（１７）

「先生、彼女は、陰険な人物ですよ。」
　順子は、何かを思い出したように仙次郎に過去の出来事を喋り始めた。

「まだ、私は補佐だったのですが、内申考査で部下の勤務態度や業績を半期に一度づつ取締役公室に提出するの。当然、昇格や昇給にも響くし書類を作成する私たちは、好き嫌い関係なく公正な評定書を作成して提出するんですけど、彼女は、あからさまに媚びを売ってくるんです。」
「‥‥‥‥媚びを？」
「媚だけじゃないわ。自分のライバルたちの悪口や欠点を社内に宣伝するのよ。」
「ほぉぉー‥‥‥‥ま、居ますね。そういう人間は。」
「彼女は、度が過ぎるんです。同期の連中からも要注意人物と見られてるわ。」
「だろうね。」
「私は、当然、彼女の要求に応じず正直に考査を提出したんだけど、その後の異動で今の庶務に異動になったわ。かなり、私を恨んでいるみたい。何せ、人事発表直後の事だけど私の車を悪戯されて。」
「クククッ‥‥‥‥子供みたいだな。」
「ある意味、彼女はそうなんです。自分を判ってないのよ。」
「なるほど‥‥‥‥ま、当時から今の性格だったようですね。」
「ええ。‥‥‥‥でも先生、何かあったんですか？」
　仙次郎は、人事課長の青木が相談に持ちかけてきた事を順子に話した。
「えぇぇっ‥‥‥‥青木さんが‥‥‥‥‥」
「ええ。」
「とんでもないわ。青木さんは、将来、取締役公室へ入るくらい上部から期待されてるし、他の社員からの人望も厚いんです。失脚させれないわ。」
「ええ、で、私が何とかしようと‥‥‥‥‥」
「先生、私に何かできる事があったら言ってください。お手伝いしますわ。」
「助かります。‥‥‥実は、私と福島君二人だけですから、なかなか動けなくて。」
「先生、一人紹介したい人が居るんですけど。」
「え？」
「元、私の部下だった男性なんですが、それこそ、取締役公室に居るんです。」
「ほぉー。」
「社内だけでなく、榊原グループ全般に詳しい社員で現社長の右腕的存在なの。」
「そうですか。」
「かなり使えるますわよ。」
「でも、何で彼を？」
「その男性を取締役公室に推薦したのは私なんです。あっという間に、私を追い抜いていきましたけど。」
「名前は、なんと言うんです。」
「西条洋平、まだ、若いんですけど取締役公室の次長なんです。」

（西条洋平‥‥‥‥んー‥‥‥‥どこかで聞いた名前だな。）

「‥‥‥‥‥先生、早速、連絡しておきますわ。」
「え、ええ‥‥‥‥お願いします。」
　名倉順子は、そう言うと急いで喫茶室を出て行った。

（‥‥‥しかし、名倉さんに相談してよかったな‥‥‥‥）

　仙次郎は、コーヒーを注文すると山井を追放する手立てを考え始めた。

☆☆☆☆☆

部屋に戻った仙次郎は、山井を追い詰めるため性格を考査し心理的な分析を始めた。

（強引で独占欲が強く、私欲のためなら手段さへも選ばない‥‥か。落とす事は簡単だが、円満に辞めさせるとなると容易ではないな。）

「先生、取締役公室の西条次長がいらっしゃいました。」
「お、そうか。通してくれ。」

　仙次郎は、一旦、分析作業を止め応待室へ入っていった。
　西条は、足を組んで腕をソファに投げかけている。

（ん？‥‥‥‥‥態度が、でかい奴だな。）

　仙次郎は、そう思いながら男の前に座った。

「どうも、お待たせしました。高輪です。」

　男は、眼鏡を掛け鋭い眼光で仙次郎を見つめた。

（‥‥‥‥ん？）

　動じる事のない仙次郎だが、名倉の言うとおり、さすが公室を任されるだけあり落ち着いた上にも迫力があった。
　その反面、知的な容姿と隙がない雰囲気に仙次郎もこの男の実力を判断する。

「企画課長の名倉さんから依頼されてきた。」
　男は、横柄な言葉づかいで仙次郎に呟いた。
「そうですか‥‥‥どうも‥‥‥‥」
　男は、そう言ったきり仙次郎を見たまま押し黙っている。
　仙次郎も特に言葉を発せず、男の視線を受け止めていた。
　佳代は、オロオロとしながら、どうする事もできずに立ち尽くしていた。

「‥‥‥‥‥‥クッ、クッ、クッ‥‥‥‥」
　静粛を破るように、西条が、小さく鼻で笑い声を上げた。
「何が可笑しいんです？」
　仙次郎は、至ってクールに言い放った。
「ったく‥‥‥昔から物忘れが激しいな。‥‥‥仙次郎っ、俺が判らんのか？」
　西条は、眼鏡を外して仙次郎に顔を近づけた。

（‥‥‥‥‥‥な、なんだ、こいつは‥‥‥‥あまり、近づくなってーの‥‥）

　仙次郎は、顔を近づける西条を見ながら記憶を辿っていく‥‥‥‥‥‥

「‥‥‥‥？‥‥‥‥‥‥！‥‥‥よ、洋平っ！‥‥‥西条洋平っ！」
「馬鹿野郎ぉーっ、気づくのが遅いぞっ！」
　顔を崩して笑い顔で言い放つ西条‥‥‥
「‥‥‥‥お前、この会社に居たのかぁ！」

　西条洋平、仙次郎の大学時代の親友で４年間、同じ寮室で生活をしていた大親友だった。

「１５年ぶりか‥‥‥‥仙次郎‥‥‥」
「ああ‥‥‥そうだな。‥‥‥しかし、まさか、お前とは‥‥‥」
「お前が、この会社に来たときから俺は知っていたぞ。いつになったら、俺に気づくかとイライラしてたぜ。」
「判るわけないだろうが‥‥‥」
「そういう仕事やってんだ。社員データには、目を通しているだろうが。」
「取締役公室の社員なんか見てねぇーよ。」
「くっ、相変わらずだ‥‥‥‥お前らしいぜ。」
「言うな。‥‥‥‥‥‥‥ところで、洋平‥‥‥‥」
「お、そうだった。名倉女史から話は聞いた。俺が社長に事情を話したら、今後、お前の協力をしろと言われてな。つまり、俺は、お前の助手だ。」
「クククッ‥‥‥こき使ってやるぜ。」
「おいおい、顎で使うなよ。一応、これでも次長だぜ。」
「俺は、先生だ。」
　仙次郎と西条は、大声で笑いあった。

「佳代君、コーヒーを頼む。」
「はい。」
　佳代は、ホッとした表情で、コーヒーを入れ始めた。

「で、仙次郎、俺はどうすればいいんだ。」
「ああ‥‥‥実は、まだ、考えていないんだが、とにかく社長の意向はどんな人物に対しても公にせず、任意退社させるのを基本にしたいらしい。」
「んむ。そこが社長のいいところで、その人間の将来を考えて解雇という形を絶対取りたくないらしいんだ。」
「だが、その分、辞めさせる為の方法は難しい。」
「必然的に、相手に対して直接行動を起こすわけだな。」
「ああ。だが、拒否されれば、お手上げだ。」
「そこで、証拠が必要となるわけか。」
「‥‥‥‥‥そういう事だ。俺と川島君だけでは無理な仕事だ。」

　コーヒーを運んできた佳代を見る西条‥‥‥‥‥

「なるほどな‥‥‥‥‥かといって人材を増やすわけにもいかない。」
「その通り‥‥‥‥」
「よし、とにかく俺は、お前の指示で動くだけだ。作戦を考えたら、何でも言ってくれればいい。」
「頼む。」
「なぁに、お前と仕事が出来て嬉しいぜ。公室は、無茶苦茶に暇でな。」
「‥‥‥‥優秀な奴に限ってそういう台詞を吐くんだ。」
「お前ほどじゃないぜ。」
「それより、今夜、どうだ？」
　仙次郎は、手で酒を飲む真似をして西条に促す。

「当然だ。まず、それを言いたかったんだから。」
「よし、どれくらい強くなったか見てやるぜ。」
「おいおい脅かすなよ。‥‥‥しかし、学生時代は、よく飲んで吐きまくったな。」
「ああ‥‥‥そうだな‥‥‥‥‥‥懐かしいぜ。」
「よし、今夜は、昔話に花を咲かせよう。‥‥‥‥で、色は？」
「ククッ‥‥洋平、女房はいいのか？」
「嫌な事を聞くな。‥‥‥‥俺は、まだ一人者だ。」
「‥‥‥‥何？‥‥‥‥‥そ、そうなのか‥‥‥」
　仙次郎は、佳代を見た。
「おい、洋平、彼女を酒の肴にどうだ？」
　佳代を見る西条‥‥‥‥‥
「んむ、美人だな‥‥‥‥‥君、今夜、俺達に付き合ってくれるかい？」
「も‥‥‥勿論です‥‥‥‥‥はい。」
「ＯＫ！　じゃ、仙次郎、就業後、社門で待ってるぜ。」
「わかった。」
　西条は、眼鏡をはめると佳代にセクシーな笑顔を見せて部屋を出て行った。
　佳代は、コーヒーカップを片付けながら仙次郎に質問をした。

「先生‥‥‥‥次長と同級生だったんですか？」
「ああ。名倉さんが紹介してくれた時、どこかで聞いた名前とは思ったんだがね。まさか、この会社に居るとは思わなかったよ。奴とは、大学時代、寮で苦楽を共にした悪友なんだ。勉強、バイト、女遊びと、いつもあいつと一緒だった。」
「そうなんですか。」
「でも、最初は、恐かったです。」
「かなり、修羅場を踏んできたようだ。いい風格が身についている。」
「ハンサムですよね。ちょっと近寄りがたいけど‥‥‥‥」
「そうだっ！　あいつ独身と言っていたし、佳代君‥‥‥君、奴と付き合ったら？」
「な、何を言ってるんですか。彼もいるし‥‥‥‥‥それに、私は、先生と‥‥‥」
「俺は、元女房が居るし‥‥‥‥‥‥それに、ハンサムだって言ったじゃないか。」
「冗談じゃないですよ。オシッコやウ○コする所まで先生に見せてるんですよ。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥見せてるって‥‥‥勝手に‥‥‥」
「オ○ンコにも、ぶち込んだくせに‥‥‥」
「オ‥‥‥オ○ンコ‥‥‥‥‥ぶち込んだ‥‥‥って‥‥‥‥」
「‥‥‥つまり、私の性癖を知ってるのは先生だけなんです。西条さんが私の事を知ったら、フラれるに決まってますよ。」

（‥‥‥‥‥洋平も好きなんだがな‥‥‥‥。）

「先生、いくら元奥様を愛していると言っても、私もそう簡単に諦めませんから。」
「ぇ‥‥‥‥‥‥‥ハ‥‥‥ハハッ‥‥‥‥お手柔らかに‥‥‥‥」
　元気のない小声でそう答えた仙次郎は、ガックリと肩を落としながら執務室に入っていった。

（１８）

−　翌日　−

　佳代は、机にもたれてグッタリとしていた。

「どうした？　二日酔いか‥‥‥‥」
「先生、なんともないんですかぁ‥‥‥‥」
「ああ‥‥‥二日酔いなんかなった事がないからな。」

　佳代は、仙次郎と西条の３人で、朝方近くまで酒を飲んでいたのだ。
　酔いもさることながら眠くて仕方がないようだ。

「情けないぞ、佳代君っ。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥zzz‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥は‥‥‥‥寝てるのか？」
　佳代は、寝息を立てて眠ってしまったようだ。

（‥‥‥‥ま、昼まで寝かせておいてやるか。）

　仙次郎は、佳代を抱き上げてソファの上に寝かせた。
　パンプスを脱がせスカートのホックを外してやる仙次郎‥‥‥‥
　そこへ洋平から電話が掛かってきた。

『仙次郎か‥‥‥俺だ。』
「よう‥‥‥気分はどうだ？」
『ああ‥‥‥ちょっと頭痛がするがな‥‥‥‥‥飲みすぎたかも。そんな事より山井秀子の事なんだが、ちょっと調べてみたんだ。』
「それで？」
『また別の男を誑かせようとしているな。』
「というと？」
『人事課長の青木だけではなく、係長の山田にも誘いを掛けたようだ。』
「ほぉぉー‥‥‥‥焦ってるようだな。」
『仙次郎、どうすればいい？』
「よし、洋平、その係長を俺の部屋に遣してくれないか？」
『わかった。‥‥‥で、どうするんだ？』
「山井の誘いに乗らせてみる。」
『えっ、大丈夫なのか？』
「作戦としては単純だが、まあ、任せておけ。」
『わかった。俺は、後は何をすればいい？』
「そうだな‥‥‥‥山井の退職金でも計算しておいてやれ。」
『え？‥‥‥‥‥フッ‥‥‥フハハハハハハハッ‥‥‥‥わかった、そうしよう。』
　仙次郎は、自信有り気な笑みを浮かべながら電話を切った。

（‥‥‥‥‥しかし、女ってのは、浅はかな生き物だな‥‥‥。）

　仙次郎は、山井の性格が徐々に明らかになり、解決の糸口に手ごたえを感じた。

　１０分後、人事係長の山田が部屋を訪れてきた。

「失礼します。」
「どうぞ、座ってください。」
「は‥‥‥はい‥‥‥」

　ソファには、まだ佳代が寝息を立てて熟睡していた。
　山田は、佳代の前の椅子に座るが、スカートが捲くれあがっている。
　ショーツがチラチラと覗いており目のやり場に困っていた。
　それに気づく仙次郎‥‥‥‥‥

「ハハ、昨夜、飲みすぎてね。気にしなくて結構ですよ。」
「は‥‥‥はぁ‥‥‥‥」
　山田は、隣のシングルチェアに座る仙次郎に視線を向けた。
「君に来てもらったのは、判るね。」
「はい。西条次長から話は聞きました。」
「んむ。で、君は、山井主任の事を青木課長に話したんだね。」
「ええ‥‥‥‥私も人事部に身をおく人間ですし、彼女の魂胆も判断できましたし、課長の耳に入れるのは当然だと思いまして。」
「だろうね。」
「課長はかなり顔を曇らせていましたが、次長に相談するから判断は待ってくれと。」
「なるほど。‥‥‥‥ま、君を呼んだのは、誘いに乗ってもらおうと思ってね。」
「えぇっ？」
「つまり、山井は、この会社に相応しくない人物と言う事で追い出しにかけるんだ。」
「‥‥‥‥‥‥」
「そこでだ‥‥‥‥君に協力をして欲しいんだよ。」
「‥‥‥‥‥し、しかし‥‥‥」
「実は、君の課長も山井秀子に脅かされていてね。」
「えぇっ！‥‥‥青木課長が‥‥‥‥ですか？」
「ああ‥‥‥‥君が、さっき言ったとおり山井の魂胆は見え見えだ。そこで、山井本人に自ら会社を辞めていくように仕向けたいんだよ。」
「‥‥‥‥というと‥‥‥具体的には？‥‥‥」
「今から、私が言う事をやってもらいたいんです。」
「‥‥‥‥‥‥はぁ‥‥‥」
　仙次郎は山田に山井を嵌める説明を話した。

「えぇぇぇーっ‥‥‥‥そ、そんな‥‥‥私が‥‥‥ですか？」
　山田は、困惑顔で仙次郎を見た。
「ええ。青木課長に連れ出してもらうが、最終的に引導を渡すのは私です。」
「え？」
「直接、彼女を心理的に落とし込む。」
「出来るんですか？」
「だから、君と青木課長にやってもらうんですよ。」
「青木課長は？」
「勿論承諾済みです。」
　山田は、暫し考え込んだが、社と尊敬する青木のために承諾をした。
「‥‥‥解りました。‥‥‥やってみます。」
「では‥‥‥‥先程言ったとおりに。」
「はい。」
　仙次郎は、頷きながら既に結末を想定し笑みを浮かべていた。

☆☆☆☆☆

「嬉しいわ。まさか、山田さんが、ＯＫしてくれるなんて思わなかったので。」
「ま、たまにはと思ってね。」
　山田は、派手な化粧と服装で山井秀子と繁華街を歩いていた。

「山田さん、私、今日は覚悟してきました。」
「え？覚悟って‥‥‥」
「もうっ！恥じかかさないで下さい。‥‥私、前から山田さんの事を‥‥‥‥」
　山井は、白々しく山田を誘惑し始めた。
「僕の事を‥‥‥‥」
「今日は、遅くなっても構いません。」
「君ぃ‥‥‥」
　山田は、直に迫る仙次郎から言われた作戦に胸の鼓動を高めていた。

　食事を終えた山田と秀子は、ホテルの一室に居た。
　秀子が、ベッドに座る山田の隣に寄り添ってくる。

　秀子は、照れもせずに山田の手を取り自分の股間に誘っていった。

「や、山井君‥‥‥‥」
「山田さん‥‥‥‥触ってぇ‥‥」

　山田は、気持ちを切り替えた。
　まずは一戦終了して秀子が口火を切ってくることが先決だ。

　山田は、秀子を立たせて服を脱がし始めた。
　秀子は、真っ赤なティーバックショーツを穿いていた。
　剛毛なのか、前のショーツのラインから陰毛が食み出ている。
　山田はショーツをずらして蜜壷に指を当てた。
「アァァァ‥‥‥指入れてぇぇー‥‥‥」
　いくら演技といえども山田も男である。
　とりあえずは、集中しようと決心した。

　ズボンを脱ぎ裸になった山田の肉棒に秀子は貪りついた。
　気に入ってもらえるように必死に奉仕しているのが目に見えて解る。
　山田は、秀子をベッドに押し倒して、早速、挿入を試みた。
「あぁぁー、いぃぃぃぃー‥‥」
　秀子の使い込んだ蜜壷は、鈍器だった。
　挿入感もなく締め付けも全くない。
　いかに今まで真剣なセックスを探求しなかったかが伺える。

　女は、男に奉仕されるものだと勘違いしている傾向が強い。
　最高のセックスは、互いの協調と努力が大切なのだが秀子の性格なのだろう。
　単に欲と、異性に対するいい加減な思いが、自身を駄目にしているのが判断できないようだ。

「山田さぁん‥‥‥気持ちいぃぃぃー‥‥‥‥」

　四つん這いになって後ろから貫かれる秀子だが、山田は、豆腐の筒に肉棒を入れてるような感じで感度は全く増していく様子はなかった。
　何とか必死の努力で放出を終えた山田は、全身を汗でビッショリと濡らしていた。

　グッタリとしながら仰向けに寝る山田‥‥‥
　秀子は、山田の胸に顔を埋めながら囁いた。

「山田さんって凄いわ‥‥‥‥私、気を失いそうだったもの。」
「そ‥‥‥そうかい‥‥‥‥」
「それより、山田さん‥‥‥‥７月の臨時異動の事なんだけど‥‥‥」

　秀子は、指で山田の胸をなぞりながら、早速、話を切り込んできた。

「山田さん、もう昇格考査は、終わったんですか？」
「い、いや‥‥‥まだだよ。」
「今回は、事業部の推進係長のポストが空きますよね。」
「ああ‥‥‥そうだね。」
「今回も女性なんでしょ？」
「あそこは女性専門だからね。彼女は、ニューヨーク支社に出向だから。」
「候補は、何人なんです。」
「４人さ。‥‥‥‥そういえば、君の同期ばかりだね。」

　秀子は、山田の肉棒を優しく擦りながら遠慮のない要望をしていく。

「私じゃ駄目かしら？」
「え？‥‥‥‥いや、‥‥‥‥‥でも公正に判断しないと‥‥‥」
「私は、使えるわよ、山田さん‥‥‥」

（何言ってんだよ‥‥‥所属長の考査が７０点もいってないのに‥‥‥）

「もし、私を青木課長に推薦してくれたら、貴方の専属愛人になってもいいわ。」
「えぇっ？」
「貴方の奴隷になってもいい‥‥‥‥」
「な‥‥‥何を言ってるんだい。‥‥‥それに事業部の推進係は重要なポストなんだ。海外出張も多いし将来性がある者を慎重に選ばないと。」
「私、榊原グループに骨を埋めたいんです。将来、管理職になって若手を引っ張りたいの。」

（絶対、無理だって‥‥‥‥）

「自信があるわ。でも、これだけ大きな会社だと、実力を公正に判断してくれるとは思えないし。」　　

（大馬鹿野郎‥‥‥‥‥これだけ大きいからしっかりしてるんだぞ。）

「ね、山田さん、お願い‥‥‥私を‥‥‥‥」

　山田は、仙次郎に言われたとおりの台詞を吐いた。

「解った。ただ、俺一人の推薦じゃ無理なんだ。」
「え？」
「内緒の話なんだが、君の同期の高塚洋子君が、今、第一候補なんだ。」
「高塚さんが‥‥‥」
「ああ。彼女は、青木課長の愛人でね。」
「え！‥‥‥えぇぇーっ！‥‥‥‥ほ、本当なんですか？」
「ああ。」
「そ‥‥‥そんな‥‥‥‥」
「え？‥‥‥‥」
「い‥‥‥いえ‥‥‥」

（‥‥‥‥青木課長の‥‥‥‥‥散々、抱かせてやったのに‥‥‥あの狸め‥‥）

　秀子は歯軋りをしながら青木に怒りを感じていた。

「俺も課長からチラッと聞いた事があるんだが、課長は、かなりアブノーマルなセックスが好きらしくてね、高塚君は、それを知っているのか課長の好みに合わせてるらしいんだ。かなり高塚君を気に入っているみたいなんだよ。」
「ど‥‥‥どういうこと？」
「高塚君はいつもノーパンで出社してるらしいよ。」
「‥‥‥は？」
「役員専用トイレで用を足している所を見せたり、人前で脱がせて見たり‥‥‥露出させて楽しむ癖があるんだ。」
「‥‥‥‥‥そ、そうなの‥‥‥」
「ああ。今まで、昇格した女性は、大半が課長の好みに合わせたらしい。いつも、行きつけのＳＭクラブに行って高塚君をステージにあげさせて興奮してると言っていた。何でも言う事を聞く高塚君は課長の宝物なのさ。」
「ステージって‥‥‥‥‥」
「ＳＭクラブのステージに希望した素人客をプロの緊縛師に縛ってもらって羞恥を受けるんだ。その類いのマニアが集まる店なんだが人気店らしい。」
「そ‥‥‥そう‥‥‥」

　秀子は、山田の話を聞いて心が動いた。
　なんとしてでも青木の好みに合わせて高塚より好かれるようにしなければいけないと考え始めていた。