かあったら、お前の命もないからな。」
「何で、私が関係あるのよぉぉぉー！　帰してよぉぉっ・・・・ゥゥゥ・・・」
　女は、下山の婚約者、由紀だった。
　全裸で折りたたみ椅子に縛られていた。
　蜜壷には、電動バイブが挿入されている。
　足元に乾電池が何十個と転がり、休みなく動いている事が物語られていた。

「・・・ウゥゥゥ・・・・せ、せめて・・・これを抜いてぇぇー・・」
「うるせぇーっ！・・俺の女房はな、もっと酷い目に合ってるんだっ！」
　加藤は、由紀の頬を平手で数発殴った。
「ヒィィィィィーッ・・・ィ、イヤァァァー・・・・」
　加藤は、電動バイブを握ると、まるで掻き混ぜるように激しく動かしていく。
「イヤァァァァァァー・・・お願い・・お願いだから許してぇぇぇ・・・ゥゥゥ・・」
　加藤は、涙を浮かべながら由紀の性器を虐め続けた。

（・・・め、恵・・・・・・・恵・・・・・お、俺は・・・・・）

　その頃、沙良は、下山の後をつけ工場が密集する港近くに来ていた。
　下山は、小さな製鉄工場に車を入れた。
　少し後方で車を止めた沙良は、ヘッドライトを消し車から降りると慎重に、下山の入った工場に足を踏み入れた。
　裏手に回り、工場の中を伺う沙良・・・・
　微かに奥の方に灯が確認できる。

　沙良は、塀を伝って明かりが見える部屋の方に歩いた。

（・・・窓が全部閉じてるわね。）

　使われていない工場なのか、外からは中の様子を見る事は出来ない。
　沙良は、止む無く、先ほどの入口から中に進入する事にした。

　足音を立てないように中に入っていく沙良・・・
　その時、下山の怒鳴り声が奥から響いた。
「いい加減に吐いたらどうだ・・・知ってるんだろう亭主の居場所をよぉ・・」
「ゥゥゥ・・・し、知らない・・・本当に知らないんです。」
「ちっ・・ま、いいさ・・今日、興信所に頼んできたからな。」
　その女は、加藤龍治の妻、恵だった。

　同じく全裸で身体を縛られている。
　両手両足を背中の後ろ一点で縛られ天井から吊るされていた。
　恵の吊るされた真下は、髪の毛が散乱していた。
　髪の毛が、綺麗に剃り上げられ丸坊主にされていたのだ。

「・・・クソッタレが・・・・」
　下山は、そう言って恵の乳首を指先で思いっきり撥ねた。
「ウギィィー・・・」
　沙良は、顔を顰めながら、その様子を眺めていた。

（酷い・・・・髪の毛を全部、剃られてるわ・・・）

　吊るされている手と足の先は紫色に変色している。
　更によく見ると、蜜壷と菊門には、双頭バイブが刺されていた。

（とりあえず、帰って剛士に報告しないと・・・）

　沙良は、物音を立てないように、その場所を立ち去ろうとした。
　その時・・・
「おい、お前、何やってんだ？」
　沙良の後ろには、人相の悪い男が入口から入ってくるところだった。
　まるでプロレスラーを思わせる巨体である。
「・・ぁ・・・い、いえ、すいません。間違えちゃったみたいで。」
「・・・・何を間違えたんだ。」
　沙良は急いで、その場を逃げようとしたが、男に腕を掴まれてしまう。
「怪しい女だな。ちょっと来い。」
「は、離してっ。」
　しかし、男は強い力で沙良を引っ張っていった。
「社長っ。」
「おう、孝か・・・・何だ、その女は？」
「いえ、この女が中を覗いていたんで、引っ張ってきたんです。」
「覗いてた？・・・・おい、お前、何者だ？」
「・・わ、私は・・・・ただの通りすがりの・・・」
「通りすがりが、わざわざ中に入ってくるのかよ。」
「・・・・ぇ・・・・あ・・・そ、その・・つまり・・・・・・そ、そう、急に、トイレに行きたくなっちゃって・・・・・さ、探してたら・・。」
　下山と孝と呼ばれた男は、互いに顔を見合わせて笑みを浮かべていた。
「そうか・・・・なら、ここでやれよ。」
「え？・・あ・・・いえ、いいです。他を探します。」
　沙良は、立ち去ろうとするが、孝に腕を掴まれて動けない。

「遠慮するなよ。」
「ほ・・本当に・・・・」
「お前、馬鹿か。この状況を見られて、無事、ここから出られると思ってるのかよ。」
　下山は、そう言うと孝に目で合図をした。
　孝は、沙良の鳩尾に拳を入れる。
「ウッ・・ッ・・・」
　苦痛でしゃがみ込む沙良・・・・
　沙良は、壁際の鉄柱に衣服を脱がされて縛られた。

「おい、ねーちゃん、何者だ？・・・・・・警察ではないようだな。」
「・・だ、だから・・ただの・・・通りすがり・・・」
　そこまで言うと、下山は沙良の頬を平手で強打した。
「・・キャッ・・・」
「舐めんなよ・・・・」
　孝が、沙良のバッグの中身を漁っている。
　しかし、手掛かりとなるようなものはなかった。

「社長、財布と携帯電話しか入っていません。」
「手帳とかはないのか？」
「ええ。」
「電話のアドレスを見てみろ。」
「はい。」
　孝は、沙良の携帯電話のアドレスを確認するが、何も登録されていなかった。
　着信履歴も削除されている。
「社長、駄目です。」
「チッ・・ま、いいだろう。・・・・・・ゆっくり吐かせてやるぜ。」
　下山は、吸っていた煙草を恵のヒップで揉み消した。
「ギャァァァァァァーッ！」

（・・・・何て事を・・・・・）

　下山は、胸ポケットから、スキットルを取り出して中のウィスキーを喉に流し込んだ。

　沙良は、苦しむ恵を楽にさせようと下山に声を掛けた。
「ねぇ・・・せめて、彼女を降ろしてあげたら。」
「・・・っるっせー！」
「そのままだと、彼女の足と腕の血流が止まって壊死しちゃうわ。」
「・・・・・俺の知った事か。」
　沙良が、事務所を出てから１時間・・・
　連絡を入れていないことから、剛士も、そろそろ異変に気づくだろう。

（・・・・剛士・・・・・・・）

　しかし、居場所を知らせる事が出来ない。
　足元には、財布と携帯電話が置かれているが、縛られているため連絡を入れることも出来なかった。

（６０）

　下山は、苛立ちを隠そうともせず何本も煙草を吸い続けていた。
　そこへ、下山の携帯電話に着信が入った。

「・・・もしもし・・・・・・」
『俺だ・・・』
「！・・か、加藤かぁーっ！」
『・・・女房は・・・恵は、無事だろうな。』
「由紀こそ無事なんだろうなっ！」
『ああ・・・なんとか生きてる。』
「なにぃ・・・てめぇ、ただで済むと思うなよ。」
『それは、こっちの台詞だ。・・・・・女房はっ？　声を聞かせろ。』
　下山は、怒りで顔を真っ赤にしながら、加藤の妻、恵に近づいた。
「加藤よ、望みどおり声を聞かせてやろう。」
　下山は、朦朧とする恵の真横に移動した。
　そして、ライターを取り出し、電話を恵の口元に近づける。
　下山は、ライターの火を付けて、恵の陰毛を焼き始めた。
「ギャァァァァァァァァァァーッ！」
　大声で絶叫する恵の声が、受話器の向こうにいる加藤に届いた。
『恵ぃぃぃぃぃぃーっ！』
　毛を焼かれた臭いに沙良は眉を顰める。

（・・・この男・・・・許せない・・・）

　電話を耳に当てる下山・・・
「どうだ・・・」
『き、貴様、恵に何をしたっ！』
「なぁーに・・・アソコの邪魔な毛を焼いただけだ。」
『な・・・・・・なんだとぉぉぉっ・・・・』
「クッ、クッ・・・大人しく居場所を言え。」
『・・・・・ぅぅ・・お前の大事な女にも同じ事をしてやるぜ。』
「・・・ふっ、殺されてぇーか・・」
『・・・クッ・・・ぅぅ・・・』
「女房を預かってる場所を教えてやる。由紀を連れてここへ来い。そうすれば、全てをチャラにしてやってもいいんだぜ、加藤よ。」

沙良は、ヒールの先で、携帯の短縮ボタンを必死で押そうとしていた。
　剛士に連絡をとるためだ。
　運良く、下山も孝も恵に集中している。

『し、信用できるかっ！』

　下山は、恵の乳首を弄びながら電話に集中していた。
　沙良は、何とか三桁の番号を打ち発信ボタンを押す事に成功した。
　直ぐに携帯の画面が開き、剛士が受信した事が判る・・・

（や、やったわ・・・）

　モニターが、点灯し剛士が電話を取った事を確認した。
　沙良は、下山らに見つからないよう、ヒールの先で電話を鉄柱の後ろに隠した。

「信用するしないは、お前の勝手だ。しかし、このままじゃ、お互い埒があかんぜ。」
『・・・・・・・クッ・・』
「いいか、加藤、よく聞けよ。港四丁目にある工場地帯だ。四丁目大通の最初の交差点にコンビニがある。ここを左折して、１００メートルほど走ると、廃屋の鉄鋼場がある。ここに、今日中に来い。解ったな加藤っ！」
『うるせぇーっ！』
　加藤はそう言って電話を切った。

「おい、おいっ！・・コラァッ、加藤っ・・・・チッ・・」
　下山は、怒りを露にして電話を切った。
　恵は、陰毛を焼かれた激痛と極度の疲労で気を失っている。
「ケッ・・・気絶したか・・・・孝っ、もっと痛めつけてやれっ！」
　沙良は、下山に向かって吐き捨てた。
「いい加減にしなさいよ。彼女、死んでしまうわ。」
　下山は、沙良に振り向き怒鳴り散らす。
「おい、お前っ、何者か知らんが、これを見た以上、無事には帰れんぜっ。」
「・・・・・・・・・」
　下山は、不気味な笑みを見せながら沙良に近づいてきた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

（チッ・・・沙良の奴、捕まりやがって・・・・しかし、よく電話できたな。）

　剛士は、携帯の受話器をそのままにし、事務所の電話で麻衣子に連絡をする。
「麻衣子か・・俺だ。　理由は後で話す。１時間後に港四丁目の廃屋鉄鋼場にこい。」
『え・・・何で。』
「いいから来い。手柄をやるから。」
『理由を言わなきゃ、勝手に行けないわよ。』
「バイブで、オナってた事を中央署の連中にバラすぞ。」
『い、一時間後ね。必ず行くわ。』
　剛士は、笑いながら電話を切った。

　剛士は、携帯受話器を耳に当てたまま、急いで出掛ける用意をした。

　車に乗り込み、携帯にイヤフォンを装着すると工場の様子を聞きながら車をスタートさせた。

　その頃、下山は、沙良の乳首を強く摘みながら質問をしていた。
「おい、アマっ、いったい何者なんだ。さっきから、やけに女の事を気にしてるじゃねぇか。ただの通りすがりじゃねぇだろ。正体を言え。」
「・・・・・」
「フッ・・・妙に落ち着いて見えるぜ。」
　加藤は、そう言うと孝に言い放った。
「孝っ、玩具箱を持ってこい。」
「はい。」
　孝は、厭らしい笑みを浮かべ工場を出て行った。
　しばらくして、車のトランクからプラスチックのケースを持って戻ってきた。
　ケースの蓋を開ける下山・・・
　その中には、バイブレーターやディルドが大量につまっていた。
　それを見て顔を顰める沙良・・・

　下山は、１本のバイブを手に持ち沙良の頬を撫でながら陰険な笑みを見せる。
「じゃ、喋ってもらうか。・・・孝、女を降ろして運んで来い。」
　孝は、恵を吊ってある天井から下ろすと軽々と抱えて沙良の足元に運んだ。
「この女の股の下に顔を入れろ。」
　孝は、恵を仰向けにし頭部を沙良の股下に寝かせた。
「な、何するつもりなの？」
　下山は、無言で手に持ったバイブにナイフを結び付けていた。
　それが終わると、沙良の顔を見ながら、それを見せつける。
「クッ、クッ、クッ・・・・さてと・・・・」
　下山は、陰険な笑いを見せて沙良のショーツを引き千切った。
「キャァッ・・」
　下山は、沙良の蜜壷に指を強引に入れていく。
「い・・痛いっ・・・や・・・やめ・・・」
「あんた・・以外といい身体してるな。孝っ、女の両足を上げてロープで固定しろ。」
「はい。」
　孝は、沙良の膝にロープを縛り付けてＭ字に吊り上げた。
　下山は、指を抜くと持っているバイブを沙良の蜜壷に挿入した。
「・・・ウゥゥーッ・・・ゥゥゥ・・」
　バイブの根元には、縛り付けられたナイフが固定されている。
「・・・ククッ・・・さぁ、力を入れて踏ん張れよ。」
　孝が、下山の後ろで顔をニヤつかせながら口笛を鳴らした。
「・・・ウゥゥッ・・」
「おいおい、バイブを落とすなよ。この女の顔に突き刺さるぜ。」
　沙良は、下山を睨みながら下腹部に力を入れた。
「・・・・い、いや・・・・・お、起きてぇ・・・め、目を覚ましてぇぇーっ！」
　下山と孝は、笑いながら沙良の我慢を観察した。
「・・・ア・・・・アンタたち・・・・・・」
　下山は、沙良を無視して机に座りなおした。

「孝、下で寝ている女に突っ込んでやれ。」
　孝は、待ってましたとばかりに、恵の股間に移動してズボンを降ろし始めた。
　大きく怒張した肉棒には、無数の真珠が埋めこまれている。
　孝は、気を失っている恵の足を抱えると肉棒を一気に埋めこんだ・・・
「・・・ぅ・・・ぅぅ・・・」
　恵は、極度の疲労とショックで目を開かないでいるが、孝の腰の動きで乳房と腹部か大きく唸っている。
　沙良は、きつく目を瞑って我慢した。
　後ろから、下山の声が響く。
「おい、よく見ろよ。よく見て濡らすんだ。クククッ・・・」
「だ・・誰が見るもんですか・・・。」
「・・ま、いいだろう・・・時間の問題だ。」
　沙良は、自分の身体を呪った。
　いくら拷問に近い行為でも、蜜壷に入れられた違和感で、蜜壷が自然と潤ってきてしまう。
　潤滑油の役割を果たし、バイブが抜け落ちてしまうのは時間の問題だった。

（・・・つ、剛士・・・・・・早く・・・早く、来て・・・・・）

　沙良は、腹筋が浮き出るほど下腹部に力を入れ、歯を食いしばった。

（６１）

「なかなか、しぶといじゃねぇか。お前の、マ○コは濡れねぇのか？」
　下山は、机から降りると沙良に近づいてバイブのスイッチをオンにした。
　顔を顰めて必死に耐える沙良・・・
　バイブのモーター音が、やけに耳を劈く・・・
「・・ふっ・・・これで、濡れてくるだろう。マン汁で滑りが良くなるぜ。」
　そう言って女芯を指で押さえつける下山・・・
「ゥゥゥゥッ・・・」
　沙良の下腹部は、石のように硬くなっていた。

（・・・も・・もう、駄目・・・かも・・・）

　その時、剛士は、工場に到着していた。
　車を路上に止め、急いで中に入って行こうとしたその時１台の車が工場に入ってきた。　身を隠す剛士・・・・・
　中から二人の人間が出てくる。
　剛士は、それが加藤、そして由紀であると直ぐに判った。

（あいつは・・・・）

　剛士は、加藤に声を掛けた。
「おいっ！」
　加藤は、驚いて由紀を羽交い絞めにする。
「だ、誰だ・・・・下山の仲間かっ？」
「違う・・俺は、探偵だ。」
「探偵っ？」
「心配するな。俺は、アンタの敵じゃない。」
　加藤は、それでも剛士を信じようとしていない。
「い、今の俺は、誰も信用できねぇっ！」
「落ち着け。いま、アンタの女房がヤバイ目にあっている。そして、俺の相棒もだ。早くしないと二人とも危ないぞ。」
　剛士の迫力ある言葉に加藤は唾を飲み込みながらも睨みつけていた・・・・
「・・・・・」
「加藤さんだったな・・・何故、こうなったか話してくれないか？」
「・・・・・・」
「心配するな。・・・・・助けてやる。」
　加藤は、怯えた表情で、ゆっくりと話を始めた。
「お、俺は・・・・・あいつに騙されたんだ。」
　加藤は、剛士に事の真相を話し始めた。

　加藤は、会社の支店を出すために、全ての契約を終え、後は、施行会社に資金を振り込むだけになっていた。
　ところが、この施行会社の社員から下山に情報が漏れていたのだ。
　資金運用を擬似工作され、契約文書が偽造された。
　しかし、加藤の実印が押されており、振り込み期日が切れている事に気づいたのだ。
　そこへ、施行会社からの紹介で肩代わりをするという話に加藤は騙され、全ての土地と会社を担保にし、その書類に疑いもなく捺印をしてしまったのだ。
　加藤は、下山から金を借りてしまった事になったのだが、気づくはずはない。
　そして半年後、支店の工事は、始まったのだが、契約書をもった下山が、加藤の前に現われ、始めてその真相を知る事になった。

「なるほど・・・よく使う手だな。」
「・・た、確かに迂闊だった・・・だが・・施行会社は一流会社だ。」
「信用してしまったわけだ。」
「・・・・・・」
「それから地獄が始まったわけか・・・」
　加藤が、ゆっくりと頷く・・・
「俺の、留守中に女房をさらわれて・・・譲渡依頼の契約をしろと・・・」
「なるほどね。」
「俺は、この女が店を終わるのを待って同じように連れ去ったんだ。」
「なるほど。」
「俺は・・・俺は・・・どうする事も出来ずに・・・・」
「・・・よし、奴の口から俺が喋らせる。証拠を掴んでやるから着いて来い。」
　剛士は、そう言って工場の中に入って入った。
　後に続く加藤・・・・・
　由紀は歩き難そうに加藤に引っ張られていく。

　剛士は、４人がいる部屋に入って行った。
　沙良が、裸にされ鉄柱に縛られているのが目に入った。

「沙良ぁぁっ！」
「つ・・・剛士ぃぃ・・は、早くぅぅー！」
　驚いた顔で下山と孝が、剛士に振り向いた。
　慌ててズボンを穿く孝・・・・
「テ、テメェは、探偵・・・・伊武・・・なるほど・・・この女は、お前の仲間か。」
　剛士が、迫力ある視線を下山に投げた。
　微かに下山の表情が曇る・・・
「・・・誰が、ここを探せと頼んだ？伊武さんよ・・俺の婚約者はこいつじゃねぇぞ。」　剛士は、躊躇する事無く沙良に近づいて行った。
　ズボンを穿いた孝が、剛士を制止しようとする。
「どけ、邪魔だ。」
　そう言い放つ剛士に、下山は、余裕を見せて返答する。
「探偵さん、こいつには勝てねぇ。大人しく一緒に見物してな。クククッ・・」
　剛士は、口元だけで笑うと、静かに囁いた。
「ほぉぅ・・・俺には、ただの木偶の棒にしか見えんがな。」
　剛士の言葉に怒りを示す孝・・・
　孝は、ストレートブロゥを剛士の顔面に向かって放ってきた。
「この野郎ぉぉっ！」
　しかし、剛士は軽くフェイクし孝の鳩尾に拳を食い込ませる。
「グゥェェッ・・・グググゥゥ・・」
　胃液を吐き出して崩れ落ちる孝・・・・
　剛士は、沙良に近づき蜜壷に挿入されたバイブを抜いた。
「・・・つ、剛士・・・・ギ、ギリギリセーフ・・・・」
　剛士は、沙良のロープを解き始めた。
　一発で孝を倒した剛士に驚愕する下山は逃げ出そうとする。
　剛士は、手に持ったバイブを下山の太腿に投げた。
「グガッハァァー・・」
　深々と足にナイフが突き刺さり、下山は蹲った。
　ナイフを抜こうとバイブを握るが沙良の蜜で手が滑ってしまう。
「濡れない女だって？　舐めんじゃないわ！　私の、ここのお汁は、半端じゃないわよ。」
　沙良は、そう怒鳴りながら服を着始めた。
「沙良・・・おまえ、格好悪い啖呵きるなよ・・・」
　剛士の言葉に顔を染める沙良・・・
「だ、だって・・・・」
「どうでもいいが、沙良、この女性を手当てしろ。」
「ええ。わかったわ。」
　その時、加藤が、大声で叫びながら飛び込んできた。
「恵ぃぃぃぃぃぃぃぃーっ！」
　加藤は、変わり果てた妻の姿を見て、発狂寸前に泣き叫んでいた。
　髪の毛は、全て剃られ、陰毛は、焼かれてチヂれている。
「・・こ・・・こんな・・・・・クッ・・・・クッソォー・・」
　泣き叫ぶ加藤を横目に、剛士は下山に視線を移した。
「あんたぁぁー！」
　加藤に続き、下山の婚約者、由紀も走り寄って来る。
「ゆ、由紀ぃぃ・・・・」
　剛士は、下山に近づくと、由紀を払いのけて下山の太腿に刺さったナイフを引き抜いた。
「グガァァァ・・」
「あ・・・あんた・・・・あんたぁぁー・・」
　それでも下山に、しがみ付こうと寄り添ってくる由紀・・・
　剛士は、由紀の肩口を掴んで後ろに放り投げた。
「キャッ・・」
　由紀を睨む剛士・・・・
　剛士から醸し出される迫力に由紀は激しく身体が震え出した。
「動くんじゃねぇ。」
　恐怖と戦慄が入り乱れ由紀は、立つ事ができなかった。

　下山に視線を戻した剛士は、呟いた・・・
「ふっ・・・早く手当をせんと出血多量で死ぬぞ。」
「・・・・・ウグゥゥゥッ・・」
「病院に連れて行ってやるから、正直に事の真相を話せよ。」
「・・・ググッ・・・お、俺と加藤の問題だ。テメェには関係ない。」
「俺の相棒をこんな目に合わせといて、それはないだろう。」
　その時、剛士の後ろから鉄の棒を持った孝が吼えながら振りかかってきた。
　剛士は、瞬時にかわし、足のつま先を再度、鳩尾に食い込ませる。
「無駄だ・・・お前程度の腕じゃ俺を倒せん。」
　そう言うと、倒れている孝の腕を捻り上げ肩に踵を落とした。
「グギャァァァァァァー・・」
　鈍い骨折音が、耳を劈く。
　更に足首を持ち大きく左右に捻った。
「グォォォォォォォォォォォー・・・」
　それを見た下山の顔が大きく歪んだ。
　剛士は、再度、無表情で下山に近づいた。

「さっき、加藤から全てを聞いたぜ。汚い事するじゃねぇか。」
「・・・・・・」
「下山・・・・・言え。お前の口から喋ってもらわんとな。」
　剛士は、ジャンバーのポケットから録音機を出して床に置いた。
「・・・・誰が言うか。」
「そうか・・・」
　そう言うと、剛士は、下山の両肩の関節を軽々と外した。
「グガァァァァァーッ！」
「さぁ・・言え！」
「・・・・・・・」
　剛士を睨む下山・・・・真っ赤に目を充血させながらも不敵な笑いを見せている。
「ククッ・・強がりはよせ。所詮、俺に比べりゃお前は赤子だ。」
　剛士は、下山の額に膝を乗せて動けないように固定した。
　そして、指で上下の瞼を開く・・・
「な・・な・・・・な・・・何を・・・す、する・・」
「喋るな・・・もう、喋らなくていい。」
　そう言うと剛士は、指の平で下山の目を軽く叩いた。
「グギィィィィィィィィィィー・・・」
　更に、もう一度、眼球を叩く剛士・・・・
　眼の水晶体が濁り、涙が止め処なく流れ始める。
「どうだ・・・気持ちいいだろう。」
「や、やめてくれ・・・た、たた・・頼む・・・」
「下山、いいから喋るな・・・・・俺は楽しみたいんだ。」
　今度は、直接、指先で網膜を触り指を一回転させた。
「ウギィィギィィィィィィィィィィー・・・・」
「そう、喜ぶなよ。」
「・・・・・・・ァ・ヮヮヮ・・・」
　恐怖で声が出てこない下山・・・
「さて、耳を済ませてよく聞けよ。眼球が潰れる音を聞かせてやろう。」
　剛士は、親指を眼の内側に入れ、ゆっくりと力を入れ始めた。
「ぃぃ・・や・・や・・・・・・やめてくれぇぇぇぇーっ！」
　それでも剛士は、気を緩めない。
「いいから静かにしてろ。」
「言う・・言うから・・・・言う・・・・言わせてくれぇぇーっ！」
　剛士は、指を離した瞬間に拳で両方の眼球を強く押し下山に恐怖の絶頂を思い知らしめた。
「ギヒィィィィィィィィィィィィィー・・・・・」
　下山は、そのショックで失禁し始めた。
「話せっ！」
　下山は、震えながら、泣き声混じりで喋り始めた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　下山が、全てを喋り終えると、剛士は録音機のスイッチを止めた。
「沙良、彼女を例の病院に運べ。俺は権利書を取ってくる。」
「解ったわ。」
　沙良は、加藤と共に恵を肩に担いで工場を出て行った。
「よし、下山よ、ご苦労・・・で、権利書は？」
「・・・・・・・ゥゥ・・じ、事務所の金庫の中だ・・」
「鍵は？」
　下山は、ポケットに手を入れ車のキーといっしょに取り付けてあるホルダーを取り出した。
　それをもぎ取る剛士・・・
「加藤よ・・・所詮、こういう結果になるんだ。」
　そこへ沙良と入れ違いで、麻衣子が同僚の刑事と工場に現われた。
「伊武さんっ！」
「おお、遅かったな。」
　沙良は、中の状況を見て顔を顰めた。
「こ、これは・・・」
　剛士は、おどけた仕草で録音機を麻衣子に渡した。
「ま、これを聞いて判断してくれ。」
　剛士は、麻衣子の肩を叩いて、その場を立ち去った・・・・・

「ちょ、ちょっと・・伊武さん・・待ってよ。」
　剛士の後を目で追う麻衣子・・・
　そして背を向けたまま、手を振る剛士・・・・・
「もうっ・・・・何よ。呼ぶだけ呼んでおいてさ。」
　麻衣子は、倒れている下山と孝を交互に見たあと首を傾げながら録音機のスイッチを押した。