（１）

　男は、高級マンションの一室でＩＷ‥ハーパーを片手に寛いでいた。
　電話帳を無造作に捲りながら受話器のプッシュホンを押す。

　男の名は、高輪仙次郎　３８歳　大学で心理学の助教授を務める傍らキックボクシングのミドル級チャンピオンでもあった。

　しかし、１年半前、ある事件で助教授の職を失っていた。
　当時、日本中を賑わし、違う意味で有名になった男でもある。
　その事件とは、暴力団１２人を相手にストリートファイトを演じ３人を死亡させ、同じく３名を再起不能にし６名に重症を負わせた事件だった。

　発端は、見ず知らずの男性を救うためだった。

　何らかの理由で暴力団関係者に追われていた男性が路上で捕まり脅しをかけていた現場でのことだった。
　周りの人間は、見ぬ振りをして敬遠している‥‥‥

　しかし、偶然その場を通りかかった仙次郎が、それを見かね止めに入ったのを切っ掛けにこの事件に及んでしまったのだ。

　正義の行為とはいえ、仙次郎は過剰防衛を問われ法の裁きを受ける羽目になった。

　当然ながら、仙次郎は、大学を追われた。
　殺人まで犯してしまった以上、いた仕方が無い事ではある。
　しかし、凄腕弁護士と助けた男の力により異例判決ともいえる２０ヶ月の服役で済み一週間前に出所してきたばかりだった。

　仙次郎は、ハーパーを片手に受話器を耳に当てた。

『はい、国立中央研究所です。』
「すいません。えぇーと、生物学の‥‥‥大門先生は居ますか？」
『はい‥‥‥失礼ですが、どちらさまでしょうか？』
「高輪といいます。」
『お待ちくださいませ。』

　しばらくして大門という女性が電話口に出た。

『お電話代わりました。大門でございます。』
「よお、久しぶり、仙ちゃんでーす。」
『！‥‥‥えぇぇぇーっ！　い、いつ出てきたの？』
「一週間前にな。‥‥‥しかし、迎えに来てくれてもいいだろう、博士さんよ。」
『全然、知らなかったのよ。』
「俺が出る日くらい覚えてて欲しいもんだぜ。」
『そ‥‥そうだけど‥‥‥ここのところ、ずっと忙しかったし‥‥‥‥』
「忙しいねぇ‥‥‥」
『そんな言い方しなくても‥‥‥それに研究をほうってまで出迎えに行けないわ。』
「冷てぇな。それが、元、旦那に対する言い方かよ。」

　その博士とは、仙次郎と５年前に別れた妻、亜希子だった。
　国の運営する研究施設で、各分野に別れ専門的な研究をする機関だ。
　亜希子は、生物学グループに属し主に分子細胞生物学を専門としているが主任研究員という立場にあり生物学全般を担当していた。

『冷たいって‥‥‥‥‥‥今でも貴方を愛してるわよ。仙ちゃん。』
「‥‥‥‥意味が、全く解んねぇぜ。なら、何で別れた。」
『自分で考えてよ。』
「チッ‥‥‥‥考えるのも面倒臭いぜ。」
『相変わらずね。』
「‥‥‥ま、いいさ。‥‥‥‥‥それより来ないか？」
『どこに？』
「マンションを買ったんだ。」
『まあ、お金持ちね。』
「一銭もファイトマネー使わなかったからな。それに榊原にも世話になった。」
『そう。‥‥‥‥‥んー、今、学会の研究講演を控えてるのよ。終わったらね。』

　亜希子は、この分野では優秀な人物で、かつ人気博士と言う事もあり、講演依頼は多く仙次郎の服役中、面会は一度も行けないほどだったのだ。

「なんだ、そうか‥‥‥なら、しょうがないな‥‥‥」
『‥‥‥‥講演が終わったら、私から出向くわ。どこのマンション？』
「緑ヶ丘のクラウンだが‥‥‥そんな事より、アソコが破裂しそうで待てねーぞ。」
『だから講演を放っておけないのよ。』
「ま、そうだろうが‥‥‥」
『‥‥‥私も、今、仙ちゃんの声聞いて、アソコは、濡れ濡れなんだけどさ。』
「ククッ、替えの下着でも送ってやろうか？」
『そうね。それより、下着が汚れないようにストッパーが欲しいけど気力で止めるわ。』「ふははははははっ‥‥‥‥‥‥‥‥‥解った。‥‥‥じゃ、また連絡する。」
『仙ちゃん、溜まってるからって浮気しないでよね。』
「いや‥‥‥自分の理性に任せる。」
『仙ちゃんに女性に対する理性があるわけ無いでしょ。それこそ気力で止めなさい。』
「へい、へい‥‥‥‥‥‥」
『とにかく、私に会うまでは、溜まってるのを出さないこと。いいわね。』
「ドアホっ！　我慢できるかいっ！」
『我慢するのっ！　じゃね。』
「ぇ‥‥‥おい、おぉーいっ、亜希子ぉーっ‥‥‥‥‥」

　亜希子は、一方的に電話を切ってしまった。

「な‥‥なんちゅー勝手な女だ‥‥‥」

　仙次郎は、ブツブツ独り言を呟きながらハーパーを飲み干すと不貞腐れて浴室に消えていった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「先生、凄い会話でしたね。」
　亜希子の研究室に勤める村上恵が亜希子に声を掛けた。
「あら、聞いてたの？」
「聞こえないわけないじゃないですか先生。目の前で話してて。」
「そりゃ、そうね。」
「で、相手の方は、先生の別れたご主人なんですか？」
「ええ、そうよ。‥‥‥何故？」
「‥‥‥‥‥い、いえ‥‥‥つまり、その‥‥‥浮気しちゃ駄目とか言ってましたけど‥‥‥先生は、曽田さんと‥‥‥そのぅ‥‥‥‥」
「そうね‥‥‥彼とは、今日から控えるわ。」
「控えるって‥‥‥‥？」
「お馬鹿ね。離婚したといっても私の一番愛してる人が出てきたのよ。」
「‥‥‥は？」
「つまり‥‥‥‥曽田さんと表沙って会うわけにはいかないじゃない。それに、私のここは、彼の物なの。フフフッ、解るでしょ？恵ちゃん。」
　真面目な顔をして股間を指さす亜希子‥‥‥
「解りませんよ。」
「オマタよっ！」

（‥‥‥そんなリアルな言い方しなくても‥‥‥‥）

　恵は、亜希子の性格に慣れてはいるが、こうはっきりと言う亜希子に少々呆れてもいた。

「でも先生、よく解らないんですが‥‥そんな好きな人と何故離婚したんですか？」
　恵は、亜希子に遠慮の無い質問をしていく。
「‥‥‥好きだから‥‥‥‥‥大好きだから別れたのよ。」
「は？‥‥‥‥答えになっていないような気がするんですが‥‥‥」
「‥‥‥‥‥そんな事いいの。‥‥それより早く実験を続けなさい。」
「は、はい‥‥‥すみません。」
　慌てて仕事に戻る恵‥‥‥‥

「集中してね。」

　しかし、そうは言ったものの、亜希子は、自分も仕事に集中できないでいた。
　仙次郎が出所してきた事で、無性に落ち着かなくなっていたのだ。
　だが、待ち焦がれた最愛の男が出てきたとあっては、落ち着けと言うほうが無理でもある。

（あぁぁー‥‥‥‥やっぱり、仙ちゃんの所へ行っちゃおうかな‥‥‥‥）

　そもそも亜希子は、セックスに関して元来、貧欲で、離婚後も別れた仙次郎とは頻繁に身体を求め合っていた。
　しかし、例の事件で仙次郎に欲求を求める事が不可能になっていた。

　当然ながら仙次郎の服役中の約２年間という年月を我慢出来る亜希子ではなかった。

　現在、年代的に最も火照った身体を放散したい歳である。
　一応、離婚はしているという概念もあってか、亜希子は、仙次郎以外の男性とも関係を持っていたのだが、今ほどの仙次郎の電話によりそれも必要ないと考え始めていた。

（仙ちゃん‥‥‥‥）

　考えるほどに亜希子の精神状態は平常を保てなくなっていた。
　亜希子は、知らず知らずのうちに飢えた股間に手を伸ばしていく。

「せ、先生‥‥‥‥何やってるんですか。」
　恵の呆れたような言葉で我に返る亜希子‥‥‥‥
「え‥‥‥ぁ‥‥‥‥‥その‥‥‥トイレ‥‥‥そう、トイレに‥‥‥アハハ‥‥」
　亜希子は、顔を赤く染めながら、そそくさと研究室を出て行った。

　亜希子の後姿を見ながら独り言を言う恵‥‥‥‥
「‥‥‥あんな美人で優秀なのに‥‥‥‥‥あっちに限っては‥‥‥‥‥‥‥」
　恵は、溜息をついて顕微鏡に目を当てていった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　シャワーを浴びた仙次郎は、髪を乾かすとビンテージジーンズに足を通し洒落たペーパーブラックのハーフジャケットを羽織って部屋を出た。

　地下駐車場に降りた仙次郎は、マンション専用駐車場に入っていく。
　このマンションには、特別に５つの個人専用駐車場があり、そのうちの２つを仙次郎は借りていた。

　仙次郎は、センサーボタンを押してアルミ製のガードシャッターを開けた。
　中には、キャデラックとマスタングが並んでいる。

　仙次郎は、マスタングのドアを開け運転席に乗り込んだ。

　このマスタングは限定モデルのＧ-ＳＰＥＣＩＡＬ　
　９９年に登場した現行型マスタングは、マイナーチェンジで意匠が改められた。
　その時にＧＴグレードに採用された大型ボンネットスクープをベーシックモデルのＧグレードに装着したのがＧ-ＳＰＥＣＩＡＬだ。
　１６インチ‥ポリッシュタイプ‥アルミホイールを装着しマスタング‥スタンピードと呼ばれるサイドストライプとブラックのリアバンパーグラフィックを特別装備させている。
　更に、仙次郎は、フォード社に金に糸目をつけずにフルチューンを依頼しボディカラーは、本来、ソニックブルーメタリック、ジンクイエロー、オクスフォードホワイトの３色しかないカラーを仙次郎の好きなワインレッドに全塗装させていた。
　ボンネットエンブレムも特注で作成させセンタートップを飾っている。

　仙次郎は、エンジンを掛けると暫しアイドリング状態を維持させた。

　煙草をふかしながらエンジンが温まるのを待つ。

（‥‥‥‥さてと‥‥‥‥）

　頃合になると、仙次郎は、煙草を消しニュートラルの状態でアクセルをふかした。
　爽快感さへ感じさせるエキゾーストが、脳と全身に響き渡る。

（ククッ‥‥‥なかなかだ‥‥‥‥‥達也‥‥‥恩にきるぜ。）

　仙次郎は、心の中で達也と言う男に礼を言った。
　達也とは、仙次郎が路上で暴行を受けていた際に助けた男だ。

　榊原達也　　榊原財閥の御曹司で、仙次郎が服役中に、マンションを準備しそして、仙次郎に依頼された、２台の車を用意してあったのだ。
　達也は、仙次郎を命の恩人と崇め、どんな事にも協力を惜しまない人間だった。

　既に、３０００キロの慣らし運転を終了しており、仙次郎は、事件時の担当弁護士、福島美優に出所報告を兼ねて最高速を試そうと車に乗り込んだのだった。

　ＭＤをデッキに差し込む仙次郎‥‥‥‥‥‥
　大好きなジャズミュージックがスピーカーから流れ始めた。

　サラ‥ヴォーンのＬｕｓｈ　Ｌｉｆｅだ。

（豊富な生命か‥‥‥‥‥クッ、クッ、クッ‥‥‥‥）

　ゆっくりと地下駐車場を出たマスタングは、マンションの直ぐ上を通る湾岸道路に乗った。

　仙次郎は、クロム‥ハーツのサングラスをはめると、口笛を吹きながらアクセルを強く吹かしていく。
　ワインレッドのマスタングは、フルスロットルで爆音を響かせながら火の玉のように湾岸道路の風を切っていった‥‥‥‥‥

（２）

「フゥゥー‥‥‥‥気分爽快っ！」

　仙次郎は、マスタングの性能を十分に納得しながら満足気に息を吐いた。
　２４０キロまでメーターをのばし、まずまずの仕上がりに気分も最高だった。

　料金を払い湾岸道を降りる仙次郎‥‥‥‥
　一般道に降りた仙次郎は、福島美優の法律事務所に車を走らせた。
　美優の事務所は、各企業が建ち並ぶ商業地にあった。

「ここだな‥‥‥」

　１２階の貸しビルの一角に福島美優の事務所はある。
　仙次郎は、立体の有料駐車場に車を入れると福島美優のいる１０階の事務所に向かった。

　透きガラスの入口ドアを開け事務所に入っていく仙次郎‥‥‥

「すみません。」
　司法修習生であろう、若い女性が仙次郎に返事をした。
「はい。ご依頼でしょうか？」
「いえ、福島先生に会いに来たんですが。」
「先生に？‥‥‥‥失礼ですが。」
「高輪仙次郎と言います。」
「お待ちくださいませ。」

　女性は、仙次郎を待たせると福島がいる執務室に入っていった。
　暫くして、執務室から出てきた女性が仙次郎に中に入るよう案内した。

「どうぞ、お入りください。」
「どうも。」
　仙次郎は、横目で、その女性を見ながら執務室に入っていく。
　高級そうな大型デスクに福島美優は座っていた。

　福島美優は艶のある真っ黒な髪を後でアップし、黒ブチの眼鏡をかけ煙草を唇に挟んでパソコンを睨んでいた。
　元検事であった美優は、雰囲気も検事時代の鋭さが染み付いており美貌な容姿とは裏腹に鋭さを醸し出している。

「よおっ！」
　福島美優は、仙次郎に視線を向けずタイプを打ったまま返答した。
「やっと、出てきたようね、ダンディーさん。」
「ああ‥‥‥‥まあな。」
「今日、暇なんでしょ。‥‥‥‥‥待ってて、直ぐに終わるから。」
「相変わらず忙しそうじゃないか。‥‥‥‥敏腕弁護士は大変だな。」
　そう言いながら部屋を見渡す仙次郎‥‥‥‥

　仙次郎は、書棚に乗っているスコッチの箱を見つけるとそれを手にとってソファに腰掛けた。

「あ、仙次郎君、それ、私の頂き物よ。」
「堅いこと言うなよ。」
　仙次郎は、箱からスコッチを取り出し蓋を開けた。
「もぉー、相変わらずね。‥‥‥‥‥これしかないわよ。」
　美優は、デスクの上のカップに入った飲み掛けのコーヒーを灰皿に零すと、それを仙次郎に放り投げた。
「サンキュー！」
　仙次郎は、スコッチをコーヒーカップに入れて口に運んだ。
「カァァー‥‥効くぅー‥‥‥」
　仙次郎の姿を上目遣いに見る美優‥‥‥‥

（ちょっと、痩せたのかしら？‥‥‥‥‥）

　チラチラと仙次郎を見る美優‥‥‥‥
　その視線は、欲望さを含んでおり徐々に目色が変化していった。

（‥‥‥‥‥‥‥何か‥‥‥一段と、いい男になったわねぇ‥‥‥）

　リズムよく打っていたタイピングが微妙に狂い始める美優‥‥‥
　美優の子宮が、仙次郎の醸し出す不思議なセックスアピールに蠢き始めた。

　端正な顔付きにクールな瞳、広い肩幅、そして何よりも全く不自然さを感じさせない仙次郎の独特な仕草と存在感に美優は、崩れたかけた集中力を立て直す事が出来ないでいた。

（‥‥‥‥‥‥‥‥‥）

　美優は、タイプを止めると立ち上がってドアの鍵を掛けた。

「‥‥‥‥‥？」

　仙次郎は、怪訝そうな目で美優を見る。
　逆に美優は、妖艶な瞳で仙次郎を見つめた。

「どうした‥‥‥‥美優‥‥‥」
「もぉう、馬鹿っ！」
「ば、馬鹿って？」
「仕事に集中できないのよっ。」
「‥‥‥何で？」

　美優は、恥しげもなくスカートを捲り上げるとソファに座る仙次郎の腰に跨いだ。

「‥‥‥な‥‥‥‥何だ‥‥‥気でも狂ったか？」
　眼鏡を外し、アップしている髪を解く美優‥‥‥‥
「何だじゃないの‥‥‥仙次郎君を見てたらやりたくなったのよっ！」
　そう言うと、仙次郎の頭部を左右から押さえて強引に唇を合わせていった。
「ンムムムゥ‥‥‥‥」
　美優を突き離す仙次郎‥‥‥‥
「ま、待て‥‥‥こ、ここじゃ‥‥‥」
「待てないわよっ！‥‥‥‥‥‥少しでいいからぶち込んでっ！」
「ぶ、ぶち込んでって‥‥‥‥お、お前って奴は昔から‥‥‥‥」

　仙次郎と美優は、大学時代の同級生だったのだ。
　結婚まで意識した仲ではあったが、それぞれが違う道に進む事もあり、卒業を切っ掛けに、いつの間にか、交際は途絶えていたのだ。

　仙次郎は、大学院を経て出身大の職員として採用された。

　美優が、仙次郎と再会したのは、検事を経て弁護士になった数年後、同じく母校の大学に法学部の派遣講師として出向いた時だった。
　二人は教務室の前の廊下でバッタリと顔を合わせた。

《！‥‥‥‥あ、‥‥‥‥‥せ‥‥‥仙次郎君‥‥‥》
《‥‥‥‥‥美優‥‥‥‥美優か‥‥‥‥‥》
《‥‥‥‥‥‥‥‥‥お久しぶり‥‥‥。》
《ああ‥‥‥‥‥本当に、久しぶりだな。‥‥‥元気か？　何しに来たんだ。》
《大学から講師依頼が来て‥‥‥‥》
《そうなのか。‥‥‥‥噂は聞いてるぞ。かなり活躍してるようじゃないか。》
《‥‥‥‥貴方もね。‥‥‥‥教授選考会に推薦されたんだって？》
《‥‥‥ああ‥‥‥‥‥まあ‥‥‥‥来年だがな‥‥‥》
《その若さでは、異例の大出世ね。》
《‥‥‥‥‥どうかな。》

　美優は、妖艶な瞳で仙次郎を見つめていた。
　色々な思いが美優の脳裏を駆け巡っていく‥‥‥‥‥
　そして美優の瞳が一気に潤っていった。

《ねぇ、仙次郎君‥‥‥‥久しぶりに会った事だし、抱いてくれない。》
《相変わらず大胆な性格だな。‥‥‥結婚したって聞いたぞ。旦那はいいのか？》
《１年ももたずに別れたわ。つまらない男でさ》
《え‥‥‥そうなのか‥‥‥≫
《‥‥‥‥‥ね、まさか無視しないでしょうね。》
《そうだな‥‥‥‥‥わかった‥‥‥だが、あと一つ講義が残ってるんだ。》
《そう‥‥‥いいわ、待ってる。》

　仙次郎は、美優の舌攻撃を受けながら、二人の再会時の事を思い出していた。
　それ依頼、仙次郎は、美優とも時々会って身体を求め合う仲になっていたのだ。

「仙次郎君っ‥‥‥‥触ってよっ！」
「何もこんなところで‥‥‥‥‥それに集中できないぜ。」
「もぉぅっ、誰のおかげで減刑したと思ってるのよ。」
「そ、それとこれとは‥‥‥」
「あの時、大きな裁判抱えていたのを蹴ってまで仙次郎君を‥‥‥」
「あぁぁぁー、わかった、わかったっ‥‥‥‥何度も言うな。」

　仙次郎は、コーヒーカップを置くと美優のヒップに手を回しストッキングごとショーツの中に手を入れた。
　美優の熱い体温が手に伝わると、仙次郎の理性が一気に吹き飛んでいく。
　刑務所から出てきて、まだ誰とも交わっていない仙次郎は理性のスイッチが音を立てて切れた。

　仙次郎のジーンズのベルトを緩める美優‥‥‥
　ジッパーを下ろすと窮屈そうな肉棒が反動で盛り上がった。

「ァァァ‥‥‥‥‥仙次郎君‥‥‥‥‥もう、こんなに‥‥‥‥‥」

　仙次郎は、美優のショーツを一気に下ろした。
　腰を上げて、それを手伝う美優‥‥‥
　女の香りがほのかに漂ってくる。

　仙次郎の指が亀裂に沿って蜜を掬っていく‥‥‥
　既に、美優の蜜壷は洪水状態だ。

　仙次郎の肉棒を握り上下に擦っていく美優‥‥‥‥‥
　腰を上げて、怒張した肉棒を挿入しようとした。

「ぁぁ‥‥‥仙次郎君‥‥‥」
　
　その時‥‥‥‥
　ドアがノックされた。

「！‥‥‥‥‥」
「先生、お電話です。」
「ぇ‥‥‥ぁ‥‥‥‥はい‥‥‥‥」
　美優は、仙次郎を悩ましい表情で見た‥‥‥‥‥‥
「‥‥‥‥‥ゴメン、やっぱり夜に‥‥‥‥」
「‥‥‥‥だな‥‥」

　仙次郎の腰から降りた美優は、悩ましい視線を送りながら渋々、ショーツとストッキングを穿き直し受話器を握った。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　仕事を終えた美優が、ビルの前で待つ剛士のマスタングに乗り込んだ。

「仙次郎君、お待たせ。」
「遅ぇーなっ。」
「だって、下着を替えていたんだもの。」
「どうせ脱がすんだからいいじゃねぇか。」
　呆れた顔で美優を見る仙次郎‥‥‥‥
「普通、男に抱かれる前は穿きかえるものよ。」
「‥‥‥‥‥ま、いい‥‥‥か。‥‥‥で、何が食べたい？」
「そうね‥‥‥直ぐ抱いてもらえるようにホテル内のお店に行こうよ。」
「ＯＫ！‥‥‥じゃ、駅前のクィーンズホテルに行こう。」
「ええ。」
　仙次郎は、ステアリングを思いっきり切ると車をスタートさせた。
　タイヤがスピンしながら路面を激しく駆っていく。
「キャァァァーッ！」
　空いている幹線を選んでマスタングを飛ばす仙次郎‥‥‥
「イヤァァァァァー‥‥‥‥キャァァァッァァァー‥‥‥‥」
「うるさいぞっ、美優っ！」
「恐いぃぃぃぃぃぃー‥‥‥‥死ぬぅぅぅぅぅ‥‥‥イヤァァァァァァァーッ！」
「うるさいって！　たかが２００キロだ。」
「助けてぇぇぇぇー‥‥‥降ろしてぇぇぇぇーっ‥‥‥‥キャァァァァァー‥‥」
　絶叫する美優‥‥‥
　顔を引き攣らせて全身を硬直させている。
「せっかく替えてきたパンツを汚すなよ。」
「スピード落としてぇぇぇぇーっ！‥‥‥‥イヤアァァァァァァァァァァァー‥‥」
　ホテルに着くまで、美優はこの調子で叫び続けていた。
　エンジンを止めて駐車場に車を入れたときには、美優は放心状態だった。

「着いたぞ。」
「‥‥‥ぇ？‥‥‥‥‥アァァ‥‥‥‥‥し、死ぬかと思ったゎ‥‥‥」
　瞑っていた目をゆっくりと開く美優‥‥‥‥
「ったく。‥‥‥さ、行くぜ。腹減って死にそうだ。」

　車から降りた美優はバッグで仙次郎の背中を叩いた。
「痛ででっ‥‥‥何するんだ。」
「仙次郎君、覚えてらっしゃい。‥‥‥ベッドの上で仕返ししてやるから。」
「クククッ‥‥‥‥‥返り討ちにしちゃる。」
　仙次郎は、そう言って美優とともにホテルの中に入っていった。

（３）

　仙次郎と美優は、飲食店が集中する最上階のフロアに着くと海鮮料理店に入った。
　店員に案内され畳敷きの和室テーブルに案内される仙次郎と美優‥‥‥‥

「仙次郎君、なに飲む？」
「そうだな‥‥‥‥冷酒でも貰うかな‥‥‥」
「じゃ、私もそうする。料理は仙次郎君に任せるわ。」
「ＯＫ！」

　仙次郎は、ヒラメの刺身と、海栗ソースが掛かった鮑の和風ソテーを注文した。

「あと胡麻豆腐‥‥‥‥そうだな味噌田楽にしてもらおう。」
「かしこまりました。お飲み物は冷酒ですね？」
「吟醸酒を貰おう。ギンギンに冷えたやつね。」
「かしこまりました。おまちくださいませ。」
　店員は、二人に頭を下げてテーブルを離れていった。

　美優が、おしぼりで手を拭くと仙次郎に視線を合わせた。
「そういえば、仙次郎君、亜希子さんには会ったの？」
「いや、まだだ。」
「えぇぇー‥‥‥いいの、私と先に会っっちゃって‥‥‥‥‥」
「電話したんだが、断わられた。講演を控えてて忙しいらしい。」
「あら‥‥‥‥亜希子さんも相変わらず忙しいようね。」
「俺と会うまでは、タンクに溜めておけってさ。」
「フフッ‥‥‥いいの？　私を先に抱いちゃって。」
「２年間分溜まってるんだ。今日一日、出し尽くしても出し切れないさ。」
「ウフフッ‥‥‥‥相変わらず仙次郎君って面白いわ。」
　美優の表情が一気に妖艶さを増してきた。
　普段は、誰に対しても、そんな雰囲気を微塵も出さない美優ではあったが仙次郎の前では、それを抑制する事は到底出来なかった。

　二人の座るテーブルに酒と付け出しが運ばれてきた。
　美優は、仙次郎のグラスに冷えた酒を注いでいく‥‥‥‥

「どれ、俺も注いでやろう。」
「ありがとう‥‥‥‥」
「じゃ、乾杯だ。」
「仙次郎君の出所記念に‥‥‥」
「アホォー、でかい声で言うんじゃない！」
「ゴ、ゴメン‥‥‥‥‥‥‥‥乾杯！」
　二人は、グラスを重ね合わせた。
「ん‥‥‥美味い！」
「そうね。」

　テーブルに料理も運ばれてきた。
　仙次郎と美優は、新鮮な刺身に舌鼓を打ちながら楽しい会話を開始した。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「ふぅぅー‥‥‥‥飲みすぎたかな？」
　ホテルの部屋に入った仙次郎は、ベッドに座りながら煙草をふかした。
「駄目よ、寝ちゃ。」
　美優は、そう言って服を脱ぎ始めた。
　脱いだ服をクローゼットに掛ける美優‥‥‥‥
　ストッキングを下ろし、ハーフのキャミソールを脱ぐと下着だけの姿になった。
　上下お揃いのダークグリーンの下着が仙次郎の股間を刺激していく。
「んー‥‥‥いい色だ。」
　美優は、妖しい笑みを見せながら、ブラジャーを外すと仙次郎の前に歩み寄った。

　仙次郎の前に股間を突き出す美優‥‥‥‥‥
　ショーツ越しに美優の陰毛が透けて見える。
　仙次郎は、美優のショーツに手を掛けて、ゆっくりと下ろしていった。
「ァァ‥‥‥仙次郎君‥‥‥‥‥」
　美優は膝まで下ろされたショーツを足で床に落とした。
　しゃがみ込む美優‥‥‥
　仙次郎のジーンズに手を掛けベルトとジッパーを外していく。

　仙次郎は、上着を放るとシャツを脱いで裸になった。
　美優が仙次郎のジーンズの裾を持って後に引っ張っる。

　全裸になった二人は、静かに身体を合わせていった。
　仙次郎の怒張した肉棒が美優の下腹部に当たり美優は淫らな表情になっていく。
　美優は、開いた唇の間から甘い声を漏らしていった‥‥‥‥‥‥

★★★★★

「ンッハァァァッァァァァァァァァァッァー‥‥‥‥‥‥」
　美優を腰の上に乗せ、仙次郎はヒップを激しく揺らしていた。
「ウゥゥゥゥ‥‥‥‥たまんなぁぃぃぃぃぃぃぃー‥‥‥‥」
　仙次郎のいきりたった肉棒は、蜜壷の最奥に到達し壁を強く擦りつけていた。
　美優は、突き上げられるたびに淫声を漏らし、強く仙次郎にしがみ付いていく。
　二人の結合部は、ビッショリと濡れ、シーツには大きな染みが広がっている。
「仙次郎君‥‥‥‥‥‥いきそ‥‥‥‥‥いきたいぃぃぃーっ！」
「美優‥‥‥俺もだ‥‥‥‥」
　仙次郎は、美優を押し倒すと両足を抱えて肉棒を激しく上下にスライドしていった。
　美優の肉唇が、仙次郎の肉棒に押し込められ淫乱に蜜壷の中に減り込んでいく。
「グフゥゥゥー‥‥‥‥もっと‥‥‥もっと、強くぅぅぅぅぅー‥‥」
　美優は、仙次郎の腰に足を巻きつけた。
　深々と蜜壷に埋まる肉棒が強烈に悲鳴を上げていく。
「美優‥‥‥‥‥駄目‥‥‥限界だ‥‥‥‥」
「ウッハァァァー‥‥‥ゥゥ‥‥‥‥キテェェェェェェェーっ！」
　仙次郎の、２年間分の貯蔵タンクの蛇口がひねられた。
　熱く煮えたぎったような分身が、美優の蜜壷の奥深くに勢いよく当たる。
「ぁぁぁぁ‥‥‥熱い‥‥‥‥気持ちいぃぃぃぃぃぃー‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥グッ‥‥美優‥‥‥身体中の血液まで出してる気分だぜ。」
「ぁぁ‥‥‥‥いぃぃ‥‥‥」
　仙次郎と美優の結合部からは、大量に放たれた分身が食み出て来た。
　美優は、朦朧としながら蜜壷を閉めていく。
「‥‥‥‥‥なかなか、締めるじゃないか‥‥‥‥ククッ‥‥」
「‥‥‥馬鹿ぁぁ‥‥‥‥」
　暫し、その状態を保っていた仙次郎は、静かに美優の蜜壷から肉棒を引き抜いた。
　欲求を全て出し切ったにも関わらず仙次郎の肉棒はまだ固さを保っている。

　グッタリと身体を投げる美優は、仙次郎の肉棒を握ったまま離さない。
「‥‥‥‥何やってんだ‥‥‥‥」
「まだ、できそうね‥‥‥‥２年間分は半端じゃなさそうだゎ。‥‥‥フフッ‥‥」
「まあな‥‥‥‥２ラウンド目は、シャワーを浴びてからだ。」
「‥‥‥‥今度は、後からお願いね‥‥‥」
　指をセクシーに噛む美優‥‥‥‥
　美優は、妖しい視線を仙次郎に投げながら後を追った。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「ンアッハァァァァァァァァァァァァァーッ！」
　大絶叫とともに美優が快感の湖の底へ沈んだ。

　美優は、足を広げ、高く腰をあげたまま身動きできない状態だった。
　肉唇が左右に開き、仙次郎の放った分身がゆっくりとシーツに滴り落ちている。
　菊門は、厭らしい動きを見せながら閉じたり緩んだりを繰り返していた。

（ふぅぅぅー‥‥‥‥まだ、満足感がないな‥‥‥‥）

「‥‥‥‥美優‥‥‥‥‥３ラウンドいくぞ。」
　朦朧としながら小声で囁く美優‥‥‥‥‥
「‥‥‥も‥‥‥もう‥‥‥‥駄目‥‥‥‥動けない‥‥‥」
　そう言うと、美優はスローモーションのように前のめりに倒れていった。
「‥‥‥‥‥‥‥ダウンかよ‥‥‥」
　仙次郎は、苦笑いをしながら美優を残し浴室に向かった。

　シャワーを浴びた仙次郎は、服を着替え終わっていた。
　美優は、まだグッタリとベッドに倒れたままだ。
「おい、美優っ、起きろっ！」
「ぅ‥‥うぅぅーん‥‥‥‥‥‥‥動けない‥‥‥‥」
「アホぉーっ！‥‥‥‥明日仕事だろうがっ。」
「‥‥‥いい、私、泊まっていく。」
　仙次郎は、呆れながら美優のヒップを叩いた。
　その衝撃で蜜壷から再度、仙次郎の放った分身が流れてきた。
「アン‥‥‥‥‥‥仙次郎君‥‥‥‥先に帰って‥‥‥‥」
「ったく‥‥‥‥‥じゃ、俺は行くぜ。」
「‥‥‥うん‥‥‥‥また、連絡して。」
「ああ‥‥‥わかった。」
「‥‥‥絶対よ。」
「へい、へい‥‥‥‥じゃぁな‥‥‥‥‥風邪ひくなよ。」
　仙次郎は、美優にシーツをかけて部屋を出て行った。

　ホテルを出た仙次郎は、マンションに向けて車を走らせた。
　ウィンドウを下げ車内に新鮮な風を入れていく。

　心地良い風の感触に、仙次郎の生気は漲っていった‥‥‥‥‥‥

（‥‥‥‥‥‥んー‥‥‥‥‥まだ満足感がねぇな‥‥‥‥‥‥‥）

　苦笑いしながら美優とのプレーを思い出す仙次郎‥‥‥
　仙次郎は、ジャズに耳を傾けながら心地良いストレスに浸っていた。