２．魔の手

　優子の父、小松原利信は、先代からの資産を元手に剛三と同様に不動産業を手がけており優子が小さなころは贅沢を極めた裕福な暮らしぶり、優子は上品に育てられていた。
　表向き、剛三は小松原家を救出し形になってはいるが、その実小松原不動産を窮地に追い込んだのは篠山剛三の企みだったのである。
　東北新幹線のルート図が手に入ったと、篠山が持ちかけた先行投資の案にのって持てる資金の全てをつぎ込んだ利信に、大きな借入れ先を紹介したのが篠山だった。
　１０年もすれば、２倍３倍どころか４，５倍にはなると…棚ぼた話だったが、工事の進捗は遅れに遅れ、利信の不動産業は資金ぐりがつかづ破綻に追い込まれてしまった。
　そんな時、篠山は土地の権利と優子を嫁にすることで小松原不動産の負債を肩代わりすることで、窮地を救ったことになっているのであった。
　優子は、降ってわいたような嫁ぎ話に戸惑い、拒否し続けていたが、家族のためにと篠山の条件をしぶしぶ承諾したのである。
　意に添わぬものであったが、当初、剛三との結婚生活は順調であった。
　５０代の剛三は、まだまだ夜の方も元気で優子との間に子供もでき、剛三の長けた手腕で裕福な生活を送れる環境には、非難するところはなかった。
　しかし、６０才を迎えると剛三の精力も衰えて、女盛りの優子を満足させるほどのものはなくなっていた。
（･･･まだまた、女でいたい）
　甘い性の悦びを知った熟れた身体を持て余し、もやもやとした疼きを絶えず感じてしまう日々、どんなに清楚に育っていても雌としての生理には･･･

　そんな頃、藤堂の甘い容姿が優子の心を支配し始めていた。
　剛三の秘書として動く藤堂は、頻繁にお屋敷をおとづれていた。
　藤堂が剛三を訪問するのたびに、優子が接待する。
　接待といっても茶を出す程度のことであったが、莫大な資金を基に小高い丘となった小さな山を丸ごと敷地とした豪邸、訪問客もなく人付き合いの少ない優子には、容姿端麗・頭脳明晰で快活な藤堂は白馬の天使に見えていた。
　そんな藤堂が、剛三の不在時に訪問してきたのは半年前のこと…。
　剛三の不在をいいことに、藤堂康夫は茶を運ぶ優子に迫ったのである。
「藤堂さん…あっ、やめてぇ〜」
　言葉もなく、安心しきった優子を押し倒した藤堂。
　手にしたおぼんをやっとの思いでテーブルに置くと、這うようにして逃げまどう優子を康夫は、てばやく乱れた着物のすそを割りつつ組み敷くと。
「だめぇっ…うっ」
　瞬く間に優子のやわらかい唇を奪っていた。
　和服を着た優子は、ブラもショーツも着ていない。
　康夫の手が、熱く火照らせた優子の柔肉に直接届くと、強い抗いもどこかに消えている。
「あっ…」
　いきなり自分の指が、熱く充血し湿った物に触れたことに半ば驚きながらも成功を確信する康夫は、自信と余裕を持って事を進めていく。
「優子さん、僕は…」
　ひどく思い余った興奮を抑えきれない藤堂は、いくつもある結び目を慌てた手付きで解き放つ。
　優子の雪白の素肌があらわになると、康夫は股間をビクンと反応させた。
　顔をそむけてはいるが、大きな抗いを収めた優子。
（あぁ、もぉ〜、わたしを奪って…奥まで〜）
　はやくも優子は、身体の奥を疼かせて大きな期待に理性を奪われてしまっていた。
　動きを止めた優子を下に見て、手早くスーツ姿の康夫は服を脱ぎ捨てると、猛りきった股間にそっと手を添えて猛りを確認すると、すかさず優子の足首に手を掛けた。
「優子さん…」
　声と同時に、熱いものを推し進める。
「あっ」
　熱く濡れそぼったそこは、一かけの抵抗もなくヌルっとした感触でスムーズな進入を果たしていた。
「あぁ〜」
　肌が触れ合うほどに深くつながると、優子の甘い喘ぎが聞こえてくる。
　２年近く空虚がつづく優子の秘密の園、熱く硬い物が最奥を蹂躙すると、またたく間に頂点の昂ぶりが迫ってくる。
「あっ、あっ、あっ、…」
　声が漏れるのを止められづ優子の、熟れた身体は止めどなく反応してしまう。
「だめっ、こんなこと…」
　叫んではみたものの、グッと腰を突き出し男の背中に廻した腕は引き寄せるように力が入ってしまう。
　男盛りの康夫は、いつになく調子がよく元気なことに自分でも驚いている。
　特殊なシチュエーションが二人を、夢の世界に押し上げていく。
　激しく止まらぬ抽送に、優子の湧き出る昂ぶりは山を降りる気配はなく永遠と思えるほどはてしなくつづいていく。
「あぁ〜、藤堂さん、あっ、あっ、いいぃ〜」
　妻の立場を忘れた甘い喘ぎを、繰り返し始めた優子は、頭を真っ白にして･･･。
「あっ、いい、きてきて、あぁ、もっとぉ〜〜」
　止めどなく繰り出される抽送に、まだたりぬというように、浮かせた尻を振付ける迎え腰は康夫を有頂天にする。
　優子の淫な液が、康夫の股間をも湿らすほどにほとばしり、ぶつかる肌音もピチャピチャと淫湿な響きを発している。
「あぁ〜、だめっ、も、もぉ…」
　組み敷いた男にも判るほどの激しい身悶えで身体を硬くする優子。
（おぉ〜っ、気持ちいい〜）
　勝ち誇った思いの康夫は、心地よい締め付けに歓喜を必死で押しころして激しい抽送をつづけながら、うなじの生えぎわを舐めあげる。
　組み敷かれていながらも、宙に浮き舞あがる優子。
（あぁ〜いい、どうにでもしてぇ〜）
　ヒクヒクと熱い物を、繰り返し喰い締めてしまう柔肉の蠢きは止まらない。
　そのうえ激しくつづく抽送に、何度も応えて淫汁を噴きつけては逝き果てる。
　何度、頂上を向かえても尽きることのない熟れた身体の淫らさに翻弄されては、また押し寄せてくる。
「あぁ〜、すごい…」
　強姦ともいえる交合に、愛する相手のように応えてしまう優子。
「あっ、あっ、あっ、逝くっ、逝きますぅ〜〜」
　二人は以前から愛しあう男女のように、初めての交合から求め逢っていた。
　康夫は、何度聞いただろう、「逝く、逝く」と身悶える優子の甘い喘ぎを…。
　激しい抽送を、これでもかと続け、ストンと速度を落とすたびにまとわりつくように締めては噴きつけ逝き果てる、康夫は世の中にこんないい女がいるのかと、優子の秘園の良さには、自分の運のよさに驚くほどである。
　それも、一度きりではない、そのたびごとに何度も起こるうえに、果てしなく繰替えしつづけて応えてくる。
（おぉ、これこそ男冥利につきる）
　と、ひたすら放出に絶えつづけては、抽送を楽しんだ。
　何の工夫もない、ただただ欲望のままにつづける抽送に、あられもない淫らさで応えてくる優子の反応は特筆ものである。
　熱い肉弾戦の後に残る、高価な絨毯に広がる濡れ跡から、ほのかに漂う淫臭。
「あたしを離さないでぇ」
　康夫は、別れ際に囁いた優子の声が、こだまのように耳について離れないでいた。

　身悶えながら藤堂を呼ぶのを、「藤堂さん」から「康夫」に変わったのはいつ頃からだろう…、優子と康夫には、あの時以来、定期的な逢引がつづいていた。
　こうして優子は、三十路になって初めて燃えるような恋とＳＥＸを知ったのである。
　そのうえ身体はしっかり熟していてウズウズと疼かぬ日はなく、一度火がつけば普段の清楚さが嘘のに淫らになる。
・
　そんな優子に黒い影が、嵐のようにモクモクと襲って来た。
　写真と共に同封されていたのは、日付と場所が書かれた一枚の便箋。
　・・監視している、誰にも連絡せづ下記の場所に・・
　自分の身体を支えるのがやっとというように、テーブルに手を着いた優子は、目の前が真っ暗になる思いである、…何度、康夫さんに連絡を取ろうとしたことか。
　そのたびに文面を読み返しては断念していた、そして、とうとうその日が……。

つづく