（６０）

「何だって？」

　仙次郎が、すっとんきょうな声を上げて驚いた。

「本当なんだ、仙次郎‥‥‥‥」

　洋平は、社内で、ある秘密の活動をしている女性の行動に困っており、仙次郎に、相談を持ち込んでいた。

「そんな、宗教があるわけないだろう。」

　仙次郎は、呆れた声で洋平に言い返した。
　佳代も、笑いを我慢している。

「仙次郎、わざわざ冗談言うために、ここへ来るほど、俺は暇じゃないぞ。」
「性教ねぇぇ‥‥‥‥‥‥しかし、洋平‥‥‥どういう活動をするんだ。」
「つ、つまりだな‥‥‥‥その‥‥‥セックスをすると幸せになるって‥‥‥」
「ブッハハッハハハハハハハハッ‥‥‥」　「キャハハハハハッ‥‥‥‥」
「仙次郎っ‥‥‥‥‥‥‥おい、川島君、怒るぞ。」
「す‥‥‥すいません‥‥‥」

　洋平は、真顔で二人を睨んだ。

「いや、すまん、すまん‥‥‥だが、洋平、いったい俺にどうしろって言うんだ？」
「壊滅‥‥‥‥いや、追い出しだ。」
「‥‥‥‥‥‥？」
「実はな、２ヶ月前から公室で調査をしていたんだ。」
「調査？」
「ああ、垂れ込みで電話があって、うちの社の制服を着た女性が売春してるとな。」
「売春？‥‥‥‥それは、確かなのか？」
「だから来たんだ。」
「それを早く言え。俺は、お前が、からかいに来たかと思ったぞ。」
「‥‥‥‥ったく、お前は、‥‥‥俺は、そんな暇じゃねぇと言ってるだろう。」
「ハハ‥‥‥だな‥‥‥‥で、相手に確かめたのか？」
「ああ、しかし、様子がおかしくてな‥‥‥催眠に掛かったようになっているんだよ。」
「催眠？」
「ああ、今の時点で把握いるメンバーは、４人なんだが、そのうちの一人が、売春グループを仕切ってるようでな。」
「‥‥‥本当に宗教なのか？」
「いや、宗教というのは名ばかりで、売春団体だと思うが、一応、その連中らは、信者という事になっているようだ。」
「つまり、その信者に売春させて、資金を集めてるのか？」
「ああ、正式名は、輪教という財団法人になっている。」
「ふむ‥‥‥で？」
「俺達の調査が、間違っていなければ、その黒幕、つまり教祖は、うちの社員だ。」
「なんだと‥‥‥‥本当か？」
「ああ。４人いるメンバーのうちの一人なんだが、売春している女性の一人を呼び出して問いただしたんだ。しかし、売春は、認めたものの誰に誘われたとか、どういうグループなのかを全く喋らないんだよ。」
「ふぅーん‥‥‥」
「俺でも判ったんだが、どうも、その女性の様子がおかしいんだよ。」
「おかしい？」
「ああ、肝心な事を喋らないんだよ。普通の質問には答えるんだが、どういう組織なのか、なんで売春をしているのかも答えないんだ。」
「ふーむ‥‥‥‥マインドコントロールされてるのかな？」
「‥‥‥しかし、仙次郎、そんなこと実際に出来るのか？」
「んむ。まあ、不可能ではないが、掛かる人間は、せいぜい全体の１、２％だな。」
「そうか‥‥‥不可能ではないのか‥‥‥‥‥」

　洋平は、暫し黙り込んで何やら考えている。

「仙次郎‥‥‥‥‥ちょっと‥‥」
「ん？」

　洋平は、佳代に聞かれないように、身を乗り出して仙次郎に耳打ちをした。

「お前、その女と寝てくれんか？」
「な‥‥‥なんだとぉっ‥‥‥‥」
「直接、お前の目で確かめてくれた方が早いと思うんだが。」
「だから、なんで、いつも俺なんだ。」

　佳代が、怪訝そうな顔で二人を見ている。

「なに、ヒソヒソ話をしてるんですか？」
「え？‥‥‥‥ぁ‥‥‥いや、何でもない。」

　慌てる仙次郎に、ますます怪しむ佳代‥‥‥‥

「とにかく、洋平、その団体のメンバーとか活動を全て調べてこい。何も知らないで行動しても墓穴を掘るか、返って危険な目に合うぞ。」
「わかった。１週間くれ。何とか全てを調べてくる。」
「ああ、策は、それから練ろうぜ。」
「ＯＫ！‥‥‥じゃ、また来る。」

　洋平は、佳代に愛想笑いをして部屋を出て行った。

　佳代が、仙次郎の横に座って顔を覗き込んでくる。

「先生、‥‥‥又、次長に変な事を頼まれたんでしょ。」
「な‥‥‥何を‥‥‥変な事って？」
「今話してた、売春してる女と関係してくれとでも頼まれたんじゃないですか？」

（‥‥‥‥ギクッ‥‥‥‥女の勘は鋭い‥‥‥‥‥）

「そ、そんな事するわけないさ‥‥‥‥」
「本当ですか？」
「僕は、学者だよ。女性と寝るのが仕事じゃない。」
「ですよね。あー、安心した。さて、仕事、仕事‥‥」

（ふぅー‥‥‥危なかった‥‥‥‥信用したようだな‥‥‥）

　佳代は、あっさりと仙次郎を信用して自分のデスクに戻った。

（‥‥‥マインドコントロールか‥‥‥ちょっと、調べておくかな‥‥‥）

　仙次郎は、それに関連する参考資料を取り出して、詳しく調べてみる事にした。

☆☆☆☆☆

−　一週間後　−

　洋平が、仙次郎の元を訪れていた。

「ほぉー‥‥‥女性ばかり３０人あまりか？」
「ああ、うちの社員４名を含めた数だが、全員が、一流企業に勤めるＯＬばかりだ。」
「しかし、信者といってもしれてる数だな。‥‥‥で、全員が信者という事か？」
「名は、宗教を名乗ってるが、実態は、調査どおり秘密の売春団体さ。教祖というか、代表は、やはり、うちの社員の女性だったよ。営業二課の桂川麻衣という社員だがなんだが、目立つ社員ではない。」
「桂川？‥‥‥‥‥‥‥佳代君、社員データを。」
「はい。」

　佳代は、早速データの引き出し作業に掛かった。
　仙次郎が、洋平に続きを問いただす。

「で、その桂川という女性は、どうやって若い女を集めてるんだ？」
「彼女の、勧誘パターンは、ワンツーマンで説得しているんだ。就業後に、飲み屋に誘い、狙った特定の人物と会っているんだよ。」
「ふむ‥‥‥で？」
「そして、勧誘に成功すると、また別の女性に会って、勧誘を繰り返している。一昨日、たまたま隣の席に座る事が出来て、その会話をこっそり聞いていたんだ。驚いた事に、桂川は妙な会話で、相手の女性にアプローチをかけているんだよ。」
「妙な会話？‥‥‥」
「内容は、金儲けと、セックスの快楽のような話だ。ここのメンバーに共通しているのは、ほとんどが借金をしてたり金に困っている連中さ。」
「なるほどね。単に巧い誘いを嗾けてるだけにも思えるな。」
「んむ。だが、お前の言うとおり、マインドコントロールかもしれない。」
「しかし、洋平、マインドコントロールはそんなに簡単に出来るもんじゃないんだぞ。」

　そこへ、佳代が、桂川の社員データを持って戻ってきた。
　データを受け取る仙次郎‥‥‥‥

　桂川麻衣　３２歳、独身
　ローン‥マウンテンカレッジ卒業
　５年前、榊原グループに入社し、営業部に配属される。

　さらに目を通していく仙次郎‥‥‥‥‥

「別に、これといって悪い所はないな‥‥‥」
「ああ、まあ、普通の社員だ。」

　再度、履歴に目をやる仙次郎‥‥‥‥

「ローン‥マウンテンカレッジか。こっちの大学じゃないとは珍しいな。」
「ああ、でも、海外の大学を出た奴は、内の社にはいくらでも居るぜ。」
「そうか。‥‥‥‥‥ん！‥‥‥ローン‥マウンテン‥‥‥ひょっとして‥‥‥‥」

　仙次郎は、思い当たる節があった。

「洋平、学部が書いてないが判らんのか？」
「え？‥‥‥おかしいな。普通は書いてあるんだが。」
「ま、いいさ。佳代君、ネットに接続して、１０年前に卒業したローン‥マウンテンの卒業者名簿で彼女が出た学部を捜してくれ。」
「はい。」
「しかし、なんでだ、仙次郎‥‥‥」
「いや、この大学は、心理学で有名な大学でな。」
「ふぅーん‥‥‥‥え、何っ？‥‥‥‥と言う事は？」
「ああ、マインドコントロールの勉強もしているかもしれん。進んでる国だからな。」
「先生、判りました。心理学部の人間科学科で修士号を取得していますね。」
「そうか‥‥‥ククッ‥‥‥洋平、やはり使っているかも。」
「んーっ‥‥‥しかし、勉強したからって、それが出来るとは思えんが。」
「いや、洋平、この間も言ったが、掛かりやすい人間を見極める事は出来るぞ。」
「‥‥‥‥‥‥‥仙次郎‥‥‥」
「ああ‥‥‥マインドコントロールではないかもしれないが、それに近い何かをして、女性を勧誘しているかもしれんな。」
「目的は、単なる金儲けだと思うんだが。」
「単純に考えて、それ以外ないだろうな。」
「んー‥‥‥‥しかし、よく理解できないんだが、つまり、マインドコントロールって催眠だろ？」
「まあ、そう言えなくもないがな。」
「‥‥‥‥じゃあ、なんなんだ？」
「桂川は、複数ではなく、一対一で勧誘してるんだろう？」
「ああ。」
「深層コミュニケーションかも。」
「何だ、それ？」
「簡単に言えば、日常の意識から浅いトランスに移行した２名以上の間で起きる相互の心理的作用をいうんだよ。」
「心理的作用？‥‥‥‥。」
「ああ、一緒に酒を飲みながら、酔うって状態も一種のトランスだ。つまり、互いに酒を飲んで話題を共有したりコミュニケーションを取るんだが、人間の心理的に、二人きりで、そういう状態になると意気投合する事があるだろう。今までの考えを逆転する場合とか。」
「ああ、確かにな‥‥‥‥‥俺も経験あるよ。」
「誰にでも可能な方法なんだ。」
「つまり、それが催眠なのか？」
「んー‥‥‥説明が難しいんだが、例えば、社会心理学、トランスパーソナル、超心理学、人体科学等の分野に関係して、身近な所では、今言った一緒に酒を飲みながら酔って、浅いトランス状態での一体感から、論理や打算的な関係が変わると言うものもあるし、気功、テレパシー等の領域まで拡張を考えてるな。」
「へぇー‥‥‥」
「先行しているのは、ミルトン‥エリクソン催眠、ＮＬＰなどの覚醒状態における人の深層意識のアプローチがあり、基本的な手法やアプローチを考察して、それを体験して行くと伝統的な精神訓練法と類似性が有り面白いんだが、逆に古典的な深いトランスを使う催眠に対して浅いトランスを使う現代催眠としている人もいる。ちょっと勉強すれば、誰でも出来てしまう。」
「ほぉー‥‥‥で、そのトランス状態の時に勧誘するわけだな。」
「まあ、彼女の方法はわからないが、誘う言葉も巧みなんだろうな。トランス状態、これは、変成意識とも言うんだが定義が必要になる。トランスで有名な状態と言えば、やはり、催眠によるものだろうな。テレビとか、ショーで、よく見るが深い催眠の状態で動物になったり普段の日常生活では取らないような行動をするケースが多いだろう？」
「ああ、よく見るな‥‥‥」
「このような深い催眠は、全体の１０％程度の人しか掛からないらしいが、反対に、全く催眠に入らない人も１０％程度で居るらしい。残りの人は催眠に入るが日常的な意識を持ち、催眠に入っているという意識すら無い。だが、観察者から見ると日常の意識では見られない催眠特有の身体的な状態が観察されるんだ。やはり、簡単なのは、酒を飲ませて説く方法だな。」
「そうか‥‥‥まあ、俺には難しくて、よく解らないが‥‥‥‥」
「とにかく、その団体を解散させて、桂川を退社させればいいんだろう？」
「ああ。」
「しかし、どうやって桂川に近づけばいいんだ？」
「まあ、俺に考えがあるから心配するな。」
「考え？‥‥‥‥おい、洋平、彼女も売春をしているのか？」
「ああ。‥‥‥ただし、ＶＩＰ専門だ。」
「ＶＩＰ専門？‥‥‥しゃらくさいな‥‥‥どれ程のもんなんだ、その桂川は。」
「美人だぞ。」
「え？‥‥‥‥‥‥あ、そう‥‥‥」

　佳代を流し目で見る仙次郎‥‥‥‥‥
　佳代は、意味ありげに仙次郎を睨んでくる。

　仙次郎は、咳払いをして話題を変えた。

「しかし、洋平‥‥‥何でＯＬなんだ。」
「そりゃ、人気があるからだろう。社の制服ってのが売りらしいぜ。」
「へぇー‥‥‥そうか‥‥。」
「しかし、何故、桂川は、何の目的で売春組織なんか作るんだろうな？」
「‥‥本当に金儲けだけなのかな‥‥」
「どういう意味だ、洋平‥‥‥」
「皆、金に困ってる連中だと言ったが、もし、そうなら、マインドコントロールなどしなくても、お金を稼げると普通に説得すればいいだろう。どうも納得できないな。」
「勧誘された女性は喋らないんだろう。」
「ああ。」
「洋平、これは、あくまで俺の勘だが、桂川は、誘う女性を徹底的に調べている感じがするんだよ。」
「‥‥‥ん？‥‥‥‥というと‥‥‥」
「つまり、誘う女性が困っているという事を知っていなければ誘えないわけだ。じゃぁ、どうやって、それを見つけるんだ？」
「‥‥‥そう言われれば、そうだな。」
「桂川一人の行動じゃないと思う。誰か協力者が居る。」
「んむ‥‥‥かもな。‥‥‥‥で‥‥‥何故、そう思う。」
「つまりだ。‥‥その協力者を使って、自分の力を見せ付けるんだ。」
「え？‥‥‥なんだ、それ。」
「相手に占いのような事をして、相手を信じさせるのさ。当然、下調べをしているから全て的中させる事は出来る。ま、一種の心理作用を使う訳だ。」
「なるほど‥‥‥‥でも、あくまでお前の勘だろ。」
「まぁ、桂川と接触できれば、いずれ明らかになるがな。」
「とにかく、どうやってコンタクトを取るか調べないと話にならない。売春は、間違いないんだ。どこかに連絡する場所があるはずなんだが。」
「そうだな、それが先決だな。」
「とにかく、もう一度、徹底的に調べて段取りをしてくるぜ。」
「ああ‥‥‥解った。」

　洋平は、急いで、仙次郎の部屋を出ていった。

（‥‥‥しかし、売春か‥‥どうも気になる。）

　仙次郎は、再度、冷静に考えた。

　単に金儲けならば、わざわざ訳の解らない手で洗脳させずとも本当に、金に困った女性を探せばいいことだ。
　今の時代、金に困っていなくても平気で身体を売る女性はたくさんいる。

（絶対、何か理由がある‥‥‥‥）

　仙次郎は、桂川が、そのような組織を作って、金儲けだけのために売春クラブをしているとは思えなかった。

（６１）

　仙次郎が、専門書に集中しながら思考を重ねている最中、佳代が喋りかけてきた。

「先生‥‥‥‥‥そういえば、私、一度だけ桂川と言う人を見たことありますよ。」
「ほぉ‥‥‥何処で？」
「去年なんですけど、空港近くのホテルから中年男性と出てくるのを見た事があるんですけど、その男性は、彼女にお金を渡していたんです。」
「なるほど‥‥‥‥」
「その男性なんですけど、私の記憶違いがなければ、桜クリニックの院長です。」
「桜クリニック？」
「はい。美容整形病院です。よく、雑誌とかテレビにも顔を出しますよ。」
「そうか‥‥‥美容整形というのが気になるな。」
「でも、うちの女性社員を使うなんて、とんでもないですね。」
「まあ、いつになっても世の中にゃ色々と悪どい事を考える奴は居るさ。」
「うちのグループも莫大な社員が居ますから、そういう類いの人間も、やはり居ますよね。」
「ああ‥‥‥‥ま、尻尾出さないだけで、いくらでも居るだろうな。」

　仙次郎は、そう言うと、欠伸をしながら専門書の続きを読み始めた。

「‥‥‥先生、‥‥‥そのぅ‥‥先ほど言っていた催眠なんですけど、掛かる人を見分けられると言ってましたが、先生も出来るんですか？」
「まあ、できない事もないが、やろうと思ったことなんかないなぁ‥‥‥」

　佳代は、意味有り気な視線を仙次郎に送ると詳しくそれを聞き始めた。

「先生、ちょっと興味があるんですけど、教えてくれませんか？」
「ぇ‥‥‥あ、ああ‥‥‥‥‥いいが‥‥‥」

　仙次郎は、怪訝に思いながらも佳代に説明をし始めた。

「まあ、催眠やマインドコントロールといっても、研究が、進められているのは主に、病的な事に役立てる場合や、スポーツの世界で運用する心理的な事とか色々あってな、簡単なものから専門的な器具を用いて行う場合もあるんだよ。」
「どういう場合に、そのような状態が生じてくるんですか？」
「んー、そうだなぁ‥‥‥つまり、脳波が日常のβ波の多い状態から、α波の多い状態に変わっている状態を一種の浅いトランスと定義すると日常的な場面にも多く見られる現象なんだ。 例えば、気とか瞑想など何かに夢中になっている時、音楽を聴いている時、スポーツ中と多種の状況で生じているのさ。その浅いトランス状態で、２人以上の人間が関与する時に生じる非言語コミニュケーションの時に掛かる人は多い。」
「ぇ？‥‥非言語？？‥‥‥‥‥何ですか、それ。」
「‥‥‥‥つまり、意図的に相手をコントロールする技術として使われているんだが、深層交流が起きると嘘作為も伝搬するから深い伝搬を抑制して、潜在意識の浅い部分での交流に限定して長く定着をしないので繰り返しが必要になってくるんだがな。」
「へぇー‥‥」
「その組織や団体によっては、トレナーから錯覚、思いこみをさせるんだ。」
「え‥‥‥‥思い込み？」
「君も解らん人間だな。」
「そ、そんな事を言いわれても‥‥‥‥本当に解らないから‥‥‥」
「つまり、悪徳商法や得体の知れない宗教団体がよく使う手なんだよ。洗脳させてしまうんだ。」
「ははぁーん、悪用の危険が有るわけですね。」
「ああ、だから、おいそれと素人がやるのは危険なんだよ。」
「つまり、桂川は？」
「ま、それに近い事をやっていると思うが、専門に研究しているわけじゃないだろうな。」
「じゃ、なんで‥‥‥‥」
「さっき、洋平にも言ったが、インチキな手を使って相手の女性に自分の実力を信用させてるんだろうさ。」
「‥‥‥‥」
「まあ、洋平が、今から段取りしてくるという事だし、それから、ゆっくりと追い出す作戦を考えるさ。」

　仙次郎は、佳代の質問に対しても暢気そうにしていた。

（なんか、適当にあしらわれているような気がするわね‥‥‥‥）

　佳代は、下心見え見えに仙次郎に質問をしていく。

「‥‥‥‥ね、先生、私に、マインドコントロールを掛けてくれません？」
「だから、出来ないって‥‥‥‥‥‥なんでだよ？」
「‥‥‥いえ、その‥‥‥先生に‥‥‥私を‥‥‥‥」

（‥‥‥また、良からぬ事を考えてるな‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、佳代の心を見透かすように苦笑いを浮かべた。

「君は、そんな事をしなくても十分にエッチになれるから心配しなくてよろしい。」
「そんな‥‥‥私を変態みたいに言わないで下さいよ。」

（‥‥‥‥‥変態といえなくもないが‥‥‥）

「え？‥‥‥なにか言いました‥‥‥」
「ぁ‥‥‥いや、何も‥‥‥‥‥‥そうだ‥‥‥佳代君‥‥」
「はい。」
「掛けてやろう。」
「え‥‥‥‥あ‥‥‥はい‥‥‥‥是非‥‥‥」

　佳代は、半疑な表情で仙次郎を見つめる‥‥‥‥

「ノーパンで、煙草を買ってきてくれたまえ。」
「えぇぇーっ！」
「あ、嫌ならいいんだが‥‥‥君が、掛けて欲しいというから。」
「ぁ‥‥‥‥‥まあ、いいですけど‥‥‥‥」

　ガクっと、肩を落とす仙次郎‥‥‥‥

　仙次郎は、落ち着きを取り戻して佳代に告げた。

「いいかい‥‥‥‥なるべく見られているという意識を持ちながら買ってくるんだ。」
「‥‥‥はい。」
「もちろん、階段を使ってだぞ。」
「そんな、下から誰か上がってきたら見られちゃいますよ。」
「それが、君をＨにするマインドコントロールなんだよ。早く行きたまえ。」
「は‥‥‥はい‥‥‥じゃ‥‥‥」

　佳代は、仙次郎の目の前でショーツを脱いだ。
　穿いているのは、ガードルとガーターだけだった。

「じゃ、行って来ます。」
「ああ、‥‥‥ここに帰ってきた時、君はイク寸前だろうさ。ハハハ‥‥‥」
「あぁぁー、興奮しちゃうぅ‥‥」

　佳代は、そう言って頬を染めながら買い物に出かけていった。

（‥‥‥単純だな‥‥‥‥‥さて‥‥‥食堂にいってコーヒーでも飲むか。）

　仙次郎は、少々、間を取ってから本と資料を持って静かに部屋を出て行った。

☆☆☆☆☆

　仙次郎は、コーヒーを飲み終えて部屋に戻ってきた。

　ドアを開けると、執務室の方から慌しい物音が聞こえる。

（‥‥‥‥ん？）

「佳代君か？‥‥‥‥何やってるんだ。」
「ぁ‥‥‥い、いえ‥‥‥直ぐ行きますので‥‥‥その‥‥‥」

（？‥‥‥何やってんだ‥‥‥‥あ！‥‥‥‥さては‥‥‥）

　仙次郎は、執務室のドアを開けて中を覗いた。

「ぁっ‥‥‥いやぁぁ‥‥‥入ってきちゃだめぇぇーっ‥‥‥」

　佳代は、スカートを慌てて穿いていた。

「‥‥‥‥‥‥何やってるのかね、君は？」
「ぁ‥‥‥そ、その‥‥‥‥ハハ、あ、そう、下着を穿いてたんです。」
「ふぅーん‥‥‥‥指が濡れてるぞ。」
「え？‥‥‥‥ぁ‥‥‥‥‥アハハハハハ‥‥‥」
「ここで、オナるなって言ってるだろう。」

　佳代は、恥しそうに顔を染めるが、思い出したように仙次郎に言い返してきた。

「先生が、ショーツ穿かないで、買い物に行けっていうから‥‥‥」
「買い物に行ってくれとは頼んだが、オナれって言ったか？」
「ぇ‥‥‥‥ぁ‥‥‥ま‥‥‥‥‥そのぅ‥‥‥」

　仙次郎は、笑いを堪えて言い放った。

「しかし、何も、スカート脱いでやらなくてもいいのに。」
「‥‥‥だ、だって‥‥‥皺になっちゃうし‥‥‥」
「‥‥‥まあ、いい。手を洗って、早く仕事したまえ。」
「‥‥‥‥はい‥‥‥」

　佳代は、バッグからポーチを取り出して、ブルーのティーバックを穿いた。

「‥‥‥？‥‥‥佳代君、いつも替えの下着を持ってるのか？」
「ぇ？‥‥‥‥ぁ、はい。‥‥‥‥‥」
「何で？」
「‥‥‥アハハ‥‥‥その‥‥‥いつ、先生に姦られてもいいように‥‥‥」
「姦る？‥‥‥俺に？‥‥‥‥変な言い方するなよ。襲ってるみたいじゃないか。」
「‥‥‥いえ‥‥‥そういう意味では‥‥‥‥」

　佳代は、体裁悪そうにショーツを上げスカートを降ろして服装を整えた。

「‥‥‥あの‥‥トイレに行ってきます‥‥‥」
「ああ、そう‥‥‥‥」

　上目遣いに仙次郎を見て、妖艶な笑みを見せる佳代‥‥‥‥

（‥‥‥しかし‥‥‥彼女は、憎めない性格だな‥‥‥‥素直なんだな‥‥‥）

　仙次郎は、心の中で笑みを見せながら横を通り過ぎようとした佳代を制止した。

「え？」
「‥‥‥ちと‥‥‥気が変わった‥‥かも‥‥‥」
「？」

　仙次郎は、佳代の腰を引きスカートを捲し上げてショーツの中に手を入れた。

「アァーン‥‥イヤァ‥‥‥‥先生ぇぇ‥‥‥‥指入れてぇぇ‥‥‥」
「‥‥‥‥な、何つぅー、順応が早いんだ君は‥‥‥‥」

　笑いながら、そういう仙次郎‥‥‥‥

「だって‥‥‥イク寸前で、先生が帰ってきちゃうからぁ‥‥‥」
「‥‥‥クククッ‥‥‥なら、鎮めてやろう‥‥‥」

　仙次郎は、佳代のショーツを引き摺り下ろすと濡れそぼった亀裂に指を滑らせていった‥‥‥‥‥‥‥‥