（１５）

　仙次郎は、乳房の上下を縛り中央で瘤を作って端末をウェストで留めた。
　そして手首にタオルを巻きロープで縛り上げていく。

「佳代君、立つんだ。」
「‥‥‥‥はぃ‥‥‥」

　佳代はベッドから降りてヨロヨロと立ち上がった。
　天井のレール式フックにロープを通し固定する仙次郎‥‥‥

　佳代は両手を真上に引っ張られて万歳をしている格好になる。
　更に、右足の膝にもロープを縛り、もう一つのフックに固定していった。
　佳代の右足は大きく上に上がり、蜜壷が露になっていく。

「ンアァァァァァァァー‥‥‥‥恥しいぃぃぃ‥‥‥」
「これが望みなんだろう。」
「ァァ‥‥‥先生ぇぇ‥‥‥‥‥」
　仙次郎は、これ以上無く硬くなった佳代の乳首を指で弾いた。
「アァッ‥‥ィィィィィィィィー‥‥‥‥‥」
　蜜壷からは、凄い量の愛液が流れ出し太腿を伝って膝辺りまで達している。
　仙次郎は、ベッド上の小型マッサージ器を手に持ち身体中を刺激し始めた。
「ングゥゥゥゥァァァァァ‥‥‥‥フグゥゥゥゥゥゥゥゥー‥‥‥‥‥」
　仙次郎は、佳代の陰毛を引っ張った。
「アヒィィィィィー‥‥‥‥‥‥もっとぉ‥‥もっと、強くぅぅぅぅぅーっ！」
　佳代は完全に、マゾ化したようだ。
　籠の中に入っているクリップを両方の乳首に挟み、そして女芯にも取り付ける。
「ンッオォォォォォォォォォォォォォー‥‥‥‥」
　仙次郎は、ハイパーウィップという鞭を手にもった。
　この鞭は、叩いても肌に跡が残らない。
　プレー用に開発された鞭なのだが、叩いたときの音は大きいのだ。

「ぁぁ‥‥先生ェェ‥‥‥叩いて‥‥‥思いっきりぃぃぃーっ！」
　仙次郎は、苦笑いをしながら鞭の柄で佳代の顎を突き上げた。
「クァァァァー‥‥‥‥」
「佳代君、君の痴態を皆に見てもらおう。」
　仙次郎は、そう言うと部屋の正面にある壁扉を開いた。
　扉の奥はガラス窓があり、それも開けていく。
「アァァァァァァァー‥‥‥いやぁぁ‥‥‥‥恥しいぃぃぃ‥‥‥」
　窓の外は、雑居ビルが軒並び、灯が眩しく部屋に射し込んでくる。
　当然、佳代の姿は見えるはずもなく安全なのだが仙次郎の言葉巧みな話術で洗脳させられていった。
　佳代は、自分の姿が他の人間に見られていると錯覚しているようだ。

「イ‥‥イヤ‥‥‥先生ぇ‥‥‥許して‥‥‥‥許してぇぇぇ‥‥‥」
「見せたいんだろう。その淫らな姿を‥‥‥」
「嫌ぁぁぁ‥‥‥‥恥しいぃぃぃ‥‥‥‥外を歩けないぃぃぃぃー‥‥」
「さあ、もっと、見てもらうんだ。」
　仙次郎は、佳代の股間を開いている窓のほうに向けた。
「イヤァァァァッァァァァァァァァァー‥‥‥‥‥ヤダァァァァー！」
　しかし、佳代の蜜壷からは、まるで蛇口をひねったように蜜が溢れ出している。
　仙次郎は、殺菌したビニール膜を剥がしバイブを取り出すと佳代の蜜壷にそれを埋めていった。
「アハァッァァァァァァー‥‥‥‥‥‥‥ァァ‥‥‥‥ィ‥‥‥ィィ‥‥」
　バイブの底についている紐をウェストのロープに掛けて落ちないようにした。
　そして、佳代のヒップを鞭で思いっきり叩いていく。
「ンッアァァァァァァァァァー‥‥‥‥‥イィィィィィィィー‥‥‥もっと‥‥‥もっとぉ‥‥‥激しく‥‥ぁぁ‥‥叩いてぇぇぇぇっ！」
　佳代は絶叫した。
　さすがの仙次郎も、佳代の声が外に漏れないか心配になるほどだ。

（‥‥‥‥‥しかし、凄い変貌振りだな‥‥‥‥）

　仙次郎が、鞭を入れるたびに蜜壷に刺さったバイブが奥へ吸い込まれていく‥‥‥
　佳代は視線を窓の外に向けていた。
　眉を顰め、妖艶な瞳を投げかけている。

「ぁぁ‥‥‥見られてるっ‥‥‥‥見られてるぅぅぅぅ‥‥‥」
　仙次郎が、追い討ちを掛けた。
「佳代君、君の性器は晒しものになってるぞ。」
「イヤァァァァ‥‥‥‥‥」
「ククッ‥‥‥‥だが、見て欲しいんだろう。‥‥‥‥‥‥え？」
　佳代は、恍惚とした表情で頷きながら呟いた。
「‥‥‥‥ぁぁ‥‥‥‥見て欲しい‥‥‥私のオ○ンコを見て欲しいぃぃぃーっ！」
　仙次郎も演技とはいえ、妙な興奮を覚えてきた。

（こりゃ、なかなか面白いな‥‥‥‥）

　仙次郎は、佳代のもう一方の足も縛ってフックに吊るしていく。

　佳代は、膝から折れ曲がった両足を大きく開いた格好になっていた。
　佳代の股間部は完全に外から丸見え状態だ。

　仙次郎は、レール式になったフックを限界まで窓際に近づけていく。

「イヤァァァァー‥‥‥‥先生ぇぇぇ‥‥‥恥しいぃぃぃぃーっ！」
「先生ぇぇ‥‥‥お願いぃぃ‥‥‥厭らしいことしてぇぇー‥‥」

（えぇーい、もう、どうにでもなれっ。）

　仙次郎は、真後ろから佳代の菊門にア○ルバイブを差し込んでピストン運動を開始した。
「グッフゥゥゥゥゥゥー‥‥‥‥‥いぎぃぃ‥‥‥ぁぁ‥‥‥気持ちいぃぃ‥‥‥」
　仙次郎は、前に手を回して乳首も刺激していく。
「ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥー‥‥‥‥アァァァァァァァァァー‥‥‥」
　快感を露にする佳代‥‥‥‥
　そして仙次郎が女芯に手を移動し突起を指で摘んだ瞬間‥‥‥‥
「アッヒィィィィィィィィィィィィィィィィィーッ！
　佳代が後方に大きく頭部を垂れた。
　白目を剥き、体が硬直する。
　そして、大絶叫と共に蜜壷からバイブが抜け落ち失禁を開始した。
「フゥゥー‥‥‥ァァ‥‥‥‥ハァァッァァァ‥‥‥‥‥‥ァァ‥‥‥ァァッ」
「か、佳代君‥‥‥‥‥そ、そんなところで‥‥‥」
　しかし、既に放尿は始まっており、男と違って止めることは容易ではない。
「せ‥‥‥‥先生ぇぇ‥‥‥‥‥はぁぁぁぁ‥‥‥‥ぁぁ‥‥‥‥」

　仙次郎は念のため窓から顔を出し外を確認した。

（‥‥‥‥‥‥だ‥‥‥誰もいないか‥‥‥‥‥‥‥ふぅぅぅー‥‥‥）

　しかし、真下に停めてある高級車に佳代の放った小水が降りかかっていた。

（‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ま、いいか‥‥‥）

　放尿を終えた佳代を仙次郎は、奥へ引き込んだ。
　窓を閉め壁扉を閉める仙次郎‥‥‥
　佳代のロープを解きベッドに寝かせていく。
　佳代は、満足気な表情で薄目を開けながら仙次郎を見つめていた。

「先生ぇ‥‥‥‥もっと、虐めてくださぃ‥‥‥‥」

（虐めてって言われても‥‥‥‥‥‥これ以上は、マニアの世界だぜ‥‥）

「先生ぇぇ‥‥‥‥」

（こうなったら、トコトンやってやるか‥‥‥）

　仙次郎は、佳代を抱き上げて固定柱がある場所に移動した。

　佳代を柱に縛りつけていく仙次郎‥‥‥
　そして両足首にもロープを縛ると大きく左右に開きながら真上に上げていった。

（意外と、体が柔らかいんだな‥‥‥）

　佳代の股間が丸見えになった。
　両手は、柱の後で縛られて、一切身動きが取れない。
　ふと、柱の下を見ると金属製の蓋のような物があった。
　仙次郎は、首を傾げながら、その蓋を開けてみる。

（‥‥‥なるほど‥‥‥‥‥‥トイレになってるのか‥‥‥‥‥‥ヨォーシ‥‥）

　仙次郎は佳代に囁いた。

「佳代君、本当にいいんだね。」
「先生ぇ、無茶苦茶にしてぇぇー‥‥‥」
　もはや、仙次郎に遠慮はなかった。
「佳代君、その格好が見えるかい？」
　佳代は前面にある鏡に映った自分の姿を見て興奮していく。
「ぁぁぁー‥‥‥オ○ンコが丸見えぇぇ‥‥‥‥」
　呟く佳代を尻目に仙次郎は、食器乾燥機のような箱の中から注入器をとってボックスのグリセリンを容器に入れた。
　手にジェルとプラグを持ち佳代に近づいていく。
「ァァァァ‥‥‥」
　仙次郎の手に持つ注射器を見て佳代は喘ぎ声を上げた。
「ぁぁぁ‥‥‥先生ぇ‥‥‥それだけは‥‥‥」
「もう遅いよ。」
　仙次郎は、佳代の菊門に先を挿しグリセリンを注入していく。
「ングゥゥゥゥゥゥゥゥー‥‥‥‥‥ンァァ‥‥‥ァァ‥‥‥ァァァ‥‥‥」
　そして、プラグにジェルを塗ると菊門に栓をした。
「ァァ‥‥ァゥゥゥゥゥ‥‥‥‥ッ‥‥ゥゥ‥‥‥ッ‥‥‥」

（‥‥‥‥そうだ‥‥‥‥確か、バッグの中に‥‥‥‥）

　仙次郎は、社の備品であるデジタルカメラがバッグにある事を思い出した。
「佳代君、記念に写真でも取っておこう。」
「ぇ？‥‥‥ァァァァー‥‥‥ィ、イヤァァー‥‥‥」
「‥‥‥‥嫌かい？」
「駄目ぇ‥‥‥撮ってぇぇぇぇーっ！」
　
　ガクッとしながらバッグから小型の携帯カメラを取り出す仙次郎‥‥‥
　仙次郎は、カメラを持って立ち上がると肉棒を佳代の顔の前に近づけていった。
　佳代は、舌を伸ばしながら肉棒を迎え入れようとしている。
「はぁぁ‥‥‥先生ぇ‥‥‥舐めさせてぇぇぇ‥‥‥‥‥早くぅぅー‥‥‥」
　仙次郎は、ゆっくりと佳代の口に肉棒を押し付けていった。
　佳代は、貪りつくように吸引しながら肉棒に舌を絡ませた。

　シャッターを押す仙次郎‥‥‥‥

（んー‥‥‥この状態で写すのはなかなか難しいな‥‥‥）

　角度を変えながら、何度もフラッシュをたいていく。
　佳代は、カメラに目を向けて淫乱な表情を投げていった。
　しかし、数分もしないうちに下腹部に激痛が走っていく。
「ングゥゥゥゥー‥‥‥」
　真っ赤に目を充血させ、肉棒を咥えたまま眉を顰める佳代‥‥‥

（そろそろ、いいかな‥‥‥）

　仙次郎は、肉棒を佳代の口から離すと真下の金属製の蓋を取り外した。
　そして、プラグの底に付いていいるリングに紐を取り付けて、その場を離れていく。

　仙次郎は、カメラを構えながら佳代を写し出した。
　紐を引っ張るたびに菊門に埋まったプラグで周りが盛り上がった。
「ヒギィィィィー‥‥‥‥せ‥‥‥先生ぇぇぇ‥‥‥‥‥は、早く‥‥‥」
「途中、動画撮影に切り替えながら仙次郎は、佳代の醜態を撮っていった。」
「アグゥゥ‥‥‥も‥‥もう駄目ぇ‥‥‥お、お腹が、く、苦しいぃぃ‥‥‥」
　仙次郎は、頃合と判断し菊門に埋まるプラグを思いっきり引っ張った。
　その瞬間‥‥‥‥‥
　佳代の菊門が大きく開き、汚物が勢いよく飛び出してきた。
「イヤァァァァァァァー、見ないでぇぇぇぇぇぇぇーっ！」
　しかし、意思に逆らうように菊門から出る汚物は、真っ直ぐと下の簡易便器に落ちていく。

「佳代君、どうだい見られている気分は？」
「先生ぇぇぇ‥‥‥‥私を‥‥‥‥ぁぁ‥‥‥恥しぃぃ‥‥‥‥‥」
　佳代は、涙目ながら悦びの表情が窺えた。
　唇を噛み顎を突き上げて仙次郎を見つめている。
　何度もシャッターを押す仙次郎‥‥‥
　フラッシュが光るたびに、蜜壷から糸を引きながら愛液を垂らした。
　下腹部の緊張が緩んだのか、佳代は２度目の放尿を開始した。

「‥‥‥ァァッァ‥‥‥‥‥‥先生ぇ‥‥‥‥見てくださいぃぃぃ‥‥‥」
　仙次郎は、佳代に近づき股間部をアップで撮っていく‥‥‥‥

（フゥゥゥー‥‥‥‥俺も完全にマニアの仲間入りだな‥‥‥‥）

　仙次郎は、苦笑いを浮かべながら佳代のロープを解いていった。

（１６）

　翌日、佳代は、照れくさそうに出社してきた。

「先生、おはようございます。」
「ああ、‥‥‥おはよう。」

　佳代は、椅子に座ると小声で仙次郎に声を掛けてきた。
「あの‥‥‥昨日は‥‥‥どうも‥‥‥‥」
「あ‥‥‥ああ。‥‥‥いや‥‥‥‥ははは‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥私、あんな経験初めてで‥‥‥‥物凄く興奮しました。」

（‥‥‥初めて？‥‥‥‥‥‥だとしたら‥‥‥凄いな‥‥‥）

　仙次郎は、佳代が、いざその行為になると変貌する性二重人格症でないかと思った。

「一日で、あれだけイッたのも初めてなんです‥‥‥‥」
「‥‥‥へ、へぇー‥‥‥そう‥‥‥」
「先生と私は、もう一身同体ですね。」
　何となく嫌な予感を覚える仙次郎‥‥‥‥
「ま、俺には、あまり合わないけどな。」
「そんな事ありませんよ。また、私を虐めてください。」
　佳代の言葉に、ガックリとしながら専門書を見る仙次郎‥‥‥‥‥

（そうだ‥‥‥）

　仙次郎は、バッグからデジタルカメラを取り出した。
　昨夜、佳代を写したメディアを取り出し佳代に手渡す。
「え？」
「昨日、君を撮った写真だ。」
「あ、そういえば‥‥‥‥」
　佳代は、仙次郎から受け取ったメディアをカードリーダーに挿し込んで写真に見入った。
「イヤァァァー‥‥‥恥しいぃぃぃー‥‥‥」
　一人で顔を染めながら真剣にモニターを眺めている。

「えぇぇー、こんな所も撮ったんですかぁ。」
　佳代は、真っ赤な顔をして声を上げているが遠慮のない感想を呟いている。
「やだぁ‥‥‥先生の物が、私の中にズッポリと‥‥‥ぁぁーん‥‥‥」

（ズ、ズッポリ‥‥‥‥）

　仙次郎は、もはや佳代が、自分の前では恥も外聞も関係なく遠慮のない関係になった事を確信しているようだった。

（‥‥‥た‥‥‥頼むぜ‥‥‥‥おい‥‥‥）

「先生っ、これ、見て見てぇ‥‥‥私、全部飲みこんでるぅ‥‥‥」
「‥‥‥か、佳代君‥‥‥もうちょっと、静かに見たまえ。」
「ぁ‥‥‥は、はい‥‥‥す、すいません‥‥‥」
　佳代は、舌を出しながらモニターを食い入るように見ている。

（写真を撮って失敗だったかな。）

　仙次郎は、切れた煙草を買いに部屋を出ようとした。

「あ、先生、何処へ？」
「ちょっと、煙草を買ってくるよ。」
「それなら、私が‥‥‥‥」
「いや、いいよ。外の空気を吸いたいから。」
「そうですか‥‥‥」
「直ぐ戻る。」
　仙次郎は、そう言って部屋を出て行った。

☆☆☆☆☆

　仙次郎は、煙草を買って部屋に戻ろうとしていた。
　街の景色を見ながら廊下を歩いていると、か細い声で一人の男性が仙次郎に声を掛けてくる。
「あのぉ‥‥‥‥高輪先生ですよね‥‥‥‥」
　振り向く仙次郎‥‥‥‥
「‥‥‥はい‥‥‥そうですが。‥‥‥貴方は？」
「開発部の青木と言います‥‥‥‥あの‥‥ご相談が‥‥‥」
　青木と名乗った男は、覇気のない恐々とした表情で仙次郎に身分を名乗った。

「‥‥‥‥‥そうですか‥‥‥仕事はよろしいんですか？」
「ぇぇ‥‥‥大丈夫です。」
　青木は怯えているようにも見える。
　仙次郎は、青木が相当な悩みを抱えていると判断した。
「わかりました。どうぞ、一緒に‥‥‥‥」
「はい‥‥‥‥」
　仙次郎は、青木を伴って部屋に戻った。

「どうぞ、そこへ座って待っててください。」
「‥‥‥はい。」

　資料とノートを取りに執務室のドアを開ける仙次郎‥‥‥‥
　自分の部屋であるためノックはしない。

「佳代君、戻ったぞ。相談者を連れてきた。」
「キャァァァァーッ！」
「な‥‥‥なにやってんだいっ！」
　佳代は、仙次郎が居ないのをいいことに、ストッキングとショーツを下ろしモニターを見ながら自慰をしていた。
　よほど、夢中だったのだろう、奥のドアが開くのに気づかなかったようだ。
　佳代は、立ち上がるとショーツとストッキングを慌てて元に戻していく。

「‥‥‥‥‥‥ぁ‥‥‥あのぉ‥‥‥つまり‥‥‥‥‥‥エヘヘ‥‥‥‥‥‥」
「‥‥エヘヘじゃない。‥‥‥‥‥指が濡れているぞ。」
「す、すいません‥‥‥つい、なんとなく‥‥‥‥自然に‥‥‥‥」
　仙次郎は、呆れて声が出なかった。
「自然に‥‥‥ってのが、恐いな‥‥‥‥」
「だって、先生‥‥‥昨日の事を思い出しちゃって‥‥‥」
　照れを隠すように仙次郎に抱きついてくる佳代‥‥‥
「おい、佳代君、相談者が来てるんだって‥‥‥」
「ぇっ！‥‥‥あ、すいません‥‥‥直ぐにデータ出します。」
「ったく‥‥‥‥開発部の青木という方だ。」
「はい、直ぐにお持ちします。」
　佳代は慌てて、青木のデータをプリントアウトし始めた。

（やれやれ‥‥‥‥）

　応対室に戻った仙次郎は、早速、青木に事情を聞き始めた。
「それでは、青木さん、お話を伺いましょうか。」
「はい。‥‥‥‥実は、ある女性から脅かされているんです。」
「脅かされてる？」
「‥‥‥ええ‥‥」
　青木は、下を向いて押し黙った。
　そこへ、佳代がデータを持って応対室に入ってきた。
「先生、できました。」
　手に取る仙次郎‥‥‥‥
　受け取ったデータに目を通していく。

　青木勝行　４２歳　人事部人事課長　妻、２人の子供と４人暮らし、幹部職員の信頼は厚く、入社時は、秘書課勤務だったが適切な書類管理や秘密遵守を買われて人事課長に３年前昇格した。
　真面目な人物で、趣味は囲碁という、至って大人しい社員で浮きだった噂も入社以来一度もないようである。
　毅然とした勤務態度で、隙を見せないことで有名だった。

（‥‥‥なるほど‥‥‥‥ということは、恐らく脅かしているのは女だな。）

　青木は、ゆっくりと頭を上げると顔を顰めながら仙次郎に説明を始めた。

「実は、１年前なんですが、社内のある女性と体の関係を持ってしまいまして。」
「ほぉー‥‥‥それで？」
「私にも隙があったのですが、‥‥‥‥実は、私の職位を利用して裏手口で昇格をさせるように脅しを掛けられてるんです。昨年、事業拡大の関係で、我社は、７月に臨時の異動人事があるんですが、その時に昇格させろと。」
「なるほど‥‥‥‥で？」
「昇格させなかったら、私を弄んだ事を上部に報告すると言われまして。」
「その女性とは？」
「総務部庶務課の主任で山井秀子と言う女性です。」
　佳代は、その名を聞き再度データを取りに執務室に入っていった。

「その女性は、そんなに、昇格したいんですかねぇ。」
「ええ。私が調べた所によりますと、彼女らの同期は優秀な者が多いのですが特に女性に優秀な者が集中しているんです。‥‥‥つまり競争意識が相当あり互いに牽制しあったり、まず自分が先に昇格したいという欲望がかなり強くて。」
「ふーむ‥‥‥その山井と言う女性は、貴女を誘った事自体、計画性がありますね。」
「‥‥‥‥たぶん‥‥‥」
「ま、聞くところによりますと、彼方は幹部にも信頼があって優秀と聞いていますし‥‥‥ここは、この会社の将来性を考えて‥‥‥‥」
「お願いできますか？」
「‥‥‥‥ま、その女性と真実を調べてからになりますが。」
「是非‥‥‥是非、お願いします。」
　青木は、苦汁の表情で仙次郎に頭を下げた。

　そこへ、佳代が、山井秀子の社員データをもって応対室に戻ってきた。
「先生‥‥‥」
　受け取る仙次郎‥‥‥‥

　山井秀子　３０歳　独身　総務部庶務課　主任
　短大を出て榊原グループ本社に入社、企画部企画課を経て４年前に庶務課に配属

「‥‥‥‥‥大した業績ではありませんね。」
「ただ、立ち回りが上手で、結構知らない所で上手くやっているようです。」

（元企画部というと‥‥‥‥‥）

　仙次郎は、名倉順子を思い出した。

「ま、青木さん、いずれにしても調べてからでないと動けませんので時間を下さい。」
「‥‥‥どうか、よろしくお願いします。」
　青木は、元気のない表情で部屋を出て行った。

　佳代が、仙次郎に声を掛けてきた。
「先生、今回は、初めての相談ですね。」
「ああ、言ってみれば、初仕事といってもいいな。」
「危険因子排除の‥‥‥‥ですか？」
「ああ。出来れば来て欲しくない相談だったが‥‥‥」
「それもそうですが、先生と私の二人だけでは難しいですよ。」
「ああ。スパイじゃないけど、山井秀子を探る者が必要だからな。」
「どうします？」
「んー‥‥‥‥まあ、まずは、山井秀子を洗ってみるか。」
「‥‥‥‥ええ。‥‥‥‥そうですね。」

　仙次郎は、とりあえず青木と山井の関係を推理し対策を考えることにした。
　まずは、山井秀子の魂胆と昇格に拘る理由を探らなければならない。
　仙次郎は、山井が企画部に所属している経緯があることから名倉順子に電話を入れることにした。

「もしもし‥‥‥」
『あ、高輪先生‥‥‥どうも。』
「お仕事中に申し訳ありません。ちょっと名倉さんに聞きたい事がありましてね。」
『いいですわよ。今からどうでしょう？』
「助かります。」
『では、喫茶室でお待ちしてます。』
「どうも‥‥‥すぐに行きますので。」

　仙次郎は、電話を切ると早速、部屋を出て喫茶室に向かった。

　仙次郎は、喫茶室に入っていった。
　名倉は、奥の窓際のテーブルに座っていた。
　あの件以来、名倉は、一際、全体が垢抜けていた。
　４０代というのに、若々しさが感じられると共に華麗な雰囲気も漂わせている。
　自信を持っている事が、見ただけでも判断できた。

「お待たせしました。」
「あ、先生‥‥‥その節は‥‥‥」
「名倉さん、変わりましたねぇ‥‥‥一段と綺麗になったじゃないですか。」
「先生のおかげです。いま、スイミングに通ったり、仕事帰りに色々と立ち寄ったりして、遅い青春を謳歌してるんです。」
　言葉使いも、かなり変わっている。
　順子は、そう言ってはにかみながら仙次郎に答えた。
　仙次郎は、順子の雰囲気と心底を読み取り笑顔で聞き返す。
「‥‥‥名倉さん‥‥‥‥エンジョイしていますね。」
　順子は、驚いたような目で仙次郎を見た。
「‥‥‥‥先生‥‥‥‥な‥‥‥何故、わかります？」
「ハハ‥‥‥女性が短期間で綺麗になる一番の薬は、ＳＥＸですからね。」
　順子は、一瞬で人の心を読む仙次郎の技術に舌を巻いていた‥‥‥
　名倉にとっては、仙次郎は恩人といっても可笑しくない存在だったのだ。

「実は‥‥‥恋というか、お誘いしてくれる人が多くて‥‥‥‥‥。私、こんな事、初めての経験ですし。それで、いま、色々な方とお食事したりして‥‥‥‥‥‥楽しくて仕事も精がでるんです。あ、でも慎重なんですよ。特定の方と言うわけではないんですが。」
「いい事じゃないですか。」
「それとは別に、ご家族を犠牲にはしたくないので、あくまで先生が言われたご褒美にという観点で‥‥‥」
「それでいいんです。ただ、過剰すぎて相手を傷つけないように。」
「ええ、十分心得ています。‥‥‥‥‥先生もたまには誘ってください。」
　順子は、にっこりと笑ってそう答えた。
「ハハハ‥‥‥そうですね。では、今度名倉さんに口でイカせてもらおうかな。」
「もうっ、先生ったら‥‥‥‥はい、練習しておきます。」
　とても、以前の名倉が口にする台詞ではなかった。
　いい意味で名倉の心と欲の開放が上手くいっているという事だろう。

「ところで先生、お聞きしたい事って？」
　仙次郎は、山井秀子の社員データを名倉に手渡し話を始めた。
「‥‥‥‥‥実は、仕事の関係で彼女を調べてるんですけど‥‥‥名倉さんの元部下である事が判ったものですから。それで‥‥‥」
　順子は、仙次郎から手渡された山井秀子の資料を見て顔を顰めた。
　仙次郎は、その様子を伺いながら、自分の考えていた事が的中したと確信していった。