８．雨宿り・・・沙希と慎一の場合

　それは・・・突然、訪れた。

　急に降り出した雨に、慎一は慌てて近くの軒下に逃げ込んだ。
　残業で遅くなった街は人気も無く、タクシーも出払って呼べなかった。
「ついてないな・・・急な残業、急な雨・・・今日は厄日か・・・」
　坂上 慎一は今年新卒で商社に入社した22歳の企画担当社員で、新しい仕事の企画書をまとめていて遅くなったのだ。

「うわぁ〜〜びしょ濡れだわ〜あっ！」
「あぁ・・・お先に雨宿りしてます」
「暗くて分からなかったわ〜雨宿りするまで・・・」
　線の細いびしょ濡れの女性が、真一のいた軒下に駆け込んできたのだ。
「いやぁ、急に、ひどい雨降りだね」
「えぇ・・・」
　よく見るとその女性は、サブリナパンツに大きく胸の開いたサマーセーター姿で、雨に濡れて素肌が透けて見えていた。
　カラスの濡れ羽色のような漆黒の髪が、街灯の灯りに神秘的に輝いていた。
　小さな顔に大きな瞳だけが目立つ年齢不詳の女性だった。
　慎一はスポーツバッグからジャージの上着を取り出し、その女性の肩に掛けた。
「えっ？！・・・」
「濡れて透けて見えてるから・・・少し大きいけど、掛けてて方が・・・」
　慎一は照れくさそうな表情で、唐突に声をかけた。
「あ、ありがとう・・・あなただって濡れているのに・・・」
「僕より君のほうが・・・、僕はその先の商社の坂上 慎一です。あなたは？」
「わたし・・・沙希・・・」
　沙希は身長は160cmぐらいだが、驚くほど細い身体だった。
　透けて見える乳房は、小学生かと思うほど小さく見え、手足は長く細かった。
「タクシー電話したんだけど、出払っていてきてくれないし・・・まいったなぁ〜」
　沙希は少しガタガタと震え、身体が冷えているようだった。
「大丈夫？風邪引きじゃ済まなくなりそうだよ」
　細い肩を両手で抱え込むようにして震えている沙希が心配になっていた。
「沙希・・・どこまで帰るんだい？病院に行こうか？救急に・・・」
「はぁ、はぁ・・・大丈夫・・・よ・・・」
「ちょっと、そこにいろよ！今、タクシー拾ってくるから！」
　慎一は激しい雨の中を大通りに向かって駆け出した。

　プップゥ〜〜
　しばらくすると、軒下に向かってタクシーが走ってきた。
　バタンッ！
「ほら、沙希、早く乗って！」
　大きな黒い瞳だけがハッキリしている沙希の震える肩を抱いて、慎一はタクシーの中に乗せた。
「どこまで・・・？」
「・・・・・・・・・」
「どこか、薬屋さんによって・・・それから、どこかホテルに向かって・・・」
　慎一は薬局で栄養剤と風邪薬を買ってホテルに向かった。
　沙希はガタガタ震えるばかりで、何も言わなかった。
　やがてモーテルの前にタクシーが止まり、慎一は沙希を抱えて中に入った。
「今、お風呂を準備するから、濡れたものを脱いでバスローブを羽織って・・・」
　慎一は大きなバスタオルとバスローブを沙希に渡し、浴室に入った。
　少し熱めに湯の温度を調節して準備した。
　部屋に戻ると、沙希はガタガタ震えて座ったままだった。
「何してるんだ！本当に病気になるぞ！」
　慎一は沙希の衣類を不器用な手つきで脱がせ、身体を拭いてバスローブを着せた。
　フロントに電話をして沙希の服を乾かしてもらうよう手配した。
「ほら、温かいコーヒーを飲んで・・・落ち着いたらお風呂に入るんだ」
　沙希は両手でコーヒーカップを持って、少しずつ飲み始めた。
　その様子を見ながら、少しだけホッとする慎一だった。
「お風呂から出たら、薬を栄養剤と一緒に飲んで、少し休んで・・・ふぅ〜〜」
「ありがとう・・・」
「うん？・・・フッ、いいよ〜ほら、お風呂入って・・・」
　沙希はフラフラしながら浴室に向かった。
（ふぅ〜ぅ、オレは何をしてるんだ・・・お人よしだな・・・まぁ、いいか！だけど、沙希・・・年齢はいくつなんだろう？子供のようで大人のようで・・・顔だけ見てるとエキゾチックでゾクッとするけど、身体は子供のようだし・・・）
　慎一は部屋の温度を調節し、自分も着替えて濡れた服を乾かした。
　冷たいドリンクを飲んでタバコを喫していると、沙希が浴室から出てきた。
「大丈夫かい？じゃあ、薬と栄養剤・・・」
　沙希は素直に受け取って飲み、ベッドに入った。
「あのぉ〜・・・あなたは？」
「僕？フフフッ・・・安心して眠りなよ・・・寝ている病人を襲うほど悪党じゃないよ」
　沙希は少し持ち上げた頭を枕に落とし眠りに就いた。
「僕もお風呂にでも入って・・・・・・」

　お風呂に入りやっと一息ついた慎一は、部屋に戻ると沙希の様子を窺った。
　手のひらを沙希の額にあて自分と比べてみた。
「大丈夫そうだな・・・良かったぁ〜でも・・・ビックリしたなぁ・・・しかし、沙希って、不思議な女だな・・・どういう人間なんだろう・・・」
　慎一は興味津々の目をして寝ている沙希を眺めていた。
「エキゾチックと言うか、神秘的と言うか・・・顔立ちは大人の女性なんだよな・・・」
　沙希の掛けた蒲団をそぉ〜と捲ると、沙希の露わな肢体が目に映った。
「肩も腕も極端に細い・・・胸は、Ａカップ？ジュニア・・・？でも、形は綺麗だな・・・腰は括れすぎるほど括れてる・・・50cmぐらいしか無いかも・・・細いなぁ〜〜だけど、骨盤はしっかりしてヒップから太股は少し肉がついてる・・・いや、やっぱり脚も細いな・・・長いけど・・・沙希は宇宙人かぁ〜？フフフ・・・そうそう、アソコはどうなってるんだろう？」
　沙希を脱がした時は夢中で、見る余裕も無かったので、今は好奇心の塊だった。
　沙希の横になった身体をそっと仰向けにすると、無毛の恥部が露わになった。
「やっぱり子供なのかな・・・？子供のオマ××コって見たこと無いけど・・・」
　指で触ってみようとしたが、躊躇ってやめた。
「やっぱり、痴漢はうまくないな〜」
　少し汗をかいて光っている白い肌を拭いてやろうと思い、タオルを取ってきた。
　額から首、胸から下腹部まで丁寧に拭き、蒲団を掛けなおした。
　途中で沙希が呻くような声を少しあげたが、また落ち着いて眠った。
「ふぅ〜〜、オレもソファで少し休むか・・・」
　仕事疲れと沙希の面倒で、慎一はすぐに深い眠りに就いた。

　身体に違和感を感じた慎一が目を覚ますと、沙希が慎一の肉棒を咥えていた。
「うっ・・・沙希、何してるんだ・・・」
「ありがとう・・・おかげで、体調も良くなったので・・・お礼に・・・」
「そ、そんなつもりは・・・無いよ〜あれば、とっくに襲っているよ」
「そう・・・でも、他にお礼できないし・・・」
「もっと自分を大切にしろよ〜無防備すぎるよ！悪いヤツに引っかかったら・・・」
「でも、慎一はいい人だったわ・・・」
「そう言う問題じゃない！」
「わたしのようなオンナは・・・嫌い？」
「そんなこと・・・でも、神秘的な表情とは対照的な身体が・・・沙希は何歳なの？」
「年齢なんて・・・全く意味が無いわ〜男女の間では、そんなもの無価値よ」
「そうかもしれないけど・・・」
　両手で肉棒を包み筒を根元から舐め上げながら慎一を見遣った。
（すごい・・・）
　大きな黒い瞳に妖しい光りが宿っていた。
　慎一はその表情に魅せられ、沙希の愛撫を受け容れたのだ。
「あぁ・・・あ、うっ・・・はぁ〜〜はぁ〜〜あぁっ、あぁ〜〜」
　肉棒の括れを小さな口唇で挟み、舌先で鈴口をチロチロと舐め、カリを扱いた。
「はぁ、ぁうっ・・・っあぁ〜〜あっ、うっ・・・っはぁ〜〜ぁ・・・はぁ〜〜ぁ・・・」
「どう？気持ちいぃ〜？」
「あぁ・・・信じられないほどだよ、・・・あぁ〜〜ぁ・・・あふっ・・・はぁ〜〜ぁ・・・沙希・・・僕にも君のアソコを舐めさせて欲しいな・・・」
「ツルツルのパイパンが珍しいの？胸も小さいから子供みたいだから？」
「いや、別に・・・そう言うことじゃなくて・・・」
「幼児趣味だったの？慎一は・・・」
「そうじゃなくて・・・僕は、ただ、君と普通に愛し合いたいな・・・と」
「本気なの〜？・・・変な人ね・・・慎一って・・・普通は、こんなアンバランスな女、誰も本気で愛そうなんて思わないわ・・・雨宿りで知り合っただけなのに、懸命に看病までして・・・汗も拭いてくれたし・・・身体もチェックされたし・・・」
「えっ？ご、ごめん！悪気は無かったんだ・・・本当だよ」
「分かってるわ・・・邪心があれば、そのまま犯すわ〜」
「じゃあ・・・」
「今日は、これで終わりにしませんか？本当に感謝してます・・・でも・・・雨宿りのついでに・・・成り行きで愛されたくないの」
「成り行きでも雨宿りでも無いよ！」
「だったら・・・１ヵ月後、あの雨宿りした場所で、逢いませんか？その時に、本気でお互いを想う気持ちがあれば・・・」
「それじゃあ、１ヵ月後の夕方、６時に・・・いいですか？」
「いいわ・・・それじゃ、わたしの服を・・・」
　慎一はフロントに沙希の服を運ばせ、タクシーを呼んだ。
　沙希は、あの大きな神秘的な瞳で慎一を見つめてから、ドアを開けて去った。

　それからの１ヶ月、慎一にはひたすら長く遠い日を待つような気分だった。
（どうしているのだろう・・・どこに住んでいるのか・・・何ひとつ知らない・・・）
　沙希の瞳が頭から離れず、日が経つにつれて神秘的で妖しい心象が膨らんでいった。
　身体が幼いとか乳房が小ぶりだとか言うことはどうでも良くなり、ただ、もう一度だけでも逢って、彼女のことが知りたかった。
　待ち遠しかった１ヶ月が過ぎ、約束の日が来た。
　慎一は仕事を終えると、あの軒下まで駆けて行った。
（あぁ〜ぁ・・・まだ来ていない・・・６時まで10分か・・・）
　夕刻の人通りの多い街並みの中で待つ10分は長く感じられた。
（あと、５分・・・本当に来るのか・・・？）
「あっ！・・・雨・・・また、雨・・・」
　通りを歩く人たちの波が大きく揺れ動き、慎一の視界が急に広がった。
「あれは・・・沙希？」
　上から下まで真っ黒な沙希の姿が次第に大きくなってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・すみません、一緒に雨宿りしてもいいですか？」
「えぇ・・・急に降り出しましたね・・・あの日のように・・・」
　慎一は沙希の肩を抱き、黙ったまま雨の降る街を歩き始めた。

　ビジネス街の裏通りにあるカクテルバーのあるホテルに向かった。
「僕は、今日、君のことが知りたくて来たんだ」
「・・・・・・・・・」
　部屋に入ると沙希は着ている服を脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょっと待って・・・君を抱きたくてここに入ったんじゃない。沙希とふたり、誰にも邪魔されない空間と時間がほしかったんだ・・・」
「わたしの身体・・・やっぱり魅力無いんだ・・・そうよね〜欲情しないよね〜」
「そうじゃなくて！僕は、君のことが知りたいんだ！」
「見ての通りよ・・・それ以上でも、それ以下でも無いわ〜」
「それじゃあ、君はどうして今日、来たんだい？」
「あの日のお礼を言いに・・・約束したから・・・」
「あの日、単に雨宿りで愛し合うのじゃなく、１ヶ月経っても逢いたいと・・・そう思ったから来たんじゃないのかい？・・・僕は、そうだけど・・・」
「あなたって・・・本当にいい人なのね・・・わたしの裸に触っても、悪戯もせず、わたしが迫っても、欲情に流されず・・・」
「・・・・・・」
「わたし・・・何度も、あなたの勤める会社に行ったのよ」
「えっ！？」
「あなたがどんな人か・・・遠くから眺めていたの」
「気づかなかった・・・」
「いいわ・・・わたしのこと、話しするわ・・・」
　沙希は自分の生い立ちから今日までを淡々と語り始めた。
　幼い頃、施設で育った沙希は、自分がどうして生まれてきたのか、知らなかった。
　施設の玄関に捨てられていた・・・それだけだった。
「驚いた・・・？そうよね〜日本人か外国人かも分からない・・・わたしには語るべく自分が無いの！だから・・・聞かれても答えられない。もう、いいでしょ！これで全部よ〜帰るわ！」
　立ち上がろうとする沙希の腕を掴んで、慎一は自分の横に座らせ口唇を重ねた。
「だから・・・どうしたんだい？生い立ちを憐れんでほしいのかい？それとも、蔑んでほしいのかい？どっちにせよ、僕には今の沙希がすべてさ」
「慎一・・・わたし、氏も素性も分からない、天涯孤独なのよ〜それでもいいの？」
「もう、君は天涯孤独じゃない・・・今からは、僕がいる・・・」
　慎一は沙希の漆黒の髪を掻き分け、大きな瞳の瞼にキスをし、強く抱きしめた。

「あぁ〜あぁ〜あっっ・・・あぅっ・・・はぁうっ・・・はぁ〜〜ぁ・・・っ・・・」
　ベッドの上で激しく絡み合い悶えるふたりは、何もかも忘れ求め合った。
　慎一は沙希の身体中を舐め、小ぶりな沙希の乳房の感じやすさに興奮した。
　括れた腰を引き寄せ、沙希の股間に顔を埋めた慎一は、無毛の恥丘を舐め、ツルッとした淫唇の溝を舐めあげ、小さな淫唇を押し分けて中に舌を入れた。
「あぅ、あっ、うっ・・・あぁ〜〜ぁ・・・はぁふぅ〜〜っ・・・あぁああああ〜〜〜」
　両手で優しく開いた淫唇の中は、愛するための液で溢れ、熱を発していた。
　小さな肉芽を舐め淫壷の中を指で弄りながら、慎一はこころに誓っていた。
（沙希・・・離さないよ・・・辛い想いばかりしたんだろ・・・これからは僕が・・・）
　沙希は慎一の舌と指の愛撫で軽く絶頂を迎え、身体を入れ替えて肉棒を咥えた。
「今度は、わたしが感じさせてあげるわ〜」
　敏感な玉の袋から棹を優しく舐め、亀頭を小さな手のひらで転がすように回転させ、根元まで深く咥えて舌で上顎に押し当て、強く吸い込むようにすると、慎一は堪らず大きな声をあげて射精感が込み上げるのを我慢した。
「あふっ・・・あぁ〜〜ぁ・・・はぁ、はぁ、やっぱり抱き合いながら結ばれたい・・・」
　沙希の細い身体を上から優しく包みながら熱い壷の中に肉棒を挿入した。
「うっ・・・わぁ〜〜っ・・・あぁ〜〜沙希・・・君・・・凄い、はぁ〜っ・・・いぃ〜〜」
「わたしも〜い、いぃわぁ〜〜慎一のでいっぱい・・・あぁ〜〜いぃ〜いぃ〜〜〜」
　一気に昇りつめたふたりは、汗を飛ばし身体を震わせ、歓声をあげて果てていった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・わたし・・・わたしで、いいの？」
「ふぅ〜〜ぅ、沙希じゃなきゃ、ダメだよ！」
「ホント？あぁ〜〜愛してる・・・」
　ふたりは迸る想いをお互いの身体を貪ることで伝え、運命の出逢いに感謝した。

　細く人形のような肢体と神秘的な顔立ちの沙希は、好んで暗い色の服を着ていたが、慎一と心を通い合わせた日から明るく変わっていった。
　髪も明るい栗色に染め、自然と表情も明るなっていた。
　慎一と沙希は、あの日の翌日から同棲を始め、将来を夢見る日々が続いた。
　そんな幸せな生活が続いたある日の夕暮れ、夕食に行こうと待ち合わせをした。
　薄暮の小雨の中、手を振って駆けて来る沙希を見つけた慎一は急いで通りを渡った。
　キィ〜〜〜〜ッ！！！
　ガシャ〜〜ン！！
「キャァ〜〜〜〜ッ！！！」
　顔面蒼白で駆けつける沙希・・・
「慎一！慎一〜〜ねぇ！ウソォ〜ウソよねぇ〜〜慎一〜〜目を開けてぇ〜〜〜」
　沙希の元に駆けつけようとした慎一は、猛スピードの車に撥ねられ宙に舞った。
「ねぇ・・・おねがい・・・・・・やっと、巡り逢えたのに・・・・・・・・・」
　慎一の動かなくなった身体にしがみつき泣き叫ぶ沙希の声が、いつまでも夕闇の雨の中に響いていた・・・。