『わしは倅ほど若くはないし、今夜は腰を使いすぎたようじゃからな。今度は若いお前が上になって、元気よく腰を動かす番じゃ』 池本に言われても、秋子はその場に突っ立ったままで、何の動作も起こそうとしなかった。 『どうした』 『でも教祖様はまだ……』 『倅の準備は整っておるではないか』 『………………』 『まさかお前は、わしの褌を外すのが嫌だと抜かすつもりではなかろうな』 『いえ、わたくしはただ……』 『だだ、なんじゃ』 『教祖様が、横になられるのかと……』 『横になったのでは、お前を抱いてやれんではないか』 教祖を尻に敷くのは平気でも、あいにく秋子は「座位」というものを知らなかったらしい。 『ほれ、褌も外したから、早くわしの膝を跨げ』 秋子が座椅子を愛用しているとも思えなかったが、彼女は後ろ向きで跨ろうとした。 あれはおそらく、図体の大きい池本があぐらをかいている姿から、電動マッサージチェアしか想像できなかったせい‥‥などでは決してなく、あくまでも「対面座位」の経験を持っていなかったためだと思われる。 『ほう、お前はそういう趣味まで隠しておったか』 俺と同様、池本の言葉を理解できなかった秋子は、身体の動きを止めて池本を振り返った。 『その腰巻の染みの匂いを、お前がどうしても嗅いでほしいと言うなら、嗅いでやらんでもないがな』 池本が“からかい”の言葉を並べ終える前に、秋子は飛びのくようにしてその場を離れ、身体を正面に向け直すと同時に顔を伏せた。 正気というものを失い、淫乱な娼婦と化していたような彼女にも、まだ理性のかけらが残って‥‥いや、ほんの一瞬とはいえ、生来の羞恥心が蘇った証拠に他ならない。 同時にまた見方を変えれば、女になったときの体位が仏壇返しだったために、後背位が新たな「癖」として染み付いてしまった証拠‥‥とは言えないとしても、秋子に対面座位の経験がなかったことの証明には、確実になっていた筈。 『お前も一太郎には、飽きるほど嗅がせてやったのなら、今更そんなに恥ずかしがる必要もあるまい』 俺の意見とは大違い。 たとえどれだけ嗅がれた経験があろうとも、それですっかり“慣れっこ”になったのでは、女の鑑になんかなれっこない‥‥とか、そもそも俺の場合は１年３６５日、毎日欠かさず嗅ぎ続けても、飽きるなんてことは絶対に有り得ない‥‥といったようなことを考えている間に、秋子は池本の正面へ移動した。 観音様が夥しいほどの涎を垂れ流していた秋子である。池本の求める体位さえ理解できてしまえば、あとはもう欲情に突き動かされるような形で行動するだけ。 染みの広がった腰巻をたくし上げ、あぐらをかいている池本の膝を跨ぎ、彼の肩を左手でつかむようにしながら、右手で巨根の先端がどこにあるかを確かめつつ、腰をゆっくり下げていけば、それで対面座位の体勢が完了‥‥とは行かなかった。 『んん……やっぱり…きついです〜』 『もっと股を広げんか』 『でも、お股が……観音様のお口が、広がってくれないんです〜』 『足を広げるんじゃ。生娘の小娘でもあるまいし、足も満足に広げんで、観音様の口が広がるも広がらんもあるか』 ８の字筋を徹底的に鍛え上げ、巨根を丸ごと締める技まで修得しても、下の口を自分の意思で内側から広げるのは、やはり至難の技らしい。 『あっ…入った…………でも…入ったのはいいんですけど……』 『まさか奥まで入れるのが難しいなどと、馬鹿なことを言うのではあるまいな』 『だって……ほんとにそうなんです〜』 『お前も袋詰めの茶を、茶筒に移し替えたことくらいはあるじゃろう』 『はい…やってみます……』 茶筒に袋から茶葉を移すとき、全量が入りきらないように見えても、茶筒の底をトントンと叩いてやればどうにかなることが多い。それと物理的な理屈は違っても、動作的には似たようなもの。 『あっ、あっ……んっ、んっ……んん…んん……』 声に出して喘ぎながら、秋子が腰を小刻みに上下させていると、ようやく茶壷‥‥違う、肉壷に巨根が根元まで収まった。 『ああ……』 秋子が安堵と感激の混ざった声を発し、池本の太い首に抱きついたとき、彼は「遅かったじゃないか……僕はずっと待っていたんだよ……」といった感じで、秋子のほっそりした身体を包み込むように抱きしめた。 そんなふたりの様子は、周囲の反対と年齢差を乗り越えて、めでたく結ばれたカップルのようにしか見えなかった。 しかし。あくまでも片方は、最愛の夫の葬式を出してからまだ丸１日も経たない未亡人。しかもその相方は、秋子を含め、幾千人もの女性の貞節を穢してきた絶倫の強姦魔。 それだけでも異常な関係だというのに、ふたりのすぐ横には、一太郎の白木の位牌と遺影を据えた仏壇まで映っていたのだ。 いくら俺がすぐにでも抜きたいほどの興奮を強いられ、普段以上に抜けている状態に陥っていたからといって、ふたりを包む雰囲気の異様さくらいは、容易に感じ取れるというもの。 ただ、状況がそこへ至るまでの過程で、監督と脚本家が綿密に敷いてきた数々の伏線に、どれひとつとして気づくこともなく、ただただ興奮を煽られていただけの俺である。 その先、物語がどんな具合に運ばれ、どういった結末を迎えることになるのか、まったく想像もできなかった。 『教祖様…』 『なんじゃ』 『こういう格好には、どんな呼び名が？』 『これは“抱き地蔵”と呼ばれておるんじゃが……』 『…………おるんじゃが、何ですか？』 『いや、それは……』 『ねえ…じゃがのあとは〜？』 『一般には対面座位と呼ばれておる』 『ほんとですか〜？』 『無論、本当のことじゃ』 『もう…そういう意味で言ったんじゃありませんよ……』 『………………』 『ねえ…この“抱き地蔵”は、どうなんですか〜？』 いったん答えをためらった池本が、途中でわざと質問の意味を取り違え、最後は地蔵のように口を閉ざしたせいで、元刑事の秋子は、自身の予想というか推理に自信‥‥いや、確信を抱いたらしい。黙秘を続ける強姦魔に対して、執拗に返答を求めた。 『ねえ…正直に答えてくださいよ〜』 『お前はこのわしに、そこまで言わせたいのか』 そこまで答えを渋る池本の腕の中で、秋子は甘えるように頷いて返した。 『わしもお地蔵さんだけは１度も抱いておらんが、たとえ抱けたとしても、この抱き心地とは比べ物にならんじゃろうな……』 『………………』 『諺でも、泣く子を抱きながら、泣く泣く地頭に抱かれる女はいるが、冷たい石の地蔵を抱きたがる男なんぞ、誰もおらんというからのう』 初めて聞いた諺の正確な言い回しを調べるために、映画館を出たその足で本屋へ立ち寄り、わりと高額な諺事典を何冊も買い足してから帰宅した俺は、頭が石のように固い中卒の朴念仁‥‥。 いや、無学を自覚していて、性欲だけでなく知識欲にも溢れる勉強家‥‥だという心境に、いつかは到達したいと思うだけなら、カネは１銭もかからない。 『教祖様〜』 『今度はなんじゃ』 『このあとは……わたくしの好きなように動いても？』 『もちろんじゃ。お前がどう動こうと、いつ極楽へ行こうとお前の自由。好きなようにするが良い』 『…………教祖様は？ 教祖様も、お好きなようになさるんですか〜？』 『案ずるな』 『どうしてです〜？』 『確かにお前の観音様は、見事なまでに鍛え上げられておるし、屁をこけるほど練れてきたのも事実。じゃが、わしの倅も昔ほどの若さが失われておるし、お前は所詮、まだ女になったばかりではないか。そうそう簡単に、今のわしまで極楽へ連れて行ける筈もなかろう』 俺も同じ見方だった。 たとえ堂々レディーが実弾補給に役立ったとしても、池本の大砲はすでに６発も放った後。さらに彼自身、大砲の連射性能が衰えてきたことを認めたのである。 秋子が普通に腰を上下させたり、単純に腰を回したりするだけでは、百戦錬磨の‥‥いや、万戦強姦魔の大砲に実射を強いることなど、とうてい出来っこないと思った。 ところが何と。何とも実に驚いたことに。秋子の見せた腰使いは、そんな稚拙なものというか、生易しいものではなかった。 池本が仏壇返しで用いた技法、すなわち三浅一深や九浅一深とは一味も二味も違う「性技の奥義」は‥‥ 杭を後退させるときに膝と腰を深く折り曲げ、次に杭の先端だけが浅く埋まった状態で腰を上げ、それから一気に杭を前進させるというものだった。 また改めて補足すれば、彼の腰が描いた軌道は「▽」であり、その際に刻んだリズムは「そろ〜り・のんびり・グイッ」であった。 一方、初めて対面座位に臨んだ秋子の腰の動きは‥‥ 観音様で巨根を深々と咥えた状態から、じわじわ後ろへ引き下がり、次にゆっくり斜め上へ移動した後、急激に腰を落すというか、巨根を元通り肉壷へ沈めるというもの。 従って彼女の観音様が描いた軌道だけを取り上げ、「池本の技の天地を逆にした『△』だから、裏技ならぬ逆技と呼ぶのが妥当……いや、むしろ真似技と呼ぶほうが適切かも知れない」と表現したり、「リズムにしても池本のそれをまねただけに過ぎない」と評したりするのは簡単だ。 しかしリズムが徐々に「じわじわ・ゆっくり・ズボッ」から「じわじわ………ゆっくり………ズボッ・ズンズコズボズボ」といった調子に変化を遂げ、しかもその動きの途中において、亀の首を肉壷の口で「クイクイッ…クイクイッ…」と絞めたらしいのだけれど。 それだけならまだしも、絞めた後にはそのままの位置で、必ず腰をグルグル回したというか‥‥ つまり「そろ〜り・クイクイッ…クイクイッ…グルリグルグル・のんびり・クイクイッ…クイクイッ…グルリグルグル・ズポッ・ズンズコズボズボ」とやったのだから、それはもう秘技や奥義を超えた絶技。 いかに池本といえども、のんびり構えているのは困難だろうと思えた。 実際、彼はかなり驚いた様子を見せ、秋子が腰を動かし始めた途端に、言葉というか質問を発した。 『もしやお前は……』 『はい…教祖様から……先ほど……教えて…いただきましたから……わたくしも……それを……』 『参考にした……だけとは……とうてい思えんな……』 俺も同感だった。その時点で秋子の真似技には、まず「ズンズコズボズボ」が加えられていたからだ。 そして次に「クイクイッ…クイクイッ…」が追加されたとき、池本は何とも言えない表情というか、いかにも心地良さそうな表情を浮かべて瞼を閉じた。 更にまたそこへ「グルグルッ…グルグルッ」が新たに追加されたとき。池本はこう言って、たちまち鼻息を荒げ始めた。 『むむっ……これは…強烈じゃ……』 俺が彼の暴発を心配‥‥したわけではないが、暴発の回避は困難だろうと判断したのも当然だろう。 しかし彼の大砲が暴発するより先に、観音様が暴発‥‥いや、鈍い響きを発した。 『あっ…もう……観音様の馬鹿……意地悪……』 思い出したように屁をこいた観音様に、秋子は恨みがましい言葉をぶつけながらも、絶技だけは休むことなく繰り出し続けた。 そしてまた観音様も、まるで「すっかり練り上がった」ことを、みずから証明してみせようと‥‥するわけもないが、その後も屁を連発させた。 あのときの俺というか、泣きボクロを初めて観たときの俺が、秋子の喘ぎ声やマンペの音に興奮しすぎては問題だなどと、まさか冷静な判断が下せたとも思えないのだけれども、その点はさておき。 週刊誌に載っていた『ひとくち健康情報』によれば、オナラとなって出る気体の大半は口から飲み込んだ空気。たとえその事実を知らない男でも、「マンペの原因は？」と問われれば、誰もが「それはアソコに空気が入るから」と答えるだろう。 だが「ではなぜ空気が？」と重ねて尋ねられたときには、「うーん…それは……」と答えに窮するか、あるいは「アソコがゆるいからだろう」と決めつけるか、そのどちらかに違いないと考えていた当時の俺‥‥というより、現在に至るまで、あそこに空気の入る真因を知らない俺が。 マンペの発生は、肉壷に打ち込む杭の軌道に起因するのか、それとも杭の太さや形状によるところが大きいのか、あるいはもしかしたら『後背位や前座位が持つ宿命的現象』と言ったほうが適切なのか、その辺のところを、誰かに週刊誌かなにかで解説してほしいけど、無理だろうな‥‥といった余計なことを考えている間に、池本の表情は見る見る歪み始めた。 暴発の危険を察知‥‥いや、自覚した彼が、秋子から「馬鹿」だの「唐変木」だのと罵られるのを避けようとして、大砲にぎりぎりの我慢を強いていた証拠である。 『ああ…いい……あ〜ん…んん〜ん………やっぱり、こういう……ん〜ん…ああ〜ん…動き方は……あっあっ…とっても……んっんっ…気持ちが……いいです〜』 腰を回すときには「あ〜ん」とか「ん〜ん」と甘い声で喘ぎ、ズンズコズボズボやりながら「あっあっ」とか「んっんっ」と２拍子で喘ぎながらも、教祖様が教えてくれた元の技というか、池本が「取って置きの技」と言った『性技の奥義』の素晴らしさを伝え、感謝の言葉に代えようとした秋子は大したもの。 彼女が『創正教会』の信者であることを思えば、女会員の鑑と言えたかも知れない。 一方、そんな秋子に対し、池本のほうは「お前の技もなかなかのものではないか」とか、「そうじゃろう。さすがは教祖様だと、お前も改めて感じ入ったであろう」と応じて、いかにも余裕があるように装うことはおろか、「そうか」の一言も口にしないのだから、秋子が“置いてけぼり”を心配するのも当然と言えた。 『ねえ…教祖様……ん〜ん…あ〜ん……まさか、教祖様は……あ〜ん…ああ〜ん……わたくしより……んっんっ…先に……あっあっ……』 『お前も、もう…子供では……ないんじゃから……いつまでも、そんな……甘ったれた、ことを……抜かして、おっては…いかん……』 『でも、わたくしは……まだ……』 『わしに……合わせるんじゃ……』 『でも、でも……』 『お前は……教祖の、言うことも……聞けんほど、偉く…なったのか……』 身勝手さを取り戻し、完全に開き直った池本は、取って置きの‥‥いや、秘蔵の‥‥というより、伝家の宝刀にも等しい台詞を、絞り出すようにして口にした。 『良いか…いくぞ……』 『あっ、待って…待って……』 秋子は慌てて絶技を切り上げ、ズンズコズボズボというか、単純な腰の上げ下げに専念したのだから、それもまた池本に性技の奥義を伝授され、女にしてもらったときの経験が生きていた証拠と言えるだろう。 『あっあっあっあっ……』 『むっ』 『あっ、いく…いきます……』 池本が天を仰ぎ、わずかに呻き声を洩らしながら、通算７発目を放ったとき、秋子も絶頂を告げ、地蔵のように固まっている教祖にしがみついた。 『ふう…』 権威を笠に着た身勝手な「笠地蔵」が息を吹き返し、生身の教祖に戻った一瞬を、貪欲な観音様は今度も逃さなかった。 『わかっておる』 『どんなふうにわかっているんですか〜？』 池本の台詞を聞けば、秋子がクイクイッと締めていたことくらい誰でもわかる。 『諺では、目は口ほどに物を言うとしか言うておらんが、お前の観音様の口ほど、ずけずけ物が言えるような口は、誰も持っておらんからのう』 『………………』 『もしわしが、ここでまた「一休みしたい」だの、「そろそろ倅の代役を使いたいのじゃが」だのと言えば、おそらくお前の観音様は……』 クイクイッとやられる具合が、よほど心地良かったのか、池本はうっとりとした表情で瞼を閉じ、話しの途中で口をつぐんだ。 『でも、教祖様？』 『んー？』 池本の返事の仕方は、いかにも億劫そうだった。それまでの返事はいつも「なんじゃ」に決まっていたのだ。 『わたくしが本当の女になれたのは……ひとえに教祖様のおかげ……といっても、観音様から、恥ずかしい音まで出るようになったことだけは……ちょっと余計ですけど……』 『………………』 『教祖様のこれには……まだ元気が残っているようですから……観音様だって、たとえお口を横に裂かれても……教祖様のことを、口ほどにもない唐変木だなんて、そんなことは……ねえ……言うはずないじゃないですか……』 『それを申すなら、「言うはずがない」では無うて、「言えるはずがない」じゃ。愚か者め』 秋子が教祖への敬いの姿勢を忘れ、言葉の選択を誤った原因はただひとつ。クイクイッとやることに、意識の大半が向けられていたからだと思われる。 『ねえ…教祖様……』 『………………』 『ねえねえ……教祖様ー』 『んー？』 池本は瞼を閉じたまま、生返事をした。 『もう始めてもいいんでしょう？』 『始めるのは構わんが、今度は横にならせてくれ。わしも年を取ったせいか、あぐらを長くかいておると、腰が疲れて敵わん』 『横になっていただくのは構いませんけど、でも……』 『お前の観音様をもってすれば、たとえわしがイビキをかき始めても、倅だけは起こしておけるはずじゃ』 『………………』 『お前は知らんじゃろうが、男は夢の中でも、女とまぐ合うことが可能でな』 『でもそれは……』 『話しを最後まで聞け』 『………………』 『生身の相手がおらん夢の中とはいえ、きちんと極楽まで行って、また戻って来られるんじゃ』 『夢の中でも、ひとりで用が足せるんですか〜？』 『愚か者め……。寝小便するわけでもあるまいし……他に言い方があるじゃろう』 『自分ではなにもしなくても、ひとりでに出ちゃうんですか……』 『ああ、男なら誰もが１度は経験しておる筈じゃ』 俺も何度か経験した。 『教祖様は……何回くらい経験されたんですか〜？』 『筆をおろす前は、ほぼ１日おきに経験できておったんじゃが、教祖になって、お前たち女信者に功徳を施し始めてからは……そうじゃな……せいぜい月に１度か２度に減ってしもうた』 やはり池本は絶倫。幾千人の女性というか、生身の観音様を、延べ１万体以上も斬り続ける合間に、夢精まで起こしていた。 『今でもひとりでに出ちゃうことが？』 『ああ、ほんのひと月ほど前もな、夢の中で出してきたばかりじゃ』 絶倫には程遠い俺だが、それでも３日続けてセンズリを欠かしたら、たぶん夢精を起こすと思う。 『諺では……なにも言うておらんが、夢の中で放つときの気持ちの良さは、どんな観音様が束になっても敵わん筈だと……わしもこれまでは思うておった』 確かに夢精は気持ちがいい。だが俺に言わせれば、夢精に気づいた後の気色の悪さは、センズリで出すしかない悲しさや惨めさと、どっこいどっこいだ。 『じゃがそれもまた、わしにも唐変木の血が……いや、朴念仁の血まで流れておった証拠に他ならんとな……今はそう思えてならんのじゃ……』 『わたくしが…いえ、わたくしの観音様が……お手伝いすれば、教祖様は……最高の極楽気分に浸れるかも知れない……そういうことですか〜？』 『ああ』 『………………』 『……手伝うて…くれるか』 『教祖様が……夢の中でも本当に出せると……』 『ああ、約束する』 『武士に二言が……ないように、教祖様にも……二言はないんですね？』 『お前は本当に疑り深いのう』 『わたくしが疑り深いのでは……なくて、観音様が……用心深いだけです』 秋子の観音様の用心深さは、欲の深さというか、性欲の深さから来ていたものと思われる‥‥といっても無論、ピンク映画に出てくる女性が「性に淡白」では、鑑になれる資格を問われる以前に、登場する資格さえないだろう。 『でも、この感じなら、大丈夫のようですね』 『ようやく納得できたようじゃのう』 秋子の絶え間ないクイクイッが奏効し、ようやく池本の大砲が、極限に近い硬度を取り戻したらしかった。 『では、教祖様は横になってください』 『そうしたいところじゃが、このまま裸でおったのでは、肌寒く感じられて、出せるものも出せんようになるやも知れんからな』 池本が「出せなくなる事態」を心配したというか、逆に言えば「出してもらいながら極楽へ行く」ことを切に望んだらしい秋子は、あっさり池本の大砲を解放して立ち上がり、そこで画面は騎乗位の場面へと転換した。 |
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| 2010.1.23掲載 |
［1-2-1-27］／［1-2-1-25］
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