（５３）

「おい、ここの責任者は居るかっ！」

　小暮が怒鳴って、スタッフルームに駆け込んできた。
　樹里は、冷静に小暮に応じていく。

「私が、オーナーですが‥‥‥何か？」
「さっきのステージで気絶した女が居るだろうっ！」
「ええ‥‥‥いま、気を失っているのでスタッフが介抱していますが‥‥」
「‥‥‥ゥッ‥‥ググッ‥‥‥‥」
「あの‥‥失礼ですが貴方は？」
「お、俺は、その女の亭主だぁっ！」
「亭主？‥‥‥それで。」
「それでじゃねぇっ！女房と一緒に来店したパートナーを出せっ！」
「お客様、確かに貴方の奥様かもしれませんが、あくまでプライベートです。ここの店の信用にも関わりますので、すいませんが、お引き取りください。」
「なんだとぉっ！」
「お客様、次のショーが始まりますので、終わってからにしていただけますか。」
「待ってられるかぁっ！‥‥‥せめて、どういう男くらいか教えろっ！」

　樹里は、一呼吸置くと、溜息をつきながら小暮に説明した。

「‥‥‥‥普通の男性ですよ。二人、女性を連れてきましたが。」
「二人だとぉ？」
「ええ。一人は、今の方、あ‥‥貴方の奥様でしたね。もう一人は、自分の奥様を。」
「な‥‥な‥‥なんだと‥‥‥‥‥どういう関係なんだっ！」
「さぁ‥‥‥私には‥‥‥」
「くっそぉーっ！」
「今から、その方の奥様が、舞台に上がられますよ。生板ショーで。」
「生板ショー？」
「ええ、自分の奥様をお客様に抱かせるんです。」
「‥‥‥‥ほ、本当か？」
「ええ。貸し出しプレーです。」

（‥‥‥‥‥‥‥）

　小暮は、暫し考え込んだ。

（‥‥‥‥そいつの女房を痛めつけれるかも‥‥‥‥）

　小暮は、舞台に出ることが可能ならば、ステージに上がりたいと考えた。

「おい、俺も出れるのか？」
「もちろん出れますが、希望者が多いと無理かもしれません。」
「‥‥‥俺を指名しろっ！」
「では、ゴールドチップを購入していただければ‥‥‥」
「いくらだ？」
「５万円です。」
「‥‥‥‥‥‥‥いいだろうっ！」

　小暮は、財布から金を取り出し、叩きつけるように樹里に渡した。

「乱暴ですわね。」
「早く連れて行けっ。」

　樹里は、表情を変えずに小暮を控え室に案内した。

「では、こちらへ。」

　樹里の後を着いて行く小暮‥‥‥‥‥

（よぉーし、こうなったら、その女を無茶苦茶にしてやるぜ。）

　小暮は、Ｎｏ３と書かれた控え室に案内された。

「それでは、ここで、お待ちください。」
「‥‥‥‥‥わかった。」
「それから、顔が知られるのが嫌なら、そのボックスの中に仮面やフェイスマスクが入っています。ご自由にお使い下さい。」
「‥‥‥‥‥‥‥」

　樹里は、小暮を残しスタッフルームに戻っていく。

　控え室で、出番を待つ小暮は、歯を噛み締めて怒りを抑えていた。

「樹里さん。」

　スタッフルームに戻ってきた樹里に仙次郎が声を掛けた。

「あ、仙次郎さん‥‥‥‥上手くやっておきましたよ。」
「ありがとう。‥‥‥で、柏田は？」
「いま、スタッフに説明をされています。仙次郎さんに言われたとおり猿轡をさせて、男性より先に舞台に上がるように設定しますから。」
「恩にきるよ。」
「仙次郎さんは、私のご主人様よ。何でも言う事を聞くのが私の使命です。」
「‥‥‥‥ぁ‥‥‥あ、ちょ‥‥‥樹里さん‥‥‥」

　隣で洋平が、意味ありげの視線を仙次郎に送っていた。

「‥‥‥ハ‥‥‥ハハハ‥‥‥洋平、彼女はジョークが好きでな‥‥‥。」
「ま‥‥‥そういう事にしておいてやる‥‥‥」
「あ、あのな、洋平‥‥‥‥‥」
「ククッ‥‥‥早く戻るぞ。」

　仙次郎は、ガックリと肩を落としながら洋平と店内に戻っていった。

　その頃、涼子は、別の控え室で襦袢に着替えていた。
　中は下着を着用していない。
　柏田はブリーフ一枚の姿でガウンを羽織っている。

「幸ちゃん、ドキドキしてきたわ。」
「ああ、僕もさ。」

　スタッフが、柏田と涼子に声を掛けてきた。

「それでは、お客様、あと５分ほどで舞台のほうに上がりますので。」
「わかりました。じゃ、涼子‥‥‥」
「ええ。」

　涼子は、覆面のようなマスクを被り、キャスター付きの妊婦台に似たベッドに座った。

「涼子、全く君とは判らないよ。」
「ウフフッ‥‥‥」
「さ、足をここに上げて両手を上げてごらん。」
「ええ。」

　涼子は、両足を曲げて台の上に乗せた。
　蜜壷が、正面から丸見えの状態だ。

　早くも薄っすらと愛液が滲み出ている。

　両手を頭上に持っていくと、柏田が皮ベルトで涼子の手首を固定していった。
　そして、腰部分と両足首もベルトで固定すると涼子にウィンクを投げる。

「ウフッ‥‥‥‥‥‥なんとなく興奮するゎぁ‥」
「はは、お客さんを喜ばせよう。」
「‥‥‥ええ‥‥‥」

　柏田は、涼子の被る覆面の口部分のチャックを閉めた。

「‥‥‥‥‥‥‥？」
「ハハ、興奮して僕の名を呼ぶとやばいからね。大丈夫かい？」

　涼子は、目で頷いて柏田に了承する。

　ちょうど、その時、店内からミュージックが流れ始めた。

「さ、涼子、始まるよ。」

　目だけが、くり抜かれた覆面の下から涼子が笑みを浮かべる。
　スタッフが、涼子の寝る妊婦台ベッドを押してステージに入っていった。

（ふぅぅぅー‥‥‥‥）

　冷や汗が、額から流れ落ちる‥‥‥‥‥
　今から始まるプレーを想像しながら柏田は、大きく深呼吸をした。

（５４）

「柏田君‥‥‥」

　後を振り向く柏田‥‥‥‥

「次長‥‥‥」
「ご苦労だった。後は、俺達に任せろ。早く家に帰って奥さんを安心させてやれ。」
「はい‥‥‥‥ありがとうございます。」

　柏田は、ガウンを脱ぐと急いで服を着替え始めた。

　舞台では、客の拍手が盛大に響いている。

　清七が、マイクを握り涼子の横に立った。

（ぁぁ‥‥恥しいぃぃ‥‥皆、私を注目してるゎ‥‥‥）

　涼子は、緊張しながら周りの客を見て興奮していた。

　清七が、涼子の乳房を鷲掴みにして声を張り上げる。

「お待たせしました。本日２回目の素人ショーは、パートナー様のご要望によりまして、視姦プレーと、貸し出しプレーを行います。」

　涼子は、驚いて清七を見つめた。

（な‥‥‥何ですって‥‥ちょ‥‥ちょっと、何よ、それっ‥‥‥幸ちゃんっ！‥‥）

　客が、歓声にも似た声を張り上げ、盛大な拍手が沸きあがった。

「それでは、最初にクスコによる拡大をプレーを始めます。」

　清七は、クスコを涼子の蜜壷に挿し込んだ。

「ンゥゥゥゥー‥‥ウーッ、ウーッ、ウウウゥゥゥーッ‥‥」

　必死で声を上げるが、皮のフェイスマスクが、全体を覆う覆面のようになっているため、声になるどころか、口さえ開ける事は出来ない。

　清七は、クスコを一番開いた状態でネジ止めすると、妊婦台を押してステージを回り始めた。

「ウーッ、ウーッ、ウウウゥー、ウーッ、ウウウゥー‥‥‥」

　呻く涼子‥‥‥
　客達が、クスコを覗きながらシャッターを切っていく。
　涼子は、充血した目を思いっきり閉じて歯を食いしばった。

（‥‥‥な、なによぉぉーっ、コレ‥‥‥なんでぇぇっ‥‥‥）

　清七は、更に菊門にもクスコを挿し込んだ。

「ウー、ウー、ウー、ウウウウゥゥゥゥゥー‥‥‥」

　内部の粘膜が露になる。
　涼子は、惨めな自分の姿に怒りを通り越して涙を流し始めた。

　清七は、次々と涼子に、卑猥な羞恥プレーを行っていった。
　剃毛され、大陰唇を限界まで引っ張られては、そのつどステージを回っていく。

（‥‥‥‥ウゥゥゥ‥‥‥もう、止めてぇぇぇぇぇー‥‥‥）

　しかし、そんな思いなど届くはずもない。
　清七の全ての技術を披露され、涼子は、屈辱以上に、今まで経験した事が無い羞恥心を全体に刻まれていったのだ。

　長い時間を掛けて涼子は、恥辱プレーを味わった。

　一通り終わった清七は、涼子の襦袢を引き破っていく。
　真っ裸にされた涼子が、呻き声を張り続けていた。

「さて、皆様、いよいよ貸し出しプレーでございます。エントリーして頂いた殿方は珍しく１名でございました。どうぞ、登場してください。」

（何？‥‥‥俺だけか‥‥‥）

　控え室で待っていた小暮は、清七の言葉に笑みを浮かべた。

（クッ、クッ、クッ‥‥‥‥よぉーし‥‥ただではおかねぇぜ。）

　小暮は、マスクを掛け、ガウンを羽織ってステージに歩いていった。
　客達が、拍手と声援を送っている。

「それでは、お客様、お好きなプレーで楽しんでください。」

　頷く小暮は、涼子に近づくと、無造作に指を蜜壷に入れ乱暴に中を刺激した。

（テメェの旦那が、俺の女房を弄びやがって‥‥‥‥‥）

「ウウウウウウウウウウウー‥‥‥‥‥ンゥゥゥゥゥゥゥゥー‥‥‥」

　身体を硬直させ、痛みに耐える涼子‥‥‥
　小暮は、まさか自分の妹とは気づかずに興奮で肉棒を怒張させている。
　小暮の鬼気迫った怒りの責めは、留まる事を知らなかった。

　ステージを見つめる仙次郎と洋平‥‥‥‥‥

「仙次郎、外のスナックの連中には、もうすぐだと連絡しておいた。」
「よし。‥‥‥いよいよだな。」
「小暮のマスクは、いつ取るんだ？」
「清七さんに、頼んであるから大丈夫だ。」
「そうか‥‥‥‥」

　洋平は、仙次郎のグラスにビールを注ぐとステージに注目した。

　小暮は、涼子を睨みながらブリーフを下げている。
　怒張した小暮の肉棒を見て涼子は激しく首を振っていた。

　小暮は、小声で涼子に呟いた。

「遠慮なく中で出させてもらうぜ。」

　そう言って、小暮は、涼子の蜜壷に肉棒を突き刺した。

「クッ‥‥」
「ウー‥‥ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥー‥‥‥ンゥゥゥー‥‥‥」

　観客が、拍手をしながら小暮に声を掛けた。

「こっちに向けてくれぇー。」「見えないぞ、腰を浮かせろぉ。」

　小暮は、不気味な笑みを浮かべながら客達の注文に答えていく。

「おい、皆、見てるぜ‥‥‥‥おもいっきり射精してやるからな。」
「ンゥゥゥゥゥゥゥゥー‥‥‥ウー、ウー、ウウウゥゥゥー‥‥‥」

　危険日である涼子は、驚愕しながら激しく首を振っている。
　そんな事を知らない小暮は、激しく涼子の蜜壷に肉棒を打ちつけていった。

「アナルに入れてみろぉー！」

　客の一人が、大きな声を上げた。

（‥‥‥‥なるほど‥‥‥それもいいな。）

　小暮は、蜜壷から肉棒を抜くと涼子の菊門に先を当てる。

「ンウゥゥー、ウゥー、ウー、ウー、ウウウゥゥー‥‥‥‥」

　目が飛び出しそうな勢いで小暮を睨む涼子‥‥‥‥‥

「ククッ‥‥悪く思うなよ。全ては、テメェの旦那が悪いんだ。」

　小暮は、躊躇せずに一気に涼子の菊門に肉棒を突きたてた。

「ングウウウウウウウウウウウウゥゥゥ‥‥‥ゥゥゥゥ‥‥‥‥‥」

　涼子の菊門が、僅かに裂けたようだ。鮮血が滴り床に零れ落ちていく。
　激痛に涼子の目は、充血して真っ赤になっていた。

　呻き声を上げる涼子だが、小暮は遠慮せずに腰を振り続けた。

「くぅぅ‥‥さすがに、よく締まるぜ。」

　小暮は、涼子の乳房を鷲掴みにして無心で腰を動かしている。

「くっ‥‥‥イキそうだぜ‥‥‥」

　小暮は、菊門から肉棒を引き抜くと、再度、蜜壷に挿入した。

　身体を極度に緊張させ仰け反る涼子‥‥‥‥

　小暮の腰の動きが早まってきた。
　そろそろ、分身を吐き出す様子が伺える‥‥‥

「ウッ‥‥‥で‥‥‥出る‥‥‥」

　小暮は、肉棒を根本まで挿入して分身を涼子の蜜壷の中に爆発させた。

「ウウウウウウウウウウウウウゥゥゥ‥‥‥ゥゥゥー‥‥‥」
「クククッ‥‥‥‥どうだっ‥‥‥たっぷりと注いでやったぜ‥‥‥」

　清七は、タイミングを計り、スタンガンを持って小暮の真後ろに立った。

　そして、小暮の仮面に手を掛け一気に首まで引き下ろす。

　小暮の顔が、露になった。

「な、何するんだっ！」

　驚きながら怒鳴る小暮‥‥‥
　涼子は、小暮の顔を見て全身に悪寒にも似た電流が走った。

（ぅ‥‥‥げぇぇっ‥‥‥そん‥‥な‥‥‥‥‥に‥‥‥‥兄‥‥‥‥さん‥‥）

　清七が、スタンガンを二人の結合部に当てスイッチを押した。

「グガァァァッァァァァァァァァァァァー‥‥‥」
「ムギィゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥー‥‥‥」

　小暮と涼子が同時に大絶叫した。
　涼子は、兄であるというショックとスタンガンの刺激によって膣痙攣を起こす。

「ウギャァァァァァァァァァァーッ！‥‥‥い‥‥‥い‥‥‥痛ぇぇぇぇ‥‥」

　大声で叫ぶ小暮‥‥‥

　清七は、涼子の口部分のファスナーを開けた。

「ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッィー‥‥‥」

　悲鳴に驚く客達‥‥‥‥

　ステージは、照明が消え、清七とスタッフが二人を奥へ連れて行った。

「さっきの女の控え室に連れて行くんだ。」
「はい。」

　スタッフ達は、小暮の女房、妙子がいる控え室に二人を運んでいった。

「仙次郎っ。」
「んむ。」

　仙次郎は、電話をかけて救急車を呼んだ。

　控え室では、小暮と涼子が悲鳴を上げて叫んでいる。
　驚いたのは、控え室の中にいた女房の妙子だった。

「！‥‥あ、‥‥‥あなた‥‥‥‥‥な‥‥‥何を‥‥‥‥‥」
「た‥‥‥‥妙子‥‥‥‥お‥‥お前ぇっ‥‥‥‥」
「な‥‥‥何‥‥‥何やってるのっ！」
「う、うるせぇー‥‥‥お前こそ、さ‥‥さっきの‥‥‥醜態はなんだっ！」
「ゥッ‥‥‥そ‥‥‥それ‥‥‥は‥‥‥」

　スタッフが、涼子の覆面を取外した。
　小暮が、涼子の顔を見る。

「ヒィィィィィィィィー‥‥‥りょ‥‥‥‥涼子‥‥‥‥な‥‥‥なんで‥‥‥」

　妹と判り驚愕する小暮‥‥‥‥

　涼子は、涙を流して、兄の小暮と義姉の妙子を見た。
　口をパクパクさせながら妙子が口走る‥‥‥

「りょ‥‥‥涼子さん‥‥‥あ‥‥‥あ‥‥‥‥あ‥‥なた‥‥たち‥‥‥‥きょ‥‥‥兄妹‥‥‥で‥‥‥じょ、冗談で‥‥‥しょ‥‥‥‥う、嘘ぉ‥‥」
「妙子‥‥‥そ、そんな事は後だっ‥‥‥‥‥グフッ‥‥ち、膣痙攣だ‥‥‥何とかしろっ！‥‥‥い、痛くて‥‥」
「ば、馬鹿じゃないのっ‥‥‥こんな所に居たら笑い者よ。私、帰るっ。」

　妙子は、小暮と涼子を置いて逃げるように店を出て行った。

「ば、馬鹿やろっ‥‥‥た、妙子ぉぉぉぉーっ、待てっ、待てぇぇぇーっ！」

　周りを見る小暮‥‥‥
　しかし、いつの間にかスタッフは居なかった。

　そこへ、救急車の隊員が、慌しく担架を持って控え室に入ってきた。

「どうしましたっ？」

　救急隊員の質問に脂汗を流しながら答える小暮‥‥‥‥

「ち‥‥‥膣痙攣で‥‥‥‥‥ぬ、抜けなくて‥‥‥」

　救急隊員は、担架で運ぶ事を諦め、そのまま、二人を外に出すことにした。

「‥‥‥うぐぅ‥‥‥は、早く‥‥‥‥何とかしてくれぇぇぇ‥‥‥」

　救急隊員は、急いで外の救急車まで、二人を運んでいった。

　小暮は脂汗をかき苦しみ悶えている。

「ウギギ‥‥‥グゥゥ‥‥‥」

　外に出ると、多くの人だかりが出来ていた。

　洋平の連絡により、目の前のスナックで待機していた幹部と同僚の営業部員が、二人を見て笑いに似た声を上げる。

「こ、小暮君じゃないか！」

　声がした方に顔を向ける小暮‥‥‥
　声を掛けたのは、営業部長だった。

「‥‥‥‥ゥッ‥‥ぶ‥‥‥‥ぶ‥‥‥‥‥‥‥部長‥‥‥‥ぉ‥‥」
「な、何をやってるのかねっ、君は？」
「ァ‥‥ヮヮヮ‥‥‥‥‥‥そ‥‥‥‥その‥‥‥‥‥‥‥‥」

　一人の営業部の社員が、部長に声を掛けた。

「ぶ、部長、その女性は、うちの‥‥‥こ、広報課の伊藤君ですよ。」
「？‥‥‥伊藤‥‥‥伊藤涼子‥‥‥馬鹿な‥‥‥彼女は、小暮君の妹だぞっ！」

　その声に、周りの関係ない客が、不思議な顔で小暮と涼子を見た。
　同僚の女性社員が、涼子を見て笑いを堪えている。

「‥‥‥ィ‥‥‥イヤァァァァァァー‥‥‥‥早く車に乗せてぇぇぇぇっ！」

　涼子は、激しい激痛と羞恥で気が狂いそうな状態だった。
　救急隊員たちは、結合したままの二人を救急車に移動するのに手間取っている。

　小暮が怒鳴った。

「は、早く、車に入れろぉぉっ！」

　しかし、結合したまま離れない二人の人間を車内に入れるには時間が掛かった。
　やっとの事で、収容したはいいが、かなりの野次馬に醜態を見られている。
　一人の同僚が、二人に聞こえるように呟いた。

「妊娠してたらどうするんですかね？　しかし、妹によく射精したもんだ。」

　小暮と涼子は、その言葉で、訳の判らない絶望感から体の体温が一気に低下していく。

（‥‥‥ゥゥゥ‥‥‥‥‥ク‥‥ク‥‥‥‥クッソォォォ‥‥‥‥ォォ‥‥‥‥）

　やっとの事で、二人は救急車の中に収容された。
　外では、笑い声と罵声にも似た声が飛び交っている。

　涼子は、拳で兄の小暮を叩きまくった。

「馬鹿、馬鹿っ、馬鹿ァァァァァァァァァッ！　もう、人生おしまいよぉっ！」
「ぅぅ‥‥‥ぅぅ‥‥‥‥‥うぅ‥‥おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーっ！」

　走り出した救急車の中で、小暮は、サイレンと共に絶望の大絶叫を上げた。

　救急車を見つめる仙次郎と洋平‥‥‥‥‥

　洋平が、さり気なく仙次郎の肩を軽く叩いた。

「仙次郎‥‥‥‥ミッション完了だ。」
「そうだな‥‥‥‥‥さて、洋平、樹里ちゃんのショーを見ようぜ。」
「待ってました！」

　仙次郎と洋平は、小躍りしながら店内に入っていった。