（８８）

　仙次郎は、佳代を呼び、犬飼に冷たい水を差し出すよう促した。

　佳代が、氷の入ったミネラルウォーターを犬飼に前に置いた。

「どうぞ。」
「‥‥‥‥す、すみません‥‥‥‥」

　犬飼は、ゆっくりとグラスに手を延ばして口を付ける。

　仙次郎は、機を探って犬飼に話し掛けた。

「犬飼さん、問題は、貴女自身も言葉にしていましたが、物事に対する過度な行為、そして、全く意味のない儀式的な行為、この二つを少しづつ削っていく事です。」
「‥‥‥‥‥‥」
「一度に全部をというのは無理ですし、中には、取り除かなくてもよい物もあります。」「‥‥‥で‥‥‥でも‥‥‥‥」
「まず、貴女が、それをやらないと気がすまないという行為が、いかに馬鹿げてるかを認識する必要があります。正直言って、努力次第で十分改善できますので、頑張ってみることですよ。」
「‥‥‥‥はい‥‥‥‥」
「先ほどまで、貴女に説明してきたのは、強迫神経症のなかの強迫観念です。幾つか、心当たりがあったでしょうが、次は、強迫行為の例を話しましょう。」
「‥‥‥‥‥はい。」
「貴女の話を聞いてて、この強迫行為を代表する例が幾つか含まれていましたので、よく聞いててください。」

　仙次郎は、モニターを切り替えて犬飼に説明し始めた。

「まず、掃除と洗浄に関する強迫行為です。過度な、或いは、儀式的に行う手洗い行為などもそうです。そんなに洗わなくても、もう綺麗になっている。と、思っても、つい洗ってしまう。決めた回数洗わないと納得できないんです。」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「儀式的に行う入浴行為、儀式的に行う歯磨き行為、儀式的に行うトイレ行為、これらは、全て、貴女がする行為の中に、少なからず含まれていますよね。」
「ぇ‥‥‥‥」
「フッ‥‥例えば、貴女がするデート前の性器の洗浄も、これに含まれます。」

　犬飼は、顔を染めながら俯いた。

「恐らくトイレに入ると、何回トイレットペーパーを捲いて何回、性器を拭く、ということまで拘っているでしょう？」
「‥‥‥ぁ‥‥‥そ‥‥‥‥」
「フフッ‥‥‥図星ですね。」

　犬飼は、静かに頷いた。

「次に、しつこいくらいの確認行為です。自分で、何度も確かめてしまう。人に何回も尋ねるというような事を頻繁に続けてしまう。今日、午前中に私の秘書の川島に、何度も同じ事を繰り返し、しつこく尋ねたようですね。」
「‥‥‥‥ぁ‥‥‥‥す‥‥‥すみません‥‥‥‥」
「これは、自分が心配だからというよりは、その行為を繰り返す事によって自分自身を納得させる手段なんですよ。例えば他の例で言えば、戸締まり、ガスの元栓、電気器具のスイッチを必要以上に何度も確認してしまう。間違いないと解っていても、後、３回見てから確認を止めようとかね。」

　心当たりがあるのか、犬飼は、恥しそうに顔を伏せていく。

「更には、言葉や行動にしてもそうですが、人に迷惑を掛けたのではないか、迷惑を掛けてしまうのではないかと心配するために確認をするんですが、その行為自体、相手にとって迷惑という事に自分では気づかないんです。」
「‥‥‥‥‥‥‥は‥‥‥ぃ‥‥‥」
「仕事でもそうでしょうが、出社する時に忘れ物をしたのではないかと何度も必要以上に確認してしまったり、書類を作り終えて提出した後も間違いを起こさなかったかを何度も必要以上に上司に確認してしまう。命令文書を渡されても何度も同じところを読んだり書いたりするとかね。」
「先生‥‥‥でも‥‥‥でも、昔からの癖で‥‥‥‥拘りというのは、そんなに悪い事なんでしょうか？」
「いえ、悪くはありませんよ。過度でなければね。」
「過度でないとは、どの程度なんでしょうか。」
「つまり迷惑がれない程度ですよ。」
「‥‥‥‥‥‥あの、他にもよく似た人は居るといいましたが‥‥‥どういう‥‥」
「んー、よくいるタイプが、数字に拘る人でしょうね。」
「数字？」
「貴女もそうでしょうが、つまり、幸運、不運、または、好きな数、嫌いな数に拘って意味がない行動を繰り返したりするんです。ある事をする数を決めているタイプです。手を洗う回数が決まった回数でないと気が済まない。例えば４とか９とか１３を避ける。反対に３や７を好むなど、物の位置や対称性に拘り何度も物を置き直したり、きちんとした位置になっているかを確かめたりするんです。」
「‥‥‥‥せ、先生‥‥‥‥‥‥私も‥‥‥‥そうです。」

　仙次郎は、静かに頷きながら続きを話した。

「強迫症状には、強迫観念と強迫行為、２つに分かれるんですが、貴女の場合、両方の特質をもっています。まあ、軽度ですがね。」
「治るんですよね。‥‥‥‥先生‥‥‥‥」
「ある事を解決すれば、その、癖や行為を改善できます。」
「そ‥‥‥それは‥‥‥‥どういう‥‥‥‥」
「簡単に言えば性格変換です。」
「え‥‥‥あの‥‥‥‥具体的には‥‥‥‥‥」
「自律訓練法をお薦めします。」
「自立訓練法？」
「自律訓練法とは、自己催眠法の一種なんですが、暗示作用を利用して、系統的な自己暗示の訓練により心身の寛ぎと統一、ストレスの緩和、心身機能の再調整を行うものなんですよ。心の多角方向から心身をリラックスさせる事を目的とした自己コントロール法です。とにかく、この訓練法は、非常に効果があります。」
「難しいんでしょうか？」
「自立訓練法のなかでも系統的脱感作療法が貴女に向いていると考えます。」
「‥‥‥‥‥系統的脱感作療法？」
「ええ。現在、非常に注目されている行動療法という心理療法の中の最も代表的な技法なんですが、行動療法の立場では、神経症や心身症の諸症状などは、条件反射によって誤って学習、つまり身についてしまった症状であると考えられます。これを治すには、新しく正しい学習を新たにやり直せばよいという事です。それには、不安や恐怖の症状に対して、相対して張り合う生理状態を作って、強力な慣れの現象を起こさせるんです。」
「‥‥‥はぁ‥‥‥」
「つまり、このように拮抗する生理状態を起こさせるものを逆制止といいますが、例えば、高い建物に上がれない高所恐怖症を治療するには、予め筋弛緩法など強力なリラックス法を習得します。次に２階とか、３階に上がる。すると弱い恐怖を感じて少し緊張します。そこで筋弛緩法を行い、緊張を取ってしまう。これを何度か繰り返すと、高い所に居るのにリラックスしている、といった新しい学習、つまり、経験をすることになる。その高さで平気になったならまた１、２階上に上がる。そこで緊張したらまたリラックスする。これを何度も繰り返していくと、どんなに高い所でも平気になっていくんですよ。」
「‥‥‥‥あの‥‥‥つまり、‥‥‥今の私のする行為を逆に‥‥‥と？」
「まあ、そういう考えでもいいですが、一切、拘りをなくす事からでしょうね。」
「え？」
「手っ取り早いのは、彼を利用するんですよ。」
「‥‥‥‥‥は‥‥‥はぁ？」
「貴女は、セックスは好きですか？」

　犬飼は、仙次郎の突然の質問に顔を赤らめた。

「ぇ‥‥‥ぁ‥‥‥‥あの‥‥‥‥‥‥‥そ‥‥‥それは‥‥‥」
「正直に言いましょう。ちなみに私も嫌いではありませんし、後ろに居る、秘書の川島なんかは、趣味に近いくらい好きですよ。」

　その言葉に、佳代が物凄い形相で仙次郎を睨んできた。

（‥‥‥しまった‥‥‥例が悪かったか‥‥‥‥‥）

　犬飼は、仙次郎と佳代を見ながら突然リラックスしたように吹き出した。

「ゥッ‥‥‥フフッ‥‥‥‥‥ウフフフフッ‥‥‥‥」

　佳代が、恥しそうに執務室に消えていった。

（後で、また騒がれるかな‥‥‥）

　仙次郎は、犬飼に視線を戻して、再度、確認をした。

「どうですか、犬飼さん。」
「‥‥‥‥はぃ‥‥‥‥‥あのぅ‥‥‥‥嫌いではありません。」
「ふむ。しかし、始まる前の段階でかなり苦労していますね。」
「ぇぇ‥‥‥はぃ‥‥」
「これは、私の思いつきの例ですが、例えば彼にするフェラチオも風呂で洗った後ではなく、二人一緒に入って浴室でしてあげるとか、デート前に入浴したり、トイレに行くのも彼と会ってからにするとか、とにかく、まず、順番を変えてみることから始めてみてください。」
「‥‥‥‥え？」
「要は、今まで持っていた貴女自身の拘りを覆せばいいのですから、その癖のような行為を無くすには、順序を入れ替えればいいんです。」
「‥‥‥はい‥‥‥」
「確認もそうです。徹底的にやっても結構なんですが、終わったら自分に言い聞かすんですよ。もう絶対に大丈夫だとね。そして仮に忘れていたとしても、失敗に繋がったとしても自分を責めないこと。つまり、良い意味で自分が悪いんではなく、状況が悪かったんだと決め付けてしまうんです。これは、仮想認意行動といい、心身症を持つ人間に対して、非常に効果があるんです。貴女も言ってみれば拘っているわけですから、自分の責任にしない事に拘ればいい訳です。」
「‥‥‥ぁ‥‥‥‥‥な‥‥‥‥‥何となく‥‥‥‥解ります。」
「今日、思い切って、今までの行動の逆の事をしてみてもいいと思いますよ。」
「‥‥‥‥というと？」
「貴女は、潔癖症ともいえる性格を持っていますが、先ほど系統的脱感作療法が良いと言いましたよね。」
「‥‥‥はい。」
「つまり、新しい学習、つまり癖付けを今日からするんです。」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「貴女のこだわりの根源は、潔癖症‥‥‥つまり、汚いものは見たくないとか、想像したくないと思っているはずです。それに敢えて挑戦していくんです。」
「‥‥はぁ‥‥‥」
「ロシアの心理学者で、ピコロフ‥アノフという学者が居るのですが、彼が考案した療法で、羞脱恥放法と言いますが、つまり、今してる自分の行為を鏡に映して見るんです。それも、とても人に見せれない様な行為を。」
「え？」
「ま、非常に言い難いのですが‥‥‥‥つまり、用を足している所を鏡に映して観察するように見たり、そして、セックスも彼との絡みを鏡に映して、まさに結合中というところを集中して見るんですよ。」
「ぇ‥‥‥‥ぇぇ‥‥‥そ‥‥‥そんな‥‥‥恥しいです‥‥‥」
「ハハ、他人に見せるわけじゃありませんよ。貴女が、自分で見るんです。」
「で‥‥‥でも‥‥‥‥」
「貴女は、変な部分に拘り過ぎて、本来、何でも無い様な行為にまで嫌悪感を抱いていたり、嫌っている風があります。通常、確かに恥しいであろう事を平気になれ、とは言いませんが、慣れることが必要なんですよ。将来の貴女の生活や家庭にまで影響してしまう事も考えられますからね。とにかく、騙されたと思って試して下さい。」
「ゎ‥‥わかりました‥‥‥‥あの‥‥‥先生‥‥‥私、なんとなく‥‥‥出きそうな気がしてきました。」
「焦らずに一つ一つでいいんですよ。今までのこだわりを捨てる。そして、新しい、いい意味の拘りを癖付ける。これが解決法です。」
「‥‥‥はい。」
「彼と仲良くしてください。拘りが彼も貴女も苦しめる事になりますよ。」
「解りました‥‥‥‥あの、先生、ありがとうございました。」

　犬飼は、先ほど部屋に入ってきた時に比べ、表情が明るくなっていた。
　犬飼の全身からは、何かが吹っ切れたような感じを読み取る事が出来た。

　仙次郎は、犬飼を見送ると静かにドアを閉めた。

「先生っ！」
「んっ？」

　仙次郎の真後ろで佳代が怒った顔で立っていた。

「私が、セックスが趣味というくらい好きですってっ！」
「え‥‥‥あ、いや‥‥‥つまりだな‥‥‥‥彼女を癒すために‥‥‥」

　佳代は、仙次郎の手を取ってスカートの中に導いた。

「な、何をやってるのかね‥‥‥」
「私の拘りにします。そう、新しい学習、癖付けをね。」
「な‥‥‥ば、馬鹿を言っちゃいかんぞ‥‥‥」

　そう言って、手を抜く仙次郎‥‥‥‥

「先生、私の行動療法です。これから毎日、触ってくださいね。」

　そう言って、仙次郎の股間を撫でる佳代‥‥‥‥

　仙次郎は、軽い眩暈を覚えながら大きな溜息をついていった‥‥‥‥‥‥‥

（８９）

　仙次郎は、久しぶりに名倉からの電話で喫茶室に向かっていた。

　名倉は、元部下である社員に悩み事を相談されたのだが、内容が内容だけに、適切なアドバイスが出来なかったのだ。
　名倉は、仙次郎の事をその部下に話したところ、是非、紹介をして欲しいと依頼されたのだ。

　名倉は、それを仙次郎に伝えるため喫茶室に足を運んでもらっていた。

　仙次郎が喫茶室に入ると、名倉は窓際の席で外を眺めていた。
　近づいていく仙次郎‥‥‥‥

　名倉は、仙次郎に気づき軽く手を振りながら笑顔を投げた。

「先生、すみません、忙しいのに。」
「いえいえ、今日は暇ですので。‥‥‥それより久しぶりですね、名倉さん。」
「ええ、毎日、出張ばかりしてましたの。」
「ハハ、大場常務も寂しかったでしょうね。」
「大場は、大場で忙しいんですよ。」

　大場とは、本社常務で、名倉と今秋、結婚をする男性だ。
　共に、再婚同士なのだが、互いを認め合い理解し合った仲だった。

「しかし、燃えましたでしょう？」

　仙次郎の言葉に頬を染める名倉‥‥‥

「でも、さすがに１回でしたわ。」
「いいじゃないですか、それでも癒されたでしょう？」
「ええ、まあ‥‥‥でも、式前にもう一度先生に抱いて欲しいけど‥‥‥フフフッ。」
「駄目ですよ。大場常務に怒られます。」
「言ったでしょ。大場は、先生を信頼してるって。」
「ハハハ、まあ、暇な時に‥‥‥‥それより相談とは？」
「ええ、実は、私の元部下なんですが、田所晴子という女性がいるんです。先週、彼女から相談を受けたんですけど、かなり悩んでいる様子でして。それで、先生を紹介して欲しいと言われたんですよ。一応、その前に内容を聞いて、先生に事前にお話しておいた方がいいと思って尋ねたらセックスレスらしいんです。あまり多くは語らなかったのですがね。」
「ほぉぅ‥‥‥セックスレスという事は？」
「ええ、昨年、営業四課の田所真一という男性と結婚したんですが、私も、どういう男性か気になって、四課長に、話しを聞いたんです。しかし、特に問題があるような事は言ってませんでした。業務も普通にこなしていますし、他に女性がいるような事もないようです。」
「そうですか‥‥‥‥しかし、セックスレスといっても、どちらに原因があるか話しを聞かないと、ここでは判断できませんしね。それに、心因的な事ならば私でも協力は出来ますが、身体上の事ならば、病院へ行かないと治りませんよ。」
「それが、先生、彼女が言うには、彼は‥‥‥その‥‥‥‥立つらしいんです。」
「え？」
「つまり‥‥‥インポテンツでは、ないらしいんですよ。」
「そこまで聞いたんですか？」
「いえ、彼女の方から話してくれたんですけど、‥‥‥というのも‥‥‥隠れて‥‥‥その‥‥‥‥えー‥‥‥‥つまり‥‥‥ひとりで‥‥‥‥」
「マスターベーションですか？」
「え？」
「オナニーでしょ。」
「え、ええ‥‥‥そ、そうです。」
「ふーむ、なるほどねぇ‥‥‥解りました。一度、二人から話しを聞いてみましょう。」
「お願いします。彼も口にこそ出さないようですが悩んでいるようなんです。」
「‥‥‥‥まあ、そうでしょうね。」
「いつも、ややこしい依頼ばかりですみません。」
「いえ、いいんですよ。‥‥‥とにかく、明日にでも来るように伝えてください」
「ええ。そう言っておきます。」
「ところで、名倉さん、社での評判が一段とよくなったようですね。」
「え？」
「洋平から聞きましたが、部下や上司からも相当信頼されてるようで。何より、男性社員の憧れらしいじゃないですか。素晴らしいですよ。」

　名倉は、照れた表情を浮かべながら仙次郎に呟いた。

「先生のおかげです。あれ依頼、無頓着だった洋服やお化粧にも凝りだして、仕事以外での生活にも凄く張りが出てきたんです。いい意味で私生活が、充実しているから仕事も頑張れるんですよ。」
「名倉さん、それは、非常に良い心理状態を保っていますね。まあ、僕のおかげというよりも大場常務の存在も大きいですよ。」
「ええ。‥‥‥‥でも、そうさせてくれた切っ掛けは先生ですから。」

　名倉は、ニッコリと笑いながら仙次郎を見つめた。

「ハハ、照れますな‥‥‥。しかし、名倉さん、だんだん若くなっていきますね。」
「え？‥‥‥そうですか‥‥‥‥」
「年齢を逆行してるんじゃありません？　肌なんか凄く艶がありますし。あ、そうか‥‥‥‥‥適度に大場常務と？‥‥‥それとも‥‥‥‥‥」

　仙次郎の言葉にいっそう顔を赤らめていく名倉‥‥‥‥‥
　しかし、気を許した仙次郎の前では、隠さずに本音を吐いていった。

「‥‥‥‥‥自分でも不思議なくらいなんです。大場が、家に置いていった玩具でたまに‥‥‥‥」

「ほぉう‥‥‥しかし、名倉さん、変な意味ではありませんが、それもストレスの発散になりますしホルモンバランスを維持するためには、効果があるんですよ。」
「そうなんですか？」
「ええ。僕が、アメリカで研究している時にカウンセリングの手伝いをした事があるんですが、７０代の女性でも自慰行為を続けている方は、たくさんいましたよ。更年期障害にも効果がありますしね。まあ、向こうはそういう研究も進んでいますから。」

　そう言って笑う仙次郎の笑顔に、名倉の気持ちは和らいでいった‥‥‥‥

　その後、仙次郎と名倉は、暫く他愛もない会話をして喫茶室を出て行った。

☆☆☆☆☆

　部屋に戻った仙次郎は、寛ぎながら雑誌を読む佳代に目をやった。

「何やってんだい？」
「あ、先生、おかえりなさい。‥‥‥‥いま、輸入下着のカタログ見ていたんです。」
「輸入下着？‥‥‥‥他にやること無いのかね、君は‥‥‥」
「ええ、ありません。」

　あっけらかんと、そう答える佳代にガックリとする仙次郎‥‥‥‥

「ったく‥‥‥‥まあ、事務処理は早いけど、他の勉強もしたまえ。」

　そう言い返す仙次郎だが、佳代は、カタログに集中して話を聞いていない。

（‥‥‥‥‥‥このぉー‥‥‥‥聞いてねぇな‥‥‥）　

　仙次郎は、ソファに座ってカタログを読む佳代の背後に回った。

（一体、どういう、下着なんだ‥‥‥‥）

　カタログを覗き込む仙次郎‥‥‥‥

（お、こりゃ、凄ぇな‥‥‥‥）

　カタログの写真は、ほとんどがセクシーランジェリーだった。
　ショーツ、ブラジャー、ナイトドレス、ストッキングと、ほとんどが、男の股間を擽る一品だ。
　中には、まるで下着の機能を果たしていないような種類もある。
　仙次郎は、佳代の頭上から囁いた。

「佳代君、いつも、こんなのを見てるのかい？」
「ええ、結構、良く見てますわ。ここの会社の下着はよく買うんです。」
「へぇぇー‥‥‥‥意外と凝るんだねぇ。」
「私も好きだけど、ドアホの彼が好きだったので。」
「ド、ドアホ‥‥‥‥だんだんと言葉づかいが悪くなるね君は‥‥‥‥‥しかし、いくら聞いてないとはいえ、彼に失礼だろう、ドアホなんて。」
「だって別れましたもの。」
「ふぅーん、そうか‥‥‥‥‥ん？‥‥‥えぇぇぇー！　わ、別れた‥‥」
「ええ。速攻で別れましたわ。」

　カタログから目を離さず、平然と、そう言いのける佳代‥‥‥‥

「しかし、早い決断だね‥‥‥‥」
「そうですか？‥‥‥まあ、アイツの事はもういいんです。」

　佳代は、そう言ってカタログに見入っていた。

　仙次郎は、溜息をつきながらも、それ以上、問いただす事を諦めた。
　鼻歌を歌いながらページを捲る佳代‥‥‥

　その時、ある下着が仙次郎の目が止まった。
　豹の顔が刺繍してあるショーツだ。まるで本物の豹のように見える。

「お、それいいな。」
「え、どれです？」

　その下着が写った写真を指さす仙次郎‥‥‥

「先生、こう言うの好きなんですか？」
「いや、好きというか‥‥‥‥まあ‥‥‥そうだな‥‥‥‥結構イカすじゃないか。」

　仙次郎が、そう言った瞬間、佳代は勢いよくカタログを閉じて立ち上がった。

「な！‥‥‥ど‥‥‥どうした、佳代君‥‥‥」

　佳代は、仙次郎に振り向くと、意味ありげな笑いを見せながらゆっくりとスカートを上げていった。

「ウフフッ‥‥‥‥セ‥ン‥セ‥イ‥‥‥‥‥‥ほらっ！」
「おぉぉぉぉーっ！」

　佳代は、いま、仙次郎が指さした豹の顔が刺繍されたショーツを穿いていたのだ。
　得意げな表情で仙次郎を見つめると、股間を前に突き出していく。

「んぅーむ‥‥‥‥‥やはり、いいな。まさに咥えてやるというような感じだね。」
「先生、手触りもいいんですよ。」
「どれどれ‥‥‥」

　佳代に促されて、ショーツに触れる仙次郎‥‥‥‥‥‥

「なるほど、刺繍が毛羽立っていて気持ちいいな。」
「口の部分が、ちょうど、股間部にあるでしょ。」
「ククッ‥‥‥涎が垂れてないかな‥‥‥」

　そう言って、ショーツをずらして蜜壷に指を滑らせる仙次郎‥‥‥

「アァァーン‥‥‥‥先生ぇ‥‥‥」
「お、湿ってるな。」

　佳代は、仙次郎の肉棒をスラックスの上から撫で始めた。
　仙次郎は、ショーツの手触りを楽しみながら蜜壷に指を挿入していく。

「イヤァァーン‥‥‥気持ちいぃぃ‥‥‥」
「んーむ‥‥‥濡れてきたぞ、佳代君‥‥‥」

　佳代は、仙次郎のベルトを緩めてチャックを下ろした。
　ブリーフを下げて直接肉棒を握ると上下に擦り始めていく。

「ァァァー‥‥‥‥先生ぇ‥‥‥‥固くなってるぅぅ‥‥‥」

　佳代は、蜜壷を触る仙次郎の手を払いのけてしゃがみ込んだ。
　そして、仙次郎の肉棒を貪るように咥えていった‥‥‥‥

「おっ、凄い吸引だな‥‥‥‥‥なかなかだ‥‥‥」

　仙次郎の言葉で佳代の舌が、一層激しく動き始めた。

（んーむ、ナイスだ‥‥‥‥‥‥‥‥ん？　しかし、何で、こうなるんだ？）

　仙次郎は、この状況に首を捻った。

（‥‥‥佳代君にハメられた感がするな‥‥‥‥）

　そう思いながら上から佳代を見る仙次郎‥‥‥‥
　淫韻な音を立てながら肉棒に舌を絡めている。

（‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ま、いいか‥‥‥‥）

　仙次郎は、佳代の前髪を掻き揚げた。

「佳代君、奥のソファに行こうか？」
「ンムゥッ？」

　肉棒から口を離した佳代は、その場でショーツを脱ぎ捨てた。

「先生ぇ、早くぅぅぅー‥‥‥」

　仙次郎の手を引っ張り急かす佳代‥‥‥‥

「コラっ‥‥‥ズボンを上げないと歩けないって‥‥‥」
「いいから、早くぅーっ‥‥‥‥‥直ぐにぶち込んでぇぇっ！」

（ぶ‥‥‥ぶち込む‥‥‥‥‥日増しに卑猥な言葉がアップしてくな‥‥‥）
　
　何とか、執務室のソファにたどり着く仙次郎‥‥‥
　佳代は、テーブルに手を付いてヒップを突き出した。

　既に亀裂からは蜜が溢れ出している。
　仙次郎は、苦笑いしながら佳代のスカートを押し上げると濡れそぼった蜜壷に肉棒を打ち込んだ。

「ウアァァァァァァァァァァァァァァーッ！」

　絶叫する佳代‥‥‥

（しかし、佳代君も佳代君だが‥‥‥‥俺も俺だな‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、そう思いながら佳代のメインスポットに肉パイルを打ち付けていった‥‥‥‥‥‥‥