（４０）

「さ、佳代君、帰るぞ。」
「はい。‥‥‥‥あ、先生、お店付き合ってくださいよ。」
「店？‥‥‥‥」

　仙次郎は、佳代と昼に約束したアダルトショップへ付き合う事を思い出した。

「ああ、アダルトショップか‥‥‥んー‥‥‥そっか、ＯＫ、じゃ行こうか。」

　佳代は、嬉しそうに仙次郎の手を引っ張った。

「おい、コラっ‥‥‥会社では、やっめろって‥‥‥‥」
「はぁーい。」

　仙次郎は、苦笑いしながら佳代と部屋を出ていった。

　二人は、駅裏の路地を歩いていた。

「あ、先生、ここです。」

　佳代が、店を指差して声を上げた。
　一見、昔風のスナックのような様相の店である。

「なんか、チンケな店だな。」
「そうですね。‥‥‥‥‥そんなことより先生、入りましょう。」
「ああ。」

　仙次郎は、佳代に促されて店内に入っていった。

（ほぉー‥‥‥意外と中は広いな。）

　店は、アダルトショップにしてはかなり広く、有に３０畳ほどの広さがある。
　佳代は、仙次郎にくっつき興奮しながら周りを見渡していた。

「おい、佳代君‥‥‥暑苦しいぞ。」
「だってぇ、先生‥‥‥‥何を見たらいいか‥‥‥」
「何、言ってんだい。君が来たいって言ったんだろう。」
「そうですけど‥‥‥‥‥」
「しょうがないな。‥‥‥‥じゃ、君の趣味でＳＭコーナーでも見ようか？」
「‥‥‥え？‥‥‥あ、はい‥‥。」

　佳代は、先に行く仙次郎の後を急いで追った。

「ほぉー‥‥‥こりゃ、凄い品揃いだな。」

　壁に飾られたボンテージウェアが大量に掛けられている。
　棚には、小物として鞭や仮面、ギャグボールなどボディ装着品が、所狭しと並んでいた。
　佳代は、興奮しながら目を輝かせていた。

「何か買うかい？」

　仙次郎の言葉に、佳代は、急に身体をモジモジさせていく。

「ぁ‥‥‥あの‥‥‥先生が、今日、私に使ってくれるなら‥‥‥‥‥」

（しまった‥‥‥‥余計な事を言わなきゃよかった‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、後悔したが、事、既に遅く、佳代の目は妖艶な眼差しを浮かべている。

（‥‥‥‥クソッ、その気だな‥‥‥ま、いいか‥‥‥‥道具でいかせれば‥‥‥‥）

　仙次郎は、覚悟を決めて佳代に囁いた。

「わかった。じゃ、選ぶかい？」
「はい。」

　即答する佳代‥‥‥‥
　仙次郎は、流し目で佳代を見ながらグッズを物色しはじめた。

　佳代は、ソワソワしながら、仙次郎が手にする品を見て顔を赤らめていく。
　徐々に、身体が熱くなっていくのが判るほどだ。

「よし、これだけ買おう。」

　仙次郎が手にしたグッズを見る佳代‥‥‥‥

「先生、これなんですか？」

　佳代は、仙次郎の持つ厚紙箱を手に取った。

「ショーツだ。これを後で穿いてみよう。」
「え？」
「ククッ‥‥‥これは、露出調教用のショーツで、超豪華品なんだ。３点責めが出来る代物さ。アソコにあたる部分にバイブが付けてある。そして、アナルは、浅めのバイブ、そしてクリトリス部分は、平らな小型ローターが付いていて自由に、そして好きな部分を動かせるんだ。」
「‥‥‥‥え？」
「コードレスの電動バイブになっていて、遠隔操作で動かす事が出来るのさ。」
「そ、そうなんですか‥‥‥‥‥‥で、今から？」
「ああ‥‥‥‥君が、最も好きそうなプレーだろ？」
「‥‥‥ァハ‥‥‥ハハハ‥‥‥‥」

　恥しさと興奮で、奇怪な笑い声を出す佳代‥‥‥‥‥

「そして、これがまた凄い。」

　仙次郎は、クリアケースに入っているボールのような物を見せた。

「なんですか、それ。」

　ケースには、暴れんボールと書かれている。

「これは、シリコンボールなんだが、周りに小さな吸盤が、無数に付いてて、これを、アソコの中に入れてスイッチを押すと膣中で回転をし、子宮全体を刺激しながらボールが動き回るんだ。吸盤が膣中の肉襞を吸い付きながら暴れ回るから、暴れんボールというんだろうな。結構、面白いと思うぞ。」
「キャァー‥‥‥‥早く入れたいぃぃぃぃー‥‥」
「ば、馬鹿者っ、声がでかいっつーの。」

　周りを見ながら、佳代を怒る仙次郎‥‥‥‥‥
　他の客が、クスクスと笑い声を上げている。

「ったく‥‥‥格好悪いじゃないか‥‥‥」
「‥‥‥‥すいません‥‥‥‥つい‥‥‥‥」
「ま、いい‥‥‥‥支払いをしてくる。」

　仙次郎は、それをもってレジに歩いていった。

　仙次郎と、佳代は、店を出ると居酒屋に入った。

「さて、佳代君、適当に注文しておくから、これをトイレで穿いてこいよ。」
「はぁーいっ！　ドキドキしちゃいますぅ‥‥‥」
「そ、そんなにでかい声を出すなっていうの。」

　佳代は嬉しそうな顔をして仙次郎の渡したショーツを手に取った。
　バッグにしまい急いでトイレに走っていく佳代‥‥‥‥

（‥‥‥‥‥そんなに慌てなくても‥‥‥‥）

　しかし、仙次郎は、卑猥な笑みを浮かべながら、これから起きる事を想像して興奮が込み上げてきた。

　暫くして、恥ずかしそうに席に戻ってくる佳代‥‥‥‥

「お、どうだい、装着感は‥‥‥」
「‥‥‥ちょ、ちょっと‥‥‥変な感じです。」

　仙次郎は、ポケットから遠隔スイッチを取り出して、一番上のスイッチを押した。

「ンッフゥゥゥゥゥー‥‥‥‥」

　ビクンと身体を震わし声を抑えて呻く佳代‥‥‥‥

「それどこ？」

　佳代は、仙次郎の言葉に妖艶な目つきで答えた。

「‥‥‥あ‥‥‥‥あの‥‥‥ク、クリちゃんが‥‥‥」

（なるほど‥‥‥じゃ、これが膣だな。）

　仙次郎は、２番目のスイッチを押した。

「‥‥‥ァッァ‥‥‥イ‥‥イィィィ‥‥‥」
「これは？」
「‥‥‥‥ァン‥‥‥‥‥‥ォ‥‥‥オマ‥‥‥○‥‥コ‥‥‥」
「そっか‥‥‥と言う事は、一番下がアナルだな‥‥‥よし。」

　仙次郎は、スイッチの箇所を覚えて一旦、遠隔用の器具をテーブルに置いた。

「ＯＫ、とりあえず佳代君、飲もう。」
「は‥‥はい。」

　仙次郎は、佳代のグラスにビールを注ぎながらウィンクを投げた。
　照れながらビールを受ける佳代‥‥‥‥
　その火照った上気っぽい仕草は、仙次郎の目に、なかなか色っぽく映った。

　佳代が、思い出したように、仙次郎に呟いた。

「そういえば、先生、堀内係長なんですけど、ヒステリーというのは、そんな、簡単に現われるものなんですか？　私でも可能性あります？」
「ああ、あるね‥‥‥‥特に君の場合は、セックス中に出る可能性がある。」
「エェェェーッ！‥‥‥‥ど、どういう時に‥‥‥‥」
「ハハ、驚かせてしまったが心配しなくてもいいさ。君の場合は、快感を得る方法を自分で知っている。」
「そ、そうかな‥‥‥」
「ああ。例えば、君の、その性癖だ。相手から責められたり、その恥辱プレーや視姦プレーで快感、つまり満足をする訳だ。」
「‥‥‥‥‥はぁ‥‥‥‥‥」
「昇天し朦朧としている時は気分がいいはず。だが、そうじゃない場合、つまり恍惚状態を得られないと、一気にストレスが蓄積されるんだ。だが、君は、自分でそういう状態に持っていくコントロールが出来る。」
「出来ないと、どうなるんです？」
「んむ、まだ君の場合は、そういうプレーをするのは僕だけだから、はっきりとは言えないんだが、これが彼とするプレーとなるとどうかなと思う。つまり、淡白だと言っていたが、彼がそういうプレーを嫌いかもしれない。すると、君はストレスが溜まってくる。」「‥‥‥‥‥どうすればいいんですか？」
「簡単にいえば、今の彼とのプレーを自ら満足感にまで持っていくか、彼氏に、君が満足するような、そういう趣味を理解してもらうかだな。」
「でも‥‥‥無理だったら？」
「佳代君、これは専門的になってしまうが、結婚し彼を愛する自信があれば、何もセックスのみを愛の形にしなくても他の方法は、いくらでもあるさ。」
「でも、私、セックスは、大好きだし。」
「セックスしか頭にないという人間も、それは、一種の依存症だろうな。」
「え？」
「つまり、異常ってこと‥‥‥」
「異常‥‥‥‥ですか？」
「当然、何らかの治療が必要になってくる。ところが、人間というのは上手く出来ているんだ。やり続ければ、身体機能が、当然低下するし、やらなくても機能は低下してしまう。自分の感性、体調、気分で、ちゃんと調和されてるんだ。それが上手く、サイクル出来ない人間が心身症や心理的な悩みに苦しむんだからな。心配しなくてもいいよ。」
「はぁ‥‥‥」
「さて、食べよう。」

　仙次郎は、淡々とした表情で料理に箸をつけていった。

☆☆☆☆☆

　仙次郎と佳代は、繁華街を歩いていた。

（さてと‥‥‥‥ちょっと試してみるか。）

　仙次郎は、ポケットに入っている遠隔用のスイッチに手を掛けた。
　佳代は、仙次郎のジャケットの裾を持ちながら後を付いて来ている。

　一番上のスイッチを押す仙次郎‥‥‥‥
　佳代は、仙次郎の裾を引っ張るようにして立ち止まった。

「ンアァァァゥゥ‥‥‥」

　スカートの上から股間を押さえ小さな喘ぎ声を上げる佳代‥‥‥‥

「せ‥‥‥先生‥‥‥‥‥」
「フッ‥‥‥どうだい？」
「す、すごく‥‥‥‥感じちゃうぅ‥‥‥」

（クッ、クッ‥‥‥こりゃ、面白いもんだな。）

「よし、佳代君、ホテルに行こう。」
「‥‥‥は‥‥‥早く、連れて‥‥‥‥ァァ‥‥‥」

　仙次郎は、前回、佳代と入ったＳＭホテルに急いだ。

　タクシーに乗り、行き先を告げる仙次郎‥‥‥
　社内でも仙次郎は、スイッチを押して佳代の状態を楽しんだ。

　佳代は、声を出すことが出来ずに口を抑えて我慢をしていた。
　時折、仙次郎を見つめては、何かを訴えるように思いを投げかけてくる。

（‥‥‥こりゃ、佳代君のことだからビショ濡れだろうな‥‥‥‥）

　１０分ほど経過して、タクシーは、目的地に到着した。

　ホテルの部屋に入ると、佳代は、仙次郎に飛びついてきた。

「先生ぇぇぇぇー‥‥‥もう、我慢できないぃぃぃぃー‥‥‥」

　股間を押し付けてキスをせがんでくる佳代‥‥‥
　仙次郎は、佳代の服を脱がせ、ショーツ１枚だけの姿にさせると四肢を壁のフックに固定した。

「アァァー、先生ぇぇ‥‥‥‥入れてぇぇぇーっ！」
「佳代君、今日は、絶頂の渦巻く世界に案内しよう。」

　そう言って、３つのスイッチ全てをオンにした。

「ウッハァァッァァァァァァァァァァァーッ！」

　下半身を激しく捩りながら声を張り上げる佳代‥‥‥‥‥
　仙次郎は、エアコンを入れると冷蔵庫から、ビールを取り出した。

「先生ぇー‥‥虐めないでぇぇー‥‥‥入れて欲しいぃぃー早く、オ○ンコに入れてぇぇー‥‥‥‥ウゥゥゥ‥‥‥‥」

　仙次郎は、ビールの飲みながらバイブやローターを強弱つけながら刺激していく。

　佳代は、既に昇天寸前だった。
　仙次郎は、佳代に近づき、硬く突起した乳首を指で弾いた。

「ンクゥゥゥゥゥゥゥゥー‥‥‥イッチャゥゥゥゥゥゥー‥‥‥」

　佳代は、全身に汗をかき、腰を前後に振り続けている。
　ショーツの股間部からは、蜜が染み出ようとしていた。

（こりゃ、相当、効いてるな‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、佳代の限界を知るために放置プレーをする事にした。

「佳代君、ちょっとこのままでいよう。僕は、シャワーでも浴びてくる。」
「‥‥そ‥‥‥そんな‥‥‥‥、い、いや‥‥‥先生ぇぇぇ‥‥‥‥」

　仙次郎は、正面のブラインドを上げ窓を全開にした。

「さ、前のビルから君を見てもらおう。」
「イヤァ‥‥‥ゥゥ‥‥‥恥しいぃぃぃぃー‥‥‥‥行っちゃやだぁぁぁー！」

　しかし、仙次郎は、佳代にウィンクをして浴室に歩いていった。

☆☆☆☆☆☆

　仙次郎は、シャワーを浴びて部屋に戻った。

（ん？‥‥‥‥‥）

　佳代は、口を半開きにし口元から涎を垂らして朦朧としていた。
　股間の下は、失禁したのであろう、床に水溜りを作っている。

「‥‥‥‥‥ゥゥ‥‥‥‥‥ゥ‥‥‥‥‥‥‥ゥゥゥ‥‥‥」

　スイッチを切る仙次郎。

（こりゃ、凄い効き目だな‥‥‥‥）

　佳代のショーツを取り払う仙次郎‥‥‥‥‥
　蜜壷にはまったバイブを抜くと中から愛液が大量に零れてきた。

（す、凄いな‥‥‥そうか‥‥‥バイブが栓をしていたのか‥‥）

　仙次郎は、佳代の四肢をフックから外してベッドに運んだ。
　佳代は、何度もエクスタシーを数え、固定された身体を緊張させていたためか、かなり、疲れきった様子だった。

　佳代のバッグから暴れんボールを取り出す仙次郎‥‥‥‥‥

　ゴルフボールくらいの大きさでジェルが付属している。
　仙次郎は、たっぷりとジェルをボールに塗り佳代の蜜壷に挿入した。

「‥‥‥‥‥ゥ‥‥‥ァァ‥‥‥‥」

　仙次郎は、試しにスイッチを押してみた。

　蜜壷の中から微かにモーター音が漏れてくる。
　仙次郎は、佳代を見ながら様子を伺っていた。

（‥‥‥‥？？‥‥‥おかしいな‥‥‥反応なしか‥‥‥）

　その時‥‥‥‥

「‥‥ゥ‥‥‥ゥゥ‥‥ァァ‥‥ァ‥‥‥‥ンアァァァァァァァァァァァッ！」

　佳代が股間を抑えて、激しく悶え始めた。
　自ら腰を前後に激しく振り喘ぎ声を振り撒き始める。

「フンアァァァァァァー‥‥‥イィ‥‥イィィ‥‥‥これ、イィィィィィィーッ！」

　佳代は、転げ回りながら快感を露にしている。

「イヤァァァァァァァァァァァー‥‥‥イキソォォォォォォォーッ！」

（マ、マジで、俺がやらなくていいかもな‥‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、腰に巻いたタオルを外し肉棒を佳代の顔の前に持っていった。
　それに気づいた佳代は、飛びつくようにして仙次郎の肉棒に貪りついてくる。

「ングッ‥‥ジュプッ‥‥ンギュ‥‥‥‥ングッ‥‥ンッグッ‥‥‥」

（凄いバキュームだな‥‥‥このまま、フェラでイカせて貰うか‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、佳代の舌を堪能しながら悶える姿を楽しんでいった。

（４１）

−　翌朝　−

　佳代は、腰をふらつかせながら出勤してきた。

「先生‥‥‥おはようございます。」
「ああ、おはよう。‥‥‥‥何だか、えらそうだな。」

　佳代は、疲れきった様な顔をして仙次郎に返答した。

「だって、先生‥‥‥一日であれだけ、イッちゃうなんて初めてですもの‥‥‥‥」
「フハハッ。‥‥‥暴れんボールは、良かったな。しかし、僕の役目がなかったが。」
「でも、先生のを口に入れてるだけでもいっちゃいそうでしたよ。」

　昨夜の事を思い出したのか、妖艶な目つきで感想を言う佳代‥‥‥‥

「しかし、本番やらないで、口だけで終わったのは初めてだよ。」
「す、すみません‥‥‥我を忘れちゃうくらい気持ちよくて‥‥‥‥」
「ハハハッ、君をタクシーに乗せるのが大変だったぞ。」
「あまり、記憶になくて‥‥‥まだ、アソコが、ウズウズしてますし。」
「ま、当分、やらなくていいだろう。」
「‥‥‥‥‥‥‥今日、彼とデートなんです。」
「ハハハハハッ‥‥‥ま、頑張って彼を喜ばしてやりなよ。」
「‥‥‥‥他人事だと思って‥‥‥」

　佳代は、眠たそうな顔をしてデスクに座った。

　そんな佳代をよそ目に、仙次郎は、モニターに集中していた。

　今日、訪れる堀内聖子のヒステリーの起因を決定付ける方法と内観療法を試すデータ抽出及び質問を作成していたのだ。

「先生、１時間後に堀内係長が来るそうです。」
「ああ、今、出来上がった。」

　仙次郎は、プリントアウトしてモニターの電源を切った。

「さてと‥‥‥‥佳代君、コーヒーを頼む。」
「はい。」
「君も飲みたまえ。目が覚めるぞ。」
「はい、そうします。」

　仙次郎は、ソファに座って煙草に火を点けた。

（‥‥‥‥‥‥しかし、気になるな‥‥‥昨日の態度が‥‥‥‥）

　仙次郎は、昨日、堀内に質問したときの事を思い出していた。

　セックスに抵抗はないのかと質問したときに急激に顔を曇らせ、なおかつ、目を濁らせた堀内の表情‥‥‥‥
　そして、怯えた感じに見えたことも確かだ。

（‥‥‥‥‥‥過去に何かあるな‥‥‥‥ま、今から明らかになるが‥‥‥）

　仙次郎は、煙を細く吐きながら天井を見上げた。

（！？‥‥そういえば、女性に対しては、そうでもないって言ってたな‥‥‥‥）

　仙次郎は、徐々に堀内の診療に対するヒントと方法を見出し始めたいた。

「先生、お待たせしました。」

　佳代がコーヒーを持ってきた。

「お、ありがとう。」

　仙次郎の横に座り、一緒にコーヒーを啜る佳代‥‥‥‥

「先生‥‥‥‥」
「ん‥‥‥なんだい？」
「ええ‥‥‥昨日の話ですけど、性不満でヒステリーになるんですか？」
「ああ‥‥‥‥ならないとは限らんがな。つまり、自分がして欲しい事を相手がしてくれず、それがストレスになって徐々に蓄積されていくと発症する時もある。」
「という事は、もし私の彼がしてくれなかったら‥‥‥‥」
「ん？」
「‥‥‥あのぅ‥‥‥‥つまり、私は、先生も知っている通りＭっ毛があるし、そのぅ、露出とか視姦とかされるのが好きだし、彼がやってくれなかったら。」
「‥‥‥んー‥‥‥なるほどな‥‥‥でもな、佳代君、性の好みは方法によっては、変えることが出来るぞ。もちろん、その内容も」
「え？」
「彼を凄く愛していれば、彼のプレーに合わすために、ホルモンバランスと思考回路が矯正されていくんだ。」
「そうなんですか‥‥‥」
「ああ‥‥‥何年、付き合ってるんだい？」
「まだ、１年です。」
「１年じゃ、まだ彼の本性は判らないだろう。‥‥ひょっとしたら、君に嫌われないように、彼は、それを抑えているかもしれないし。」
「先生、その事なんですが、それを調べる事って出来るんですか？」
「直接聞けばいいじゃないか。恋人同士なんだし‥‥‥それに、もういい大人だ。」
「それが出来ないから聞いてるんですよ。」

　佳代は、膨れっ面で仙次郎の膝頭を叩いた。

「ったく。‥‥‥‥‥‥彼は、淡白で、正常位しかやらないって言ったね。」
「ええ‥‥‥‥‥そうです。時間も短いし‥‥‥」
「だったら、彼に気を使ってイク振りをしないことだ。」
「え？」
「正直に態度を表現すればいい。そうすれば彼は、君の不満に気づく。君を愛していれば、努力するだろうし、そうするのが普通だと思うよ。」
「努力しなかったら？」
「まあ、身体に欠陥があるとか、根っから嫌いな人も居るわけだから、一概には言えないが‥‥‥‥‥努力をしないというのは、真愛には欠けるかも。あくまで疑問形だけどね。まだ、話してないんだろう？」
「ええ。」
「言えばいいじゃないか。」
「はい‥‥‥‥じゃ、今日、言ってみます。」
「そうしたまえ。」

　仙次郎は、煙草を消してコーヒーを啜った。
　佳代が、仙次郎の股間に手を当ててくる。

「ブッ‥‥‥コ、コラ‥‥‥‥」
「あぁーあ、‥‥‥彼が、先生みたいな人だったらなぁ‥‥‥」

　そう言って、チャックを下げ仙次郎の肉棒をブリーフから露出させた。

「何をやってるのかね君は‥‥‥」

　そう言いつつも払いのけずに佳代のするがままにしている仙次郎‥‥‥

（やって、もらっちゃおうかな‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、珍しく抵抗せずに佳代の行動を見ていた。
　仙次郎が何も言わないのをいいことに、佳代は、肉棒に口を被せてきた。

「ぉ‥‥‥‥‥何か、いい感じだぞ‥‥‥‥‥」

　仙次郎の肉棒が怒張してきた。
　佳代は、身体を倒して股間に覆い被さり舌を駆使し始める。

「ングッ‥‥‥クチュ‥‥‥ジュッ‥‥‥」

　仙次郎は、後から佳代のスカートを捲りショーツの上から蜜壷を撫で始めた。

「ンムゥゥゥゥゥゥゥゥ‥‥‥ホァァァァー‥‥‥‥」

　喘ぎ声を上げる佳代‥‥‥‥
　その時、ドアをノックする音が部屋に響いた。

「あ、堀内さんが来たようだぞ。」

　慌てて起き上がる佳代‥‥‥

「もぉう‥‥‥いい所だったのに‥‥‥」
「ハハ、続きは後にしよう。」

　仙次郎は、服装を直し佳代に堀内を応対室に入れるよう指示した。

☆☆☆☆☆☆

佳代は、堀内をリクライニングチェアに座らせていた。
　仙次郎は、資料を持って応対室に入っていく。

「こんにちは、堀内さん。」
「おはようございます。今日は、よろしくお願いします。」
「はい。‥‥‥では、昨日お話したとおり、内観療法をしてみます。」
「はい。」
「その前に、その方法を説明しておきます。」

　堀内は、頷いた。

「今から行う内観療法とは、貴女の身近な過去の体験を思い出すことによって、自己像を本来の自然なものへと変える事ができる療法なんです。相手の立場にたって考える態度を体得し、真の自己を発見する事ができるようになります。
　具体的には、身近な人たち、例えば、父親、母親にしてもらった事、貴女が、それをして返した事、迷惑をかけた事、他では、友人にしてもらった事等を成長期ごとにに区切って調べます。貴女は、その度ごとに与えられた１つのテーマについて、懸命に想起してください。これは非常に大事な事ですので。」
「は‥‥‥はい。」
「その間、貴女は、この状況の中で、集中してテーマについて考えていきます。」
「どうして、そんな事を？」
「過去の想起を繰り返すことによって、貴女の過去の記憶が鮮明によみがえり、自己を客観視できるようになるんです。その結果、知らないうちに劣等感、悲壮感、恐怖感等を抱いていた事に気づき、マイペースでやればいいとか、所詮過ぎた事とか思うようになり、原因を究明し改善する事によって自分が家族や周りの人を振り回していた事に気づくんですよ。それが要点なんです。」
「そうなんですか‥‥‥‥‥」
「この療法は、ヒステリー、対人恐怖症、抑うつ神経症、不安神経症、心気神経症、強迫神経症などに対して効果があり、苛立ち‥不眠、元気が出ないなどの症状が治ったり、原因を調べる事によって社会復帰が可能になるなどの効果が出ます。」
「‥‥‥‥‥‥‥はぁ‥‥‥‥‥」
「ま、やってみましょう。」

　仙次郎は、堀内の耳にヘッドフォンを被せマイクを握った。

「聞こえますか？」
「？‥‥‥は、はい。」
「驚きましたか？私の声は、コンピューターで女性の声に変換されて貴女の耳に届きます。」
「そうなんですか‥‥‥‥‥‥‥はい、解りました。」
「それでは、始めましょう。目を閉じてください。」

　堀内は、静かに瞼を閉じていった。

　照明を調整し、ヘッドフォンにα波を流すスイッチを押した。
　脳と身体をリラックスさせ質問や外部刺激に対して敏感にならないようにするためだ。

　仙次郎は、資料を見ながら堀内に質問を開始した。

「堀内さん、小さな頃、‥‥‥そう、まずは小学校時代を思い出してください。」
「はい。」
「貴女は‥‥‥‥‥」

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「中学時代を思い出してください。貴女は、何かスポーツを‥‥‥」
「‥‥‥‥‥私は‥‥‥‥」

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「その時、貴女は、笑っていましたか‥‥‥‥‥」
「はい。‥‥‥とても愉快で‥‥‥‥」

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「高校受験の時、両親は応援してくれましたか？」
「いつも母が‥‥‥‥」
「お父さんは？」
「父が、車で試験会場に‥‥‥‥」

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「高校時代に熱中した事は、ありますか？」
「合唱部で‥‥‥‥‥」
「卒業式のときは‥‥‥‥」
「皆で記念撮影を‥‥‥‥‥‥」

　次々と、質問をし答えさせていく仙次郎‥‥‥‥‥
　既に、２時間が経過している。

「堀内さん、お腹は減っていませんか？」
「ぇぇ‥‥‥大丈夫です。」
「では、もう少し続けましょう。大学時代の話を聞きますよ。」
「はい。」

　仙次郎は、昨日、聞いた話と作成した資料、基本データ、診療マニュアルを駆使して、首尾よく事を進めていった。

「なるほど、男性と付き合い始めたのは、大学からなんですね。」
「はい。学校は違っていたけれど、同じボランティア活動で知り合って。」
「その人を好きだったんですか？」
「はい。凄く愛していました。」
「つまり、貴女の最初の男性は、その方なんですね。」
「‥‥！‥‥‥‥ぁ‥‥‥あ‥‥あの‥‥‥‥」

　今の質問でモニターのグラフが、異常に乱線し始めた。

（ん？‥‥‥‥‥なんだ、これは‥‥‥‥‥乱れすぎている。）

　仙次郎は、堀内の様子を見て、一旦、質問を中止した。
　堀内の目は閉じられているが、瞼の上からも異常に眼球が動いているのが解るほどだった。

「堀内さん、少し、休憩しましょう。」
「‥‥‥は‥‥‥はい。」

　仙次郎は、佳代を呼んで堀内にコーヒーを出すよう頼んだ。

「はい、直ぐお持ちします。」
「堀内さん、暫く、休憩しててください。」
「‥‥‥は、はい。」

　仙次郎は、堀内を残し執務室に入っていった。

　今の質問をしたときのグラフを見ながら仙次郎は思考を繰り返した。

（初めての男性かと聞いて、グラフが急変したな‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、専門書と自作マニュアルを見ながら心理を探っていく。
　暫し、本を睨んでいた仙次郎は、数点の疑問と予測を立てた。

　堀内の男性との経験は、大学時代ではあると思うが、この愛していたという男性が初めてではないと予測した。
　しかし、それまでの質問で、大学まで処女であった事は間違いない。
　恐らく、初体験に何か問題があるのではと仙次郎は予測を立てていた。

（ん！‥‥‥‥‥‥まさか‥‥‥‥‥だとしたら‥‥‥‥）

　仙次郎は、予測が的中したときの事を思って先の手を考えておく事にした。