（１２５）

「よし、じゃ、３日後の金曜日に決行だ。」
「・・・・・」
「時間は２０時０７分・・・李、５分前にインターコムを装着してくれ。」
「わかった。」
「後は、個人の腕次第だ。万全を期してくれ。」
　皆が頷いた。
「李は、工場を破壊した後、奴らのジープを全部爆破してくれ。」
「わかった。車の爆弾は、俺の部下に仕掛けさせる。」
「んむ。劉は、俺とマリオンが突破口を開くから、西郷の孫娘を助けてなるべく遠くへ逃げるんだ。」
「解りました。」
「俺からの連絡が、その日のうちに入らなければ、西郷の孫娘を連れて日本に帰国してくれればいい。」
「・・・・・・はい。」
「突入したら俺が中の製造チップを奪う。脱出した瞬間に中を爆破する。」
　李と部下達は、その言葉に息を飲んだ。
「李よ。・・・・残りの全員はマリオンと片付ける。右京を・・・・・奴を見逃さないでくれ・・・・。」
「伊武・・・・・任せろ。」
「よし、今から俺はマリオンと奴らの本拠地近くに潜入する。３日後、俺の合図で全員が１０分前に各場所に配置するんだ。」
　皆は、静かに頷いた。
　外は既に真っ暗だった。

　剛士とマリオンは、戦闘服に着替えると大量の武器を背負って表に出た。
　外は、既に氷点下を大きく上回っていた。
　吐息が漏れないようゴーグルとトップマスクを装着した。
「さて、マリオン・・・・腕を見せてもらうぜ。」
「フフッ・・・教官殿、錆付いていないでしょうね。」
「目の前で証拠を見せてやろう。」
　二人は、暗闇の中、息をひそめながらゆっくりと歩き出した。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「沙良、まだ寝ないのか？」
「ぇ・・・・ええ・・・・」
「心配だろうが、身体を休めたほうがいい。」
「うん。」
　沙良は、一馬の言葉にただ頷くだけだった。
　一馬は、沙良の肩に毛布を掛けた。
「ありがとう・・・・一馬さん。」
　一馬は、溜息をつきながら囁いた。
「沙良、伊武さんが、まさか、そんな凄い人とは思わなかった。君から話を聞いて、初めて、あの人の独特な存在が納得できた。」
「・・・・・・」
「・・・・・・君は、彼の済む世界に似合わないんじゃないのか？」
「・・・・・・・・・・ゎ・・・私は・・・・・」
「・・・いいさ、ゆっくり考えよう。・・・・・俺は君を・・・・・愛してる。」
　一馬は、そう言って奥の部屋に入っていった。
　一馬の言葉に涙を浮かべる沙良・・・・・
　しかし、今は剛士のことが頭から離れなかった。

（・・・・剛士・・・・・死なないで・・・・）

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　剛士とマリオンは、極東独立民族戦線の本拠地がある村に辿り着いた。
　そろそろ夜が明けようとしている。

「マリオン、日が昇る前までに裏手の山の中腹まで上るぞ。」
「ＯＫ！」

　二人は、急いで山に駆け上がった。
　重装備で、なおかつ大量の武器を抱えている事もあり、上り坂は、かなりきつい。
　それでも、何とか日が昇るまでに中腹にある小さな池がある岩場に到着する。

「ふぅぅー・・・・疲れたな。」
「でも、池があるわ。凌ぎ易いわよ。」
「そうだな。」

　マリオンは、荷物を降ろして汗を拭うと剛士の前で服を脱ぎ新しい下着に着替えた。
　この寒さの中では、直ぐに凍ってしまうからだ。
　剛士も同じく着替えを済ませ身を隠す場所を探した。

「ツヨシ・・・・アソコに小さな崖穴があるわ。」
「んむ。そこに行くか。」

　数十メートル離れた駆け上がりの崖に小さな洞窟のような穴があった。
　二人は、そこに移動すると荷物の中から武器を取り出して準備を整えた。

　剛士は、穴を塞ぐための木を切り入口に被せていく。
　マリオンは、火を炊いた時の煙を防止するために地面に穴を掘り簡易なエアーシューターを洞穴に設置した。

「よし、とりあえずはこれくらいだな。」
「ええ、そうね。」
「どれ、朝飯でも食うか。」
「その前に用を足してくるわ。」

　マリオンは、外に出ると正面の大木の前でズボンを下ろしてしゃがみ込んだ。
　真っ白なヒップが妙に景色とマッチしていた。
　剛士に恥じるわけでもなく、堂々と放尿を開始する。
　地面に掛かる飛沫が大きな湯気を上げてマリオンを包んだ。
　剛士も特に気にするわけでもなく、火を起こし始めた。

「ツヨシ、干し肉でも炙ろうか？」
「ああ、そうだな。腹減ったぜ。」
「まだ２日間もあるわ。体力を温存しておかないと。」
「この山にも見回りは来るはずだ。気を抜くなよ。」
「ええ。」

　剛士は、スキットルを抜き出しバーボンを一口喉に流し込んだ。

≫≫≫≫≫

−　翌日　−

　夕方になり、様子を探りに行った剛士が洞穴に戻ってきた。

「特に以上は無い。」
「お疲れ・・・・」

　剛士は、入口を木で塞ぐとシートの上に腰掛けた。
　地面は、枯れ木と獣糞を散りばめた上にシートを敷いてあり、なおかつ狭い空間で焚く火で中は暖かかった。

　剛士は、マリオンのこしらえたシチューを飲み終えると上着を脱いでティーシャツ一枚になった。

「そういえばツヨシ・・・・お友達・・・残念だったわね。」
「・・・ああ・・・・・２日後、皆の仇を取るさ。」
　剛士は、煙草を咥えると崖にもたれて小さく細く煙を吐いた。
「ツヨシ・・・・・」
「もう・・・もう俺は仲間や友人を作るのが恐くなったよ。静かに・・・・ごく普通に生活がしたい・・・・・・・。」
　マリオンは、始めて剛士の弱音を吐く言葉を聞いた。
　剛士を見つめるマリオン・・・・
　先ほどまでとは違う剛士の柔らかな瞳と端正な顔付きにマリオンの鼓動が早くなった。　剛士を見るたびにマリオンは子宮の奥から快感が湧いてきてしまう。

（・・・・ツヨシ・・・・あなた・・・不思議な男ね・・・・）

　剛士に寄り添っていくマリオン・・・・
「どうした？」
「うぅん・・・・精神の安定を維持しなくちゃ。」
「クッ、クッ・・・さすが、戦闘士だな・・・・」
「まあね・・・・それともサラに悪いかしら？」
「・・・・いや・・・・・んー・・・そうだな・・・・」
「日本に限らず、戦の前は、男も女も求めるものなのよ。」
「フッ・・・・・・・体が鈍らないように全身運動するか。」
「あの時、ツヨシに抱かれたのが最後と思ってたけど・・・」
「・・・・・・・・・」
「心配しないで、今の私は、貴方の精神安定剤よ。愛や恋なんて言わないわ。」
　マリオンは、そう言ってズボンを脱ぎ始めた。
　ツヨシのベルトを外しブリーフを下げていく。
　マリオンは貧欲にツヨシの肉棒にしゃぶりついていった。
　空気と唾液が混じった異音が洞窟内に響いていく。
　マリオンは、肉棒から口を離すと剛士の肩に手を乗せ腰に跨った。
　蹲踞のような姿勢で剛士の肉棒を片手で掴み自ら蜜壷に当てがっていく。
　肉棒の先を埋めたマリオンが、剛士の口に舌を滑らせていった。
「ンァァァ・・・・・・ツヨシィィー・・・」
　そう叫びながらマリオンは、肉棒に向かって浮いている腰を一気に落とした。
「グッハァァァァァァァー・・・・・・」
　根元まで埋め込んだマリオンは、暫し蜜壷の中の肉棒を堪能すると激しく腰を振り始めた。
　まるで狂った獣のように髪を振り乱していく。
　マリオンの蜜壷からは、溶けたバターのような蜜が止め処なく溢れ出ていた。
「ツヨシ・・・・たくさん・・・たくさん、リキッドを頂戴ぃぃぃぃーっ！」
　マリオンは、遠慮の無い淫声を上げて腰を振り続けた。

（１２６）

　剛士とマリオンは、ひたすらセックスをし続け、ひたすら眠り続けた。
　マリオンは、貧欲に剛士を求め、膣一杯に剛士の分身を受け止め心身ともに最高の精神状態に上り詰めていた。
　そして・・・いよいよ作戦決行の日が来た。
　昼頃に目を覚ましたマリオンが、背伸びをして声を張り上げた。
「フゥー・・・・大満足・・・フフッ・・・」
「ククッ・・・しかし、よく出したもんだ。」
「気力万端よ。」
「さて・・・・じゃ、準備を整えよう。」

　今夜、極東独立民族戦線の本拠地を壊滅し大量破壊兵器の地下工場を爆破しなければならない。

　剛士は、池の水を汲んで湯を沸かした。
　マリオンが全身裸になった剛士の身体を綺麗に拭き上げていく。
　剛士もマリオンに同じ事をした。

「さ、マリオン、いよいよだ。」
「ええ。」
　新しい下着を着て戦闘服を着込んだ二人は最終打ち合わせを開始した。
　剛士が図面を広げて配置と攻撃内容をマリオンに言い伝える。
「４人の警備員を３秒で射殺する。それを合図に李の手下が一人づつを射殺するはずだ。残りは、お前のグレネードで１０人は倒せる計算になる。その場所まで走って約１分、　俺は中に入って、研究者たちを外に出す。メインマシンからチップを抜いたら仕込んだ起爆のスイッチを押せ。合図が無かったら２０秒後にスイッチを押せばいい。わかったな。」
「ええ・・・・約２分ね。」
「残りの奴らは、ゲリラ戦でいこう。スタートは２０時７分。」
「ＯＫ！」
「よし、出かけるぞ。」
　二人の顔が引き締まった。
　手馴れた手つきで武器を身体に取り付けていく。
　剛士とマリオンは、万全の装備をして山を下っていった。

　約１時間掛けて慎重に地下工場が確認できる場所に辿り付いた。
　剛士がマリオンに声を掛けた。
「マリオン、ここで別れよう。俺は南側の入口付近に移動する。」
「わかったわ。」
「俺が中に入ったら後はお前の行動は任せた。」
「ええ。」
「成功したら別々に退避する。・・・・・日本で会おう。」
「・・・・ＯＫ・・・・・グッドラックッ！・・・ツヨシ・・」
　剛士はマリオンの声に親指を立てて応えた。

　剛士は、その場から離れ自分が侵入する南側の入口方向に進んでいった。

　進む事３０分・・・
　身体を隠す大木を見つけると剛士はそこに身を隠した。
　時計を見る剛士・・・

（２０時ジャストか・・・・・）

　剛士は、胸ポケットからインターコムを取り出し耳にはめた。

（幸三・・・・使わせてもらうぜ。）

　そして、３分後・・・

《・・・李、聞こえるか？》

《ああ、よく聞こえる。》

《そっちの様子は？》

《まだ警戒は強い。》

《よし、あと４分、俺とマリオンの銃撃で作戦開始だ。》

《わかった。》

　剛士は、狙撃用ライフルＡＫ−２０５を手にとった。
　スコープを装着し照準確認をする。

　距離にして、およそ１００ｍ・・・・・
　スコープの十字マークを警備の男に向けた。

　１００ｍあまりの距離を計算すると、着弾は５０ｃｍ下方にずれる。
　草がなびく風を計算し、剛士は照準距離とターゲットポイントを決めた。

　身体を伏して狙撃体制を取る剛士・・・・
　トリガーに指を掛け大きく深呼吸をして目を瞑った。

　２０時７分まで残り３０秒、時計のタイマーがスタートする。

　剛士は、目を開きスコープに目を当てた。
　南口にいる二人の警備の男に照準が合う。
　トリガーに掛かる指に力が入った。
　残り３秒、腕時計から電子音が鳴り出す。

“　ピッ・・ピッ・・ピィーッ・・”

　剛士の人差し指が絞られた。
　軽快な発射音とともに、１発目が男の額に命中する。
　隣の男が倒れた男に目をやった・・・・
　剛士は、すぐさま横を向いた男のこめかみも粉砕した。
　その間、僅か１秒・・・・
　血煙が迸り２人の男が大きく真後ろに吹っ飛んでいく。
　同時に北側正面からも２つのマズルフラッシュが光った。
　マリオンが発射した銃弾だ。

　剛士は、ライフルを捨てるとフルスプリントで南入口にダッシュした。
　その時、東西に位置する李の手下達が放った銃が、警備員に命中し男が吹き飛んだ。

（よし・・・・いいぞ・・・）

　剛士は、軽機関銃を構えながら倒れている男を飛び越え地下工場に入った。
　走りながらセミオートに切り替える剛士・・・・
　中には、３人の男達が銃を構えて立っていた。
　剛士は、１秒も掛からずに男達の額に銃弾を打ち込んだ。

　工場に入る剛士・・・
　天井に向かって機関銃を絞る。
　中の研究員達の悲鳴が響いた。
　剛士は、再度、トリガーを絞ると大声で叫んだ。
「ここを破壊するっ！　死にたくなければ全員外にでろぉっ！」
　一瞬、間を置き中の研究員達は、一斉に出口に走り出した。
　剛士は、研究員たちを掻き分け奥へ進んだ。
　マリオンの仕掛けた起爆装置が、空調器の上に仕掛けられていた。
　視界だけでそれを確認する剛士・・・
　メインコンピューターで一人の男がチップを取り出そうとしている。
　剛士は、男をなぎ倒して先にチップを取り出した。

（これか・・・・・）

　剛士は、チップを手にすると拳銃でそれを打ち抜いた。
　目が飛び出しそうな勢いで、その光景を見る研究員・・・
　しゃがみ込んだまま、動こうとしない。
　剛士は、クールな声で研究員に囁いた。
「あと数十秒で、ここは爆発する。早く逃げないと粉々になるぞ。」
　男は、剛士の言葉で急いで出口に向かった。
　剛士は、念のためバックアップ装置を機関銃で破壊した。
　中に逃げ送れたものが居ないか確認すると全速力で外に駆け出す。

　剛士が地上に出た３秒後、大爆音と共に工場上の地面が盛り上がりながら砂煙を上げて爆発をした。

（・・・第一段階成功・・・・・だな・・・・・）

　怒号と共に、各小屋から組織の男達が飛び出してきた。
　特殊部隊出身だけあり、素早い動きと攻撃態勢を保ちながら周りを見渡している。
　剛士が、１発の銃弾をダミーで発射すると、鋭い反射で反撃をしてきた。

（・・・チッ・・・・やはり、半端じゃねぇな・・・）

　その時、軽快なショット音を靡かせながらグレネードが剛士の頭上を飛び交った。
　グレネード弾は、男達の走り寄る足元に確実に着弾していく。

（さすがだ・・・マリオン・・・）

　それと同時にジープを改造した装甲車が次々と爆発していった。

（・・・・ヨォーシ・・・・もう逃げられまい。）

　剛士は、第二段階の成功も確認した。

　剛士は、暗闇に身を隠し、着実に組織の男達を倒していく。
　インターコムに、李の声が響いた。

《伊武っ・・・俺の部下が一人やられた。》

《何っ！・・・・・・わかった。　お前も気をつけろ。》

《ああ・・・・俺は、右京を探しにいく。》

《頼むぞっ、李っ！》

《任せろ。》

　剛士は、慎重に周りを警戒しながら奥へと進んでいく。
　所々で怒号が飛び交いながら銃声と共にマズルフラッシュが閃光していた。
　既に３分の２は、独立民族戦線の男達を倒していた。
　残りは、リーダーの朴を護衛している確立が高い。
　その時、煙の中から人が出てくるのを確認した。
　銃を構える剛士・・・・

（！？・・・・・劉か・・・）

　劉が西郷の娘、博美を担いでレンガ造りの家から出てくるのを確認した。
　何とか救出に成功したようだ。

（・・・よしっ・・・頼むぞ劉・・・・）

　剛士は、一瞬、安堵を覚えるものの、直ぐに気を引き締め先に向かった。

　時間を掛け、朴が居るであろう建物の前に辿り付いた。
　その時、剛士の右側に人影を確認した。・・・・マリオンだ。
　首筋から血を流しているが目は精悍さを保っている。

（・・・・・・マリオン・・・・）

　剛士は、小さく空気だけで口笛を吹いた。
　振り向くマリオン・・・・
　剛士を確認すると口元だけで笑みを作り首筋の血を指で拭った。
　剛士は、サインを送り、自分が先に行くと合図を送る。
　マリオンは、血を拭った親指を立て小さく左右に回した。
　援護をするという意味だ。
　剛士は、伏している体を起こし膝を付いた。
　機関銃を置き、ホルスターからベレッタを抜く。
　李に頼んで特注でつくったフルオート可能な拳銃だ。
　剛士は、手榴弾のピンを口で抜き入口に放り投げた。
　爆音と共に建物入口が吹っ飛びドアが破壊される。
　頭上から一斉に銃弾が発射された。
　しかし、マリオンの援護射撃で所々で間が開いていく。
　剛士は、その間を縫ってタイミングよく入口にダッシュし中に飛び込んだ。
　慎重に奥に進む剛士・・・・

《・・・伊武・・・・・》

《どうした・・・李っ！》

《右京を見つけた。一人の男が車椅子を押している。・・・・どうする。》

《その男を殺れるか？》

《ああ。ただ、右京も武器を持っている、生きたまま捕まえられるかわからん。》

《その男だけを殺ればいい。そう遠くへ逃げる事は出来んだろう。》

《わかった。》

　剛士は、一時、静まり返った建物内に耳を済ませた。

（・・・・居る・・・・・）

　大きく息を吸い込むと剛士は、呼吸を止めた。
　神経を集中させ、剛士は煙が充満する部屋に突入していった。