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（なーるほどねえ‥）
　やはりこの野々口さんは、いや、野々口さんも、盥さんに負けていない。
　伏線の張り方といい巡らせ方といい、盥さんに勝るとも劣らない。

　たぶん初めて野々口さんの小説を読む人は、なぜ豚が鳴いたり、豚のケツが泣くのか、それを読み取るのは難しいだろう。
　でも、僕にはわかった。野々口さんは、わざわざ『どれだけ鳴かされる…いや、泣かされることになるのか』と、普通に読んだだけでは、おもしろくも何ともない書き換えをおこなった。
　
　どうしてそんな書き換えをするのかと言えば、『これ、伏線ですから』と教えてくれた‥‥のではないかというのが僕の読み。
　そしてこれが伏線なら、自分を豚とまで呼んだ美保ちゃんは、そのケツ、いや、お尻が『ブーブービービー』鳴るように仕向けられることで、また大泣きする破目に陥る筈。

　もし僕の読みと期待に応えてくれていないようなら、僕が野々口さんを買いかぶり過ぎているか、あるいは野々口さんがまだ若すぎて、ひと皮剥けていないというか、盥さん流に言えば、アレが皮を被ったままの状態であることの証明。

　美保さんが陰部に電動マッサージを受けるシーンは、この本を買ってから読めばいい。それより、僕の推理が正しいかどうか、それを検証してみるほうが急がれる‥‥わけもないが、やはり楽しい場面は、家で読むほうが楽しめる。

（どの辺かな‥‥）
　美保ちゃんがマジで浣腸されているシーンを、絶っ対に探し出す心構えで、ページを超ゆっくり、いや、探すのに適した速度を保ちつつ‥‥パラリパラリとめくりながら‥‥『浣腸器』や『器具』を探す‥‥といっても、そんな物が付録として、本に挟まっているわけは絶対にないので‥‥それに類した熟語の漢字を‥‥探していたら、かなりのページをめくった所で、別の器具を発見。

（そうか‥膣圧計ねえ‥‥）
　うちの店にも置いたほうが、お客さんに喜ばれるかも知れない‥‥からといって、やはりそれは問題が大きい。
　商売熱心だったジイチャンなら‥‥やはり置かないと思われる。

　しかし、僕にとっては『いちじく浣腸器』なんかより、マジに超ー興味ある物なので、とりあえずそのページを先に読む。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　▽

「ねえヒロちゃん。豚のケツの締り具合を確かめるヤツ、どこにあんの？」
「ちょっと待ってくれよ。いま出すから」
　どうやら今度は、膣圧計という特殊な器具を使われるらしい。
「これを使うんだ」
「あ、それ知ってる。こっちを突っ込んで、ここを握るんじゃん？」
「よく知ってるな。まさか誰かに使われたことがあるとか？」
「そんなことあるわけないじゃん。だってアタシもゴロちゃんも変態じゃないし、浮気なんか絶っ対にしないもん」
「おい、そんじゃデコはどうして知ってんだよ」
　美保が子宮付近に抱えた疑問を、パンチ頭が大便…失礼、代弁してくれた。

「だって、パパが血圧測るやつにも、そっくりのやつが付いてるし、それなら豚の血圧が測れないわけないじゃん」
「なるほどな。さすがは秀子だ」
《血圧って…どういう意味？》
　いかにも意味ありげな会話が気になる。

　美保はまだ一度も、膣圧計なる物を見たことがない。動物用の血圧計にしてもそうだ。
　ましてや人間用の血圧計を兼ねた膣圧計が、この世に存在するという話しなど、聞いたことさえない。気になって当然だ。

「アタシが突っ込んでもいい？」
「ああ、最初からその予定だったからな」
「入れるのは？」
「まさかゴローに頼むわけにもいかないだろう」
「ふふ…ヒロちゃんて優しいんだね」
「ゴローほどじゃないさ」
　なにをどこに突っ込まれ、なにを入れられるのか、美保には見当もつかない。
　なにかを突っ込まれそうな穴を全力で締めつけ、恐怖を閉じ込めておく。

《きゃっ》
　美保は思わず悲鳴を上げそうになった。肛門をなにかでつつかれたのだ。
　悲鳴が口から出ていかなかったのは、頬を陰茎に強く密着させられているせいで、唇が開かなかったためである。

「ほら、入れるからね」
　突っ込まれる穴だけはわかった。すでに軟らかい棒のような物が、少し入ってしまったからだ。
　しかし、もうこれ以上は入れられたくない。
　美保は息を詰め、肛門をぎりぎりと締めつけた。
　首を絞めるための紐はとうに外されたものの、パンチ頭に頭を押さえられ、膝の裏側には太い棒が渡されたままでは、立つことも尻を下げることも叶わない。

「ねえヒロちゃん。もっとこれに何か塗ったほうがいいんじゃん？」
「どうして」
「だってなかなか入ってかないし、何か塗れば、無理やりでも突っ込めそうじゃん」
「焦ることはないさ。テープで目印を付けた所まで入れるだけだから、緩むのを待って、緩んだら入れればいいんだ」
「そうかな…」
　無理やり突っ込まれるのは嫌だ。かといって、待たれるのも困る。
　すでに肛門からは『もう力が抜けそう』という緊急連絡が、脳味噌の司令部に届いている。

「そうだよデコ。確か織田信長だって、鳴かぬなら、鳴くまで待とうキリギリスみたいなこと言ったじゃんか」
「それって、豊臣秀吉が言ったんじゃん？」
「そうそう、秀吉だ秀吉。俺もそうじゃないかとは思ったんだけど、やっぱしデコは頭もいいわ」
　頭の抜けた二人の会話で、美保の肛門まで力が抜けてしまった。

　だがもちろん、脳味噌の司令部は『しっかり気合を入れて褌を締め直してよ』的な緊急指令を直ちに発し、それに対して『女が褌を締めても喰い込むだけよ』といった反抗的態度を取らない肛門が、即座に従ったのは言うまでもない。
　ガングロ女が話しに夢中になっていたせいで、そのことに気づかなかったのは、美保にとってまさに不幸中の幸いと言えた。

「だけど、いつまで待てばいいの？」
「それは…俺もよくわかんないけど、なあヒロミ、どうなんだよ。ヒロミなら知ってんだろ？」
「ケツの穴ってのは、いくら締めておこうとしても、一分も締め続けるのは無理なんだ。途中に必ず休みを入れながらじゃないと、締められないらしい」
「あ、ほんとだ。今も少し入った」
　サングラス男の解説の正しさを、美保も肛門で納得した。棒のような物の太さも、何となくわかった。たぶん手の指と同じくらいの太さだ。

「そんならヒロちゃん。ガバマンの締まりの悪さも、この穴をどんだけ締めてられるかで、絶対わかるんじゃん？」
「さーすが」
「ふふ…ヒロちゃんほどじゃないけどね」
　こんな奴らに、膣や肛門の締まりが悪いとまで言われたくない。
　美保は肛門をさらに締め上げた。

「ほら、秀子。ストップウオッチを貸してやるから、時間を計りながらやればいい。右のボタンを押せばスタートで、もう一回押せばストップだから」
「うん、わかった」
　そんな物まで使われるとは思わなかった。

「アタシが計ったほうが、絶対計りやすいし、ヒロちゃんはビデオ撮るのに忙しいもんね」
《！！》
　ビデオの件を忘れていた。心臓が一気に収縮し、腎臓ほどの小ささになってしまった。

　サングラス男からスタートの合図を受けた覚えはないが、すでに背後からビデオで撮られているのだ。もう二度と目を開けられない。目を開けた顔を撮られてしまえば、人物が特定されてしまう。

　敵は裕福。小遣い稼ぎに裏ビデオとして販売するとは思えないが、なにしろガングロ女の場合は性格が性格。性格が悪すぎるほど悪いことを思えば。
　悪い遊び仲間に対して『中川美保っていう豚のケツが、ユルマンからマジで本気汁を超垂れ流してるビデオ、観たいと思わない？　顔とかも超バッチリ映ってるし、マジでタダなんだけど』などと呼びかけ、自作ビデオの鑑賞会に誘うことは、充分に考えられる。

「だけどさー、いつスタートボタン押せばいいのー？」
「ケツの穴が締まったときさ」
「そうだけど。こういうやつって、やっぱ正確に計りたいじゃん」
　棒に加わっていた力が抜けている。この隙を利用しない手はない。
　美保は肛門を急いでいったん緩め、また再び大急ぎで締めた。

「それなら、いま入れてるやつを軽く押しておくんだ」
「うん、それで？」
　棒に再び力が加わってきた。肛門の周りの筋肉で抵抗する。

「それが少しでも入ると、たぶん美保さんが無意識に締めるというか、ケツの穴は反射的に締まるはずだから、そのときにスタートボタンを押せばバッチリだ」
「うん、わかった。そういうことだから、豚のケツさんも頑張ってね？　いっくら頑張っても、絶っ対、無駄とは思うけどさ」
　とても頑張る気はしない。もう何度も頑張ったせいで、ほとんど頑張れない。
　どうせ最後は、緩いと…いや、『やっぱ豚のケツは、マジでユルユルの超ガバマン』と言われるに決まっている。

　美保は肛門から力を抜き、抵抗をやめた。途端に棒状の物をぐっと押し進められ、反射的に肛門を締めた。肛門の奥に、ひどく気色の悪い感覚が発生したからだ。

　気色の悪さは今も続いている。過去に覚えたことのない感覚だ。
　吐き気を催しているときに、無理やり食べ物を飲み込もうとすれば、きっと喉から胃袋にかけた一帯で、似たような感覚が発生するのではないかと思われる。
　これ以上さらに奥まで入れられたら、全身に悪寒が広がるのは間違いない。それを思えば、頑張って締めているしかない。

《あっ…》
　頑張りは無駄だった。美保の懸命の努力も虚しく、肛門が勝手に休憩し、またしても棒をずずっと送り込まれた。
《ああ…気持ちが悪い…》
　何とも言えない気色の悪さが悪寒に変わり、直腸から下腹部全体へと広がっていく。

「ねえヒロちゃん。二十秒だったけど、どうなの？　たった二十秒しか締められないのは、やっぱガバマンがカッパカッパのユルユルで、絶っ対、締まりも超ーーー悪い証拠だよね？」
「まあ、証拠のひとつかもな」
　惨めさが募る。ほんの少し前までは、もっと長く締めておけたのだ。

　美保は惨めさに悔しさまで加わり、超大粒の涙をこぼした。
　ただしもちろん、そんな美保の気持ちを、ガングロ女は少しもわかってくれない。肛門から力が抜けたのをいいことに、容赦なく棒を押し込んでくる。

「ここまででいいんだよね」
「ああ、それでいい」
　棒の動きは止まった。それでも悪寒は相変わらずだ。胸もむかむかしてきた。気持ちが悪い。
　胃袋が裏返りそうだ。直腸にまで達していそうな棒が、猛烈な吐き気を誘っている。

　口で呼吸したい。過去の経験によれば、吐き気を紛らわせるためには、唇を開けて口から呼吸するのが効果的なのだ。
　だが、今の美保にはそれができない。棒の侵入に抗って身じろぎしたせいで、頬の下にあったパンチ頭の陰茎が、唇に触れる位置まで来てしまったからだ。

　少しでも唇を広げれば、フェラチオをする直前の状況が出来上がる。そんな姿をガングロ女に見られたら、何と言われるか。たぶん間違いなく、『何だ、やっぱフェラがしたかったんじゃん』などと馬鹿にしてくる。
　そんな八方塞がりの状況では、どれだけ吐き気が耐え難くても、みずからの唇で口を塞ぎ続けるしかないのである。
　
「ねえヒロちゃん。もう入れてもいい？」
「ああ」
　これ以上、どこになにを入れようというのか。美保にもおよその見当はつく。

　きっと今度は、ガングロ女がユルユルのガバマンだと決めつけている場所に。それも『ガバマンでユルマンだと、マジにビールをこぼしたみたく、超ビチョビチョに濡らすんだね。本気汁がこんなに出るのは、やっぱ絶っ対、ビール瓶でオナってる証拠なんじゃん？』とまで揶揄中傷された膣の奥深くまで。
　まだ一度も見たことのないバイブレーターなる代物を、情けも容赦もなく突っ込まれるのだ。

　悲しい。つらい。見ず知らずの男に陰茎を突っ込まれ、何度となく射精されるのも悲惨だが、バイブレーターで弄ばれる恥辱も、それに負けないと思う。
　ガングロ女も同じ女なら、そんな道具まで使わなくてもいいではないか。美保の子宮は、そう嘆いている。

　しかし、ガングロ女にそんな気持ちが理解できるとも思えない。美保は吐き気を堪らえながら、唇をきつく噛んだ。
　せめて今回だけは、電動マッサージ器を使われたときのように、声を出したくない。

　先刻、陰部からマッサージ器が離れ去り、スイッチも切られたことを知ったとき、美保は思わず号泣した。もちろん、マッサージ器との別れを惜しんだわけではない。

　募る快感に悶え、淫らな喘ぎ声を発し続けていたこと、そして陰部から流れ出していた体液が、内腿をひどく汚していたばかりか、絨毯にまで滴り落ちていたことを知った声帯と鼓膜と涙腺が、美保を羞恥の深淵から救い出すためには号泣するしかないと、賢明な判断を下してくれただけだ。

　それにもかかわらずガングロ女は、『豚のケツみたく超ヤリマンだと、マジでヨガリ泣きも超超超超ー延々と続けるんだね。もっと続けてほしいんじゃん？』と言って、再びマッサージ器のスイッチまで入れた。
　そしてさらに『どうする？　豚のケツが続けてほしければ、アタシは超優しいから、豚がケツ振りながら、今度は絶っ対、いかせてください、ヨガリ声も大きくしますから、どうかお願いしますって頼めば、いかせてあげるけど？』などと、とうてい受け入れられない条件までつけて、おためごかしに尋ねてきた。

　そんなガングロ女のことだ。美保の発する呻き声が、たとえ嫌悪感に苛まれ、苦悶に耐え切れずに洩らした声であっても、『超ヤリマンのマジなヨガリ声』と決めつけ、さらに虐めてくるに決まっている。美保としては、募る吐き気を堪らえつつ、少しでも声が出ないように努めるしかないのだ。

「ほら、超ガバマンで超ユルユルの豚のケツさん。アタシが今から、たーくさん入れてやるから、覚悟を決めてね？」
《？？…たくさんて…！！》
　ガングロ女の言った『たくさん』とは何の意味か。美保が感じた疑問は、ほぼ一瞬で解消した。
　その直後には、肛門に入れられた棒のような物が管であることも感知した。下腹に違和感を覚えた途端、たちまちそれが大きくなり、膨満感へと変化したからだ。

　初めての経験とはいえ、この感覚は空気を送り込まれているとしか思えない。美保は驚きと信じられない思いを強く抱きながらも、大急ぎで腹筋に力を込めた。
　空気をたくさん入れられたら、その後はどうなるか。考えるまでもない。腸の中にガスが溜まった経験なら、美保も何度かあるからだ。

　そしてまた美保の鼓膜は、勘違いという大きな過ちを犯したことに気づいてもいた。
　ガングロ女の『やっぱり豚はブーブービービー鳴くから最高。でも、豚のケツに泣いてもらうほうが、もっと楽しい』という発言は、『豚』を『美保』に置き換え、『鳴』と『泣』を入れ換えて聞かなければ、その意味を正しく理解することができなかったのだ。

　しかし、腹筋なら力を入れておける。肛門を取り巻く筋肉と違い、頻繁な休息も必要としない。しかも美保は、腹筋の強さにもそこそこ自信がある。

　声帯に負担をかけず、歌声を大きくきれいに響かせようとしたら、腹筋の強化は欠かせず、それは全身のシェイプアップにもつながる。それをボイストレーナーに教えられて以来、寝る前に腹筋運動を欠かしたことがないのだ。

「ねえヒロちゃん。入れにくくなったんだけど、やっぱ今度も徳川家康みたく待つの？」
「何だよデコ。さっきは豊臣秀吉だって言ったじゃんか」
「ごめんゴロちゃん。やっぱあれは、家康だった」
「そんじゃ、秀吉は何て言ったんだよ」
「えっとね…確か…鳴かぬなら、鳴かせてみせようホトトギス…だよね、ヒロちゃん？」
「ご名答。さすがは秀子だな」
　サングラス男やガングロ女の通った学校は、きちんと日本史の授業をおこなったらしい。
　だが、世界史までは教えなかったものと思われる。
　世界史を学んでいれば、人が人を虐め、差別することの愚かさや、ましてや迫害や危害を加えることが、被害者の人生をどれだけ狂わせるか、ナチスドイツとユダヤ人との関係を知るだけでも、充分に学び取れるはずなのだ。

　いや、それを考えれば、サングラス男にしてガングロ女しても、日本史の授業を真面目に受けていたとは言い難い。
　日本でも、長期間に渡って身分制度が敷かれていたために、人々の間に差別意識が深々と広範囲に根付いていったことや、今なお差別を助長するような『踏み絵』などという単語を、マスコミが平気で使っているのは、特定宗教への迫害がおこなわれた結果に他ならないことを学べた筈。

　たとえそうしたことを、意図的に知らせようとしない文部省の指示で、偏向教師ばかり雇う学校に通っていたとしても、人の何倍も悪知恵の働くサングラス男やガングロ女なら、自分たちの力で学び取り、今のような虐めを、美保に加えてくることもなかったのだ。

　美保は生まれて初めて、日本の教育制度に疑問を抱いた。
　なにを仕事にしているのか、収入はどこから得ているのか、それさえ知らない教育委員会のメンバーを恨んだ。
　美保も国民の義務として怠りなく納めている税金で暮らし、美保には誰一人として知り合いのいない文部省の役人全員を憎んだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　▼

（ふーん…確かにそれは言えるよな）
　美保ちゃんに、いや、野々口さんにまったく同感。

　僕の通っていた学校でも、歴史の授業では、やれ「ここは入試に出るから」だの、やれ「このページは自習しておけばいい」だの、そんなことしか言われなかった。
　先生たちの誰一人として、歴史からなにを学べばいいのか、肝心のその点を教えてくれなかった。

　結果、今の僕の頭に残っているのは、『鳴くよウグイス平安京』や『いい国つくろう鎌倉幕府』やあるいは『イヨー国が見える』といった、何の役にも立たない呪文だけだ。

　今、街中ではインベーダーゲームが流行している。学生ばかりか、いい年をした大人までが夢中になってやっているような状況だ。

　今のような教育制度が続く限り、あれに類したゲームを家庭でも手軽にやれる時代が来る頃には、歴史の年号を呪文のように唱える中高生より、ゲームの中で、例えば魔法使いに呪文を唱えさせる生徒のほうが多くなっても不思議はない。

（でもな）
　だからといって、僕はエロ本を読むことに、マジで何の罪悪感も全っ然、持たない。
　僕はとうに成人しており、エロ本の中で展開されている行為を、赤の他人に対し、何の合意もなしにおこなえば、それが犯罪以外のなにものでもないことを、常識として知っているからだ。

　もちろんそうした常識は、僕の独力で身に着けたものではなく、今の僕を僕たらしめている人の存在を忘れることもない。
　当然、美保ちゃんが置かれている状況も、どこまで読んだかもマジに憶えているので、超即、続きを読み始める。