（５０）

−　翌日　−

　洋平が、凄い勢いで部屋に飛び込んできた。

「仙次郎ぉっ！」
「どうした。何を慌ててるんだ。」
「せ、仙次郎‥‥‥‥‥とんでもない事が判った。」
「とんでもない事？」
「聞いて驚くな。」
「早く言えよ。」
「伊藤涼子の兄がこの会社にいるんだ。」
「兄が？」
「性が違っていたから全く気づかなかったんだが‥‥‥‥‥とんでもない野郎だ。」
「とんでもない？」
「ああ、営業４課の課長補佐で小暮義久というんだ。部下の調べでわかったんだが多額の借金を抱えて、かなり困っているらしい。全てギャンブルと女なんだがな。」
「それで？」
「柏田君の奥さんの姉が、この小暮の女房なんだ。」
「なんだとぉっ‥‥‥‥‥‥‥で？」
「つまり、柏田君の奥さんと小暮の女房は、姉妹なんだが、非常に仲が悪い。」
「仲が悪いとは？」
「姉である小暮の女房は、学生時代から、かなり悪どい事をしてきた女でヤクに手を出す、母親に暴力を振るうなんてのは、日常茶飯事だったらしく父親に勘当を喰らったんだ。ホステスをしながら生計を立てていたんだが、その働いてる店で、小暮と出会って結婚をしたらしい。そんな二人だ。夫婦揃って金遣いが荒く、小暮はギャンブルと女、女房は株と男、とな。」
「それは解ったが、小暮夫婦と柏田君と何の関係があるんだ。」
「姉妹の父親が、大資産家なんだ。‥‥‥‥何百億というな‥‥‥‥」
「！‥‥‥なるほど‥‥‥‥何となく読めてきた。」
「小暮は、考えたんだ。自分の女房は勘当されているし、法律上、完全に離縁されている。母親は既に他界しているし、もし父親が死んだ時には、全ての資産は、柏田君の奥さんの元に転がり込んでくるってわけさ。」
「おい、洋平‥‥‥‥‥つまり‥‥‥ひょっとして‥‥‥」
「ああ。小暮は、妹を使って、柏田君を誘惑し夫婦と父親を殺そうとしている。」
「‥‥‥‥‥‥しかし、そこまで解ってるんなら‥‥‥」
「いや‥‥‥直接、殺すんじゃないんだ。自殺に見せかけるのさ。」
「な、なるほど‥‥‥‥だから妹の伊藤涼子を使って。」
「そのとおり。不倫を苦にして自殺‥‥‥‥‥という設定でな。」
「そうか。なるほど。伊藤は、異動で柏田と会う機会が減ると不都合が生じてくるから思うようにいかなくなるってことか。」
「そういう事だ。常に会っていなければチャンスが作れないからな。」
「でも、伊藤が、何でそんな事に協力したんだ。」
「伊藤自身も旦那と別れたいらしいんだ。」
「それだけか？」
「協力したら何十億という報酬を貰う約束をしたらしい。」
「目が眩んだわけか。‥‥‥しかし、洋平‥‥‥よく調べたな。」
「フッ‥‥‥まあな。」
「しかし、急がねばならんぞ。」
「ああ、さし当たってどうする？」
「柏田君に罪はないだろう。伊藤涼子が、柏田君を誘わなければ、こんな事にはならなかったんだ。」
「んむ。その通りだ。あまりにも柏田君が、気の毒すぎる。」
「よし‥‥‥‥任せておけ。俺に考えがある。」
「‥‥‥どうするつもりだ？」
「小暮夫婦と伊藤涼子が、二度と這い上がれないようにしてやるのさ。」
「できるのか？」
「任せておけ。あ、それから、もう一つ、確実に小暮を誘い出す事が出来る人間を買収してくれ。」
「なんで？」
「奈落に誘い出す。」
「奈落に？‥‥‥‥‥仙次郎‥‥また、とんでもない事を考えているな。」
「まあな。小暮と伊藤を追い出すんだ。派手にやらないと。」
「わかった。早めに探しておく。」
「よし、俺もさっそく準備をする。今日中に作戦を立てるから待ってろ。」

　仙次郎は、不敵な笑いを浮かべて洋平にそう言い放った。

−　就業後　−

　仙次郎は、奈落に顔を出していた。

「ちわぁ‥‥‥」

　清七が、仙次郎に振り向いた。

「あ、仙次郎さん、久しぶりですね。」
「どうも‥‥‥‥ご無沙汰です。」
「‥‥‥おーい、樹里ちゃん、仙次郎さんが来たよ。」

　清七の声に、樹里が慌ててフロア−に飛び込んできた。

「馬鹿ぁぁぁーっ！　仙次郎さんっ、何よっ、全然、顔出さないでっ！」

　いきなり、仙次郎に罵声を飛ばして絡んでくる樹里‥‥‥‥

「いや、ゴメン、ゴメン‥‥‥‥色々忙しくて。」
「気が気でなかったのよっ！　電話しても電源切ってるしぃっ。」

　涙を浮かべて、仙次郎に訴える樹里‥‥‥

　クスクスと笑いながら二人のやり取りを見ている清七が呟いた。

「樹里ちゃん、今日、休みにしようか？」
「うん、清ちゃん、そうして‥‥‥」
「えぇぇぇぇーっ‥‥‥そ、そんな‥‥‥番さん‥‥‥‥‥」
「仙次郎さん、樹里ちゃんを放っておいた罰ですよ。今日は、しっかり、付き合ってやってください。」

　そう言って、含み笑いをする清七‥‥‥‥噴き出すのを我慢しているようだ。

「そんな‥‥‥」
「樹里ちゃんが元気のないせいで、ショーがイマイチでね。半分は、仙次郎さんのせいだから、仕方ありませんよ。」

（‥‥‥‥‥‥グガァァァァァ‥‥‥‥体が持つだろうか‥‥‥）

「じゃ、あっしはこれで帰りますわ‥‥‥‥仙次郎さん、樹里ちゃんをよろしく。」
「あぁー‥‥‥番さん、ま、待って‥‥‥」

　清七を呼び止める仙次郎を制し、樹里は、手を引っ張って奥へ連れて行った。

（しゃ、しゃーねぇ‥‥‥まずは、樹里ちゃんの気を鎮めないと‥‥‥）

　仙次郎は、覚悟を決めて樹里の後を着いて行った。

☆☆☆☆☆

「クッハァァァァァァァァァァァッ‥‥‥ァァァァァァァァー‥‥‥‥‥」

　樹里は、２回目の昇天を遂げていた。
　背中の牡丹が鮮やかに変色し綺麗な紅に染まっている。

（ふぅぅー‥‥‥し、しんどかった‥‥‥‥）

　仙次郎は、樹里の蜜壷から肉棒を引き抜いた。
　２回分の分身が、静かに流れ落ちてくる‥‥‥‥‥‥

「せ‥‥‥仙次郎‥‥さ‥‥‥ん‥‥‥‥‥最高ぉ‥‥ぉ‥‥‥」

　後手に縛った縄を解きながら樹里を優しく仰向けにする仙次郎‥‥‥
　樹里は、手を差し伸べてキスをせがんでくる。

　仙次郎は、樹里に覆い被さって要望に応えた。

「ンゥゥゥゥゥ‥‥‥‥ァァァァ‥‥‥‥‥素敵ぃぃ‥‥‥」
「満足かい、樹里ちゃん‥‥‥‥」

　樹里は、にっこりと笑みを浮かべて仙次郎の首にしがみ付いた。
　仙次郎の耳元に、小声で囁く樹里‥‥‥‥

「そういえば、仙次郎さん、用があって来たんでしょ。」
「ああ‥‥‥まあ。‥‥‥でも、なんで解るんだい。」
「仙次郎さんが、ここにくる時って頼みごとばかりですもの。」
「‥‥‥‥‥‥ごめん‥‥‥‥」
「いいの‥‥‥‥何でも言って。」

　仙次郎は、樹里を抱き起こしてガウンを身体に掛けた。
　冷蔵庫からビールを２本取り出し、樹里に１本を手渡した。

「ありがとう‥‥‥‥。それで、頼みごとって？」

　仙次郎は、ビールを一気に飲み干すと樹里に話を聞かせた。

「へぇー‥‥しかし、姉なのに、よくそんな事しようと思うわね。」
「ああ、とんでもない奴らさ。」
「つまり、懲らしめたいわけね。」
「ああ、屈辱と失望を味あわせてやりたいんだ。」
「いいわ。清ちゃんにも話しておく。」
「すまない。恩にきるよ。」
「それで、いつ？」
「明日、早速どうかな？」
「ええ、いいわ。」
「助かるよ。よぉーし‥‥‥‥後は、小暮と女房を上手く誘い出すだけだな。」

　仙次郎は、独り言のように呟いて２本目のビールを取り出した。
　樹里は、妖艶な眼差しで仙次郎を見つめると、蜜で汚れた肉棒に唇を被せてきた。

「‥‥‥ちょ‥‥‥じゅ、樹里ちゃん‥‥‥」
「ンゥゥゥ‥‥ムムゥゥゥ‥‥‥‥ジュプッ‥‥‥ングッ‥‥‥」

（‥‥‥‥参ったな‥‥‥‥‥ま、今日は、しょうがないか‥‥‥）

　仙次郎は苦笑いを浮かべながら樹里の乳首を摘んでいった。

−　翌日　−

「洋平、どうだった？」
「ああ、ばっちりだ。証拠は全て掴んだ。」
「そうか。‥‥‥で、小暮を誘う人間は？」
「ああ、営業四課長の太田君に事情を話して協力してもらう事にした。」
「そうか。よし、今から柏田君を呼んでくれ。」
「えっ、なんでだ？」
「伊藤涼子と一緒に奈落に来てもらうのさ。今夜の説明をする。」
「えっ？‥‥‥‥し、しかし‥‥‥‥」
「洋平、任せろって。もう、手はずは出来ているから。」
「あ‥‥‥‥ああ‥‥‥‥」

　怪訝そうに仙次郎を見つめながら洋平は柏田を呼び出した。