（７０）

　仙次郎の元に、洋平と人事部、人事課長の青木が訪れていた。

「久しぶりですね、青木さん。」
「その節は、どうもありがとうございました。」

　青木は、出世欲に駆り立てられていた女性から身体の関係を元に脅かされていたのを仙次郎に助けてもらった男だった。

「それで、今日は、なんですか？」
「ええ、実は‥‥‥私の部下に相談を受けたんですが‥‥‥」
「部下の方ですか。」
「ええ。受付業務ですので、就業中は連れてこれないんです。夕方にと思ったんですが、その前に先生に事情を話しておこうと思いまして。」
「そうですか。‥‥‥‥で、その内容は？」
「はい。近藤律子という女性なんですが、２週間ほど前から事業部推進課の島田という男性からストーカー行為をされて困っているそうなんですよ。」
「事業部？‥‥‥うちの社員ですか？」
「ええ‥‥‥‥それで、余計に困っているんです。」
「で、そのストーカー行為とは‥‥‥どの程度なんです？」
「よほど、ひどいのでしょうか、彼女も詳しく話してくれないんです。彼女曰く、とても仕事どころではないらしく怯えている始末でして。」
「ほぉー‥‥‥で、その島田という男性の上司には話されたんですか？」
「ええ。彼は、事業部の推進課なんですが、課長に話を持っていったんです。ところが、彼は、所謂、エリートでしてね。何とか穏便に済ませれないかと逆に頼まれてしまったんです。その場は、私も引き下がってきたんですが、人事を任されている私にとっては、そういう人間をいくらエリートとはいえ、黙って見過ごす訳にはいかないんです。それで、先生に相談に来たんです。」
「そうですか‥‥‥‥まあ、青木さんもご存知かもしれませんが、ストーカー行為は、犯罪なんですよ。それを認識させた上で説明をすれば、島田という男も諦めるんじゃないでしょうかね。」
「ええ、普通はそうなんですが。」

　困惑する青木をよそ目に洋平が口を開いた。

「仙次郎‥‥‥‥‥実は、この島田という男は、島田常務の甥でな‥‥」
「甥？‥‥‥なるほど‥‥‥警察沙汰は、避けたいわけか。」
「俺は、個人的には追い出したいんだが、常務の甥となると、そう、簡単に追い出しても常務のメンツが潰れるからな。」
「だろうな‥‥‥‥で、青木さん、島田は、当然、認めてないんですよね。」
「はい。間違いない事実なんですが、彼を説得するための完全なる証拠が‥‥‥」
「証拠？」
「ええ‥‥‥‥つまり、付きまとってる素振りを見せないし、直接、声を掛けるわけでもないんです。しかし、写真を撮ったり、無言電話をかけたりと、かなり陰湿なんですよ。」
「なるほどねぇ‥‥‥」
「そして‥‥‥そのぅ‥‥‥‥彼女の下着も盗んでるみたいなんです。」

（プッ‥‥‥‥）
　
　仙次郎は、笑いを堪えた。

「青木さん‥‥‥その島田という男は二つも犯罪を重ねてるじゃないですか。いくら、常務の甥といえども、容赦する必要はないんじゃないんですかね。」
「はぁ‥‥‥ところが、いま事業部は大きい仕事を抱えていまして。再来春、施行予定の空港建設でプロジェクトが完了してるんですが、その‥‥‥つまり‥‥‥‥島田君が、この担当をしていまして。」
「仙次郎、そこが問題なんだ。いま、事業担当を代えるとなると大事になる。それに、共同企業体で進めている事業だ。他社から何を言われるかわからん。」
「んー‥‥‥そうか‥‥‥困ったな。」

　仙次郎は、腕を組んで天井を仰いだ‥‥‥‥

「しかし、最近、ストーカーってのは多いな。病気なのか仙次郎？」
「ああ、まあそうだな。ストーカーの行為は、未熟な心性を持ったまま大人になった人間の心理が典型的に認められるんだ。ストーカーの心理で俺達が理解し難いのは、自分が彼女を愛するという感情が、いつの間にか彼女も自分を愛している。彼女も自分を愛しているはずだ。とか、彼女を所有しているという確信に変化していく。」
「‥‥‥‥なるほど、確かに病気だな。」
「んむ。精神医学による分類で犯罪タイプに当てはまると、島田は彼女を犯しかねないぞ。」
「おい、おい‥‥‥脅かすなよ、仙次郎‥‥‥」
「まあ、そういう事も有り得るという例で言っただけさ。」
「ストーカーにもタイプがあるのか？」
「ああ。ストーカーには大きく分けて、３種類のタイプ、つまり目的がある。恋愛逆恨み型、妄想型、ストレス解消型とな。今の話で判断すると妄想型だが、一度でも、近藤という女性に告白してフラれてたりすると恋愛逆恨み型も考えられるが、まあ、それは、今後、島田の行動を調べないと判断はつかん。」
「何を調べたらいいんだ？」
「簡単に言えば、犯罪を犯すストーカーか、困らせるだけのストーカーかだ。」
「‥‥‥ん？‥‥‥」
「いずれにしても人格障害ならば急がなくてはいかんぞ、洋平っ。」
「わかった。島田の行動は俺が調べよう。」
「んむ。証拠を掴んだ時点で、俺が島田と話し合ってみてもいい。」
「わかった。当分の間、彼女は、公室課長の大隈にガードをつけさせる。」

　洋平は、そう言うと急いで部屋を出て行った。

「青木さん、人事権で、彼女の受付業務を少しの間、外しておいてくれますか。」
「わかりました。では、部長に説明してきます。」
「そうしてください。」

　青木も、仙次郎に頭を下げて部署に帰っていった。

　佳代が、２杯目のコーヒーを仙次郎の前に置いた。

「先生、現場を押さえたら‥‥‥‥」
「んむ‥‥‥ただ、その証拠を掴む前に彼女がひどい目に会うとなぁ‥‥‥」
「難しいですね。」
「ああ‥‥‥‥」

（んーむ‥‥‥ストーカーかぁ‥‥‥‥‥ややこしいなぁ‥‥）

　仙次郎は、溜息をつきながらコーヒーを啜った。

☆☆☆☆☆

　就業１時間前、受付業務を終了した近藤律子が、仙次郎の部屋を訪れていた。

「どうぞ、お座りください。」
「はい。‥‥‥‥‥あの‥‥‥よろしくお願いします。」
「今朝方、青木課長から、貴女のお話を聞きました。ストーカーをされて困っているということですが。」
「‥‥‥‥そうなんです。」
「あまり、多くを喋りたがらないようですが詳しく話して頂けませんかね。」
「ぇ‥‥ええ‥‥‥‥‥」

　近藤は、躊躇しているようだった。

「？‥‥‥‥何か困る事でもあるんですか？」
「‥‥‥‥‥‥ぁ‥‥あの‥‥‥‥私‥‥」

　近藤は、言い難そうだった。

「近藤さん、私を信用してください。あなたの不安を取り除くためです。」
「‥‥‥はぃ‥‥‥‥‥あの‥‥‥絶対に誰にも‥‥‥」
「ええ、言いません。」

　近藤は、大きく深呼吸をすると、ポツリポツリと話をし始めた。

「‥‥‥‥実は、半月ほど前なんですが、島田さんに交際を申し込まれたんです。」
「やはり、そうですか‥‥‥」
「しかし、私は、お付き合いしている男性がいるのでと丁重に断わったんです。」
「‥‥‥‥なるほど‥‥‥」
「‥‥‥その場では、特に何事もなく島田さんも、そういう事ならと諦めてくれたのですが‥‥‥」
「‥‥‥ん？」
「しかし、その翌日から、無言電話が掛かってきたり、頻繁に、私の写真を撮られるようになったんです。」
「写真とは？」
「町を歩いていたり、友人と食事をしている時に私を撮るんです。恐らく、島田さんに頼まれて、私を撮っていると思うんですけど。」
「‥‥‥なぜ、その人を呼び止めないんですか？」
「写真を撮ると、直ぐに逃げてしまうんです。サングラスをしてましたし顔も判らなくて。」
「‥‥‥そうですか。」
「‥‥‥‥‥‥最初は、島田さんの仕業とは思わなかったんですが、何処で調べたのか、私のパソコンにメールが来るようになって‥‥‥」
「メール？‥‥‥誘いの電話ですか？」
「いえ‥‥‥映画チケットいらないかとか‥‥‥‥趣味は‥‥とか‥‥‥」
「つまり、貴女は、まだ島田が諦めていないと思ったわけですね。」
「はい。」
「それで、一つ気になってる事があって‥‥‥‥」
「なんです？」
「私の私生活や、性格とか好みまで知っているんです。」
「え？‥‥‥‥どういう意味です。」
「別に話した訳でも見られてる訳でもないのにメールで昨日はこうだったねとか、もう直ぐ誕生日だねとか‥‥‥‥洋服や下着の好み、使ってる香水の種類まで。」

（んー‥‥‥‥盗撮や盗聴をされてるのかな‥‥‥しかし、不可能だし‥‥‥）

「‥‥‥‥一番、気になるのは‥‥‥‥家の‥‥‥‥‥つまり‥‥‥‥‥その‥‥‥‥靴とか‥‥‥部屋の小物類も無くなってるんです。‥‥‥」
「家に入られた形跡は無いんでしょ。」
「ええ、まったく。」

　仙次郎は、推理した。
　部屋に隠しカメラがあるわけでもない。
　本人も、島田に話している訳でもないのに近藤の詳細を知っている。
　恐らく、誰かが島田に情報を流しているのではないかと考えた。

「貴女の事を詳しく知っている人っているんですか。」
「‥‥‥‥彼くらいしか‥‥‥」
「貴女の彼は、うちの会社ですか？」
「いえ、違います。」
「となると、島田とは、一切関わりはないわけか‥‥‥」
「実は、いま付き合ってる男性は、以前、私と同じ受付業務をしている山脇という女性と付き合っていたんです。しかし、半年くらい前に関係が途切れたんです。」
「え？‥‥‥貴女は、それを知ってたんですか？」
「いえ、私は、それまで、彼が、山脇さんと付き合ってる事など全然知りませんでした。」
「いつ、わかったんですか？」
「ちょうど３週間ほど前なんですが、彼と初めてのデートの時に山脇さんと駅の繁華街で、偶然にも出くわしたんです。彼は、びっくりしてました。その時、私は、初めて彼が、山脇さんと付き合ってた事を知ったんです。」
「‥‥‥‥それで？」
「‥‥‥つまり‥‥‥そのストーカー行為が、始まったのが、更に１週間後、島田さんに交際をお断りした後からなんです。」
「‥‥‥‥ほぉー、なるほど。山脇という女性は、貴女に何か言ってくるんですか？」
「いえ、いつもと変わらず普通に接してくれてます。」
「恨んでいるとか？」
「とんでもありません。まったく、そんな素振りはありません。」
「え？」
「むしろ頑張って、と応援してくれて、本当に優しくて良い方です。」

（人間の心理なんて、そんなもんじゃねぇんだよな‥‥‥‥‥‥山脇か‥‥‥‥）

　仙次郎は、今の近藤の一言で同じ受付嬢の山脇を疑いはじめた。

「ひょっとして、山脇と言う女性もあなたの部屋に上がった事があるのでは？」
「ぇ‥‥‥ええ。‥‥‥先日、近くに来たからとケーキを持って寄ってくれたので。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「でも、山脇さんは、そんな人じゃありません。」
「何故、そう思うんです？」
「あの‥‥‥先ほども言いましたが、色々と相談に乗ってくれるし、仕事の事でもアドバイスしてくれたり‥‥とにかく彼女は‥‥‥」
「‥‥‥‥まあ、内容は解りました。とにかくストーカー行為がなくなれば、貴女の怯えや、心身的ストレスはなくなります。貴女自身に問題があるわけではありませんので心配いりません。」
「ええ‥‥‥でも‥‥‥‥島田さんが‥‥‥」
「証拠は無いが、貴方は、島田の仕業と思ってるんでしょ。」
「‥‥‥‥‥‥仮に島田さんとしても、止めさせる手段なんて‥‥‥証拠もないし。」
「まあ、青木さんにも頼んでおきましたが、暫く受付業務を外します。受付業務は、他人に見られやすいし、見張られやすいですからね。」
「‥‥‥はい。」
「心配しなくて結構ですよ。必ず何とかします。」
「‥‥‥‥お‥‥‥お願いします‥‥‥‥恐くて‥‥夜も眠れないんです。」
「暫くの間、公室課長の大隈さんが貴女をガードします。」
「え？」
「何か、事故があるといけませんので。」
「‥‥‥はい‥‥‥すみません。」

　仙次郎は、さっそく、洋平に電話をして近藤のガードを依頼した。

（７１）

　洋平は、仙次郎から連絡を受けていた。

『洋平、今、近藤君が出て行った。頼むぞ。』
「解った。いま、ロビーにいる。任せておけ。」

　洋平は、大隈に声を掛けた。

「大隈、もうじき、近藤君が降りてくる。」
「わかりました。。」
「俺は、島田の行動をチェックする。ここからは別々だ。」
「はい。」
「お、来たぞ。」

　近藤が、洋平と大隈に気づいたようだ。小さく頭を下げてきた。

「よし、行け。」
「はい。」

　公室課長の大隈は、第三者にも気づかれぬよう近藤の後をガードしながら着いて行った。

　１０分ほど経ったろうか、島田がロビーに下りてきた。

（お、来たな‥‥‥）

　島田は、ホールを出たところで立ち止まった。

（ん？‥‥‥‥おかしいな。誰かと待ち合わせか‥‥‥）

　そこへ、一人の女性が、ゆっくりと島田に近づいていった。

（‥‥‥‥ん？‥‥‥‥あれは‥‥‥）

　島田に近づいていった女性は、近藤律子と同じ受付嬢の山脇博美だった。
　周りを警戒してるのか、落ち着きがない様子だ。
　二人は、軽く会話を交わした後、駅の方に向かって歩き出した。

（？‥‥‥‥どうなってんだ‥‥‥‥‥‥まさか‥‥‥）

　洋平は、二人に気づかれぬよう慎重に尾行を開始した。

　暫くして、島田と山脇は、洋風居酒屋に入っていった。
　間を取って洋平も店内に入っていく。

　二人を探す洋平‥‥‥‥

　島田と山脇は、奥の壁側のテーブルに座っていた。
　運良く、席は、頭上ほどの高さで間仕切りがしてある。

　洋平は、眼鏡をかけて、二人の背後に席を取ると小型録音機のスイッチを押した。

「山脇君、はい、これ。今回の手当だ。」
「ありがとう、島田さん。」

　島田は、そう言って、山脇に茶封筒を渡した。

（‥‥‥‥手当？‥‥‥‥金か‥‥‥）

「君のおかげで僕の夢が近くなってきたよ。」
「フフッ‥‥‥何でも言ってください。」
「しかし、何故、君は、僕が山脇を追っていたのが判ったんだい。」
「だって、島田さん、私、近藤と同じ受付ですよ。就業後、島田さんったら、近藤の後を追っていたんですもの。直ぐに気づきますよ。それに、近藤の付き合ってる男は、私の元彼だし気に入らなくて仕返しをしたかったんです。」
「君も、なかなか陰険な性格だねぇ。」
「フフッ‥‥‥ところで、島田さん、近藤さんを落とせそう？」
「いや、まだだ。時間を掛けて徹底的にビビらせてからじゃないとな。」
「私も、本当に気に入らないの。私をふった男が近藤と付き合うなんて。あの女、ちょっと美人だと思って鼻にかけてるのよ。二人で並んでいても来客は、全部、あの女に近づいていくし。なんとかギャフンと言わせたいの。」
「まあまあ、そう興奮するなって。俺が、絶対に近藤をモノにするさ。」
「なんでも協力するわ。島田さん‥‥‥」
「ああ、これからも情報を頼むよ。あの女は絶対に俺の事が好きなはずだ。」
「それより、島田さん‥‥‥この間の約束‥‥‥」
「解ってる。伯父貴に頼めば、君の渉外部の異動も可能さ。」
「お願いします。受付なんかしてると、彼氏も出来なくて‥‥‥‥」
「フッ‥‥それまでは、俺が君を抱いてやるからさ。」
「‥‥‥島田さん‥‥‥」
「いや、近藤と結婚しても、君は俺の愛人で囲ってやるから。」
「嬉しいわ。それまでは私を自由にしてください。島田さんのためなら何でもします。」「山脇君、君は、可愛い奴だ。近藤が君のような女ならな‥‥‥」
「島田さん、博美って呼び捨てにしてください。私は貴女の奴隷です。近藤が、島田さんの女になるまでは、私も協力を惜しみませんわ。」
「山脇君‥‥‥‥わかった。今日から博美と呼ばせてもらうよ。」
「そうしてください。」
「それより、早く、近藤君のマ○コにぶち込みたいぜ。いつも近藤君の写真見て一人で慰めてるばかりだから。」
「ウフッ‥‥今日は、私のオ○ンコで我慢して。」
「ククッ‥‥‥‥君も好きだねぇ‥‥‥」
「私は、島田さんの性処理女です。島田さんに全てを捧げます。」
「山脇君、いや、博美‥‥‥君の将来は僕に任せてくれ。」
「はい。」
「よし、ここではなんだから、次の作戦は、別の場所でしよう。」
「私の家でどうですか？‥‥‥タクシーで１０分ほどですし。」
「ああ、そうしようか。君を抱きながらな。」
「ぁぁ‥‥‥オ○ンコが濡れてきちゃう‥‥」

　山脇は、そう言って島田のグラスにビールを注いでいった。

（なるほど‥‥‥そういう事だったのか‥‥‥許せんな‥‥‥‥）

　洋平は、トイレに立つと仙次郎に電話をした。

『フッ‥‥‥‥‥なるほど。やはり、そんな事だったか。俺も近藤君から話を聞いて山脇という女性を疑ったんだが。』
「仙次郎、会話は録音した。証拠はこれだけで十分だが、腹の虫が治まらん。」
『いや、それだけでは証拠にならん。それに、島田だけ落としても駄目だ。』
「山脇もだな。」
『ああ。』
「で、他の証拠とは？」
『‥‥‥洋平‥‥‥島田と山脇の部屋に盗聴器を仕掛けられるか？』
「ああ。大隈に頼めば簡単だ。」
『よし、二人は、まだ店を出ないか？』
「まだ、店に入って少ししか時間は経ってないからいいと思うが。」
『よし、さっそく仕掛けてくれ。』
「わかった。今日のところは山脇だけにしておく。彼女の家に行くようだからな。」

　洋平は、電話を切ると直ぐに大隈に電話を入れた。

「大隈か？‥‥‥俺だ。」
『あ、次長‥‥‥今、近藤君が家に入りました。今日のところは大丈夫です。』
「よし。ところで、山脇の家を知っているか？」
『ええ、データはいつも持ち歩いていますので。』
「山脇の家にタッピングを仕掛けてくれ。」
『わかりました。』
「何分で出来る。」
『今から駆けつけて、約５０分ほどで‥‥‥‥』
「よし、なんとか、奴等をひきつけておく。」

　洋平は、電話を切って店内に戻っていった。

　二人を確認する洋平‥‥‥‥‥
　まだ、飲み始めて時間は浅いのだが山脇の顔は火照っている。

（‥‥‥‥‥‥んっ？‥‥‥‥‥‥‥‥‥ククッ‥‥‥馬鹿めらが‥‥‥）

　洋平は、テーブルの下に目を向けた。
　島田は、靴を脱いで山脇のスカートの中に足先を突っ込んでいたのだ。

　山脇は、島田を見つめながらビールを口に運んでいる。
　顔は染めているものの、人目をはばからず、堂々と足を開いて島田の愛撫を受けていた。

（‥‥‥‥この女、相当のクセ者だぜ‥‥‥‥‥見てろよ‥‥）

☆☆☆☆☆

「さて、佳代君、僕の準備は終わったし、後は、洋平と大隅君に任せて帰るぞ。」
「はい。お疲れ様でした。」

　仙次郎は、二人を落とすシナリオを考えていた。

「先生、たまには飲みに連れてって下さいよ。」
「え‥‥‥ああ‥‥‥ま、いいが、君と飲みに行くと後が恐いからな。」
「どういう意味ですかっ。」
「いや‥‥‥またエッチな事を‥‥‥」
「変態扱いしないで下さいっ。しょちゅうエッチしようなんて思っていませんよ。」
「ぁ‥‥はは‥‥‥悪ぃ、悪ぃ‥‥‥‥じゃ、行こうか。」

　仙次郎は、佳代に誤りながら会社を後にした。

/ / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / /

「ねぇぇ‥‥‥先生ぇぇ、いいじゃないですかぁぁ‥‥‥」

　仙次郎と佳代は、今まで、寿司屋で一杯飲みながら食事をしていた。
　美味い酒だと店主に勧められ１本を二人で空けてしまっていたのだ。

「ったく、君って女は‥‥‥社を出る時に言った事と、まるっきり違うじゃないか。」
「え？‥‥‥私、何か言いましたっけ？」
「変態扱いするな。しょちゅうやろうなんて思っていないって言ったじゃないか。」
「そうでしたっけ？」
「‥‥‥‥‥‥な‥‥‥‥忘れたってか？」

　佳代は、仙次郎の腕を掴んで寄りかかってきた。

「先生、お酒飲んで、いい気持ちになった男と女が何も無しで帰るんですかぁ？」
「君は、いつも同じ台詞を言うね‥‥‥‥」
「だってぇ‥‥‥もう、オ○ンコの汁が止まらなくてぇぇ‥‥」
「ば‥‥‥馬鹿者っ‥‥‥声を絞れっつーの‥‥‥」

　周りを歩く者たちが、仙次郎と佳代を見てクスクスと笑っている。
　しかし、佳代は、一向にそんな事は気にしていない様子だ。

「抱いてくれないんだったら、大声出しますよ。」
「ケケケッ、言えるもんなら言ってみろっつーの‥‥‥」

　仙次郎は、鼻先で笑いながら歩き出した。

「みなさぁぁーん‥‥‥この人はぁ‥‥‥」
「ぇ‥‥ゲゲッ！」

　仙次郎は、急いで佳代の口を掌で押さえた。
　まさか、本当に叫ぶとは思わなかったのだ。

「‥‥‥こ‥‥‥このぉ‥‥‥‥‥僕を脅すとは、いい度胸してるな佳代君‥‥」
「だって、先生のオ○ンチン舐めたいんですものぉ‥‥‥」
「アガガッ‥‥‥‥あ‥‥‥‥あほぉぉぉぉーっ！」

　思わず声を上げてしまう仙次郎‥‥‥‥‥
　周りを見ながら、自分らを見る連中に愛想笑いを返す。

「‥‥‥‥佳代君っ、変態と思われるじゃねぇか。」
「だって、先生も私も変態じゃないですか。」
「ハッ、ハッ、ハッ‥‥‥‥ぁ？‥‥‥‥‥き、君と一緒にするんじゃないっ！」

　仙次郎は、一気に酔いが冷めてしまった。

（‥‥‥チッ‥‥‥こうなったら、佳代君を懲らしめてやるか‥‥‥）

「わかった‥‥‥佳代君、じゃ、ホテルに行こうか‥‥‥」
「やったぁー‥‥」

　佳代は、喜びながら仙次郎にしがみ付いてきた。
　タクシーを拾い、車に乗り込むと、仙次郎は、ここから一番近いホテルを指定した。

　二人を乗せたタクシーは、数分でホテルに到着した。

（早ぇーな‥‥‥もう着いたか。）

　仙次郎は、運転手に余分に金を払ってタクシーを降りた。

「さて、佳代君、入ろう。」
「はい。」

　仙次郎の後に続く佳代‥‥‥‥

　部屋に入った仙次郎は、早速佳代の服を脱がした。

「イヤァーン、先生ったら、せっかちぃぃー‥‥‥」

（馬鹿者、早く縛って、俺は寝るんだよ。）

　仙次郎は、心の中で、そう呟きながら、服を脱がしていく。

「さ、佳代君、ベッドに仰向けに寝て。」
「はい‥‥」

　佳代は、何も疑う事無く仙次郎に従った。
　仙次郎は、クローゼットの中から帯を取り、佳代の両手首を縛って、ベッドの上部に固定した。
　両足首にも帯を結びベッドの足に固定する。

（さてと‥‥‥‥）

　部屋を見渡す仙次郎‥‥‥‥

（お‥‥‥いいもんがあるじゃねぇか‥‥）

　ベッドの横にあるボード上に、市販品であろう小型のマッサージ器が置いてあった。
　仙次郎は、それを手にすると、マッサージ器の丸い部分を佳代の女芯に当ててスイッチを押した。

「ウゥゥゥーン‥‥‥‥ァァァー‥‥‥気持ちいぃぃぃぃぃぃー‥‥‥」

（よぉーし‥‥‥いけそうだな‥‥‥）

　仙次郎は、一旦スイッチを切ってバスタオルを帯状に折りマッサージ器を女芯に当てて、バスタオルで固定した。

「ァァッ、ァァァ‥‥‥先生、何やってるんですかぁ‥‥早くぅぅぅ‥‥」
「ああ、わかった。」

　仙次郎は、マッサージ器がずれないよう強固に固定するとスイッチを押した。
　軽いモーター音と共に佳代の女芯を刺激していく。

「ウッハァァァァァァァァー‥‥‥‥‥凄くいぃぃぃぃぃぃー‥‥‥」

　仙次郎は、笑みを浮かべると冷蔵庫からビールを数本取り出しソファに座った。

（さて、飲みなおすか‥‥‥）

　仙次郎は、佳代の喘ぎ声を聞きながら美味そうにビールを飲み始めた。

　頭を振り、快感に酔いしれる佳代‥‥‥‥
　仙次郎は、そんな佳代を見ながら２本目、３本目とビールを開けていく。

　そして、知らず知らずのうちに深い眠りについていった。