愛欲の沸点

（５１）

　柏田は、神妙な面持ちで仙次郎と洋平に全ての事実を話していた。

「そうか‥‥‥‥そうだったのか。」

　洋平が、仙次郎を見ながら頷いた。

「じ‥‥‥次長‥‥‥‥‥申し訳ありません。」

「なに、君が誤る事はない。今、君から聞いた話も伊藤涼子のデッチあげだろう。普通は覚えているさ。」
「‥‥‥‥‥‥」
「つまり、君は、酔っていたが、伊藤を抱いてないって事さ。騙されたんだよ。」
「し、しかし‥‥現に‥‥‥今は‥‥‥」
「だから、脅迫されての事だろう。君は悪くない。」
「‥‥‥‥‥‥」

　仙次郎は、柏田に対し小暮夫婦と伊藤を落としこむための内容を柏田に説明する事にした。

「柏田さん、驚かないで聞いてください。伊藤涼子が、何故、貴方に近づいたかを。」
「え？」
「貴方を自殺に追い込むためなんですよ。」
「‥‥‥‥ぇ‥‥‥‥な、何ですってぇっ！」
「事実なんです。」
「そ‥‥‥そんな‥‥‥でも‥‥‥」
「‥‥‥貴方は、営業四課長補佐の小暮義久を知っていますか？」
「え‥‥‥ええ。義兄なんです。私の妻の姉が、小暮さんの奥さんで‥‥‥」
「その、小暮の実の妹が、‥‥‥‥‥伊藤涼子なんです。」

　柏田は、呼吸が止まるのではと思うくらい驚愕した。

「えぇっ！‥‥‥‥‥‥ぁ‥‥‥ぁ‥‥‥‥‥あの‥‥‥‥‥‥ど、どういう‥‥‥」
「一応、親戚になるわけですが‥‥‥会った事はないようですね。」
「ぇ‥‥ええ‥‥‥社に妹さんが居る事は、昔、聞いた事があるのですが‥‥‥」

　仙次郎は、小暮夫婦と伊藤涼子の魂胆を詳細を説明した。

「‥‥‥な‥‥‥な、何ですってぇぇぇ‥‥‥‥じゃ、じゃぁ‥‥‥彼女は‥‥」
「そう。全て、貴方の奥様の財産目当てです。」

　柏田は、真っ青な顔で身体を震わしていた。

「柏田さん、貴方を救いたい。そして、社の危険因子を排除しなければならない。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「今日、それを実行します。協力していただきたい。」

　柏田に、断わる理由はなかった。

「わ‥‥‥‥‥解りました。‥‥‥‥‥‥どうすれば‥‥‥」

　仙次郎は、昨日考えた作戦を柏田に説明した。
　柏田に伊藤を誘ってもらい奈落に連れ出すのだ。

　言葉巧みに伊藤を説得し、舞台に上げさせるのだが、伊藤を客に犯させる設定を仙次郎と清七が組んでおき、その相手を兄である小暮にさせるのだ。

「えぇぇっ‥‥‥そんな事できるんですか？」
「まあ、多少の苦労はするけどね。」
「‥‥‥‥‥‥」
「貴方は、とにかく伊藤を誘って、相手を自分がつとめるからと説得してくれればいいんです。どんな嘘をついても構いません。」
「しかし‥‥‥‥‥」
「無理ですか？」
「い‥‥‥いえ‥‥‥‥‥‥‥やってみます。」
「ん。‥‥‥しかし、その前に小暮の女房、つまり、貴方の奥様の姉が舞台で弄ばれる設定にします。それを、亭主の小暮が見て激怒するわけなんですが、まあ、それは、今夜、直接見ていてください。面白い事になりますから。」
「妻の姉を？」
「何か、問題ありますか？」
「いえ。‥‥‥妙子さん‥‥‥ぁ、いえ、義姉には、私も色々と不満を持っていたんです。頻繁にお金を借りに来るし、貸しても返さないし、女房も小さい頃から、よく虐められていたと泣きながら言っていました。一度、私が妻にプレゼントした婚約指輪を質に入れた事もあるんです。」
「なるほど‥‥‥‥確かに酷い姉ですね‥‥‥‥」　
「妻も、もう姉とは思っていません。」
「でしょうね。」
「高輪先生、西条次長、私‥‥‥やります。」

　仙次郎と洋平は、頷いた。

「洋平、小暮の女房の方は頼むぞ。」
「任せておけ。小暮の女房の愛人を買収しておいた。小暮の女房は、店こそ違え、ＳＭ店は、常連だ。」
「んむ。‥‥‥‥後は、肝心の小暮兄妹だ。柏田さん、貴方の説得に掛かっていますよ。」
「‥‥‥‥‥はい。」

　柏田は気分を入れ替えて、伊藤を誘うべく言葉を考えながら部屋を出て行った。

☆☆☆☆☆

「え、ＳＭパブ？」
「ああ、一度、行ってみたかったんだ。」

　柏田は、昼休みに伊藤涼子を屋上に呼び出し、奈落にいく誘いを掛けていた。

「別にいいけど‥‥‥‥でも、なんで？」
「ぇ‥‥あ、あぁ、その‥‥つまり‥‥‥来月には、部課が替わってしまうし、君とは頻繁に会っておこうかと思って。」
「‥‥‥本当っ、幸ちゃん。」
「ああ。」

（チャンスだわ。できれば、今月中にコイツを脅して、極度に悩ませれば‥‥‥）

　伊藤は、そんな事を考えながら柏田に行く事を承諾した。

「嬉しいっ。」
「ところで、涼子さん、その店なんだが素人でも舞台に上がれるんだ。」
「え‥‥どういう意味？」
「その、つまり、僕は、昔から興味があったんだけど、他人が見てる前でセックスをしてみたいと思ったんだ。」
「？‥‥‥‥も、もしかして‥‥‥‥‥私と？」
「ああ。駄目かな？」
「嫌よっ、幸ちゃん。いくらなんでも人前でなんか。確かに興味はあるし興奮するかもしれないけど、もし、知ってる人が居たら最悪じゃないの。」
「ところが、顔は判らないんだよ。」
「え？」
「この店は、変装用の仮面を用意してあるんだ。顔を隠す事が出来る覆面のようなものもあるし。つまり、素人客が安心して楽しめるようにね。」
「‥‥‥そうなの？」
「ああ。駄目かな？‥‥‥もし、承諾してくれたら毎日でも会っていいよ。」
「え？‥‥‥本当っ‥‥‥」

（‥‥‥‥毎日会えれば、それだけ進行が早まるわ。お金も早い次期に手に入るし‥‥‥この程度なら‥‥。）

　伊藤は、心の中で、ほくそ笑んで柏田に返答した。

「わかったわ‥‥‥そこまで幸ちゃんが言うなら‥‥‥」
「本当かい？」
「でも、絶対に顔がバレるのは嫌よ。」
「その点は、絶対に安心さ。」
「うん、解った。じゃ、してもいいわ。」
「帰りにいつもの所で待っているよ。食事してから行こう。」
「ええ。‥‥‥何か楽しみになってきたわ。」

　笑顔を見せる伊藤‥‥‥

　柏田は、ホッと胸を撫で下ろして屋上を後にした。

☆☆☆☆☆

－　就業後　－

　仙次郎と洋平は、居酒屋に入り、奈落の開店まで時間を潰していた。

「洋平、準備は万端か？」
「ああ。ばっちりだ。既に小暮の女房の愛人には、話をしてある。そして、証拠も、ほぼ揃った。小暮と伊藤が会社を辞めれば柏田を罠にはめることは出来ないだろう。作戦は、全て完璧だ。」
「よし、で‥‥‥幹部と営業部の連中は？」
「奈落の前のスナックで一杯飲っている。俺の合図で店の前に出てくるはずだ。」
「クククッ‥‥‥‥一番の見物だぜ。」
「幹部や同僚に見られて会社にいる勇気のある奴はいないだろう。」

　仙次郎と洋平は、最終段階の様子を想像して笑いをこみ上げていた。

「そういえば、小暮の女房の愛人も大丈夫なんだな。」
「ああ、金には弱い男だ。吉川と言う男だが、２年ほど前から小暮の女房といい仲だそうだ。女房が今まで話した事も、聞かせてくれた、近々、大金が入ることまで、この吉川に細かく話しているそうだ。」
「‥‥‥気の早い女狐だな‥‥‥しかし、お互いの不倫を知っているのか？」
「当然、小暮の浮気も知らないし、自分の不倫も内緒らしいがな。とにかく、小暮は、嫉妬深いらしい。その点、女房は慎重らしいが。」
「ほぉぅ‥‥‥一段と面白くなりそうだな。」
「ああ、まあな‥‥‥」
「しかし、いくら女房の愛人を買収する必要があるとはいえ、社も思わぬ出費だな。」
「奴らの退職金を払う事を考えれば微々たるもんだぜ。」
「そりゃ、そうだ。」

　仙次郎と洋平は声を上げて笑いあった。

　そこへ、佳代から仙次郎の元に連絡が入った。

『先生、いま、小暮補佐の奥さんが、奈落に入店しました。』
「解った。ご苦労さん。もう、帰っていいよ。」
『わかりました。』
「さてと、洋平、行くか。」
「ＯＫ！」

　仙次郎と洋平は、居酒屋を出て奈落に向かった。

　店には、早くも数人の客が、ショーを見ていた。
　小暮の女房と愛人もカウンターの隅の方に座っている。

「洋平、ボックスに行こうぜ。見つかると厄介だ。」
「ああ。」

　仙次郎と洋平は、カウンターステージからは、死角になるボックスに座る事にした。

「いらっしゃいませ。」
「あ、樹里ちゃん。今日は、頼むよ。」
「わかってます。」

　二人の会話を見て洋平が囁く‥‥‥‥

「おい、仙次郎‥‥‥‥やけに親しそうだな。」
「ぇ、ああ‥‥‥まあな。今日の作戦を頼んだんだ。ここのオーナーで如月樹里さんだ。メインＳＭ嬢さ。源氏名は、美也子って言うんだ。」
「え‥‥‥美也子‥‥‥‥あの刺青を入れた？」

　樹里は、笑顔で洋平に答えた。

「よく、ご存知ですね。ここのお店に来た事があるんですか？」
「ええ、前に一度、社の連中と。」
「ああ、思い出しましたわ。山井という女性を‥‥‥」
「ええ、そうです。‥‥しかし、舞台に上がる化粧とは、違うんですね。」
「え、どういう意味かしら？」
「いや、綺麗だなと思って。」
「仙次郎さん、お世辞が上手いわ、この人‥‥‥‥」

（‥‥‥仙次郎さん？‥‥‥‥‥‥ははぁーん‥‥‥‥さては‥‥‥）

「いま、スタッフが、お酒を持ってきますので。どうぞ、ごゆっくり。」
「どうも‥‥‥」

　洋平は、樹里が居なくなるのを見届けて仙次郎をからかってきた。

「仙次郎っ、お前、今の女性と、いい仲だろ。」
「な‥‥‥馬鹿な事を言うなっての。」
「隠さんでもいいだろう。俺とお前の仲だ。正直に言え。」
「ったく、お前は‥‥‥彼女は、ただの友達だって。‥‥‥ん？　おい、洋平、小暮の女房がスタッフと奥へ入っていったぞ。」
「何？‥‥‥‥よし、急いで、小暮を呼ぶぜ。」
「３０分以内に来させろ。柏田君たちとタイミングを合わせないといけないからな。」
「解った。」

　洋平は、第４課長の大田に連絡し、小暮と共に奈落に来店するよう指示した。

『解りました次長。いま、小暮も、ちょうどいいくらいに酔った状態です。』
「んむ。入って右側のカウンターに座ってくれ。柏田君たちには、顔が合わないよう手前のカウンターに座るよう指示してあるから。」
「解りました。」
「３０分以内に来い。ちょうど、小暮の女房がステージに上がる時間に間に合う。」
「はい。」

　その頃、小暮の女房、妙子は、控え室で服を着替えていた。
　隣には、愛人の吉川が妙子を見て顔をニヤつかせている。

「それでは、お客様、ご自分でフェイスマスクをお選びください。」
「わかったわ。」

　妙子は、棚にある仮面やフェイスマスクを選び出した。
　一つを取って顔を覆う妙子‥‥‥

「どう、吉川さん‥‥‥」
「ああ、全く妙子とは、判らないぜ。」

　そう言って、鏡を妙子に向ける吉川‥‥‥‥

「本当ね。」
「じゃ、俺は、カウンターで見てるからな。」
「ええ。オ○ンチンをぶっ立てて見てて。」

　スタッフの前で、平気に隠語を発する妙子‥‥‥‥
　いかにも慣れた風の様子だ。

　店内に戻った妙子の愛人、吉川が、洋平に向かって親指を立てた。
　洋平は、吉川に頷いて指を出口に向ける。

　吉川は、洋平に頭を下げて店を出て行った。

　数分後、男と入れ替わりに第４課長の大田と小暮が入店してきた。
　大田が、洋平に目で合図を送った。

　小さく頷く洋平‥‥‥‥

「さて、仙次郎、そろそろだ。」
「んむ。店の名通り、奈落に落ちてもらおう。‥‥‥‥じゃ、頼んでくる。」

　仙次郎は、席を立って控え室にいる清七の元へ向かった。

（５２）

「清七さん。」
「あ、仙次郎さん。」
「いま、頼んでおいた例の女が控え室に入っていきました。」
「わかりました。」

　仙次郎は、清七に妙子を責め立てる内容を説明した。

「えぇぇっ‥‥‥いいんですか？」
「構いません。それくらいの仕打ち受けるに値する女ですから。」
「わかりました。いや、正直言うと、久しぶりなんです‥‥‥‥楽しみですよ。」

　清七は、そう言って仙次郎に不気味な笑みを投げかけた。

「それから、二人目の女の時は‥‥‥‥」

　仙次郎は、伊藤涼子がステージに上がった時の説明も加えて説明した。

「いいんですか？‥‥‥仙次郎さん。」
「ええ、やってください。救急車は、私が呼びます。」
「二人とも悶絶しますよ。」
「それが狙いなんです。」

　清七は、首を振りながら仙次郎に苦笑いを浮かべる。

「‥‥‥‥ふぅぅー‥‥‥忙しくなりそうだ。‥‥クッ、クッ、クッ‥‥‥」
「では、清七さん‥‥‥頼みます。」

　仙次郎は、清七と打ち合わせを済まし店内に戻っていった。

　ステージでは、いよいよ３回目のショーが始まろうとしていた。
　ステージ中央は、照明が消え、スポットライトが真上から照らされている。
　和太鼓の合図で、清七が登場すると、客から一斉に拍手が沸き起こった。

「皆様、３回目のショーは、お待ちかね。素人ショーでございます。」

　客の拍手が、一層大きくなっていく。

「本日は、二組のお客様がエントリーしてございます。」

　興奮の渦巻く中、常連客がカメラを構え始める。

「それでは、まず一人目のお客様の登場です。」

　清七の合図で、いつものように琴をアレンジした音楽に変わりスタッフに添われた、妙子が、皮の褌のようなショーツを着て現われた。
　仙次郎の川柳が詠われ、客のボルテージも徐々に上がっていく。

　スタッフが、下がると清七は、妙子を素早く後手緊縛に仕上げた。
　鞭の柄で、妙子の顎を突き上げ演技を開始する。

「女よ‥‥‥‥わしの荒縄で地獄を知れぃ。」

　清七は、妙子の口に木の筒を挿し込み、それを固定すると目隠しを取った。

（ぅぅぅ‥‥‥‥アァァ‥‥‥皆が見てるわぁぁ‥‥）

　ビニール製のフェイスマスクを被った妙子が興奮しながら客を見渡した。

（‥‥‥吉川さん‥‥‥‥ど‥‥‥‥どこに？‥‥‥）

　妙子は、愛人の吉川を探しているようだった。
　しかし、姿は見当たらない。

（トイレにでも行ってるのかしら？）

　そうこう思っているうちに、妙子は清七に足を縛られ天井のフックに固定される。

「アワァァァァァ‥‥‥‥ハガァァァァァ‥‥‥‥‥」

　片足が大きく上に引き上げられ体が前のめりになった。
　清七は、妙子が穿く皮のような褌を取り払った。

　陰毛は、ほとんど無く、亀裂部分は丸見えだ。

「クアァァァァァァー‥‥‥‥‥」

　恥しさで呻き声を上げる妙子‥‥‥
　しかし、妙子は、客に正体が判らない事もあり、その恥辱と興奮を楽しんでいる。

　清七が、マイクを持って客に叫んだ。

「皆様、この、ご婦人のパートナー様からのご要望で拷問ショーを始めます。このご婦人は真性Ｍとの事です。」

（えぇっ？‥‥‥‥な、なんですって‥‥‥‥‥何言ってるのこの人‥‥‥‥‥）

　清七の言葉で一斉に歓声が湧く店内‥‥‥
　真横に居る課長の大田と小暮も興奮しながら拍手をしている。

　清七は、皮製の鞭を持って妙子の前に立った。

（ちょ‥‥‥ちょっと‥‥‥‥ほ‥‥‥本当に叩くんじゃ‥‥‥？‥‥‥）

　清七は、鞭を妙子のヒップに向け、渾身の力を込めて打ち下ろした。

「グアガャァァァァァァァァァァァァァーッ！‥‥‥‥‥‥ンアガァァ‥‥‥」

　強烈な痛みが、妙子を襲った。
　本物の皮製鞭で叩かれては、妙子も絶える事は出来ない。

（‥‥‥そ‥‥‥そん‥‥‥な‥‥‥‥‥‥‥よ‥‥‥吉川さ‥‥‥‥ぅぁ‥‥）

　妙子の悲鳴に喜ぶ客達‥‥‥‥
　小暮も、興奮気味に妙子を眺めていた。

　清七は、何度もヒップを鞭で叩いた。

「アガガガガガ‥‥‥‥アギィィィッィィィィィィィーッ！」

　妙子のヒップは、真っ赤に腫れ上がり蚯蚓腫れになっている。
　清七は、クリップをポケットから出し、両乳首と女芯に挟んだ。

「ホアァァッァァァァァァァァァァァー‥‥‥」

　激痛が、妙子の全身に走る。
　涙を流し清七を見ながら首を激しく振っていた。

（‥‥や‥‥‥やめ‥‥‥やめてぇぇぇぇぇぇぇぇーっ！）

　声にならない言葉を叫ぶが、客達には悲鳴にしか聞こえない。
　清七の説明もあってか、妙子が痛みに対して快感を得ていると勘違いしているようだ。

　体が、ゆっくりと回り始める。
　妙子は、ふと右側のカウンターに座る客に目がいった。
　驚愕する妙子‥‥‥‥

（！‥‥な‥‥‥そ‥‥‥そんな‥‥‥‥‥‥あ、あなた‥‥‥‥‥‥）

　妙子は、心臓が止まりそうだった。
　亭主の小暮が、興奮した顔でステージを見ているからだ。

（‥‥‥な‥‥‥なんで‥‥‥なんで、ここに‥‥‥‥）

　そんな妙子の驚きなど関係なく清七の責めは続いていく。
　清七は、チューブからジェルを絞り妙子の蜜壷と菊門に大量に塗りつけていった。

　そして、腕の太さ程もあろうスーパーディルドと呼ばれる張り型を手に持ち、清七は、妙子のヒップを押し広げて蜜壷に先を当てた。
　息を飲む客達‥‥‥‥

　清七は、ゆっくりと蜜壷周りを撫でながら一気に半分ほどを埋め込んだ。

「ガハッホァァァッァァァァァァァァァァァァァァァー‥‥‥‥」

　清七はそのまま、ディルドを固定し縛り付けた。

　幾度と繰り返される拷問に妙子は、朦朧とし、筒から大量の涎を流している。

　洋平は、大田に目で合図を送った。
　頷く大田‥‥‥‥‥

　用意しておいた台詞を大田は、小暮に喋っていく。

「小暮君、凄いねぇぇ。」
「そうですね。さっきから興奮しっぱなしです。」
「しかし、この女性は、素人と言っていたが、依頼は、ご主人なんだろうか。」
「さぁ‥‥不倫相手ということもありますよ。」
「しかし、女房に不倫させるような男は、人間としても魅力がないんだろうね。」
「ええ、女房ひとり面倒見切れない男は失格ですよ。」
「うちに、そんな社員が居たら昇格は、絶対にさせないがな。フハハハハハッ‥‥」
「ですよね。」
「もし、君の奥さんが、不倫していたらどうするね。」
「うちは、そんな事をする女じゃありませんし、私も自分でいうのは何ですが、しっかりしていますよ課長‥‥‥それに家内はセックスには、淡白でしてね。」
「そうか‥‥‥さすが、次期、課長候補だけあって問題は無いようだ。」
「勿論です。」

　自信満々に答える小暮‥‥‥‥

　仙次郎は、頃合と見て清七にウィンクを送った。

　清七がマイクを握って客に喋り始めた。

「皆様、この、ご婦人のパートナー様からのご要望でフェイススパンキングを始めます。」

　清七は、妙子のフェイスマスクを外し始めた。

（‥‥‥な‥‥ちょ‥‥‥ちょっとぉ‥‥‥マッテェェェェー！）

　必死で、叫びながら首を左右に激しく振る妙子‥‥‥
　しかし、筒を咥えているため言葉にはならない。

　妙子の顔が露になった。

「フガァァァァァァァ‥‥‥‥ンオアァァァァー‥‥‥」

　叫ぶ妙子に目をやる小暮‥‥‥‥

「！‥‥た‥‥‥‥たぇ‥‥‥‥」

　グラスを持つ小暮の手が止まった。
　隣で、大田が声を掛ける。

「小暮君‥‥‥どうしたのかね？‥‥‥‥‥知り合いかい。」
「い‥‥‥いえ‥‥‥‥‥全く‥‥‥‥」
「そりゃ、そうだろうね。」

　小暮は、驚愕した表情を抑えながら心の中で怒りを露にしていた。

（ど、どこのどいつだ‥‥‥妙子のパートナーとは‥‥‥ぶっ殺してやるっ！）

　そんな思いを打ち崩すように清七の責めが始まった。
　ノーズフックを妙子の鼻の穴に挿し真上に引き上げて固定した。
　目尻が下がり、鼻の穴が正面に向くと客から薄ら笑いが零れる。

　小暮は、身体を震わせてステージに目を向けていた。

　清七は、鞭で妙子の顔を叩き始めた。

「ンガァァァァァァァ‥‥‥‥グハァァァ‥‥‥ガガ‥‥‥」

　妙子は絶叫しながら、涙と鼻水を垂れ流した。
　その状態で、妙子の後ろ髪を掴みカウンターを一周する清七‥‥‥
　客が、妙子の股間を食い入るように見ている。

「いやぁ、凄いっ！‥‥んーむ、見応えあるね、小暮君‥‥おぉぉっ、この女性のアソコは、相当使い込んでるねぇ。」
「ぇ‥‥‥ええ‥‥‥そ、そうですね‥‥‥」

　既に、４０分は経過しただろうか‥‥‥‥
　清七は、元の位置に戻ると、いよいよ最後の責めに入った。

　清七は、後のポケットから十手のような改造スタンガンを取り出した。
　客の前でそれをかざしスイッチを押す清七‥‥‥
　青白い電気が音を立てて唸った。

　客達は、息を飲んでいる‥‥‥‥‥
　スタッフが、妙子の吊るされている下にシートを引き始めた。

　清七は、スタンガンの先を妙子の蜜壷に挿入す。

（や‥‥‥‥やめ‥‥‥‥‥やめろっ！）

　小暮が、真っ青な顔をして心の中で呟いた。

　しかし、清七は、躊躇せずスタンガンのスイッチを押す。

「フンゴオオオオオオオォォ‥‥‥‥ンガガァァッァァァァァーッ！」

　妙子は、一気に気を失い、そして、失禁を開始した。
　白目を剥き、涎を垂らしながらグッタリとぶら下がっている。
　客達は、怒号にも似た歓声を上げながら拍手を送った。

　清七は、四方に頭を下げると静かに奥へ消えていった。
　妙子は、スタッフにフックから降ろされ控え室に運ばれていく。

（た‥‥‥妙子‥‥‥‥‥‥たえ‥‥‥‥）

　小暮は、怒りで、体の震えが止まらなかった。
　しかし、隣には、課長の大田が居る。
　おいそれと、控え室に怒鳴り込んでいくわけにはいかない。

（‥‥‥‥ク‥‥‥クッソォォー‥‥‥）

　小暮は、勢いよく酒を喉に流し込んでいった。

　妙子が、奥に連れて行かれた数分後、仙次郎の電話により柏田と伊藤涼子が、腕を組みながら奈落に入ってきた。
　少々、酔っているようだ。

　義兄の小暮に気づかれぬよう手前の隅に席を取り柏田自身も姿が確認できないように座った。
　柏田と伊藤涼子は、楽しそうに談笑していた。

「凄い、お店ね。」
「ああ。まだ、暫く時間はあるから、飲みながら話しでもしてよう。」
「ええ。」

　その間、柏田は、涼子に、店の常連の話や素人ショーの話を自慢げに聞かせ涼子をその気にさせていく手段にでた。

　涼子は、柏田の話を聞き、自分も客を興奮させようという気持ちが湧いてきた。
　酔っているせいもあるだろうが、自分の色気とプレーで客の喜ぶ姿が見たいというのも本音のようだ。

　２本目のビールを飲み終え、柏田は腕時計を見た。

（‥‥‥‥‥‥時間だな‥‥）

「さぁ‥‥涼子、もう、そろそろ呼ばれるよ。。」
「ええ。興奮してきちゃったわ。お客さんも多いし。」
「でも、立つかな？」
「今更、何を言ってるのよっ、幸ちゃん。‥‥‥大丈夫、私が立たせてあげるゎ。」
「‥‥‥ハハ‥‥‥やる気満々だね。」
「酔いも手伝ってるみたい。何となく大胆な感じになってきちゃった。」
「そういうところが最高さ。」
「あ、でも凶器兼備だから中に出しちゃ駄目よ。」
「ああ、わかった。」

　既に、伊藤涼子も柏田の話で覚悟を決めているのか、興奮しながらも楽しみにしているようだ。

　洋平が、二人を見ながら仙次郎に呟いた。

「仙次郎、役者は、揃ったぞ。」
「んむ。」
「おっ、仙次郎、柏田君達がスタッフに呼ばれたようだ。」
「よし。第２ラウンドを始めるか。」
「ＯＫ！」

　洋平が、課長の大田にタイミングよくサインを送った。
　大田が、洋平に頷く‥‥‥‥

「ん？‥‥‥‥小暮君、ちょっと失礼‥‥‥携帯に電話が入ったようだ。」
「は‥‥‥はい。」

　席を外す大田‥‥‥‥‥‥
　小暮は、怒りが冷めやらず酒をがぶ飲みしている。

（た‥‥‥妙子‥‥‥お前ぇぇ、浮気かっ‥‥‥許さんぞぉっ‥‥‥グッ‥‥‥）

　暫くして、大田が席に戻ってきた。

「小暮君、すまんが部長に呼ばれてしまった。この近くの店らしいから行って来るよ。」
「‥‥‥‥そ、そうですか‥‥‥」
「後で君も呼ぶから電話するまで、この店で楽しんでてくれ。」
「え‥‥‥ええ‥‥‥そうします。」
「支払いは、私がしておくから。」
「ど、どうも‥‥‥課長、ありがとうございます。」

　小さな声で礼を言う小暮‥‥‥
　だが、怒りとショックで顔は蒼ざめている。

「なに、君とは色々と話しておかないとね。」
「はぃ‥‥‥」
「じゃ、小暮君、ゆっくり楽しんでいたまえ。」
「わかりました。」

（チャンスだ‥‥‥‥妙子の男を探してやるっ‥‥‥）