（１２７）

　剛士を目掛けて、何十発もの弾が発射された。
　２発の銃弾が剛士の太腿に命中する。

（グッ・・・）

　銃を撃ち込まれた剛士だったが動じなかった。
　転がりながらも冷静に、トリガーブースの音を聞き相手が５、６人と判断する。
　レンガの柱に身を寄せた剛士が手榴弾のピンを抜き手に構えた。
　リミットは７秒・・・
　剛士は、残り２秒で手榴弾を相手に投げ込んだ。

　相手は、投げ込まれた瞬間に素早く飛び退くが、タイミングを計って投げた手榴弾は、相手を完全に捕らえていた。
　悲鳴と共に相手の体が吹っ飛んでいく。
　剛士は、慎重に柱の陰から身体を出した。
　呻き声を上げながら男達がもがき苦しんでいる。
　３名の男は絶命していた。
　一人は、両目をやられ、地面をのた打ち回っている。
　外では、まだマリオンが銃を打ち合っていた。
　遠くから絶叫や苦痛の悲鳴がこだましている。

（・・・・マリオン・・・頼むぞ。）

　剛士は、転げ回る男の腹部を踏みつけた。

「・・・・・朴は、何処だ。」
「ぅぐぐぐぐぅぅぅ・・・・・・・・・し・・・・知らん・・・」
　剛士は男の太腿にベレッタを撃ち込んだ。
「グガァァァァァァァーッ！」
「言えっ！」
「・・・こ、殺せ・・・・早く殺せーっ！」
　剛士は、冷酷な笑みを浮かべながら、もう一発を逆の足に撃ち込む。
「ギフィィィイィィィィーッ！」
「さ、言え・・・・・」
「・・・・・・し・・・・・知らん！」
　剛士は、男の前にしゃがみ込むとゆっくりと呟いた。
「隣を見ろ。」
　男は、隣で目をやられて苦しむ仲間を見た。
　剛士は、その男の頭部に向かってベレッタを連射した。
　粉々になって脳髄や血液が乱飛する。
　剛士は、男の髪の毛を握って銃殺した男の前まで引きずった。
　そして、ザクロのようになった頭部に男の顔を押し付ける。
「ヒィィー・・・ウギャァァッァァァァァァァァァー・・・・」
「こうなりたいか？」
　男は、居の中のものを吐き出しながら激しく首を振る。
「なら、言えっ！」
　男は、奥を指差して応えた。
「・・・お・・・奥の・・・壷の下の・・・・・・ち・・・地下に・・・」
　剛士は、口元だけで笑みを見せると男の額に弾をプレゼントした。
「ご苦労・・・」
「ンゴォッ・・・」
　大きな弾穴が空き男の眼球が飛び出す。

　剛士は、大きな壷が置かれた場所に足を運んだ。
　壷を移動し上に被った砂を足で払うと鉄板に隠された入口が現れた。

（・・・・・この中か・・・）

　剛士は、ゆっくりと、そして慎重に鉄板をずらしていった。
　僅かに人の気配がする。
　耳を澄ます剛士・・・・
　呼吸音は二人、剛士は、ゆっくりと声を掛けた。
「中に手榴弾を投げるか・・・・それとも外で殺られるか，好きなほうを選べ。」
　相手は、返事をしてこない。
　剛士は、冷酷な笑みを浮かべ照明弾を地下に落とした。
　軽い爆発音と共に激しい閃光が地下内部を包んだ。
「グゲェェェェー・・・」
　上部に向かって銃が乱射される。
　剛士は、身をずらし銃弾が止まるのを待った。
　チェンバーを弾く音が聞こえる。
　剛士は、笑いながら１発の銃弾を上から放った。
　再度、下からの乱射が始まる。
　しかし、ついに弾切れになったようだ。

　剛士は、蓋を完全にずらしマグライトを照らした。
　二人の男が、目を充血させながら鉄板が動いた音の方向を見ている。
　照明弾によって視力を失っていたのだ。
「・・・朴・・・朴王正だな・・・・」
　剛士の言葉に手前の男が返事をした。
「・・そ・・・・そうだ。」
　剛士は、返事をした男の額を狙ってトリガーを絞った。
「グフゥッ」
　男は、空気と液体を吐き出すような音を立てて崩れ落ちた。
「・・・・馬鹿め・・・・お前じゃねぇーだろうが・・・」
　残された男は身体を震わせていた。
　その男こそが、朴だった。
「上がってこい。」
「・・・・・」
「そこで、死ぬか？」
「・・・ゥッ・・・・」
　朴は、手探りで入口部分に手を掛けた。

　剛士は、朴の手を握り思いっきり朴の身体を引き上げた。
　四つん這いになりながら朴が身体を震わせている。
　まだ、視力が回復しないのか、顔を左右に振り続けていた。
　剛士は、朴の腹部を思いっきり蹴り飛ばした。
「グッハァァッ！」
　剛士の打たれた太腿から血が噴き出た。
　しかし、痛みを感じないほどの怒りが麻酔薬の代わりをしていた。
　朴に声をかける剛士・・・・
「・・・・・今・・・何を考えている。」
　朴は、腹部を押さえ体を丸めながら唸っている。
　子供のように怯え、身体を震わせていた。
　とてもこの男が、極東独立民族戦線を指揮するリーダーとは思えなかった。
　剛士は、呆れた表情で朴を問いただした。
「お前を殺る前に、聞きたい事がある。」
「・・・・・・ゥゥ・・・グゥゥ・・」
「・・・・・朴よ・・・兵器開発のコピーはないだろうな。」
　朴は応えなかった。

　剛士は、サバイバルナイフを抜いて朴の肛門に突き立てた。
「ウギャァァァァァァァァァー・・・・・な・・・ない・・・無いぃぃぃー！」
「よし次だ。・・・・研究員は何処から集めた？」
「・・・ぅぅ・・・・・そ・・・それは・・・」
「家族を誘拐し、そして脅し・・・無理やり連れてきたんだな。」
　朴は、顔を顰めながら頷く・・・・
「最後の質問だ。」
　最後の質問と聞いて朴は、突如、激しく暴れ出した。
　剛士は、朴の足に向かってベレッタを連射した。
「グギィギャァァァァァー・・・・・」
　血まみれになって朴の両足が肉片と化した。
　朴に跨る剛士・・・・・
「武器・・・・そして協力を受けている朋盟組織、若しくは人物の名を言え。」
　朴は、苦しまみれに上体を起こし腕を剛士に向かって突き出した。
「ウッ・・・」
　朴の袖口に隠された仕掛けナイフが剛士の脇腹に刺さった。
「・・・フッ・・最後の悪あがきか・・・・」
　剛士の言葉と共に朴の視力が徐々に回復してきた。
　剛士の顔を薄っすらと捉えていく・・・・
　剛士は小さく声を上げたものの表情を変えずに朴を見据えていた。
「・・・ぅ・・・う・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁー！」
　亡獣のような視線で、剛士は朴を見つめていた。
　朴は、恐怖を通り越し戦慄が全身を襲っていく。

　朴は剛士の腹部を見た。
　確かに剛士に突き刺さり血を滴らせている。
　しかし、剛士は、顔を顰めるどころかその状態に変化は全く見られない。
「・・・・・さあ・・・言え・・・」
　朴は、恐怖で自然に口が開いていった。
「・・・・・と・・・・・と・・統合・・・・ば・・幕僚・・・会議・・・」
（！・・・・）
「・・・・さ・・・・佐々・・・木・・・・」
「・・・・・そうか。」
　剛士は、立ち上がると朴の肛門に突き刺さったサバイバルナイフを抜いた。
「ヒギィィィィィィー・・・」
　股間に突き刺し、更に腹部に何箇所も刺していく。
　朴の腸がはみ出して体液が噴出した。
「・・・・・・・とことん苦しんで死んでいけ。」
　剛士は、そういい残して出口に歩き出した。
　足と腹部から出血していた傷が、いつの間にか塞がっていた。

（・・・・・右京・・・・・・今から・・・行く・・・）

　剛士は、身体中から怒りのオーラを噴出させながら建物を出て行った。

（１２８）

　剛士が、建物を出ようとした時、口から吐き出される空気音とともに血飛沫が剛士に降りかかった。
「・・・！」
　まるでスローモーションのように背面から地面に落ちてくる物体・・・
　剛士は、瞬間的にマズルフラッシュの閃光に向かってトリガーを絞った。
「ウゲェッ！」
　剛士の目の前に銃を構えた人間が仰向けに倒れた。
　目を開き真っ直ぐに夜空を見上げている。
「！・・・マリオンッ！」
「・・・・ツ・・ヨシ・・・」
「・・・・・・・・・・マリオン・・・・・お前・・・・俺を・・・」
「・・・・な・・何も・・・言わないで・・・・・」
　マリオンは、肺から大量に血を流していた。
　剛士は、頭部からマリオンを起こし後ろから抱きしめた。
「なんて事を・・・・」
「・・・・あ・・・暖かい・・・・・・ゎ・・・」
「・・お・・・俺の・・・盾に・・・・」
「・・・・貴方には・・・・ま・・・まだ・・・やる事が・・残って・・る・・・」
「馬鹿やろうっ・・・・」
「剛士・・・・貴方は・・・・私の・・・・・・ぇ・・・英雄・・・・・」
　マリオンは、そういい残して息をひきとった。
「な・・・・マ・・・・マリオン・・・・マリオォーン！」
　剛士の全身は、怒りで燃え滾っていた。
　太腿に打ち込まれた弾が筋肉に収縮され飛び出してくる。
　剛士は、マリオンを抱き上げた。
「ウオォォォォォォォォォォォォォーッ！」

《・・・・伊武・・・・・・ど・・・・どうした・・・》

　李が、驚きながらインターコムを通して声を掛けてきた。

《・・・・や・・・・・殺られた・・・ま・・・マリオンが・・・》

《・・・・・・・・・伊武・・・・》

　怒り滾った声で剛士は李に問いただした。

《・・・李・・・・・右京は・・・・・》

《・・・そ・・・それが・・・・》

《どうしたっ！・・・逃げられたのか？》

《いや・・・・居るには居るんだが・・・・とにかく早く来てくれ。西側の建物だ。》

《・・・・・・わかった。》

　剛士は、マリオンを抱いたまま西に位置する建物に急いだ。

　李が、表に出て剛士を迎えた。
　マリオンを抱く剛士を見て、ガックリと項垂れる。
「・・・・・李・・・俺を盾にして・・・・マリオンは・・・・」
「・・・・伊武・・・・運命・・・・・だ。」
　李は、やるせない剛士の心境を察した。
「・・・・・・・・・・右京は？」
「中だ・・・・来てくれ。」
　剛士は、マリオンを抱いたまま建物の中に入っていった。
　小さなベッドを見つけた剛士は、マリオンをそこに寝かせた。
「右京がどうしたんだ。」
　李は、奥の部屋の地面に伏す右京を指さした。
　部屋に入る剛士・・・・
「・・・・！」
　右京は、李が撃ち殺した男の肉棒をしゃぶっていた。
　李が、力なく剛士に声を掛けた。
「狂ったようだ。」
　剛士は、目を細めて暫し右京を観察した。
「・・・・・・いや・・・狂っていない。・・・・演技だ。」
「何っ！」
　剛士は、右京にゆっくりと近づいた
「・・・・・右京・・・俺の目はごまかせないぞ。」
　剛士の言葉に右京の動きが止まった。
　ゆっくりと死んだ男の肉棒から口を離し剛士に振り向いた。
　表情が急激に強張り始める右京・・・・
「い・・・・伊武・・・・・こ・・・殺さないでくれ・・・・た・・・頼む。」
「ああ・・・・わかった。・・・直ぐにはな。」
　李は、剛士の言葉を聞き、怪訝そうに行動を見ていた。
　剛士は、右京のズボンをナイフで切り裂いて脱がせた。

「ヒィィー・・・・」
「確か、まだ、睾丸が１個残っていたな。」
　そう言うと目にもとまらぬ速さで縮まった睾丸を突き刺した。
「グギャァァァァァッァァァァァァァァーッ！」
　更に、収縮している肉棒を根元から切り落とす。
「ンッビギギギギギギッギギッ・・・ンガギィィィィィィー・・・・」
「叫ぶな。まだ死なないさ。・・・・お前の願いどおり殺さないでおいてやる。」
　剛士は、ベレッタを抜くと静かに呟いた。

「俺は、冬木幸三だ。」

　そう言って両肩に銃弾を何発も打ち込んだ。

「ウガガァァァァァァァァァァァァァァー・・・」

　右京の両手は、もげ落ちた。
　意識朦朧となる右京の目に踵を落とし眼球を潰す。

「！・・・・ンピィィィィー・・・」

　弾装をチェンジした剛士がベレッタを構えなおす。

「俺は、門田穂波だ。」

　そう言うと、股間を目掛けて銃を打ち込んだ。
　肉棒と睾丸が完全に姿を消し肉片が地面にこびり付いていく。
　右京は、気を失った。
　しかし、もう片方の眼球を踵で潰して強制的に覚醒させた。

「・・・・・ァヮヮヮ・・・・・ギャァァァァァァァァァー・・・」
　
　再度、ベレッタを構える剛士・・・・

「俺は・・・陣内四郎だ。」

　剛士の目からは大量に涙が流れていた。
　李は、静かに剛士の行動を見つめている。
　右京の両足の付け根に向けベレッタが吼えた。
　空になるまで打ち込むと右京の足は完全に体から切断された。
　残っているのは身体に繋がった頭部だけだった。

「・・・・右京・・・・右京っ！・・・・・そのまま生きてろっ！」

（・・・・・・・伊武・・・・）

　剛士の身体が震えていた。
　李は、剛士に気を使って外に出て行った。

　剛士は、いつまでも右京を見据えていた。
　右京の目から徐々に光が消えていく。

（幸三・・・・穂波・・・・・・四郎・・・・・・・これで勘弁してくれ。）

　剛士は、ベレッタを放り投げると出口に向かった。
　手前の部屋の簡易ベッドでマリオンが静かに横たわっている。

（マリオン・・・・・）

　剛士は、マリオンが寝るベッドの周りに木製の家具や藁などをおいた。
　胸ポケットから煙草を抜くとジッポで火を点けた。
　紫煙を吐きながら、まだ蓋を閉じていないジッポの火を藁に着火した。

（・・・・・マリオン・・・・・安らかに眠ってくれ・・・・・・）

　剛士は、心の中でそう呟き建物を出た。

　既に外は夜が明けようとしていた。
　冷たい空気が剛士の全身を包んでいく。
　微光を発する星を眺める剛士・・・・

（・・・・・・・統合幕僚会議・・・・・・佐々木・・・・・）

　剛士は、拳を強く握って歩き出した・・・・・・・・・・・・