（１６）

　センターでは、始業前の朝のミーティングを行っていた。
　所長の遠藤が、センター員に、前業務の反省を兼ねて意見を聞きはじめる。

「とりあえず、グループ傘下にある、各社の欠点を補わなければいけない。誰か、いい意見を聞かせてくれ。んー・・・そうだな・・・鏑木っ、どうだ？」
「はい、まず全社、全職員の個別データを早急に作成する必要があると思います。今回の事もあるし、急遽、動くときの調査項目を省略する事もできるからです。特に、ベテラン枠の社員は色々な意味で長けているものが多いし危険因子です。」
「なるほど、最だ。・・・さすがだな鏑木っ。」
「いえ、即要と思ったまでです。」
「もし、データを作成するとしたら何日掛かる？」
「２ヶ月は要ります。」
「んむ・・・・やってくれるか？」
「勿論です。」

　遠藤が満足げに頷いた。

「西田、今回担当した、お前としてはどうだ。」
「ええ、今、鏑木が言ったデータを武器にすれば、当社内関連の仕事は若いセンター員をどんどん使ってもいいと思います。今回の亜美君の行動も、なかなかでした。やはり経験させないと緊急時に動けません。」
「なるほど、そうだな。」

　センター員を見渡す遠藤が、様子のおかしい香坂を目に留めた。
　裕二は、昨夜の鏑木のマンションでの興奮の余韻がまだ残っているようだ。

「おい、香坂・・・どうした。・・・体調でも悪いのか？」
「あ、い、いえ・・・すいません・・・・」
「フッ・・・飲みすぎか？」

　センター員が遠藤の言葉に笑いを見せた。
　裕二が酒を好きなことを皆知っているのだ。
　鏑木と洋子も一緒に苦笑いしている・・・・
　しかし、亜美だけは、裕二を見てオロオロしていた。

（裕二さん・・・大丈夫かな・・）

　裕二の顔が今ひとつ冴えない・・・・・
　裕二は、どうしても昨日の事が嬉しくて皆に喋りたくてしょうがなかったのだ。
　遠藤が、裕二の心を読み取ったのか、気になって声を掛けてくる。

「どうした、香坂？　お前も何か言いたいことあるのか？」
「・・・え、・・・いえ・・・あ、はい。・・・でも仕事の話ではないので・・・」
「・・・ふむ・・・・構わんぞ。」
「はぁ・・・しかし・・・・」
「何だ、お前らしくないな。遠慮なく言えよ。」

　鏑木も洋子も、まさか裕二が昨日のことを喋るとは思っていないためか、特に気にすることなく冷静に裕二を見ている。

「・・・・実は、昨夜・・・・・非常に嬉しいことがありまして・・・」

　皆、裕二の言葉に首をかしげた。
　しかし、鏑木と洋子の顔が驚きの表情に変わる・・・

（ま、まさか・・・香坂・・・・・おい・・・マジか・・・）

　遠藤は、妙に気になってしまい早く話の続きを聞きたがった。

「・・・早く言ってみろ。」
「はい。・・・実は、昨夜、鏑木補佐と洋子・・・あ、いや加納係長が・・・」

　鏑木と洋子が、口をパクパクさせている・・・

「は？　二人がどうした？」
「・・・ええ・・・大恋愛の末に結婚をすることになりました。」

　遠藤もキョトンとして、裕二の言葉をすぐには理解できないでいた。

「・・・・・・・・・は？・・・・・・・・・・・・・・・え・・・えぇーっ？」

　遠藤の驚く声にセンター員も鏑木と洋子に注目した・・・・

（クッ・・・こ、香坂の野郎・・・・）

　洋子が、鏑木の背後に照れくさそうに後ずさりしていく・・・・

　それを見た遠藤が、ゆっくりと鏑木に近づいた・・・・
　鏑木が遠藤を見る・・・遠藤も真顔で鏑木を見据えた。

「・・・・・鏑木・・・・・本当なのか？」

　鏑木が一瞬だけ裕二を見ると遠藤と目を合わせて答えた。

「・・・はい。私の女房にします。」

　遠藤は言うが早いか鏑木の手を両手で握って喜んだ。

「鏑木ぃーっ、おめでとうっ！」
「あ、ありがとうございます。」

　更に遠藤は洋子にも声を掛ける。

「洋子っ、お前、・・・・大事にしてもらえっ！」
「・・・はい・・・ありがとうございます。」

　センター員、全員が鏑木と洋子を囲み祝福の拍手で祝った。
　皆が、二人を囲む後方で、亜美が小さな声で裕二に囁いた。

「裕二さん・・・・後から、補佐にコツかれるわよ。」
「ああ、でも心地よい痛みだと思うがな。」
「フフッ・・・そうかも・・」

　そう言いながら、裕二は、鏑木と洋子を見ながら笑顔をこぼす・・・・
　そして亜美が、裕二の顔を見上げた。

（裕二さん・・・・いつか、・・・いつか、私にも・・・・ね。）

　亜美の想いが伝わったのか、裕二が亜美を見つめて強く手を握った・・・・・・・

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

−　夕方　−

　裕二と亜美は、美紀の経営する「雅」で酒を飲みながら談笑していた。
　美紀は、父、康平の元部下でセンターを退職後、夢だった小料理屋を営んでいた。

「裕二さん、補佐に怒られたでしょう。」
「ああ、でも笑っていたよ。いつかお前らにも仕返しをしてやるって。」

　美紀が、二人の間に入り亜美たちにも嗾けてきた。
　亜美は、美紀にも今回の一件を先程話していたのだ。

「亜美ちゃん、次は、あなたたちの番ね。」
「えぇー、美紀さん、まだまだですよぉ。」
「でも、顔はそう言ってないわよ。」

　隣りで裕二も顔を赤くしている。

「しかし、亜美ちゃん、香坂君は、貴女のお父さんに本当によく似てるわ。」
「え？　全然似てないわよ。裕二さんの方がハンサムだし。」
「ウフフッ、顔じゃないわ。雰囲気がよ。」
「・・・そ、そうかなぁ？　でも、お母さんも美紀さんと同じ事を言ってたわ。」
「・・・・貴女が、香坂君を好きになったのは偶然じゃないのよ。」
「え・・？」
「本能的に、この人と・・っていう気持ちが心の中にあったと思うわ。」
「自分では、そこまで考えた事なかったけど。」
「でも、やっぱり母娘ね。好きになる男の人のタイプが礼子さんにしても、亜美ちゃんにしても似ているもの。」

　そう言って美紀は微笑んだ。

「香坂君も亜美ちゃんの事、好きなんでしょ。」
「え、ええ。もちろんです。」
「二人は、お似合いよ。香坂君、貴方、亜美ちゃんを離しちゃ駄目よ。」
「は、はい、それはもう・・・・」

　亜美は、美紀の言葉はもちろん、裕二の返事が嬉しかった。

「でも、美紀さん、私も、・・・・せめて加納係長くらい実力をつけてから結婚したいの。裕二さんも、たぶん、そう思っているんじゃないかなって。」

　裕二は、亜美の言葉に少々驚いた。
　昨夜以来、もし亜美も、気持ちを知るために自分に問いただしてきたらそう答えようと思っていた事をなんと亜美自信が考えていてくれたからだ。

「・・・亜美・・・」
「ね、裕二さん、そうでしょ。」

　美紀が、二人を交互に見て呟いた。

「あぁー、お熱いこと・・・羨ましいわ。」

　美紀の言葉に、二人は照れ臭そうに笑った。

「ところで美紀さんは、結婚しないんですか？」
「もう、４０過ぎてるのよ。もらい手がないわ。」
「歳は関係ないと思うわ。それに、そんなに美人なのに。」
「まぁ、お世辞言ったってサービスしないわよ。」

　美紀の小笑いに言い訳をする亜美・・・

「そんな事ないわ。美紀さんなら結婚したがる男性も多いと思うけど。」
「いいのよ。それに亜美ちゃんのお父さんに沢山もらった愛を汚したくないの。」

　美紀はそう言って、康平の座る指定席を眺めた。
　亜美と裕二も目を向ける。

「美紀さん、あの、お父さんの専用席にあるお酒は？」
「・・・・ああ、あれはバーボンよ。マーチンミルズっていう亜美ちゃんのお父さんが大好物だったお酒なの。高いのよ。」

　裕二は、美紀の話で即座に決心した。

（・・・き、決めた。俺も荒尾さんにあやかってマーチンミルズを飲むぞ。）

「でも、裕二さんには似合わないかも・・・」

　突然の亜美の言葉に裕二はガックリすると急いて反論をする。

「何言ってんだ。俺もバーボンは大好物なんだぞ。」
「そ、そうなの。初めて聞いたわ。」

　会話を聞いていた美紀が、思い出したように
　棚の奥からバーボンを１本取り出して裕二に手渡した。

「はい、香坂君、私から１本プレゼントするわ。」
「えぇー・・いいんですか？」
「いいのよ。でも大事に飲んでね。なかなか手に入らないお酒なのよ。」
「はい、大事に飲みます。」

　裕二は、美紀からの思わぬプレゼントに、ことのほか喜んだ。

「康平さんを目指してるって聞いて私も嬉しいの。頑張ってね。」
「はい。一生懸命、頑張ります。・・・・・・・・でも、美紀さん、俺と荒尾さんって、そんなに雰囲気が似てますかねぇ？」
「ええ、とっても・・・・・だけど、一つだけ違うところがあるかな？」

　亜美と裕二は、同時に美紀に聞き返した。

「どこですか？」
「フフ・・フフフッ・・・・お二人で考えなさい。」

　数時間後、亜美と裕二は、美紀の店を出て帰途についた。

「亜美、美紀さんって、どういう人なんだ？」
「・・・・私たちの先輩にあたるわね。」
「そんな事知ってるさ。俺が聞きたいのは性格だよ。」
「うーん、そこまでは私も・・・・でも、何故？」
「ああ、ずっと、俺の心の中を読まれているような感じがしたんだよ。不思議な感覚だったんだが、この人の前で嘘をつけないって言うか。」
「・・・・・」

　亜美も裕二と同じ事を思ったことがあった。
　美紀に限らず恵美子も澪にも同じような事を感じたことがある。

（お父さんから愛をもらった・・・・・か。・・・なにか関係あるのかな・・・）

　亜美は、ため息をつくと、裕二の腕を組み身体を預けていった・・・・・・・・

（１７）

「ただいま。」

　亜美が、家に上がり居間を覗くと康平と礼子が酒を飲みながら楽しそうに喋っていた。
　ドアを開けて中に入る亜美・・・

「タ・ダ・イ・マ・！」
「あら、お帰りなさい。」
「楽しそうな所をお邪魔だったかな？」
「何いってるのよ、別にいいわよ。でも何で？」
「だって、お母さんの顔見てたら幸せそうな顔してたわよ。この状態の中に、誰も入れるものかっていうような感じ。」
「フフッ、そうかもね。」

　そう言って礼子が康平を見つめた。

「ところで、最近、帰りが遅いな、亜美・・」
「ええ、裕二さんが毎日誘ってくれるし・・」

　照れながら言う亜美に康平が例のごとく絶妙なタイミングで質問する。

「今日もやってきたのか？」
「ええ。・・・ぁ・・・・ぇ・・・な、何言うのよ突然・・・」

　康平と礼子は、笑いを堪えた。

「ま、いいじゃないか。香坂君もしっかりした人間だ。それに、俺たちが、とやかく言うことじゃないからな。」
「ねえ、あなた、この間の事を亜美に話したら。」
「ああ、そうだな。」
「え、なんなの？　また旅行にでも行くの？」
「そう、しょっちゅう行くわけないだろうが。」
「そうよね。でも安心したわ。一人で生活すると大変なのよ。」
「おう、その話なんだが、亜美、お前、一人で生活してみないか。」
「え、一人で・・・・・」
「ああ。お前自身、仕事にも都合がいいだろうし、自立する意味でもいいことだと思うんだがな。」
「・・・でも急に言われたって部屋を探せないわよ。」
「実はな、甲斐が、税金対策で、駅南にマンションを建てたんだ。」
「え、そうなの。」
「ああ、俺に３つやるから自由に使ってくれって言ってきたんだが、わざわざ、この家をほったらかしてまで住むわけにもいかんしな。」
「へぇー、そうなの。でも、あそこなら歩いてセンターに行けるし便利ね。」
「ああ、それに澪も、そこに住むらしいしぞ。」
「そうなの。・・・ご飯作ってもらっちゃおうかしら。」
「馬鹿言ってるんじゃないわよ。自分で作りなさい。そういう事も含めて、お父さんは言ってるのよ。」

　亜美は、おどけながら舌を出して済まなそうな態度をとった・・・・・

「それに、ホテル代も浮くだろう。」

　礼子が、康平を思いっきり叩いた。
　亜美も、そう思っていたのか顔を赤くしている・・・・

「でも・・・・お父さんたちの勧めなら一人暮らししてみようかしら。。
「ああ、ま、ゆっくり考えろ。」
「亜美、もし、一人で暮らすなら澪さんに見張りを頼んでもらうからね。」
「どういう意味よ、お母さん。」

　礼子は、笑いながら康平に酒を注いだ。

「ところで、お父さん、あの新聞の山は何？」

　亜美が、居間の奥の和室に積み重なっている新聞を見て尋ねた。

「ああ、あれか。あれは１３年間分の新聞だ。」
「え、１３年間分・・・・・どうするの？」
「旅行から帰ってからずっと読んでたんだ。ま、もうほとんど読み終わったがな・・・」

（・・・・え・・・そんな短期間に・・・）

　礼子が、康平の様子を伺ってから不思議そうにしている亜美に説明をした。

「亜美、実はね、お父さん・・・太平洋グループに復帰するのよ。」
「えぇーっ？」
「お父さんが居なかった１３年間、ずっとお父さんのお給料が振り込まれていた事は知ってるでしょ。お父さんはね、たかが一介の社員にここまでしてくれた太平洋の寛大な処遇に恩返しするために決心したのよ。そのために、いま準備しているの。」
「製鉄の北原社長からのお誘いなの？」
「それもあるが・・・ま、色々とな。」

　康平は、それ以上の内容は言わなかった。
　気になってしょうがない亜美は、さらに質問を重ねた。

「・・・・で・・・何処の系列会社に・・・いつから？」

　礼子が、言い難そうな康平の変わりに亜美に答えていく。

「グループ本社よ。来年の４月から常務としてね。」
「ほ、本社・・・・に・・・・・・・・・じょ、常務？・・・・・」
「フフッ・・・大出世でしょー！　太平洋グループの幹部役員理事も兼ねてね。」
「か、幹部役員って・・・・お父さんの歳で・・・だ、大出世どころか・・・」

　康平が、真剣な顔をして亜美に答えた。

「亜美、会社に、そして社会に復帰するという事は、いい加減な努力じゃ駄目なんだ。復帰する以上、そして、こんな役職をもらった以上は、命を張らないといけない。そのために行う努力なんてのは、上限がないんだ。お前も、よく覚えておくんだな。」
「・・・・・・」

（努力に・・・・上限は、ない・・）

「・・でも・・・・お父さん、当分はお母さんとゆっくり家で暮らすって言ってたんじゃ・・・」
「ああ、しかし俺の性格上、やはりブラブラしてる隠居生活は合わんよ。まぁ、定時帰宅できるし母さんとも一緒に居る時間は取れるからな。」
「あ、そうそう、亜美、お母さん、会社を辞めたから。」
「えぇーっ、いつ？」
「昨日よ。今日から専業主婦なの。」
「専業主婦って・・・・そ、そんなタイプじゃないでしょ。」
「そうかしら。家で最愛の夫の帰りを待つっていうのも憧れてたんだけど。」

　あっけらかんと言う礼子に亜美も呆れて素っ気なく答えた。

「・・・・・あ、そっ。」
「じゃ、亜美、俺と母さんは寝るから電気と戸締りしとけよ。」
「はい、はい。くれぐれも声は絞ってね。寝れないから。」
「・・・チッ、小娘め、・・・お前も股をよく洗ってから寝ろよ。」

　亜美が、クッションを康平に投げつけた。
　笑いながら寝室に入っていく康平と礼子を見ながら亜美は思った。

（・・・・それにしても・・・・・お父さんが復帰か・・・・・）

−　週末　−

　康平らに手伝ってもらい、亜美の荷物がマンションに運び込まれた。
　裕二も亜美から話を聞き、朝から運搬を伝ってくれていた。

　全てを終わらせた４人は、お茶を飲みながら談笑していた。

「ふぅー、終わったな。香坂君、せっかくの休みにすまなかったね。」
「いえ、暇ですし、これくらい何てことありません。」
「でも、裕二さん、助かったわ。」
「はは、荷物が少なくて楽だったよ。・・・・」

　裕二は、思い出したように康平に喋り掛けた．

「そういえば、荒尾さん、亜美君から聞きましたけど、太平洋に復帰するそうで・・おめでとうございます。」
「ああ、ありがとう。ま、直接は君たちの仕事には関係ないが、太平洋のために、もう一度頑張ってみようかなと思ってね。」
「何か、心強いです。いま製鉄やグループ関連は荒尾さんの噂で盛り上がっています。」
「はは、期待はずれに終わらないよう努力するよ。」
「ね、あなた、そろそろ行かないと。」
「あ、そうだったな。」
「え、どこへ行くの？」
「ああ、甲斐たちと温泉に行くんだ。美紀や澪もな。」
「温泉・・・」
「ああ、久しぶりに、みんなで集まって大宴会だ。」
「ふぅーん、気をつけて行ってきてね。」
「・・・・じゃ、香坂さん、ゆっくりしていってくださいね。」

　礼子の言葉に裕二が恐縮そうに返事をした。

「は、はい。」
「明日は日曜だし、何なら泊まっていったらどうだい？」
「い、いえ・・・そんな・・・」

　康平の勧めに裕二が照れ臭そうに返事をした。

「もぅ、お父さん・・・早く行きなさいよ。」
「ハハッ、わかった、わかった。じゃ行ってくる・・・」

　そう言って玄関を出て行く康平と礼子を亜美たちは見送った。

　ドアが閉まると、すかさず亜美が裕二に謝った。

「ごめんなさい裕二さん、本当に遠慮なく喋る父で。」
「はは、全く気にしてないさ。俺は好きだな。ああいう荒尾さんの性格が。」

　そう言って裕二は亜美の肩に手を掛けた。

「裕二さん・・・ありがとう。」
「いや、本音さ。」

　亜美が裕二に寄り添う・・・
　二人は、自然と唇が重なった。
　抱き合う二人・・・・

　裕二の手が亜美のヒップに掛かるとゆっくりスカートをたくし上げていく・・・

「アン・・・裕二さん・・・・」

　亜美のパールブルーのショーツを裕二が軽く引き上げた。
　裕二の、その行為に、亜美が、首に手を回し激しく裕二を求めていく。

　その時、いきなり玄関のドアが開いた。

「亜美ぃーっ、棚に財布・・・・・・・・・・なっ・・・」

　財布を忘れた康平が慌てて戻ってみると、いきなり下半身を露にし、ショーツを食い込ませてヒップを揉まれている亜美を目の前で見てしまった。

　康平は、瞬間的にドアを閉めて慌てて外に出た・・・・

　少々時間を空けて中から部屋のドアが僅かに開き、無言で財布を持った亜美の手だけが隙間から出てくる。
　康平は、財布を受け取ると足音を立てないように大急ぎで下階に降りていった。

　部屋の中で亜美と裕二が顔を赤くして苦笑いしていた。

「・・・や、やばかったかな・・・」
「ごめんなさい・・・裕二さん・・・」
「いや、しょうがないよ。普通、やってるとは思わないだろうから・・・」

　亜美は、ドアに振り向き小声で照れ臭そうに裕二に囁いた。

「・・・で・・・裕二さん・・・続きは？」
「・・・亜美、今日は空っぽになるまで・・・いいかな？」

　亜美は、はちきれそうな笑みを見せて玄関の鍵を掛けると再度、裕二に抱きついていった。