（１４）

　三谷のアパートから戻った沙良は、剛士に、先程までの報告をしていた。
　風呂から出たばかりだった剛士は、沙良が帰りに駅前で買ってきた寿司を美味そうに頬張りながら話を聞いていた・・・
「ほぉぉー・・・あの手を使ったか。」
　剛士の言葉に沙良は笑いながら頷いた。
「ドキドキだったけど。」
「ま、一人にしちゃ、よくやったな。」
「へへーっ、でしょ。今ごろ大慌てで探してるわよ。それを彼女にプレゼントしようとしてるんだから。」
「フッ、ま、上出来だ。」
　沙良は、剛士の言葉に素直に喜んだ。

「しかし、ストーカー行為を止めさせるのはどうするんだ？」
「それなのよねぇ・・・何かいい案ないかしら？」
「ま、お前に任せたんだ。最後まで一人でやれ。」
「・・・っとに、冷たいわね、剛士って。」
「早く、お前に一人前になってもらわないとな。」
「ずっと、剛士のパートナーでいいんだけど。」
「アホォー・・・・それより、もう１本ビール持ってきてくれ。」
「自分で持ってこればいいじゃない。私、お風呂に入ってくる。」
　沙良は、ふて腐れながら浴室に歩いていった。

「ん？　怒ったか・・・」

　服を脱ぎ捨てて、沙良はシャワーを浴びた。
（んー・・・どうしようかなぁ？）
　とにかく三谷に、裕香を諦めさせない事には解決に繋がらない。
　何か、いい方法はないかと必死で頭を回転させているとき・・・・・・
（・・・・あ、そうだ！）
　沙良は、幸三に頼んで偽の恋人役になってもらい三谷を諦めさせるための演技をすれば、と考えた・・・・
（よぉーし、さっそく明日行ってみよっと・・・・・・）
　当てが付いた沙良は、鼻唄をうたいながら身体を洗い始めた。

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「剛士ぃ、入っていい？」
　沙良は、剛士の部屋をノックし、返事を待たないまま中に入った。
　剛士は、ベッドに座って本を読んでいた。

「ん？　どうした・・・さっきと違って機嫌いいな。」
「まぁね・・」
「で、何か用か？」
「ぇ・・うぅん、特に用事は無いんだけど・・・・」
　沙良は、剛士の横に腰掛けた。
「何を読んでるの？」
「キャサリン・マンスフィールドだ。」
「聞いたことあるわ。イギリス作家ね。」
「批評家でもあるんだが、鋭い感受性と繊細な感覚で人間の心理を描写した作品を数多く書いてるんだ。」
「へぇー・・・・しかし、剛士って、そういう類の本好きね。」
「お前の クリスティー・アガサと一緒だ。」
「いいじゃない。　推理小説って面白いわよ。これ読んで私勉強してるのよ。」
「・・・・フッ・・」
　剛士は、本を置くと、珍しく自分から沙良を抱き寄せた。
「アン・・・剛士・・」
「ここんとこ、ご無沙汰だったし、今夜は、お前の身体を堪能させてもらうかな。」
「実は、私も、抱いて欲しくて来たの。・・・・思いっきり燃えちゃっていい？」
　剛士は、それに答える代わりに、沙良のサテン地のナイトドレスを脱がし始めた。
　ブラジャーはつけておらず、ロー・クローズの赤いショーツを穿いている。

　剛士は、後ろから沙良を抱え込むと前に手を伸ばし沙良のショーツの中に手を入れた。
　陰毛を掻き分け敏感な突起に指を滑らせていく・・・・
「ァゥゥゥゥゥゥ・・・・アァ・・ァァァ・・・・」
　まるで流れる音が聞こえるかのように沙良の蜜液が溢れてくるのが解った。
　沙良は、後ろに振り向き、剛士の舌を求めて顎を上げた。
　二人の舌が淫らに絡み合う・・・

　剛士のもう一方の手は、これ以上なく硬くなった沙良の乳首を転がしていた。
　徐々に、沙良の火照った身体の体温が剛士に伝わっていく・・・・・

　既に、ショーツの中心部は、大きな染みを作り変色していた。
　剛士は、沙良の足を上げショーツを脱がし始めた。
「沙良・・・・もう、これは、終わっても穿けないな。」
　脱がしたショーツを沙良に見せる剛士・・・
　沙良は、ショーツを取り上げると横にある椅子に放り投げた。
「剛士の馬鹿ぁー・・・ァン・・・もっと強く抱いてぇ・・・」
　沙良は、向きを変えると剛士を押し倒しながら抱きついた。

　剛士は、沙良の真っ白なヒップを押し開き指を亀裂に這わしていく・・
　沙良は、腰を振りながら下腹部を剛士の股間に押し付けていった。

　いつの間にか二人は、シックスナインの形になり、互いに愛撫しあっていた。
　剛士の首周りは、沙良の流した蜜でびしょ濡れだった。
「もぅ・・駄目ぇっ・・・我慢できない。」
　沙良は、そのまま起き上がり剛士に背中を向けたまま怒張した肉棒に跨ると、強く腰を落とした。
「アゥゥゥゥゥゥゥゥゥーッ・・・・」
　沙良の全身には、一気に快感の鳥肌が立った。

　沙良は、何度も激しく上下しながら体重を掛けていった。
　ベッドが沈むほど強く腰を落としている。
「沙良・・・激しすぎるぞ・・」
「イヤァァァー・・・言わないでぇぇぇー・・・」
　沙良は大きく仰け反ると、向きを変えて剛士に抱きついた。
　剛士は、起き上がって座位になると、沙良のヒップを掴み軽々と上下し始める。
「ハゥッ・・・アァ・・アァ・・ァァァァァァー・・・・」
　剛士は、そのまま沙良を仰向けに倒し両足を大きく広げさせた。
　そして、真上から肉棒を打ち込んでいく・・・
「ウグググゥゥ・・・ウゥッ、ウゥッ、ウゥッ、ウゥゥゥゥゥーッ・・・」
　まるで本物の杭を打ち込まれているのではないかと思うほど剛士の打ち付けは強かった。
　沙良の大陰唇が、無造作に蜜壷にめり込んでいく・・・・
「アゥゥゥ、、、壊れちゃぅぅー・・・いや・・あぁ・・壊してぇぇぇぇー・・」
「沙良、いったい、どっちなんだ・・・・・」
　剛士は、そう言うと沙良を四つん這いにさせた。
　沙良が待ちきれずに腰を振っている。
「剛士ぃーっ・・・早くぅぅー・・・」
　沙良は、甘えた声でそう言うと、高く腰を突き上げて剛士を急かした。
　菊門が、ピクピクと小さく痙攣している。
　剛士は、沙良の腰を掴むといきり立った肉棒を打ち込んだ。
「クゥゥゥゥゥァァァァァァァー・・・・・」
　両手を前に投げ出し、剛士の挿入に合わせて腰を打ち付けていく。
　肌と肌がぶつかる音が、部屋に響き渡った・・・
　驚く事に肉棒を引き出すごとに沙良の蜜が大量にシーツに零れていった。
（す、凄ぇな・・沙良・・・・）
　肉棒の先が、沙良の蜜壷の壁に当たるたびに蜜が湧き出て強烈に収縮してくる。
（クッ・・・・絡み付いてくるぜ・・・・・・）
　剛士は、沙良のこれ以上無い心地よい締め付けに鼓動が早くなってきた。
　額から落ちる汗が、沙良の臀部に落ち背中を伝って首にまで流れていく。
　その感触に、沙良も一段と声を荒げていった。
「あぁぁぁー・・・いぃぃぃ・・・凄くいぃぃぃぃーっ・・」
（イカン・・・・イキそうだぜ・・・）
　剛士は、親指を沙良の菊門に押し付けながら刺激した。
「イヤァァー・・イクッ・・イクゥゥ・・・駄目ぇぇぇぇぇー・・・」
「俺も限界だぜ、沙良・・・」
「・・・つ、剛士・・・い、一緒に・・・・イ、・・・・アァァ・・・」
　剛士は、ピッチを上げた。
　沙良の呼吸が激しくなり全身がピンク色に染まってきた。
「ぅ！・・・・つ、剛士・・・イ・・イ・・・・・ァァァァァ・・・・・も、もう・・・だ、・・駄目・・・・駄目・・・・・・駄目よ・・・・ぃ・・・ウグッ・・・・アウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーッ！」
　女獣の快叫とでも言うべき声を上げて沙良は昇天した。
　剛士の熱い分身が、沙良の内部に充満していく。
　全てを出し切った剛士の手が沙良の腰から離れた。

　沙良は、グッタリと前のめりに倒れて朦朧としていた。
　気泡を作りながら沙良の蜜壷から分身が流れ始める。

　剛士は、沙良を優しく包むように背中から覆い被さっていった。

　何分か過ぎた頃、沙良が小声で囁いた。
「・・ツ・ヨ・シ・・・・・」
「ん？・・・」
　二人は、横になって向き合った。
　沙良が顎を突き出して舌を伸ばしてくる。
　剛士は、沙良の舌を迎えゆっくりと絡ませていった。

「もう一回・・・・・・ヤ・リ・タ・イ・・」
「・・・明日、仕事の続きがあるだろ。」
「大丈夫よ、冬木さんに手伝ってもらうから。」
「幸三に？」
「うん。裕香さんもプライベートで会ってるくらいだし三谷の目の前で、演技をしてもらおうかなと思って。」
「ほぉー・・・なるほどな。」
　剛士は、ダンヒルを咥えた。沙良がライターで火をつけ剛士に差し出した。
「・・・ま、それもいいが、一つ、ヒントをやろう。」
「え？・・・・ヒント・・」
「ああ。三谷には、絵美と言う彼女が居るんだろう。さっきの沙良の話ではかなり、ゾッコンのような口ぶりだったみたいじゃないか。つまりだ・・本心は、どうかは解らんが、その女を使うんだ。利用しない手は無いぞ。」
「・・・・？」
「つまりだ、俺の勘なんだが、三谷は、その絵美と言う女性に頭が上がらないんじゃないのかな。と言うより、かなり惚れている。裕香は、仕事柄、高価なものを結構持っているし、付き合いたいとか言っておきながら、実際は、裕香を自分の金ヅルにしようとしている気がしてならないんだ。つまり、絵美という女の為にな。」
「・・・・・そう言えば、裕香さん、三谷が店に来ると色々なものが、よく無くなるって言ってたわ・・・・」
「んむ。馬鹿な男がよく考える手だ。恐らく盗んだ物を金に替えてるくらいの事は、三谷はやってるだろうな。」
「・・・・・ぇ、そうなの？」
「普通は、そこまで考えて推理していくのが普通だ。でなけりゃ、頻繁にソープなど通えないだろう。」
「ありえないことまで推理するの？」
「当然だ。資料だけでは、人間性まで理解できない。」
　剛士は、そう言いながら、まだ分身が残っている沙良の蜜壷に指を挿入した。
「アン・・・剛士・・・・・」

　指を抜いた剛士は、それを沙良の顎から首筋にゆっくりと擦りつけていった。
　虚ろな目で口を半開きにし剛士の肉棒を握り始める沙良・・・・
「・・・い、いまは・・・剛士に集中したい・・・・」
「・・・俺もだ・・・・沙良・・・」
　二人は、熱いディープを繰り返しながら第２ラウンドに突入していった。

（１５）

　沙良は、剛士の背中を抱くようにして眠っていた。
　剛士は、背中に当たる沙良の吐息で自然に目が覚めた。
　壁に掛かる時計を見る剛士・・・・・
「おい、沙良、起きろっ！」
「・・・んー・・もう朝なの？」
「ああ、８時過ぎてるぞ。」
　そう言って、沙良の身体の方に向きを変えた。
「えぇ？　もう、そんな時間なの・・・ご飯作らなきゃ。」
「俺は、適当に食べておくさ。お前も途中、何処かで軽く食べていけよ。」
「うん・・・そうしようかな。」
　沙良は、剛士の頭を抱え込み、剛士の口に舌を滑らせた。
「昨日の剛士、凄くよかったわ。」
「俺もだ。」
「本当？」
「・・・・ふっ・・・お前、かなり隠語を連発してたぞ。」
　笑いながら言う剛士に、沙良は膨れっ面になる。
「いいじゃない、そのほうが燃えるでしょ。」
「まあな・・・でも、途中でトイレに行くのはやめろよ。」
「剛士が、お尻に指入れるからじゃないのよー。」
「入れたっけ？」
「・・・・・も、もういいっ。支度するっ。」
　沙良は、真っ裸のまま剛士の部屋を出て行った。

（・・ふっ・・・・・沙良、・・・お前、最高にイカすぜ。）

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　沙良は、幸三の店に足を運んでいた。
「へぇー・・なるほど。・・つまり、俺が裕香ちゃんとか。」
　幸三は、沙良の説明で内容を把握した。
「剛士が言うには、三谷の彼女を使えって言うんだけど具体的な事までは教えてくれないの。どういう事かな？」
「兄貴は、三谷が、かなり絵美って女に惚れているって予想したんだろ？」
「ええ・・」
「逆に、俺じゃなくて裕香ちゃんと三谷との行為を絵美って女に見せればいいんじゃないのかな？」
「・・・・そっか・・・・冬木さん、頭いいぃーっ！」
「フッ、フッ・・・ダテに兄貴のアシスタントをやってないよ。」
「でも、店に入るところ見せたって彼女は、遊びだと思わないかしら。」
「だから、外でさ。」
「えぇっ？・・・裕香さんが納得するかな？」
「ギリギリで、絵美って女に出てってもらうのさ。」
「なるほどね。でも、三谷の彼女がわからないもの。」
「えぇー・・・調べてないの、沙良ちゃん？」
「だって・・・・」
　沙良は、昨日の三谷の電話で話す内容を思い出していた。
（そう言えば・・デパートの売り子・・・・とか・・ん？）

「冬木さん、多分わかるわ。デパートに勤めてると思うんだけどライバルの豊栄に負けるなって、三谷は言ってたから・・・・。」
「駅前の豊栄か・・そのライバル店といえば中島屋・・か。」
「冬木さん、一緒に行ってくれる？」
「もちろんさ。でも、先に裕香ちゃんに承諾を得ないと。」
「そうね。先に裕香さんのところに行きましょう。ペンダントを彼女に渡さなくちゃいけないし。」
「了解！」
　沙良と幸三は、裕香が、事務をやっている会社に出掛けた。

　裕香の勤める会社は、住宅街に抜ける通りの国道沿いにあった。
「ここね。」
「ああ。」
　奥は、機械工場になっており手前に事務棟が２つ並んでいた。
　沙良と幸三は、その事務棟に入っていく。

　カウンター越に２人の女性がタイプを打っていた。
　その一人は、裕香である。
　裕香は、沙良と幸三に気づいた。
「あら、清水さん・・・冬木さんも・・」
「こんにちは、突然来ちゃってごめんね。」
「いいんです。どうせ暇だし。」
　裕香は、二人を窓際のソファに誘った。

「裕香ちゃん、暇っていうけど、いいのかい。ほったらかして。」
「私の叔父の会社なんです。だから、仕事といってもバイトのようなもので。」
「へぇー・・」
「それに、あっちの店もあるから、お昼にはいつも上がるんです。」
「羨ましい仕事ね・・・・・あ、そう言えば。」
　沙良は、さっそく昨日、三谷から取り返したペンダントを裕香に渡した。
「ぁ・・あぁっ！・・・・さ、沙良さん、・・あ、有難うございます。」
　裕香はペンダントを握り締めて目に涙を浮かべた。
「・・・・・よほど、大切なものだったのね。」
「彼が、・・・・一生懸命働いて、・・・ご飯も食べないでお金を・・溜めて・・私に、プレゼントしてくれたんです。」
「そんな優しい彼が居るのに、なぜ風俗店に？」
「そ、それは・・・」
　裕香は、下に俯いて黙った。
「ま、そんな事はいいの。今日は、協力をしてもらいたくて来たの。」
　沙良は、三谷に彼女が居る事を説明した後、三谷と店以外でプライベートのデートをして欲しい事を裕香に依頼した。

「え？・・そ、そんな・・・・・で、でも・・・」
「大丈夫、私と冬木さん・・・そして三谷の彼女が寸での所で飛び込むわ。」
「・・・実は、今日、三谷さんから電話が掛かってきたんです。」
「え？」
「凄く冷たい雰囲気で・・・・・・」
「何て言ってたの・・」
「今日、店に出るんだろうって・・・。多分、ペンダントに気づいたんじゃ。」
「そうかもね。昨日、そのペンダントを自分の彼女にプレゼントしようとしてたんだから。それが、無くなってるんだから、疑ったのかもね。」
「えぇー・・これを・・・自分の彼女に・・？」
「そうよ。とんでもない男なのよ。・・それで、裕香さんを疑ってきたの？」
「ええ、三谷さんが、お前、昨日俺のアパートにこなかったか？　って。私、何処に住んでるのかも知らないし、夜まで仕事してたって答えたの。」
「フフッ・・・かなり怒ってたようね。多分、今日、お店に来るんじゃない。」
「一番で来るって。」

　沙良は、今日が、チャンスと踏んだ。
　三谷は、プレゼントすると約束をしておきながら渡せなかった。
　おそらく彼女と喧嘩をしているはずだ。罵倒すら受けているかもしれない。

　時間を空けると心理的にも追い込みが掛けにくくなる。
　こういう不安定の状態の時に片付けた方が、成功率が高くなると考えたのだ。

「裕香さん、お願いがあるの。私達が、偽のアパートを用意するから三谷が店に来たら、適当にごまかして、そこへ誘ってくれるかしら？」
「・・・・わかりました。あの人が、２度と近づかないのなら何でもやります。」
「大丈夫、任せて。・・じゃ、また後で連絡するわ。」
「はい。お店には、１３時に入る予定です。」
「解ったわ。」

　沙良と幸三は、裕香の会社を出ると、三谷の彼女が勤める中島屋に出かけた。
　中島屋は、駅ビルを挟んで真向かいにある全国チェーンのデパートだ。
　二人は、有料駐車場に車を駐車し、デパートの中に入っていった。
「沙良ちゃん、こんなデカイ、デパートの中からどうやって絵美って女を探すの？」
「馬鹿ね、聞けばいいじゃない。」
「・・・・・・・だ・・・・だよね。」
　沙良は、入口の案内カウンターに行って絵美と言う女性の売り場を聞いてみた。
「失礼ですが、お宅様は？」
「興信所の者です。」
　沙良がそう言うと、案内カウンターの女性が社員名簿をパソコンで調べ始めた。

「お待たせしました。二人居ますが、一人は４階の靴売り場でもう一人は、７階西館の婦人服売り場で勤務しております。」
「有難う。」

　沙良と幸三は、早速４階の靴売り場に向かった。
　靴売り場には２名の女性店員が、並び替えや客の応対をしている。
　しかし、二人とも中年女性で、三谷の彼女とは思えない。

「冬木さん、ここは違うわね。７階に行きましょう。」
「ああ・・」

　沙良は、先頭を切って７階に向かった。
　婦人服売り場は、西館にあるため連絡通路を渡ってそこへ向かった。

　婦人服売り場は、何処のデパートでもそうだが賑わいを見せている。
　客の応対に追われるため店員の数も多い。
　沙良は、そのうちの一人に声を掛けた。
「すみません。ちょっとお尋ねしますが・・」
「はい。何でございましょう。」
「絵美さんと言う女性は、どなたでしょうか？」
「絵美？・・・あ、宮田さんですね。」
　女性は、振り向いて絵美を探した。
「あちらでハンガーを掛けているのが宮田恵美さんです。」
「ありがとう。」
　沙良は、絵美のところに足を運んだ。
「あの、宮田・・恵美さんですか？」
「？・・・は、はい・・・そうですが。」
「私、清水といいいます。　三谷一哉さんの事で少々、貴女に、お話をしたいことがありまして。」
「ぇ・・・一哉の事で・・」
　沙良は、大事な用事だと彼女を説得した。
「・・・わかりました。」
　絵美は、売り場を離れる許可を貰いに上司の元へ向かった。

　そして、数分後、絵美は、戻ってきた。
「３０分、時間を貰いました。奥に社員休憩室があるので、そこでいいですか？」
「ええ、かまいません。」
　３人は、社員休憩室に入っていった。
　ソファにすわり絵美が、話の内容を聞いてきた。
「それで・・一哉の事って、何でしょうか？」
　沙良は、絵美を見つめると三谷と裕香との関係を詳細に説明し始めた。