３．白い肌

　呼出しをかけた前日、和磨のアパートでは良輔と二人が集まって忙しく作業している。
「片桐さん、薬また使うんですか」
「おぉ、その方が話、早いだろ」
　当然のように言う和磨。
「そりゃ、そうですが…。これ使うなら、下調べも何もいらないでしょ」
　薬に頼るなら何も浮気女をいちいち相手にしなくても、と良輔は思っている。
「いや、そうでもないさ。弱み握ってないと訴えられるだろ、強姦じゃないんだ、陵辱的和姦だからな」
「あはは、うまいこと言いますね…和姦ですかねぇ？？」
「良、明日は忘れたなんてことのないように、･･･頼むぞ。ビデオも充電し直してくれ」
「はいはい、充電器も用意しときますから・・・」
　なにやかやと忙しそうに二人は、明日の準備に余念がない。
・
　指定された時間に、その場所に向かう優子の足取りは重く、心には暗い不安が立ち込めている。
　とは言っても、その出で立ちは自然と醸し出される清楚で且つ気品を兼ね備え艶っぽくなまめかしさに満ちた、熟れた人妻の和服姿なのである。
　知らない人に合うことには変わらず、優子の準備にも怠りはない。
　出掛ける前には、湯をつかい康夫とのデートの時と変わらぬ、ここ一番の化粧も済ませて屋敷を出る心配りは女の性といえるのか。
　同封された手紙を何度も繰り返し呼んでも説明不足のその文面は、優子の不安をさらに深い闇に落としている。
（どんな要求が…？？？）
　話の内容が分からぬ訳もなく、優子は用意した５０万円を小さなバックに詰めていた。
　指定されたホテルが目の前に見えると、大きな壁が今にも倒れてくるかのように思えるほどで、ぼんやりと意識のないまなざしで、吸い込まれるように足を進めている。
「奥さん」
　声を掛けられても反応が鈍く、良輔を逆に不安にさせるほどである。
　指定の場所はホテルのロビー、優子は声を掛けられるとも思っていなかった。
「奥さん、よく来てくれましたね。…こちらです」
　良輔の声に、まどろむようなたよりない優子は、やっと反応する。
「なんでしょう」
　これから合おうとする相手であることも気づかず優子は、道でも聞かれるのかというような答えを返している。
「ご案内しますよ。…兄貴はお待ちかねですから」
　やけに明るく対応する良輔、悪ぶって「兄貴」なんて言葉を使っているのである。
　男の言葉に優子は、あっ…と気づいたものの、何と答えていいか判らぬままに…
「はい」
　と答えて着いていく。
（しっかりしなければ、話の分からぬ人でもないようだし…）
　優子は、良輔の自然な容姿にほっとしてはいるが、意識が遠のくようで足元が宙に浮く。
　良輔は、駅からつづく歩道から、ホテルの２階に直接入り、１階のロビーには向かわずエレベータへと進む。
「さぁ、どうぞ」
　優子をエレベーターへ案内する良輔。
（こりゃすげぇ、まじか？？）
　優子に、ぐっと近づいた良輔は、清楚で気品に満ちた美しい女の甘い香りに戸惑うほど、大きな期待に胸膨らませながら女の後についてエレベータに乗り込むとクルッとパネルに向き直って２６のボタンを押す。
「あの、ロビーでは…？」
　小さな声で問いかける。
「あ〜、ロビーじゃ話にくいですからね！…部屋とってありますから」
　良輔は、さも当たり前のように言う。
「……」
（そんな…）
　閉ざされた部屋に入ることに大きな不安が増す心情を必死に堪えて優子は、押し黙るっている。
　チィーン
「左です」
　到着を告げる乾いた音、扉が開くと良輔はホテルの従業員であるかのように案内の言葉を投げかける。
　重い足取りで、遠くにつづく廊下の先を見つめる優子は、不安を募らせるばかり。
　良輔は、すばやく追い越すと優子の先に立って歩いた。
　永く感じる良輔の思いとは別に、優子は振らつく思いであっという間に時間は過ぎていた。
　２６０５
　金に輝くプレートが貼り付けられた扉の前に立ち、カードを何度も抜き差しする良輔。
「カードになって良くなったのやら、悪くなったのやら」
　何も言わず、ただ連れて来いと指示されている良輔は、つまらぬ愚痴をこぼしながらランプがグリーンになるのを確認するとドアを押し開く。
「どうぞ…」
　ドアに張り付くように身を除けて優子を先に勧める。

　ためらいがちに、うつむいたまま足を進める優子。
「まっ、座ってください。…優子さん」
「はい」
　何でも知っているぞとばかりに、優子の名前を口にする和磨は、やけに偉ぶっている。
　優子は、特殊な状況に「こんにちは」とも言えず、言われるままに手前の椅子に向かってゆっくり進み腰を掛ける。
　良輔は、事前に沸かしておいたお湯を使って、うきうき気分で紅茶を用意する。
「そう硬くならないで、リラックスしてください。…なにも煮て食おうって訳じゃなし」
「あっ、はい」
「話は、解ってもらってるでしょうね。…写真、見て頂いたでしょう」
「はい、……それで、どう…？」
　優子は、恐る恐る声を絞り出すようにして、やっと、というように小声で話す。
「金なんか、いりませんよ」
　薄笑いで和磨は言う。
「えっ、それじゃ…、何を？」
　お金の要求をされるものと思い込んでいた優子は、戸惑いを隠せない。
「こんな美人を前にして、金も何もあったもんじゃない。……判るでしょう、一つ仲良くやりましょうや」
　和磨は、目いっぱい悪ぶって言うのである。
「で、でも、…そんな、つもりでは…」
「そうですか？？、困りましたねぇ。…奥さんも、何もなしに帰れるとは思って来なかったでしょう？…今日だって、ちゃーんと奥さんの都合のいい日を選んであるんですから」
　剛三が泊まりがけの視察旅行に出掛けていることは、その後の調査で確認済みである。
　剛三の持つホテルチェーンは、観光地と宿泊施設をリンクさせた物が多く、観光名所やスキー場、ゴルフ場などとタイアップして開発を進められている。
　そんなことから、おのずとホテルは全国各地に幅広く立てられることになり、出張することも多く、行き先も遠いのである。
「まぁ、茶でも飲んで…ゆっくり考えてみてください。……今の、奥さんの立場も含めて」
　和磨は、投げ捨てるように言い、良輔の入れた紅茶を進める。
「…」
　優子は、言葉もなくカップに手をかけた。
「どうです？、旦那さんの商売の方は？」
　話題を変えて、和磨は世間話を始めるのである。
・
「優子さん」
　何度も名前を呼ぶ声に、宙を舞うような覚えのない浮遊した気分で、熱くなった身体を意識する優子。
　良輔の用意した紅茶には、しっかり予定の薬物が混入されていた。
・
　カップ一杯の紅茶の飲み干した優子は、頭痛とダルさを訴えて横になったが、それは薬の効果が現れた証拠、和磨と良輔は、意識の薄れた優子の着物を一枚一枚引き剥がす。
「おぉ〜」
　優子の白い肌と適度に脂ののった女性独特の丸みに、見取れる良輔。
「吸い寄せられてしまいそうな白さですね」
　腰のふくらみを、なぞる良輔。
「ごちゃごちゃ言ってないで、手伝え」
　和磨は、優子の手足を大の字にして、ベットのマットをくぐらせたロープで縛りつけている。
　突然の頭痛に襲われ意識を遠くしていた優子、今では薬の第二の効果が現れ、縛られていることさえ気づかず雲の上をまどろんぶような甘い気分でいる。
・
　良輔は、生まれたままの姿に剥かれた優子の雪白に輝く天女のような姿に見惚れて、股間の疼きをこらえている。
「奥さん、どうです？…いい気分でしょう？」
　うつろな優子に問いかける和磨は、優子の意識の戻り具合を確かめていのでる。
「これなんか、どうです」
　大きく張出した二つの乳房の先にある野いちごのような乳首を、ツンツンと弾いては、優子の表情を覗き込む、適度なまどろみの中で肉の快感に溺れさせるタイミングを計っている。
「あっ、いや、だめです。……やめっ…あっ」
（あぁ〜〜、気持ちいぃ〜〜）
　本来の薬の効果が現れ、素肌を極端に敏感にした優子は、ちょっとした刺激に今にも逝きそうなほどの反応を魅せ、羞恥心や素っ裸にされたことにも気がつかない。
「どうです？、いいでしょ」
「あっ、いゃ〜」
「良、毛皮の手袋だな」
　優子の身もだえがあからさまになた様子をみて、自分に納得させるように指示をだす。
　和磨と良輔は、キッチン手袋のような指のない手袋で、優子の身体を確かめるようになぞり舞わすのである。
　ハーハーと軽い喘ぎで、クナクナと身体をクネらせ身悶えつづける優子。
　豊満な女体がうねり動くさまには、なんともそそられる。
「あぁ〜」
　うなじや乳首、縦すじから覗かせた花芽に、フワフワした手袋の毛が触れるとスイッチを押したかのように喘ぐ優子の様子を、二人は薄笑いで楽しんでいる。
「いい反応してるな、これなら楽しめるぞ良。後１時間もすれば、ほとんど素にもどるからな、今のうちだぞしたいことするのは…」
　和磨の言葉に、良輔はとびきりの遊び心を発揮する。
「お毛毛、剃っちゃいますか？　驚く顔が見ものですよ」
　良輔は、胸の大きな膨らみをこね回しながら、満面の笑顔である。
「あはは、それも面白いな。…やるか」
　和磨は、喘ぎつづける優子をほって、剃毛の準備に向かう。
「ロープ前にずらして腿を縛っておいてくれ、大股開きにしてな」
・
　古めかしい、ナイフのような剃刀とシェービングクリームを手にして帰ってきた和磨。
「綺麗な○○○○じゃないか、大事なところには毛が無いのがなんともいい。それに見ろ、ひだが左右対象に開いて…、奥のピンクが綺麗なこと、…こりゃなんともいえん」
　和磨は、流暢に感想をのべると、剃刀を使い始めるのである。

つづく