１．

「あ！」
　僕は手にしていた雑誌を落としてしまった。
　理容室で順番を待っていたとき、何気なく手にした風俗雑誌。その紹介記事を見た瞬間だった。
「似ている。」あまりにも似ている。口元を手で押さえているので絶対にそうだとは言えないけど…。
　デリバリーヘルス「サードラブ」　料金2時間で２万円
　僕は雑誌を食い入るように見た。
「そんな…」
　写真に写っているのは僕が高校生の時に憧れた保健室の先生そっくりだった。
　身長１５６ｃｍ　バスト８３ｃｍ…　うん、先生の身長はそれくらいだった。
　年齢２４歳　僕が卒業して1年だから…うん、年齢もぴったりだ。保健室の先生は産休臨時採用で短大を卒業後すぐに僕のいた学校に勤めていた。年下の僕が言うのも変だけど、色白で美人というより可愛い感じの女性だった。休み時間になると、用事もないのに男子生徒が保健室に集まっていた。
　もちろん女生徒にも人気が合った。先生の笑顔を見るだけで幸せな気分になれた。
　でもたった1年でやめることになった。その後、どこの学校に行ったのかは知らなかった
　でも…　あの先生がヘルスに勤めるはずはない…僕は雑誌をこっそり自分の鞄に入れた。

「あ〜、あの真由先生なぁ。なんか、実家の方が倒産したとかで結局、教員採用試験をあきらめたみたい。その後はどうしているのかなぁ。結構、人気があっただろ。だから問い合わせがあるんだけど、さすがの俺も知らない。」
　情報通の竹田は電話口の向こうで続けた。
「あ〜俺も結構好きだったんだ。」
「ありがとう」
　僕は部屋に帰って雑誌をひらいた。そして体育祭の時一緒に撮ってもらった写真と比
べた。目元や顔の輪郭が同じなのだ。胸がどきどきした。髪の毛が茶髪になっているけど…。真由先生であって欲しいけど…違っていて欲しい…　なんだかもんもんとした気持ちが爆発しそうだった。
　今まで気がつかなかったけど、紹介記事の下に店のURLが書いてあった。
　僕はパソコンで急いでその店のサイトを閲覧した。
「会員登録していただくと、さらに女の子たちの詳しいプロフィールを紹介できます。」
　僕はさっそく登録して真由先生の…違った、その女性のプロフィールを見た。
　名前イチゴ
　年齢24
　身長156cm
　体重44kg
　Ｂ・Ｗ・Ｈ
　83(B)56・85
　星座山羊座
　血液型Ｏ型
　違うのは名前だけだった。星座も血液型もすべて一致する。僕は出勤表を確認した。今週の土曜日、真由先生そっくりな？イチゴさんは１２時から出勤するらしい。気がついたら予約フォームを使って彼女を指名していた。
　貧乏な僕には２万円は苦しかったけど、買いたかった画材を我慢することにした。
　それからの時間の経つのが遅いこと。もし、イチゴという女性が真由先生だったら…。その妄想だけで夜も眠れなかった。

　ラブホテルはなんだかイヤだったので、安いビジネスホテルに予約をとった。僕はドキドキしながら予約の時間が来るのを待っていた。
　ピンポ〜ン
　部屋のチャイムがなった。
　ドアを開けると、小柄で色白でかわいらしい女性がたっていた。
　それは間違いなく真由先生だった。