（８２）

　仙次郎は、成田弘治を部屋に呼び寄せていた。
　怪訝そうな顔をして仙次郎と向かい合う成田‥‥‥‥

「急に、お呼びだてしてすみません。」
「あのぅ‥‥‥私に何か？」
「ええ。公室次長の西条から貴方の事を頼まれましてね。」
「？‥‥‥‥西条から‥‥‥‥」
「そうです。西条と貴方は同期ですってね。」
「‥‥はぁ‥‥‥ところで、何を西条から頼まれたんですか‥‥‥‥」

　成田は、怯えた表情で仙次郎に問いただした。

　仙次郎は、成田に女房が徳田常務と関係している事を話す決心をしていた。
　黙っていても、噂を流した者が何らかの形で成田の耳に入れれば当然騒ぎ出して公になってしまう。
　それを機に、スキャンダルに持ち込んでいくことは明白であるからだ。

「成田さん、今から話すことは、全てが解決するまで誰にも漏らさないと約束してください。いいですね。」
「‥‥‥ぇ？‥‥‥は、はぁ‥‥‥‥‥」
「実は、今、大事な調査を西条が行っています。」
「大事な？」
「成田さん、貴方の奥さんは、徳田常務と身体の関係があるんです。」
「！‥‥‥‥‥‥な‥‥‥‥なんですってーっ‥‥‥‥‥う、嘘でしょ。」

　成田は、驚いた表情で仙次郎を見つめた。
　とても声を発する事が出来ないでいる。

「驚きましたか？‥‥‥ある社員から社長公室に密告があったんです。」
「な‥‥‥‥‥そ‥‥‥‥‥‥つ‥‥‥‥‥‥妻は‥‥‥‥‥‥あの‥‥‥」

　仙次郎は、成田を落ち着かせながら話を始めた。

「貴方の昇格と不正隠滅のためにね。」
「わ‥‥‥‥私は、昇格など望んでいませんよ、興味ないんです！　それに、不正ってなんですかっ？　私は、不正などした事など一度もありません。誰ですか、そんな噂をバラまいているのは！」
「まあ、そう興奮なさらずに‥‥‥だから、騙されているんです。」
「‥‥‥‥‥ウゥ‥‥クッ‥‥‥そ‥‥‥‥‥い、一体‥‥‥‥‥」
「どうか心配なさらずに。貴方と奥さんには、罪はありませんから。しかし、奥さんが何らかの形で、何者かに騙されて、言葉巧みに説得されて徳田常務に近づかせた事までは判っているんですがね。」
「‥‥‥‥え？‥‥‥ど、どういうことなんですっ。」
「同じ部署に間坂という男がいるでしょう。」
「‥‥‥え‥‥‥ええ。」
「奴なんです。」
「か‥‥‥間坂が？」

　仙次郎は、洋平に聞いた内容を全て成田に説明した。

「えぇぇぇーっ‥‥‥‥そ‥‥‥それじゃ‥‥‥女房は‥‥‥」
「‥‥‥ええ、騙されたんです。そして、徳田常務は、部下である貴方の昇格と不正を隠す理由で奥さんと関係し、寝取ったという形をとらせてスキャンダルにさせるつもりなんですよ。間坂は、ライバルの原田常務と親しい関係にあると思われます。まあ、徳田常務も自分から誘ったのではありませんし、貴方の奥さんの方から言い寄ったわけですから責めるにはちょっと気の毒な部分もあるんですけどね。まあ、しかし、綱紀粛正と言う意味では、徳田常務も、もうちょっと立場を考えた行動をしないと。」
「‥‥‥‥‥そんな‥‥‥‥しかし‥‥‥」
「‥‥‥‥貴方の奥さんは、貴方のためを思ってやってるんです。恐らく、今、貴方が会社で窮地に立ち困っているという様な事を言われたんじゃないでしょうかね。助けたければ、と、言葉巧みに奥さんに何物かが近づいて、説得したんだと思いますよ。当然、ご主人の貴方の耳に入れない方がいいとも言われてるでしょうね。」

　成田は頭を抱えたまま身動きしなかった。

（‥‥‥‥！‥‥‥そういえば、あの時‥‥‥）

　成田は、頭を上げ仙次郎に呟いた。

「‥‥‥そういえば‥‥‥‥確か、先月でしたか、女房が私にこう言いました。会社の事で何か悩んでない？　とか、何かあったらなんでも私に言ってとか。」
「なるほど‥‥‥‥恐らく、その時ですね。」
「‥‥‥‥じゃ、家内は、そのときから‥‥‥」
「でしょうね。貴方のために、常務に身を投げたんです。騙されてね。」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「成田さん、奥さんを責めてはいけません。貴方を思っての事なんですから。」
「‥‥‥‥ぅぅ‥‥‥」
「いま、早急にカタをつけるため、社長公室の連中が必死になっています。その間、貴方のその機能不全とも言うべき弱い性格を私が改善しようと思います。昔の貴方のように、活発で精力的な人間に戻るようにね。」
「え？‥‥‥‥‥‥ぁ‥‥‥あの‥‥‥」
「西条から話を聞きました。貴方は優秀だったんでしょ。」
「‥‥‥‥‥‥」
「過去、貴方に何があったか知りませんが、色々とお話を聞かせてください。」

　成田は、暫くの間、一言も喋らずに黙っていたが、何かを決意したのかポツリポツリと仙次郎に話をし始めた。

「‥‥‥‥１０年前なんですが、当時、設計課に居る時に、ペアを組んでいた部下が、失敗を苦に自殺したんです。」

　仙次郎は、静かに相槌を打ちながら続きを聞いた。

　成田は、以前の部署である建築部設計課の係長時代に部下の一人を自殺という形で亡くしていた。
　年代的に最も活発で、仕事もよくこなし、残業など苦とも思わず突っ走っていた年代だった。
　ところが、この事件で色々な問題が成田の身に降りかかった。
　無理強いさせたのではないかとか、完ぺき主義のために強制させたのでは、という噂が飛びかったのだ。
　実際は、設計ミスにより、開発と契約を取り消されたのを苦に部下は自殺をしてしまったのだが、しかし、成田は、言い訳をしなかった。
　死んでまで、責任を取った部下をそれ以上惨めにしたくなかったからだ。

　部下の自殺とともに、成田も性格が一変してしまった。
　部署を変わっても職位上、部下は存在する。
　成田は、その精力的な性格から、また頑張りすぎると二の舞を踏むのではないかという恐怖心を抱くようになっていたのだ。

　かといって、その担当部署の業績を落とす事は出来ない。
　遂には、部署と部下を守るために、周囲を気にするようになっていったのだ。
　常に完ぺき主義であった成田の性格は、１８０度変わり受身がちになっていった。
　軽い心身症を伴うようになり、家庭での生活も歯車が狂い始めてきた。
　そんな自分と葛藤しながら、成田は、自分の行為を漠然と見るようになってしまっていたのだ。

　仙次郎は、延々と２時間にも及ぶ成田の話を一言も口を挟まずに聞いていた。

「もう一度‥‥‥‥もう一度、命を掛けれるような仕事がしたい‥‥‥しかし‥‥‥」

　成田は独り言のように、そう呟いた。

（‥‥‥‥‥辛かったろうな‥‥‥‥‥ストレス関連の障害があるのは間違いない。）

「先生‥‥‥‥自分でいけないとは解ってはいるんです。しかし、この１０年で、私は、自尊心を失ったんです。」

　成田は、小声で呟きながら頭を抱えていく‥‥‥‥‥

「‥‥‥‥‥‥‥」

　仙次郎は、成田の今の話と行動、言動、考え方、悩みを総合し、その症状を考えていた。

（‥‥‥‥‥アダルトチルドレンに限りなく近いな。‥‥‥‥）

　成田を見つめる仙次郎‥‥‥‥

　仙次郎は、それを判断するために、今度は逆に成田に質問を開始した。
　成田は、何度も詰まりながらではあるが、的確に詳しく話をしていった。
　更に１時間ほど掛けて質問を終えた仙次郎は、確信した。

（間違いないな‥‥‥）

「成田さん、貴方は、アダルトチルドレン症候群ですね‥‥‥」
「‥‥‥アダルトチルドレン症候群？」
「ええ。」
「あの‥‥‥何ですか？　大人のような‥‥‥子供？」
「いえ、意味は全く違います。アダルトチルドレンという言葉は、元々、アメリカでアルコール依存症の臨床治療の中から生まれた言葉なんです。アルコール依存症の問題を抱えた、その家族生活の中で成長した大人を意味していたんですけどもね。」
「‥‥‥‥私は、アルコール依存症なんかじゃ‥‥‥‥」
「いや、アダルトチルドレン症候群は、必ずしもアルコール依存症の問題を抱えた家族の中で育った人だけの特徴ではない。という認識が、我々、専門家の主流的な考えなんです。色々な特徴がありましてね。」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「まあ、これらの一群の人々を特徴づける共通の症状をアダルトチルドレン症候群と呼んだんですが、注意すべきなのは、アダルトチルドレンは診断のための厳密な医学用語として定義されているのではなく、自らの生き難さの理由を自分なりに理解しようと努める人が辿りつく、自身に関する一つの自覚であるという点です。」
「あの‥‥‥私の、その思考が‥‥‥‥」
「ええ、今、貴方から聞いた行動や考え方を想像すると当てはまるんですよ。」
「‥‥‥そ‥‥‥そうですか‥‥‥つまり、どういう‥‥‥‥」
「貴方が、先ほど私に話してくれた特徴がです。」
「‥‥‥‥？」
「貴方の、アダルトチルドレンに共通する思考特性と行動特性ですよ。」
「特性？」
「ええ。貴方は、部下の自殺から、仕事の全てにおいて恐怖心が湧くようになった。しかし、仕事に熱意がないわけではない。人からの評価をいつも気にしており、周囲に合わせて振る舞おうとするようになった。まあ、いたし方がない事ではあるかもしれません。そして、貴方の元々持つ完璧性のため何もできなくなるが、それを批判されると、ひどく極端な行動をしやすくなるんじゃないでしょうか。」

　思い当たる節があるのだろう。成田は俯きながら呻いた‥‥‥‥

「‥‥‥‥ぅぅ‥‥‥‥‥」
「そして、自己評価が低く、それを防衛するために尊大で誇大的な考えを抱いている。見捨てられるのが怖くて、他人の誘いや要請を拒否できない。更には、 しがみつきと愛情を混同するようになる。そう、特に家庭において‥‥‥そして、最愛の奥さんに対してね。」
「し‥‥‥しかし‥‥‥‥」
「貴方は、家庭においても会社においても、人の背後にある悪意等を読みとろうとするけど、かえって孤立し、自尊心を下げてしまう。先ほど、貴方も言いましたがその通りです。感情を素直に表す事が不得手になってしまい表現ができないようになってしまったんです。」
「‥‥‥‥‥‥‥くっ‥‥‥‥」
「自分がどう思われているか気になって楽しめないし遊べない。違いますか？」
「‥‥‥‥‥そ‥‥‥‥‥‥その‥‥‥通りです‥‥‥‥」
「だが、周囲を気にして、楽しくないのに楽しそうに振る舞い怒っているのにそうでないフリをしてしまう。奥さんが貴方に対し、口にこそ出さないが憤慨するのは至極当然です。」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「現状維持に拘り変化を好まなくなる。他人に承認されることを渇望する。つねに他人の承認を要求してしまう。家族の期待からはずれたことを自覚すると自己処罰の感情にとらわれていく。これが、主的症状です。」
「‥‥‥ぜ‥‥‥‥全部、当てはまって‥‥‥います‥‥‥‥」

　仙次郎は、頷くと、更に、要点を成田に説明していった。

「抑うつ的で無力感を訴えるでしょう。その一方、心身症や嗜癖行動に走りやすく、 離人感が伴いやすい。つまり、自分が自分でないような感じで、自分と外界とが薄い膜に隔てられている感じではないですか？」
「‥‥‥は‥‥‥‥は‥‥‥ぃ‥‥‥」
「それが、先ほど貴方自身が言った、自分の行為を漠然と見ている自分がいるような感じという事です。」

　成田は、これでもかという仙次郎の説明で絶望感に襲われていった。

　仙次郎は、小さく深呼吸をしながら成田に囁いた。

「成田さん、これは、貴方の本来の性格ではないはずです。」

　仙次郎の言葉に、成田の持つ希望と前向きな性格が蘇ってきた。

「‥‥先生‥‥‥‥治りますか‥‥‥‥」
「ええ、簡単にね。そして、いま、治したいという気持ちを持っただけで、既に半分は治っているんですよ。要は、思考の改善なんです、成田さん。」
「‥‥‥‥ど‥‥‥どうすれば？」
「私は今、情緒面、思考面、身体面、行動面に分けて示しただけです。アダルトチルドレンが持つ情緒面での中核感情は、恐怖なんです。」
「恐怖？」
「それに対処する場合、怒りを抱く時には恨みと不信という形で表現し、痛みを抱くときには、寂しさと悲しさという形で表現してしまう。機能不全である自らの家族に対しては、恥の意識や罪悪感を感じる。一方、恐怖や恥、罪悪感を打ち消すために感情鈍麻になることもある。」
「‥‥‥‥‥」
「次に、思考面の特徴としては、中庸な感覚に欠ける白黒思考、一つの思いつきにとらわれる強迫思考、あらゆる可能性を見極めようとし完璧でなければならないと考えて身動きがとれなくなってしまうが故の優柔不断さ。自分の周囲で起こっている事に敏感で、警戒心が過剰になっているんです。貴方の身体面の特徴としては、ストレス関連障害つまり、そのストレス的な要因を除去すれば、早く治るでしょうね。」
「‥‥‥先生‥‥‥具体的には‥‥‥‥」
「まず、 操作的に振る舞う行動です。つまり、自分の環境を絶望的なまでに支配しようとする考えを一切捨てる事。そして、現在、貴方は、親密性に問題があります。自分の気持ちを明言できず、また、そうでないフリをする。
　そういう 態度を今後とらないこと。さらに、 生真面目な考えを緩和して状況に沿ったアダルトチルドレン思考を持つこと。また、仕事や家庭の事で過剰適応をしない。幾ら部下や、奥さんのためとは言え、その敵対するものに、強迫的‥嗜癖的行動をとる事をしない。この６つの事を、実行するんです。」
「‥‥‥‥‥‥先生‥‥‥」
「アダルトチルドレン症候群といっても、急性的にそうなっただけで、元々が、貴方は、そういう性格なわけではない。いわば軽症です。」
「‥‥‥‥‥え？」
「アダルトチルドレンは、自分の希望や感情に沿って生きようとすると、どうしても直面する難しさに対処しようとして、責任を背追い込んだり、その場に合わせたり、なだめたりと、どれかを演じてしまう傾向が強い。このような役回りに徹してしまう事で人間関係を単純化し、その場を凌ぎ易くしようとするんです。成田さん、心当たりがあるでしょう？」
「‥‥‥はい‥‥‥」
「つまり、この役割をとっている貴方は、外見上は、責任感があるし適応性があり優しいというような陽性の評価を受けやすくなる。しかし、内面では、自尊心の強い低下に陥っている。これは、貴方自身が実感しているから解るでしょう？」
「‥‥‥‥は‥‥‥ぃ‥‥‥」
「今の貴方は、不安感情と自尊心の低さを中核に持ち、そのために常に周囲の状況を気にして、自分の居場所を探そうとしている。また不安から逃れようと逆に自信を持とうとして、不安を感じないように振る舞う思考をし行動する。もろくて壊れやすい形でしか自己のアイデンティティ形成がなされていない。」
「‥‥‥‥‥‥‥ぁ‥‥‥‥‥」
「人格変型です。 相反する心理のアンバランスを打ち消す一連の思考や行動が、何らかの局面や切っ掛けによって一時的に機能しなくなった時、一般に言われるキレる。という行動が生じると考えられます。不安を消すための唯一残された手段として爆発的に、そういうキレるという行動が実行されるんでしょうね。」
「‥‥‥‥先生‥‥‥‥解りました。時間を掛けてでも、必ず‥‥‥‥」
「頑張ってください。‥‥貴方は、頭はいい。後は、それを続ける事です。要は、自分を取り戻すという決意です。継続は力なりですよ。成田さん。」
「先生‥‥‥‥どうも‥‥‥どうもありがとうございます。」
「では、奥さんのことは、西条に任せましょう。それまでは、一切、何も奥さんに尋ねない。変わった様子を見せないと約束してください。」
「‥‥‥‥‥解りました。」

　仙次郎は、成田に対しての説明を終えた。
　礼を言って部屋を出て行く成田‥‥‥‥

　時計を見る仙次郎‥‥‥‥既に終業を迎えようとしている。
　後は、洋平の結果を待つだけだ。

　仙次郎は、煙草を咥えて立ち上がった。
　ブラインドを開き外を眺める仙次郎‥‥‥‥
　赤く染まった陽を見つめながら、紫煙を吐きだしていった‥‥‥

（８３）

　自宅に帰った成田は、先ほど仙次郎に言われた事を思い出していた。

（変わらねば‥‥‥必ず‥‥‥真弓のためにも‥‥‥会社のためにも‥‥‥）

　部屋に上がり、キッチンに降りていくと、女房の真弓が夕食の支度をしていた。

（‥‥‥‥‥真弓‥‥‥‥‥）

　成田は、徳田常務と真弓の絡みが頭に浮かんできた。

「‥‥‥た、ただいま。」
「あら、貴方、帰ってたの？」
「ぁ‥‥ああ、今ね。‥‥‥‥あの‥‥‥真弓‥‥‥」
「‥‥‥‥‥え？」

　成田は、口まで出掛かった言葉を必死で飲み込んだ。

「いや、いいんだ。」
「何よ。おかしな人‥‥‥もうじき、夕食の出来るわ。ビールでも飲んでたら。」
「ああ。‥‥‥いや、先に風呂に入るよ。」
「‥‥‥そう‥‥」

　成田は、そう言って浴室に歩いていった。

　成田の後姿を追う真弓‥‥‥

（‥‥‥‥貴方‥‥‥もう少しの辛抱よ‥‥‥）

　真弓は、思い耽った表情で食事の支度を続けた。

　大した会話もなく、食事を終えた成田は寝室に入っていった。
　やはり、幾ら解決するまで黙っていろと言われても愛する妻が他の男性と身体の関係を持ったと知った以上、尋常ではいられない。
　成田は、グラスにウィスキーをついで喉に流し込んでいった。
　暫くして家事を終えた真弓が、風呂から上がり寝室に入ってきた。

「あら、飲んでるの？」
「‥‥‥ああ‥‥‥」

　成田の様子がおかしいことに気づく真弓‥‥‥‥

「どうしたの？」
「ぃ‥‥いや、別に‥‥‥‥」

　成田の態度に真弓も心配そうな表情を浮かべた。

「貴方‥‥‥会社行くの辛いんじゃない？」
「いや、そんな事ないさ。」

（真弓‥‥‥俺は、お前の事を‥‥‥‥）

　真弓は、成田が、自分と徳田の事を悩んでいるとは思ってもいなかった。
　反対に、不正の事で悩んでいると勘違いしているようだった。

「貴方‥‥‥‥必ず良い事あるわ。頑張りましょう‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥ぁ‥‥‥‥ああ。‥‥‥でも、どうしたんだ、真弓‥‥‥」
「え？‥‥‥‥ぇ‥‥‥‥ぁ‥‥‥その、貴方が元気ないから。」
「俺は、元気さ‥‥‥‥‥どうだい‥‥‥‥久しぶりにしようか？」
「‥‥‥‥‥‥貴方‥‥‥‥‥」
「嫌かい？」
「ぅ‥‥うぅん‥‥‥そんな事‥‥‥‥」
「真弓‥‥‥‥‥‥‥俺は、‥‥‥‥俺は、もう一度生まれ変わる決心をしたよ。」
「え？‥‥‥なに‥‥‥」

　成田は、真弓に覆い被さった。

「ッァァ‥‥‥貴方‥‥‥アン‥‥‥」

　真弓は、バスタブを脱がされた。白い肌が露になり成田に強く抱かれていく。

「ァァァァ‥‥‥‥貴方ぁ‥‥‥‥‥もっと‥‥‥強くぅぅぅ‥‥‥」

　成田は、久しぶりに股間の硬さを覚えていた。
　はちきれんばかりに怒張した肉棒は痛ささえ感じる。

「真弓ぃぃっ！」

　成田は、真弓の股間に顔を埋めた。

「ンァァァァ‥‥‥‥」

　真弓の蜜壷は、早くも愛液が滴っていた。
　女芯を舌で転がす度に真弓の感度は著しく上昇していく。

「真弓‥‥‥俺は‥‥‥‥‥」

　真弓は起き上がって、成田の肉棒を掴んだ。

「貴方‥‥‥私がしてあげる。」

　そう言って、肉棒に唇をかぶせていった。

　白く滑らかな背中と、程よく肉のついた腰周りを眺めながら真弓の舌を堪能する成田‥‥‥‥

（‥‥‥‥‥真弓‥‥‥‥俺は‥‥‥俺は‥‥‥‥うぅぅ‥‥）

　異様な気持ちを振り払うかのように、成田は真弓を押し倒した。

「アンンッ‥‥‥‥」

　真弓の足を押し開き、濡れそぼった蜜壷に肉棒を挿入していく。

「ウンァァァァァァァァァァー‥‥‥‥あなたぁぁぁ‥‥‥‥」

　成田は、無我夢中で腰を動かした。
　真弓の妖艶な表情が、成田の後頭部を痺れさせていく。

「うぐぅぅ‥‥‥」
「ハゥゥゥ‥‥‥‥イィィ‥‥‥あなたぁ‥‥‥イィィィー‥‥‥」

　成田は、まるで、夢の中で真弓を抱いているような感じだった。
　どれだけ真弓を攻め続けたであろうか。
　ふと見ると、真弓は横たわって成田の胸に顔を埋めていた。

　成田自身、真弓の昇天する声も覚えていないほど夢中だったようだ。
　頬を伝う雫‥‥‥
　知らず知らずのうちに成田は涙を流していた‥‥‥‥‥

☆☆☆☆☆

　翌日、大隈は、調査の結果を洋平に報告していた。

「次長、何とか調べがつきました。」
「そうかっ！‥‥それで？」
「成田次長の奥さんを騙したのは、原田次長の秘書で宮迫栄子です。」
「宮迫か。」
「ええ。成田次長の部下と名乗ったそうです。成田次長の奥さんは心配して詳しく話を聞きたいと迫ったそうです。宮迫と成田次長の奥さんは、近くの喫茶店で会い、成田次長の悩みとか状況を嘘吹いたようですね。」
「なるほど。よほど名演技だったんだろうな。」
「前々から、怪しいとは思ってたんですが、宮迫は、原田常務と出来ていますね。」
「ああ。俺も噂は聞いていたが‥‥‥」
「それから不正の件ですが、上半期予算のうちから製造部が利用する支出項目の中で名義不備が、３点ほど見つかりました。金額的には大したことないのですが、電子決済で引き降ろした所属社員名が、成田次長の名前になっていました。ところが、パスワードが全く違っており成田次長と一致していないんです。週ごとにランダムに変わるので、引き降ろした者を調べるのは困難でしたが、管理部が、パスログを記録しているので、提示させたんですよ。そうしたら‥‥」
「間坂か？」
「はい。日付、金額、パスワード、成田次長の使うパソコンの不正侵入等、全て記録してきました。アクセスは、自分のパスを使うのでそれも調べてあります。全部、間坂次長の仕業でした。」
「よし、まず、その件だけでも社長の耳に入れておこう。」
「解りました。ところで、成田次長の奥さんに話を持って言ったのは誰か判ったんですか。」
「実は、昨日、社長に許可を貰って原田常務の部屋に盗聴を仕掛けたんだが、徳田常務が、成田の女房を気に入っていると間坂に入れ知恵したらしい。」
「やはり、原田常務でしたか。」
「ああ。そして、徳田常務と成田を失脚させる作戦は、間坂が立てているんだが、間坂は、明日、スキャンダルを組合に公表するようだ。今夜、俺は原田常務を尾行する。お前は、間坂をつけろ。公になる前に解決しろとの社長命令だ。」
「わかりました。」
「しかし、せめて会話を録音できんと俺達も詰めには入れんな。」
「ええ。そうですね。‥‥‥次長、盗聴を使いますか？」
「そうだな、原田常務、秘書の宮迫、そして間坂、３人に仕掛けてくれ。」
「判りました。」
「今日だけの会話が聞ければ問題ない。気づかれてもいいから衣服に仕掛けろ。」
「分かりました。」

　大隈は、早速、この３人に近づき、衣服に盗聴器を仕掛ける事にした。

（さて‥‥‥‥終業後が、勝負だな。）

☆☆☆☆☆

　その頃、佳代は、スカートだけを脱がされた状態で仙次郎に、後から強烈な杭を打ち込まれていた。

「ウァァァァァ‥‥‥‥‥‥も‥‥もう‥‥‥だ‥‥‥駄目ぇ‥‥‥」
「何だ、だらしないぞ‥‥‥‥昨日の続きをというから乗ってやったのに。」
「だ‥‥だって‥‥‥先生ぇ‥‥‥‥ァァァァ‥‥‥」

　佳代は、執務室のデスクに手を付いて仙次郎の突き上げに絶えていた。
　蜜壷周りは既に水を零したように濡れ滾っており卑猥な摩擦音を発している。

「ウッフゥゥゥゥゥゥゥゥゥー‥‥‥ァァ‥‥ァ‥‥ァァァ‥‥」
「しょうがない‥‥‥発射準備に入るか。」

　そう言って仙次郎は、佳代の腰を左右から掴んだ。
　激しく腰を突き出し、佳代をまさに串刺しにしていく。

「グッハァァァァァァァァァァァァァー‥‥‥‥イィィィィーッ！」

　佳代は、自ら腰を打ちつけて強烈に挿し込まれる肉棒の感触を味わった。
　仙次郎の遠慮のない責めに佳代の蜜壷は摩擦で赤くはれ上がっていく。
　そして、ついに佳代の我慢は限界に来た。
　足がガクガクと震え、立っている事が出来なくなってきたのだ。
　上半身をデスクに預けるように佳代は倒れていく。
　それを見た仙次郎は、佳代の両足を持ち上げフィニッシュに向かった。

「フグゥゥゥゥゥゥー‥‥‥‥も‥‥‥もぉ‥‥‥‥もぅ‥‥だ‥‥だ‥‥め‥‥」

　仙次郎は、ヒップに手をずらし親指を菊門に挿入した。

「ウッァァーッ‥‥ァァ‥‥イ、イグウゥゥゥゥー！‥‥‥ゥゥ‥‥ゥ‥‥ゥ‥‥」

　佳代と、ほぼ同時に分身を爆発させた仙次郎‥‥‥‥

「ふぅぅー‥‥‥やはり立ったままはキツイな。」

　仙次郎は、ゆっくりと肉棒を引き抜いた。

　佳代はデスクの上で、うつ伏せたまま、大きく足を開いてグッタリとしていた。
　真っ直ぐに走る亀裂からは滲み出るように仙次郎の分身を吐き出している。

（しかし‥‥‥俺って、つくづくエッチだな‥‥‥‥‥‥）

　衣服を直し煙草に火を点ける仙次郎‥‥‥‥

　暫くすると佳代の蜜壷からは大量の分身が滴り落ちてきた。

（ゲッ‥‥‥机に零れて‥‥‥‥‥‥‥ま、いいか、後で拭かせれば。）

　仙次郎は、笑いながら応対室に入っていった。
　そこへ、ちょうど洋平が入ってきた。

「おう、仙次郎っ！」
「よお、洋平‥‥‥どうだ。」
「ああ、大体わかったんでな。お前にも話しておこうと思って。」
「そうか。」
「ん？‥‥‥川島君は、どうした？」
「ああ、奥で寝てる。」
「寝てる？‥‥‥仕事中にか？」
「ああ、かなりハードな仕事だったんでな。今日だけ特別さ。」
「そうか‥‥‥まあいいが。‥‥ところで仙次郎、やはり、間坂の仕業だった。そして、成田の女房を騙して徳田常務に接近させたのは、原田常務の秘書だ。」
「そうか‥‥‥‥しかし、陰険な手を使うもんだな。」
「明日、間坂が、組合の委員長にスキャンダルを垂れ込むらしい。」
「何‥‥‥洋平、急がないと。」
「ああ。今日、俺と大隈が原田常務と間坂をそれぞれ尾行する。一応、この３人には、大隈が盗聴器を仕込む事になってるんだ。」
「会話の録音か。‥‥‥‥しかし、失敗したらどうする。」
「一応、保険的に間坂の不正を証拠としてそろえてある。俺の狙いは、原田常務と間坂の企みを阻止する事だ。」
「最終的にどうなる？」
「公には出来んだろう。だが、降格、若しくは出向というパターンになるだろうな。」
「しょうがないだろう‥‥‥‥」
「ところで、昨日、成田に話をしてくれたそうだな。今朝、奴から俺に礼の電話が掛かってきたんだ。」
「そうか。」
「俺やお前にも感謝していたが、しかし女房の事が気になってしょうがないようだ。」
「しかし、彼の性格改善のためには、話さざるを得なかったしな。」
「いや、お前の事より、そうさせてしまった自分に悲観していたよ。成田は、こう言ってた。今回の件が終わっても、一切女房には徳田常務の事は聞かない、とな。そういう意味では奴は凄いよ。」
「‥‥‥んむ。」
「奴のためにも、今夜は、何としてでも証拠を作ってくる。」
「俺からも頼むぜ。」
「ああ。任せろ。」

　そこへ咳払いしながら佳代がコーヒーを運んできた。

「ん？　川島君、寝てたんじゃないのかい？」
「いえ、書類を整理をしていました。会社で寝るなんてとんでもないですわ。」
「え‥‥‥でも仙次郎が‥‥‥‥」

　怪訝そうに仙次郎を見る洋平‥‥‥‥‥

「先生、そんな事言ったんですか？」

　惚けた顔で仙次郎にそう言い放つ佳代‥‥‥‥‥

「え‥‥‥ぁ‥‥‥いや‥‥‥‥その‥‥‥」

　仙次郎と佳代を交互に見る洋平‥‥‥‥‥‥

　洋平は、変な勘ぐりを入れながらコーヒーを啜っていった。

☆☆☆☆☆

　終業間近、大隈が洋平のデスクに駆け寄ってきた。

「次長、今夜７時に原田常務が宮迫とセントラルホテルで落ち会うようです。」
「何っ‥‥‥セントラルホテル‥‥‥‥うちのホテルじゃないか。」
「ええ。携帯で連絡しあっていました。社券で利用するようですよ。」
「チッ‥‥‥ケチぃ、親父だぜ。‥‥‥それより間違いないのか？」
「はい。宮迫が先に部屋で待っているようです。部屋は、２０５５室です。」
「よし、大隈、踏み込むか。」
「えぇっ‥‥‥踏み込むって‥‥‥‥」
「反対にスクープしてやるのさ。」
「なるほど‥‥‥‥言い訳が立ちませんものね。」
「ああ、常務がどういう態度で出るか楽しみだぜ。‥‥‥よし、行くか。」
「はい。」

　洋平と大隈は、準備万端にして会社を出て行った。

（８４）

　既に、宮迫がホテルに入って３０分が経過した。
　尾行を続けていた洋平が、ホテルのフロア−で大隈と合流する。

「ご苦労様です。」
「んむ。いま、原田常務がホテルに入ってくる。先に行ってよう。録音の準備は出来ているな。」
「はい。ＯＫです。カメラも持ちました。隣の２０５６号室をとってあります。」
「よし、じゃあ行くか。」

　洋平と大隈は、原田の後を追って宮迫の待つ隣の部屋に向かった。

　部屋に入った、洋平と大隈は機材をテーブルの上に並べた。
　直ぐに録音のスイッチを押す大隈‥‥‥‥

「次長、ＯＫです。」
「よし、事が始まったら中に入って写真を撮れ。フラッシュはたくなよ。」
「はい。」
「仮に見つかっても構わん。その時は俺も飛び込む。」
「分かりました。」

　洋平と大隈は、打ち合わせをして機を待った。

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　原田が２０５５号室のドアを開いたようだ。

「パパぁ‥‥‥」
「こら、栄子、パパは止めなさい、パパは。」
「だってぇぇぇー。」
「何だ、もう脱いでるのか。せっかちだねぇ、君は。」

　そう言って、奥に入っていく原田‥‥‥
　宮迫は、原田の上着を受け取りクローゼットに掛けた。

「ところで、栄子、間坂が上手くやったらしいぞ。」
「そう。よかったわね。これで、パパの来期の専務は確実でしょ。」
「ああ、たぶんな。まあ、そうなったら約束どおりマンションを買ってやる。」
「嬉しいぃぃー。」
「ほら、コレは、今回分の報酬だ。」

　そう言って、小さな包みを宮迫に渡した。
　さっそく、小箱を開ける宮迫‥‥‥

「パ‥‥パパ‥‥‥これ‥‥‥」
「ああ、ダイヤの指輪だ。高かったんだぞ。」
「嬉しいゎ‥‥‥パパありがとう。」
「なに、徳田の奴をはめてくれた礼だ。まあ、成田君には、気の毒な事をしたがな。」
「成田次長の奥さんは、徳田常務と会っているんですか？」
「ああ、間坂の話では、ホテルに入ったところを見たと言っていた。」
「成田次長の奥さんも必死なのね。」
「そりゃ、不正行為でクビと脅かされれば必死になるだろう。フッ、フッ、フッ‥‥」
「エッチしたのかしら。」
「恐らくな。‥‥‥まあ、お前の説明が上手かったおかげだ。」
「フフッ‥‥‥」

　素っ裸の宮迫は、原田のワイシャツのボタンを外し始めた。

「栄子‥‥‥」

　原田は、宮迫の蜜壷に手を当てていった。

「ァァーン‥‥‥‥まだ、待って‥‥‥服を脱がないと‥‥‥」

　原田は、ベルトを外して立ち上がった。
　宮迫は、原田の下着を脱がし肉棒を貪るように咥えていった。

　その頃、隣の部屋では、洋平と大隈が歯軋りをしながら怒りを表していた。

「大隈‥‥‥‥俺は、許さんぜ、コイツらを。」
「次長、徹底的に脅かしてやりましょう。」
「ああ。‥‥‥そうだな。」
「始まったようですよ。私は、隣に侵入します。」
「んむ。頃合を見計らって俺も入っていく。」

　大隈は、頷くとカメラを持って隣の部屋に向かった。

　宮迫は、原田の肉棒を貪っていた。

「ングッ‥‥グゥッ‥‥‥ング、ングゥッ‥‥‥‥‥」

　原田は、宮迫の頭部を持って肉棒を押し込んでいった。

「ウングゥゥゥ‥‥‥ングッ‥‥‥」

　苦しそうに喘ぐ宮迫だが、原田の肉棒を外そうとしない。

「栄子‥‥‥飲み込むんだ。」

　そう言って、一層深く肉棒を突き刺していった。
　目を充血させ喉を鳴らす宮迫‥‥‥‥

「ンググゥゥゥ‥‥‥‥」
「んーむ‥‥‥たまらん‥‥‥‥」

　原田は、宮迫のスロートを感嘆しながら呻いた。

「よし、栄子、ベッドに行こう。」
「‥‥‥‥グフゥゥ‥‥‥ウウゥゥ‥‥‥」

　苦しそうに息を吐く宮迫だが、直ぐに笑顔を浮かべる。

「パパァ、早くぅぅ‥‥‥」

　原田の手を引っ張りベッドに急ぐ宮迫‥‥‥
　飛び込むようにベッドに乗ると四つん這いになって腰を高く上げた。

　原田は、興奮しながら宮迫の菊門を舐め始めた。

「ぁぁぁー‥‥‥パパぁ‥‥気持ちいぃぃ‥‥‥‥‥」

　宮迫は、自ら蜜壷に指を入れて愛撫を開始した。

「フングゥゥゥゥー‥‥‥‥‥たまんなぁーい‥‥‥」

　宮迫は、腰を振りながら原田の舌使いに快感を表していた。

「パパ、もう、入れてぇぇ‥‥‥気が狂っちゃぅぅぅぅぅー‥‥」
「よし、自分で開いてみろ。」
「こぉぅ？」

　宮迫は、仰向けになると指で蜜壷を左右に開いた。

　原田は、肉棒を握って宮迫の蜜壷に当てがうと焦らすように周囲をなぞっていく。

「イヤァァァー‥‥‥パパの意地悪ぅぅぅ‥‥‥‥早く来てぇぇぇぇ‥‥‥」
「クククッ‥‥‥慌てるんじゃない。‥‥‥よし、じゃ、入れるぞ。」

　原田は、肉棒を蜜壷に当て一気に挿し込んだ。

「グフゥゥゥゥゥゥー‥‥ンォォォォォー‥‥‥イィィィー‥‥‥」

　お互いに熱中しているのか、大隅が後から写真を撮っている事に全く気づいていなかった。

（ふっ‥‥この馬鹿どもらが‥‥‥‥）

　大隈は、そう思いながら二人の痴態を撮り続けた。
　暫く挿入を続けていた原田だが、思い出したように宮迫に呟いた。

「そうだ、栄子‥‥‥今日は、約束通りア○ルに入れさせてもらうぞ。」
「‥‥‥ァッァァー‥‥‥なんだか恐いゎぁ‥‥‥‥‥‥」
「心配するな。ゆっくり愛撫してから入れるから。ククククッ‥‥」

　そう言ってベッドを降りる原田‥‥‥

　原田は、クローゼットを開け上着の中から用意しておいたジェルを取り出した。

　ベッドに戻った原田は、チューブを捻り掌にジェルをつけると肉棒全体にまんべんなく塗りつけていった。
　そして、チューブの先を宮迫の菊門に当て少量を注入していく。

「‥‥‥ァァァ‥‥‥冷たいぃ‥‥‥」
「直ぐに熱くしてやる‥‥‥‥待っておれ。」

　そして菊門の周囲にもジェルを垂らし指で丹念に伸ばしていった。

「‥‥‥ゥゥ‥‥‥アハァァァ‥‥‥」
「よし‥‥‥栄子、入れるぞ。」
「パパ‥‥‥ゆっくり‥‥‥ゆっくり、お願いぃ‥‥‥‥」
「ああ、わかってる‥‥‥」

　原田は、ジェルがたっぷりと付いた肉棒を握り宮迫の菊門に先を当てがった。
　ビクンと身体を震わす宮迫‥‥‥‥‥‥
　原田は、興奮気味に先を埋め込んだ。

「ゥゥゥゥ‥‥‥アゥ‥‥」
「‥‥‥クッ‥‥‥え、栄子‥‥‥‥先が入ったぞ‥‥‥‥‥」
「アァァァ‥‥‥ゆっくり‥‥‥‥ゆっくりね‥‥‥‥」

　原田は、緊張しながら静かに肉棒を埋めていく。

「ァッ‥‥ァァ‥‥‥ァ‥‥‥ァァァァ‥‥‥ァァーッ‥‥‥‥」
「どうだ‥‥‥どうだっ、栄子っ‥‥」

　そう言いながら徐々に侵入を試みていく。

「ァァァ‥‥‥もっと‥‥‥もっと、ゆっくりぃ‥‥‥ぁぁ‥‥い‥‥痛い‥‥‥‥」
「もうちょっとだ。我慢しろっ。」
「ウグゥゥゥ‥‥‥‥ァァ、痛いぃぃ‥‥‥」

　苦痛を訴える宮迫だが、しかし、原田は、挿入を止めなかった。

「ググッ‥‥‥し、締まるっつ‥‥凄いぞ栄子‥‥‥おぉっ‥‥」

　そして、遂に根元まで肉棒が菊門に挿入された。

「入った。全部入ったぞ、栄子っ。」
「アフゥゥゥー‥‥‥動かさないで‥‥‥まだ、動かさないでぇぇ‥‥‥」
「これはキツイ‥‥‥最高の締まりだっ。」

　原田は、下に手を回して宮迫の女芯を指の腹で撫で上げていく。

「ウッフゥゥゥゥゥゥー‥‥‥‥ァァ‥‥パパァァァー‥‥‥」

　そこへ、洋平が静かにドアを開けて部屋に入ってきた。
　後からカメラを取る大隈の肩を叩いた。

「あ、次長‥‥‥‥全く気づきませんよ。」
「フッ‥‥‥人間が、一番隙のできる場面だからな。」

　洋平は、薄笑いを浮かべながら煙草を咥えて火をつけた。
　大隈を促しソファに腰掛ける。

「栄子っ‥‥‥動かすぞ‥‥いいか‥‥‥」
「ぁぁ‥‥‥ゆっくり‥‥ゆっくりぃぃ‥‥‥‥ぁぁ‥‥痛いぃぃ‥‥‥」
「ダ、ダメだ‥‥‥‥栄子‥‥‥出てしまう。」
「いやぁ、お尻の中で出さないでぇぇーっ！」
「大丈夫だ。ここなら妊娠はない‥‥‥ククッ‥‥‥」

　原田は、興奮と菊門の締まりの強さで爆発を余儀なくされた。
　まさに、原田は、宮迫の菊門に吐き出す寸前だった。

　洋平は、紫煙を吐きながら声をあげた。

「常務、クライマックスのところをすいませんが‥‥‥‥。」

　原田と宮迫が、同時に後ろを振り向いた。

「えっ？」「な‥‥‥なに？」

　洋平は、笑みを浮かべて、こちらを見る二人に頭を下げた。

「‥‥‥な‥‥‥‥お‥‥‥お前‥‥‥‥」
「キャァァァァァァァァァァァァァーッ！」

　慌てて肉棒を菊門から抜く原田‥‥‥‥‥
　しかし、その瞬間、分身が勢いよく放出された。

「ググッ‥‥‥」
「ほぉー‥‥‥御年の割りに出るもんですねぇ。クククッ‥‥‥」

　笑いながら、カメラのシャッターを押す大隈‥‥‥
　原田は、慌てて肉棒の先を押さえて腰を引いた。

「クッ、ク、クッ‥‥‥‥‥外で爆発とは、残念でしたね。」

　宮迫は、驚愕した顔でシーツを身体に巻いている。
　原田もバスタブを着るとベッドから降りて洋平に駆け寄った。

「‥‥‥き、貴様は、公室の西条‥‥‥‥」
「どうも。」
「何の真似だ。どうやって、ここに入ってきたっ！」
「ここは、うちのホテルですよ。マスターキーも自由に使えます。」
「そんな事を聞いてるんじゃないっ！　貴様、何をしてるの解ってるのかっ！」
「ええ、まあ。」
「うっ‥‥‥ぐぐっ‥‥‥」
「そちらは、貴方の秘書、宮迫栄子さんですね‥‥‥‥不倫ですか？」
「ウッ‥‥‥‥き‥‥‥‥貴様‥‥‥‥‥」
「当社の幹部ともあろう方が，いけませんねぇ‥‥社員に手を出しては。」
「ち、違うんだ‥‥‥これは‥‥‥この女が私を誘って‥‥‥」
「パ、パパァ‥‥‥‥そんなぁ‥‥‥」
「大隈っ。」
「はい。」

　大隈は、カメラにコードを繋げてテレビのビデオ端子に挿した。
　リプレイにセットし、映像を画面に流していく。

「ウッ‥‥‥‥な‥‥‥こ‥‥‥これは‥‥‥」
「常務、しっかりと写真を撮らせて頂きました。そして、二人の会話も全て録音してあります。」
「‥‥‥‥ググググッ‥‥‥い、一体、何の真似だぁっ！徳田に頼まれたのかっ！」
「いえ、公室独自の調査です。」
「な‥‥‥なにぃ‥‥‥」
「墓穴を掘りましたね。常務が、依頼した製造部の間坂が、告発という形で公室にタレ込んだのですが、残念ながら我々の調査で全て策略と判りました。」
「‥‥‥‥な‥‥‥なんだと‥‥‥」
「成田と成田の奥さんを利用して、徳田常務をはめようとした事もね。そして、間坂が、仕組んだ不正工作も成田でない事もつきとめてあり、全て証拠も揃えましたし、今、常務と宮迫の会話も録音してあります。これ以上の証拠はないでしょう。懲戒を覚悟しておいた方がいいですよ。」

　原田は、顔面蒼白になって身体を奮わせた。

「ま、まて‥‥‥西条‥‥‥いや、西条君、話を聞いてくれ。」
「私は、話を聞く立場ではありません。お話は社長直々にしてください。」
「‥‥‥‥‥‥そ‥‥‥」
「ただ、私は、正直に社長に報告するまでです。」
「ぅっ‥‥‥‥さ‥‥‥‥西条君、‥‥‥‥‥‥どうだ、私と取引をしないか？」
「取引？」
「金でどうだ。‥‥‥それとも昇格か。‥‥‥ならば、私が‥‥‥‥」
「常務っ！」

　洋平の迫力ある声に、原田は身体が硬直した。

「グループ本社の常務ともあろう方が言う台詞ですか？」
「ぅぅ‥‥‥くっ‥‥‥‥た‥‥‥頼む‥‥‥‥助けてくれんか‥‥‥‥」
「常務、私は、社長公室の人間ですよ。」
「‥‥‥‥‥ぅぅぅ‥‥‥‥」

　原田は、洋平の言葉にガックリと項垂れた。

「さ、大隈、行くぞ。」
「はい。」

　大隈は、カメラの電源を落とし、コードを抜いてバッグに締まった。

「では、常務、明日、公室でお待ちしております。」

　原田は、呆然と立ち尽くし言葉が出ないでいた。
　ベッドでは、凍りついたような表情で宮迫がシーツに包まっていた。

☆☆☆☆☆

　翌日、洋平から報告を受けた仙次郎が、成田の妻を会社に呼び寄せていた。
　今回の件を説明するとともに、成田を助けようと身をもってした行動による精神的なダメージをケアするためだった。

「そ‥‥‥‥‥それじゃ、主人は‥‥‥‥」
「ええ。全く不正などしていません。全て欲望を持った者達の陰謀なんです。」
「‥‥‥‥‥そ‥‥‥そんな‥‥‥‥私‥‥‥‥なんて事を‥‥‥‥」
「奥さん、先日、ご主人に色々とお話を伺いました。」
「‥‥‥‥‥？」
「奥さんが、徳田常務と関係している事もお話してあります。しかし、今件が、解決するまで、奥さんには何も尋ねないようにお願いしておきましたがね。」
「‥‥‥‥ぇ‥‥‥‥‥そ‥‥‥‥それで‥‥‥‥‥主人は‥‥‥‥」
「奥さん、ご主人は立派な態度でしたよ。方法は別として、奥さんが、そこまでして自分を助けようと必死になっている貴女に涙していました。」
「‥‥‥‥‥しゅ‥‥‥‥主人が‥‥‥‥‥」
「成田さんはね、自分で自分の弱さに気づいていたんですよ。１０年前、自殺で部下を無くしたことはご存知でしょう。」
「‥‥‥‥‥ええ。」
「その時から、成田さんの性格は変わっていきましたよね。」
「‥‥‥‥は‥‥い。」
「それ以降、貴女のご主人は、アダルトチルドレンシンドローム‥‥‥つまり、本来持つべき機能が十分に働いていない、いわゆる機能不全に陥ってしまったんですよ。この１０年間、奥さんも辛かったと思います。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「しかし、成田さんは、全ての責任を一人で負い、周りの厳しい言葉にも一切反論せず必死で耐えてきたんです。その結果、引き目がちな性格に陥り、思考や行動までもが変わり、辛い１０年間を過ごしてきたんです。」

　成田の妻、真弓は涙を流しながら呟いた。

「‥‥‥‥‥部下の方が自殺してから、誰とも接触しようとしなくなったんです。」
「でも、貴女は、ご主人に辛くあたらなかった。むしろ、ご主人の事を思って、懸命に立ち直らせようと今まで頑張ってきた。そうですね。」

　成田の妻は、ゆっくりと頷いた。

「主人が、不正をして会社をクビになると話しをされた時に、私は、目の前が真っ暗になりました。生活が出来なくなるという事ではなく、主人の生きる糧を失う事になるかもしれないと思ったからです。今、思うと、私も冷静さを失っていたかもしれません。しかし‥‥‥しかし、あの時は、私も必死で。」
「よく解ります。‥‥‥‥貴女の持つ一番弱い所を突かれたんですから。ご主人を愛していればこその行為です。だが、聞く勇気も必要でしたね。」
「‥‥‥はい‥‥‥」
「正直に答えて下さい。‥‥‥ご主人を愛しているんでしょう。」

　真弓は、頷いた。

「‥‥‥‥結婚した当時は、主人は、物凄く格好よかったんです。自信に満ち溢れ、仕事に命を掛けてるような人でしたが、私は、そんな主人が好きだったんです。残業して遅く帰ってきても、まず仕事の話を必ず私に話してくれました。懸命に語る主人の顔は、まるで少年のように明るくて活き活きしてたんです。」
「ふむ‥‥‥なるほどね‥‥‥」
「それでも、休みの日は、必ず一緒に出掛けたりしてくれて私を癒してくれました。お恥ずかしいのですが、夜の生活も気を抜かない人でした。朝まで、ずっと私を抱いたまま寝てくれましたし、私を不安にするような人ではなかったんです。私は、もう一度、あの時のような主人に戻って欲しくて‥‥‥‥それで‥‥‥‥」
「ご主人は、立ち直りますよ、貴女のためにね。それを私に約束してくれました。貴女が、徳田常務と関係した事は、確かに残念がっていましたが理解してます。それ以上に、自分のために身を投げ出してくれた貴女の愛に感激していたんです。」
「‥‥‥‥‥‥‥」

　そこへ、洋平が成田を伴って部屋に入ってきた。
　仙次郎が成田を連れて来るように頼んでおいたのだ。

「‥‥‥ま、真弓‥‥‥」
「あなた‥‥‥‥‥」
「どうぞ、座ってください。」

　仙次郎は、成田をソファに座るよう促した。

「は‥‥‥はい‥‥‥」
「仙次郎、今、常務と間坂の処遇が決定した。」
「ふむ‥‥‥で？」
「原田常務は、自主退社という形で辞める事になった。実質は懲戒だ。間坂は、傘下グループに異動で、ヒラ社員だ。一応家族がいるからな。そして、徳田常務は、減給を食らって支社に飛ばされる事になった。」　
「そうか‥‥‥‥」

　成田と妻の真弓は、その話を聞きながら俯いていた。

　仙次郎が、二人に話を始めた。

「成田さん、いま、奥さんに全てお話しました。」
「‥‥‥‥そ‥‥‥‥そうですか‥‥‥‥」

　成田は、妻の真弓に視線を移した。
　それに気づいた真弓は、涙を流しながら成田に呟いた。

「‥‥‥あなた‥‥‥ごめんなさい‥‥‥‥‥ごめんなさい‥‥‥‥」
「真弓‥‥‥いいんだ‥‥‥もういいんだ。悪い夢を見たと思って忘れよう。」
「あなた‥‥‥‥ぅぅ‥‥‥‥‥」
「この高輪先生に色々とお世話になったんだ。俺を立ち直らせる切っ掛けを指摘してくれた。」

　仙次郎を見る真弓‥‥‥‥‥
　涙を零しながら丁寧に頭を下げていく。

「そして、同期の西条だ。俺のために、俺を助けるために必死で調べてくれたんだ。」

　頭を掻く洋平‥‥‥‥
　真弓が洋平にも頭を下げて礼を言う。

「‥‥‥‥主人のために‥‥‥本当にありがとうございます。」
「奥さん、僕は、同期だからという理由でやったんではないんです。成田は、もともと熱意があり優秀な奴なんです。こういう人間が会社には必要なんです。助けるのは、至極、当然の事なんですよ。」

　真弓は、二人に感謝しきれないくらいの気持ちで一杯だった。

　仙次郎が、二人に今後の事を諭した。

「奥さん、成田さんも、まだ気持ちや思考が完全ではありません。性格や生活も改善していかなくてはいけません。が、しかし、貴方たちの愛は、改善の必要がないでしょう。しかし、暫くの間は、気持ちを整理する事は難しいかもしれませんが、どうか、お二人で乗り切っていってください。」
「本当に‥‥‥本当に、ありがとうございました。」
「先生‥‥‥西条‥‥‥‥‥‥」

　成田は、それ以上、言葉にならなかった。
　妻、真弓の手を握って頭を下げる成田‥‥‥‥‥

　視線を合わせて仙次郎と洋平は頷いた。

　ニッコリと笑みを浮かべながら親指を立てる洋平‥‥‥‥
　仙次郎も同じサインを送って顔を崩していった。