（８）

　名倉は、困惑顔で仙次郎を見た。

「これを‥‥‥‥ですか‥‥‥」
「ええ、そうです。」
「‥‥‥‥は‥‥‥‥はい‥‥‥‥‥‥」

　名倉は、真っ赤に顔を染め仙次郎から渡されたアダルト雑誌を見始めた。
　おかしな事をすると思いながらも、仙次郎の遣り方を信じようとはしている。
　しかし、一抹の不安が胸のうちを急速に流れていった。

　暫くアダルト雑誌を見ていた名倉だったが、それを見ている自分の状況と妙な素直さに、次第に納得できなくなってきた。
　名倉は、本を閉じて仙次郎に言い放った。

「こんな、卑猥な写真なんか見れませんっ！」
「そうですか‥‥‥‥では、もう結構です。」

　仙次郎は、センサーがはじき出すグラフを読み取った。

　名倉は、仙次郎を真剣な眼差しで見つめている。

　仙次郎は、ノートを手に持ち、名倉に質問を開始した。

「ご主人が亡くなったのは、１５年前でしたね。」
「ええ‥‥‥‥そうです。」
「貴女は、ご主人と結婚する前に、ご主人以外の男性と交際した事はありますか？」
「あの‥‥‥‥‥‥」
「つまり、体の関係をもった男性はいましたか？」
「いえ‥‥‥主人が初めての男性でした。」
「ご主人が、まだ生きて居られる頃、セックスは週何回でした？」
「えぇっ‥‥‥そ‥‥‥それは‥‥‥」

　隣の部屋で、佳代は、ドキドキしながら仙次郎の質問を聞いていた。

（先生‥‥‥‥そんな事まで聞くんですか‥‥‥‥‥）

　佳代は、首を傾げながら仙次郎の質問に疑問を持ち始めた。

「高輪先生‥‥‥‥それが悩みを解消するのに必要な質問なんですか？」
「もちろんです。私も遊びで仕事をしているわけではありません。」

　名倉は、顔を赤く染めていた。
　躊躇しながらも、仙次郎の質問に渋々答え始めていく。

「２、３回はありました。」
「つまり‥‥‥‥‥性による快感は経験していたわけですよね。」
「‥‥‥‥快感‥‥‥‥です‥‥‥か‥‥‥」
「つまり、気持ちいいとか‥‥‥また抱いて欲しいとかいうことです。」
「‥‥‥‥そ、それは‥‥‥‥‥まぁ‥‥‥‥ええ‥‥‥‥」
「それが楽しみでもありましたか？」

　名倉は、恥しくて応える事が出来なかった。
　下に目を向けたまま返事をしない。

「名倉さん‥‥‥私は、からかっているんじゃないんです。大事な質問なんです。口外もしませんし信用願いますか。」

　名倉は、大きく深呼吸して仙次郎を見た。

「はい。‥‥‥‥いつも夜になると、期待でソワソワすることも‥‥‥」

　仙次郎は、特に表情を変える事無くノートにペンを走らせる。

「ご主人が亡くなられてから、お付き合いした男性は？」
「い‥‥いえ‥‥‥娘を育てる事と仕事に精一杯で。」
「既に１５年、大切なご主人ではあったけど、いい意味で影は薄らいでいると思いますが。」
「‥‥‥‥？‥‥‥‥どういう意味でしょう？」
「仮に貴女に興味を示す男性が現れたらお付き合いできますかという意味です。」
「‥‥‥‥‥私‥‥‥‥‥よく、わかりません‥‥‥」
「異性に対して敏感になったことはありませんか？　興味が湧くとか‥‥」
「それは‥‥‥‥」
「実際、お付き合いしてる男性はいないのですね？」
「‥‥‥この歳になって‥‥‥お付き合いできる男性なんか‥‥‥」
「そうですかね‥‥‥私は貴女がとても魅力的に思えますよ。」
「‥‥‥い‥‥‥いい加減な、お世辞を言わないで下さいっ！」

　名倉は、感情を露にして怒鳴った。
　至って、クールに答える仙次郎‥‥‥‥

「お世辞なんて言うつもりなんかないんですけどね。」
「４０過ぎて、顔にも皺が出てきて、身体の線も崩れているのに、一体、どんな男性が、私なんかに声をかけてくれるんですかっ？」」

　仙次郎は心の中でほくそ笑んだ。
　名倉が、これほどまで感情を剥き出しているという事は、この質問の意が、的中している証明でもある。

「名倉さん、４０過ぎて小皺一つ無い女性などいますかね。確かに中には、５０台でも皺一つ無い女性はいます。しかし、ほんの僅かな人ですよ。私は、その年代の美しさがあると言っているんです。自分で輝かないと。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「男性が敬遠しているんではなく、貴女が知らず知らずに自分の懐に入れないようにしているんじゃありませんか？」
「それは‥‥‥‥私には‥‥‥‥‥‥‥‥」

　名倉は、思い当たる節があるのか小声になっていく‥‥‥‥

「結論を言いましょう。‥‥‥‥セックスしなさい。」
「！‥‥‥‥‥そ‥‥‥そんな‥‥‥‥」
「貴女は、セックスの快感を知っている。楽しみをね。しかし、早くにご主人を亡くされた。あなたは、娘さんを育て仕事を必死に頑張ってきた。つまり今まで生きる糧があったんだ。ところが娘さんが自分の手から離れた。仕事も順調で生活も不自由していない。今まで考えもしなかった事を思い浮かべるようになったんです。そう‥‥つまり体の欲求のはけ口をね。貴女は正常なんです。」
「‥‥‥‥‥‥‥ゎ‥‥‥私は‥‥‥‥」
「名倉さん、何も結婚しろといっているわけではありません。ま、貴女にその気があれば、それは構いませんが。‥‥‥つまり、私が言いたいのは、適度に自分に褒美を上げることなんです。快楽‥‥‥‥つまり‥‥‥‥性交のね‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥そ‥‥‥‥そんな‥‥‥簡単に‥‥‥‥」

　憤りを表しながら仙次郎を見る名倉‥‥‥‥
　仙次郎は真剣な眼差しで名倉に言い放った

「思考過敏性症候群／異性ブロック‥‥‥‥です。」
「‥‥‥‥‥？」
「これが貴女の心の病の名です。かのベトナム戦争で、戦死した兵士の妻達が１０年後、２０年後に経験した症状と貴女は同じなんです。」
「！」
「彼女達も子育てと生活に必死だった。この心理を研究した人が居るんです。その博士は、必ずしも、そういう症状が出ない女性らに着目したんですよ。統計を取り、あらゆるデータを究明したら、明らかな結果がでたんです。」

「未婚者は一人もそういう状態にならなかった。結婚して子供がいる女性にしか現れなかったんです。つまり、既婚で性経験者、それも、その快感や開放術を知っている女性です。‥‥‥‥‥まったく貴女に当てはまる事例なんですよ。」
「‥‥‥‥‥わ‥‥‥‥わたし‥‥‥‥‥」
「お子さんが手から離れた。仕事も順調で余暇を持て余す時間があるから、昔の事を思い出してしまう。特に楽しかった事や、今まで出来なかった事を想像してしまう。貴女と同じ境遇の人は、必ず経験します。勿論男性でもね。名倉さん、‥‥‥‥‥貴女は、異常ではないんです。安心していいですよ。」

　名倉は、仙次郎の説明で、心の中に詰まっていたモヤモヤが、吹き飛んでいた。

「た‥‥‥高輪先生‥‥‥‥‥‥」
「名倉さん、貴女の苦汁の原因は、それなんですよ。」

　仙次郎の優しい笑みが、名倉の心を癒していった。

　遠い視線で何かを考えていた名倉は、小声で仙次郎に話し掛けた。

「高輪先生‥‥‥‥‥あの‥‥‥‥よく解りました‥‥‥‥それで‥‥‥‥もう一つ、ご相談が、あるのですが‥‥‥。」
「はい。‥‥‥なんでしょう？」
「あの‥‥‥どうしたら‥‥‥‥‥その‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥異性と付き合ったり‥‥関係を‥‥と言う事ですか？」
「ええ、よろしかったら。‥‥‥‥取り戻したいんです‥‥‥その女性らしさを。」

　仙次郎は、名倉の全身を観察した。
　こめかみの部分に多少白い物が見かけられる。
　化粧は薄く質素な感じであるが、意外と美形な感じだった。

「これは、私の専門ではありませんが、女性ホルモンの分泌量が影響するんです。」
「‥‥‥はい‥‥‥」
「先ほどもいいましたが、長い期間、性交をしていないとホルモン分泌が上手く働かないんです。女性が綺麗になるには、何も性交だけではなく内面的なことも大きく影響していきます。例えば、仮想でもいいから恋をしてみるとか‥‥そうですね‥‥‥‥男性と食事をしてみるとか。」
「‥‥‥‥で‥‥‥でも‥‥‥」
「名倉さん、そういう方は居ないのですか？」
「‥‥‥‥‥同期は、男性ばかりですし‥‥‥その男性管理職も恐らく‥‥‥そう‥‥‥つまり、私を女として見ていないかも。」
「‥‥‥それは、あなたが優秀でライバル視してるからでしょうね。」
「‥‥‥‥ええ‥‥‥‥そうかも‥‥‥‥‥」
「解りました。私でよければ食事くらいお付き合いしますよ。」

　名倉は、驚いた表情で仙次郎を見た。

「‥‥‥せ、先生が‥‥‥ですか？」
「ご心配なく。‥‥‥‥‥食事に付き合うだけです。鬱憤をぶちまけてください。スッキリしますよ。」
「あ‥‥‥‥ありがとうございます。‥‥‥‥あの‥‥‥‥では‥‥‥」
「はい？」
「‥‥‥‥今夜でもよろしいでしょうか？」
「ええ‥‥‥解りました。５時半に社門の前で待ってます。」

　名倉は、先ほどとは打って変わって明るい表情になった。
　暗い雰囲気が、取り去られ一気にあか抜けていく。

（ふむ‥‥‥心痛を取り去るだけでも女性は綺麗になるな‥‥‥）

　仙次郎は、名倉を見てそう思った。

★★★★★

「先生、ビックリしました。」

　佳代が、デスクに戻ってきた仙次郎に興奮気味に喋りかけた。

「何が？」
「つ、つまり‥‥その、あんな変な本を読ませたかと思えば、エッチな質問して納得させて‥‥‥‥最終的に名倉課長の雰囲気までを変えさせてしまって。」
「これが、本物のメンタルクリニックだ。何かの受け売りや根拠のない話をしても当の本人は、納得しない。つまり、相談に来た人間を全て真っ裸にして曝け出す。それを拒む人間は、どんな優秀な心理学者や精神科医でも治す事は出来ないんだ。」
「‥‥‥‥‥え？」
「そうだな‥‥‥例えばだが、臨床心理学だと、死を告知された人をどうやって落ち着かせるか、納得させるか、覚悟をさせるか‥‥と言う事に似ているんだ。」
「はぁ‥‥‥」
「死ぬって解ってるのに、何を今更って思う者‥‥反面、恐怖を取り除いてほしいと思う者‥‥‥恐怖に打ち勝てず自殺してしまう者、人それぞれだが心理学と言うのは、その人の内面にもつ思考を改造してやる事なんだよ。」
「改造‥‥‥」
「ああ。人の心を改造するほど難しい学問は無い‥‥‥と僕は思ってる。」

　佳代は、仙次郎の説明に、底知れぬ感激を覚えた。

　仙次郎は、口笛を吹きながらノートに書き込んだデータをパソコンに入力していく。
　佳代は、仙次郎を見つめているうちに子宮が痺れていくのがわかった‥‥‥‥

「‥‥‥‥あ‥‥‥‥あの‥‥‥先生‥‥‥」
「ん？‥‥‥なんだい‥‥‥」
「私も、今度‥‥‥その‥‥‥お食事に誘っていただけます？」
「ああ、いいよ。」
「本当ですかっ？」

　手を休めて佳代を見る仙次郎‥‥‥‥

「そんなに嬉しいの？」
「え、ええ‥‥その、私、先生と‥‥‥‥」

　仙次郎は、咳払いをしてそれ以上の会話を中断した。

（‥‥‥‥‥‥一度、彼女の性格も調べておかないといかんな‥‥‥‥）

　仙次郎は、そう思いながらデータ入力の続き始めた。

（９）

「高輪先生、お待たせしました。」

　名倉が、社門で待つ仙次郎に駆け寄ってきた。

「では、行きましょうか。」
「ええ‥‥‥」

　仙次郎は、名倉を伴って駅前の繁華街に向かった。

　名倉は、胸が高鳴っていた。
　プライベートで男性と肩を並べて歩くのは、亭主が亡くなって依頼、初めての事だからだ。

　仙次郎は、名倉を和風パブに連れて行った。

「さて、名倉さん、好きなものを食べてください。」
「はい。」
「お酒は、飲めるんですか？」
「もう、何年も飲んでいないのですけど‥‥‥‥今日は‥‥‥飲みます。」

　照れくさそうに、そう言う名倉‥‥‥‥
　仙次郎は、優しく微笑みながらビールを注文した。

「‥‥‥‥‥では、乾杯！」

　仙次郎と名倉はグラスを重ね合わせた。

「名倉さん、先ほどとは、全然、雰囲気が違いますよ。」
「え？」
「とても、綺麗に見えます‥‥‥‥‥」

　名倉は、はにかみながら下に俯いた。
　独り言のように名倉が呟く‥‥‥‥

「私‥‥‥‥自分自身で心を閉ざしていたんだと思います。」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥仕事も男性並みに出来て、出世も早く、ある意味、男を寄せ付けないキャリアウーマンを気取っていたのかも。私は、それに気づかなかったんです。でも、先生の助言で目が覚めました。本当に根っから自分を愛さないとって。」
「それが解れば大したもんですよ、名倉さん。」
「更に言うならば‥‥‥男性に興味があるのに仕事と今の地位が邪魔をしていたんだと思います。その年代の美しさがあるって先生、言われましたよね。‥‥‥‥‥私、欲が出てきました。」
「それでいいんですよ‥‥‥それが正常な女性の心理です。」
「はい。」
「さ、飲みましょう。」
「ええ。」

　仙次郎と名倉は、楽しく会話を交わしていった。
　仙次郎の面白おかしい話や体験談を聞いて名倉は笑い声を上げた。

　酒が進むと、仙次郎は、アダルトな会話を進めていく。
　名倉は、顔を染めながらも興味深々で耳を傾けた。

　次第に、名倉の眠っていた性欲が音を立てて目覚め始めた。

「先生‥‥‥‥私‥‥‥‥‥‥今、凄くエッチな事を‥‥‥‥」
「え？‥‥‥はは‥‥‥‥少し卑猥な話をし過ぎたかな？話題を変えましょうか。」

　名倉は無言で首を振った。
　心臓が口から飛び出しそうな状態だった。
　言いたい事を我慢しているようにも思える。

　仙次郎の繊細かつ的確な洞察力と観察力で名倉の心は読み取られた。

（‥‥‥‥‥‥年上の女性は初めてだが‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、名倉に恥を掛かせないよう自ら誘いを掛けた。

「名倉さん‥‥‥‥今夜、貴女を抱かせてください。」

　名倉は、その言葉に驚いた。
　心臓の音が周りに聞こえるのではと思えるくらい高鳴っている。

　顔を上げ仙次郎を見つめる名倉‥‥‥‥

「ぁ‥‥‥あの‥‥‥‥わ‥‥‥私‥‥‥‥‥‥‥」
「私では、駄目ですか？」

　名倉は、バッグを手に取ると席を立ってトイレに走った。
　名倉は、涙を浮かべていたようだ。

　仙次郎は、支払いを済ませ名倉が戻るのを待った。

　暫くして席に戻った名倉は、恥しそうに仙次郎を見た。

「支払いは済ませました。名倉さん、行きましょう。」

　小さく無言で頷く名倉‥‥‥‥‥

　仙次郎は、名倉の腰に手を当てて駅前に歩いていった。

★★★★★

　ベッドに座り小さく身体を震わせる名倉‥‥‥‥
　仙次郎は、名倉の手を握り引き寄せた。

「恥しいですか？」
「‥‥‥‥‥ぇぇ‥‥‥‥とても‥‥‥」
「大丈夫‥‥‥‥私も同じです。」

　そう言って、名倉の薄手のスーツのボタンを外していった。
　スカートのホックを外し下着だけの姿になる名倉‥‥‥‥
　両手で顔を覆っている。

　仙次郎も服を脱ぎ上半身裸になった。
　仙次郎は、名倉の手をゆっくりと顔から外していった。
　名倉は、目を伏せている。

「‥‥‥‥高輪‥‥‥‥先生‥‥‥‥」

　そう言うと、仙次郎に飛びつくように抱きついてきた。
　ヒップに手を当て、優しく撫でていく仙次郎‥‥‥‥
　名倉の熱い吐息が胸に当たる。

　仙次郎は、名倉の下着に手を掛けた。
　ビクっと身体を震わせる名倉‥‥‥‥‥

　仙次郎は、ゆっくりと手を恥丘に滑らせ陰毛を通り抜けて亀裂に指を這わせた。

「‥‥‥‥‥ぁ‥‥‥‥ぁぁ‥‥‥‥」

　既に名倉の秘部からは蜜は溢れていた。

「‥‥‥先生‥‥‥‥‥」

　仙次郎は、手の動きを止め、名倉をベッドに優しく倒していった。
　名倉の下着を全て脱がす仙次郎‥‥‥‥‥‥

「先生‥‥‥‥‥で‥‥‥‥電気を消して‥‥‥‥」
「名倉さん、貴女の身体を見たいんです。」

　名倉は、恥しさを隠すように仙次郎の首に手を回していった。
　項から脇へ‥‥‥そして乳房に指を巧みに滑らせていく‥‥‥‥。

「‥‥‥‥ァ‥‥‥‥‥ァァァ‥‥‥‥」

　乳首を指で転がしながら、脇腹から下腹部へ移動していく。

「‥‥‥‥‥‥ンッ‥‥‥‥‥‥ゥゥゥゥゥ‥‥‥‥‥‥」

　名倉は、声を絞っていた。
　１５年ぶりに男性に抱かれる感触を忘れていたのだろうか。
　直ぐには、快感を口に出せないでいるようだ。

　仙次郎は、念入りに愛撫を繰り返した。
　蜜壷から溢れる蜜を掬い、亀裂を上下に這わせているだけである。
　１５年間、性交をしていない女性は、膣の周りの筋肉が収縮してしまっている。
　指といえども、いきなり挿入をすると痛みが走るからだ。
　丁寧に、そして慎重に愛撫を繰り返し蜜を増量させていく。
　仙次郎は、頃合と見て小指を蜜壷に挿入した。

「ゥゥ‥‥‥‥アァァァァ‥‥‥‥‥ァァ‥‥‥」

　案の定、入口部分が多少固くなっている。
　仙次郎は、時間を掛けて膣内を摩擦していった。

「ゥゥゥゥゥ‥‥‥‥‥‥アハァァァァァ‥‥‥‥‥」

　膣内に指を這わせた仙次郎は、肉襞が滑らかである事を確認した。
　長年、挿入がされないと、細かい突起の発達が止まってしまうのだ。
　仙次郎は、円を描く様に全体に指を滑らせた。

「ハゥゥゥゥ‥‥‥‥‥‥‥‥せ‥‥‥‥‥‥先‥‥‥生‥‥‥」

　何分掛けただろうか‥‥名倉の膣内が突如、緩急し、そして徐々に収縮を開始した。

（‥‥‥‥‥ん？‥‥‥‥‥‥）

　蜜の粘度が高くなってきた。
　名倉の喘ぐ声も自然と漏らすようになっている。

（‥‥‥‥‥そろそろか‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、閉じ気味の名倉の股間に身体を滑らせた。
　肉棒の先を、亀裂に沿って上下させていく‥‥‥‥
　その行為で、名倉の下腹部に力が入った。
　仙次郎は、慌てずに先だけを挿入する。

「‥‥‥ンッ‥‥‥‥ァァァ‥‥‥ゥゥゥー‥‥‥‥‥」

　そして、名倉の両脇腹を掴み、擽るように力を入れた。

「ァ‥‥‥ァァ‥‥‥‥‥ァァァァァァ‥‥‥‥‥‥‥」

（よしっ‥‥‥‥）

　仙次郎は、ゆっくりと肉棒を挿入していった。
　名倉は瞑っていた目を開け仙次郎を見つめる。
　時間を掛けて根元まで肉棒を埋めたとき名倉は開いた口を閉じる事が出きないでいた。

「ハァ‥‥‥‥ァッ、ァァ‥‥‥‥‥‥アウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥー‥‥‥‥」

　暫くその状態を維持した仙次郎は、苦痛を訴えていない名倉を確認しゆっくりとスライドを開始した。
　締め付けは強かった。まだ完全に膣内の収縮は働いていないものの、徐々に肉襞の蠢きは感じ取れる。

（もうちょっとだな‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、慎重だった。
　ここで慌てると、苦痛を伴う上、性交恐怖症にもなる。
　ゆっくりと、スライドを繰り返しながら女芯を刺激し蜜の分泌を停止させないようにした。

「‥‥‥ウゥッ‥‥‥ァァァ‥‥‥せ‥‥‥先生‥‥‥‥ィィィ‥‥‥ッ‥‥」

　仙次郎は、３０分程、今の状態を継続した。

（‥‥‥いくか‥‥‥）

　仙次郎は、スライドするスピードを上げていった。
　名倉は、遂に遠慮のない声を上げ始める。

「アハァァァ‥‥‥イィ‥‥‥イィ‥‥‥‥‥イィィィィィィーッ！」

　名倉は、昇天寸前だ。
　仙次郎は、名倉に覆い被さり腰を動かした。
　凄い力でしがみ付いてくる名倉‥‥‥

「ゥゥ‥‥‥アッハァァッァァァァァァァァァァァァァァー‥‥‥」

　大絶叫と共に名倉は果てた。

（‥‥‥よし‥‥‥と‥‥‥）

　同時に名倉の全身の力が抜け、グッタリとなる。
　仙次郎は、今がチャンスと力強く肉棒を打ち付けていった。
　名倉は、自分の性器が覚醒していくのが解った。
　内部全体が、微妙ではあるが動き出したのだ。

「‥‥‥‥ぁぁ‥‥‥‥‥ゥッ‥‥‥ゥッ‥‥‥‥ま‥‥‥また‥‥‥また‥‥‥」

　グッタリしていた名倉の目の色が、再度、艶っぽい輝きに戻る。

「‥‥‥‥ぁぁ‥‥‥も‥‥もっと‥‥‥‥‥‥もっと、強くぅぅぅぅぅーっ！」

　仙次郎は、もう安心と判断し、名倉の腰を掴んでひきつけると共に肉棒を強く打ち込んでいった。
　名倉の身体全体が、打ちつけの振動で小刻みに揺れる。
　名倉は、首を激しく振りながら快感を満喫していた。

「‥‥‥イヤァァッァー‥‥‥‥イクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥー‥‥‥‥‥」

　仙次郎も、同時に熱い分身を名倉の蜜壷に吐き出した。
　肉壁に当たる熱い衝撃が名倉の本能を呼び戻していく。

「んー‥‥‥‥ぅぅぅ‥‥‥‥ぅぅぅ‥‥‥ぅ‥‥‥ぅぅ‥‥‥」

　ゆっくりと肉棒を引き抜く仙次郎‥‥‥‥‥‥
　大きく息を吐きながら額の汗を拭った。
　名倉は、朦朧とした表情で顔を横に向けグッタリとしている。
　瞳からは、大粒の涙が一滴、頬を伝ってシーツに落ちていった。

（‥‥‥‥素敵ですよ‥‥‥‥‥名倉さん‥‥‥‥）

　仙次郎は、安堵の溜息をつきながら名倉を残し浴室に向かった。