（１８）

　週明け、裕二は、補佐の西田から新しい任務を指令されていた。

「香坂、今回は、楽しい仕事だ。」
「は？　楽しい仕事なんてあるんですか・・・」
「はは、ま、潜入捜査に近いがな。相手は女性だ。」
「・・・どこですか？」
「湾岸沿いにあるＳＭパブ、フェニックスだ。」
「エ、ＳＭパブ・・・ですか・・」
「太平洋エロクトロニクスの桜山専務の依頼だ。」
「ゲッ・・・非常に嫌な予感がします。」

　西田が笑いを堪えて話を続ける。

「お前も知ってるようだが、専務の桜山さんは、かなりの好き者だ。しかし、業務成績は勿論の事、同業の他社を寄せ付けない手腕や、営業引き込みには定評がある人で、私生活の素行を省けば本社の役員幹部も一目置いている。ところがだ、運が悪い事に、この店に行って調教プレーをされた奥さんが、その男性店員に誑かされているらしくて非常に困っているらしい。なんせ、嫌がる奥さんを無理矢理、口説いて連れてった位だから、桜山専務も強いことは言えないらしいのだが奥さんが反対に相手の男に熱が入っちまって、専務に離婚話を持ちかけてきたんだ。遠藤所長も笑ってたらしいが。」
「はぁ、そうですか・・・しかし補佐・・それって私らがやる仕事ですか？」
「んむ、それだけなら所長も断るところだったんだが、実はな、奥さんが離婚を承諾しない桜山さんにエレクトロニクスの商品データをその男性店員に預けたらしくて、桜山さんが直接、その男に返却の話を持っていったんだが、知らぬ存じぬを繰り返しているらしい。埒があかなくて止む無くセンターに依頼をな。」
「・・・なるほど・・・・そう言うことですか。」
「まぁ、その男が持っていることは確実だ。専務も離婚は、しょうがないとしても商品データだけは、エレクトロニクスの命だから何としてでも取り返さないと自社だけではなくグループ利益にも関わってしまうと、かなり焦りを見せている。」
「・・・・・・仕方ないですね。やりますか。」

　裕二は、渋々、任務を引き受けた。

−　昼休み　−

「へぇー、ＳＭパブにねぇー、面白そうじゃない。」
「馬鹿言ってんじゃねーぞ、洋子・・」

　裕二は、亜美と洋子、そして鏑木と一緒に昼食をしながら今回の任務を話していた。

「どう思います。鏑木さん？」
「ああ、ま、簡単に済むんじゃないの。」
「・・・・つ、冷たいっすね、鏑木さん。」

　鏑木が、笑いながら裕二に助言する。

「ま、香坂、その男に接触するにしても、下準備が必要だ。いきなり返せじゃ、返って相手を怒らせてしまうからな。それに、桜山さんは言わなかったみたいだが奥さんにも本当は、説得して連れ戻して欲しいんじゃないのか？」
「はぁ・・しかし、どういう方法でデータを取り戻すか悩んでいるんです。」
「店の店員を説得して協力してもらえばいいじゃないか。」
「他の店員に頼んで・・・ですか？」
「ああ、お前一人じゃ無理があると思うぜ。」
「で、具体的には、どうやって？」
「それくらいは自分で作戦を練ろよ。センターのエースの名が泣くぞ。」
「はぁ・・」
「ま、そのＳＭパブの内容と全員の店員は俺が詳細に調べておいてやる。」
「すいません、助かります。」

　鏑木が、洋子に声を掛けて立ち上がった。

「さて、洋子、行くか？」
「え、何処に行くんですか？」

　亜美の問いかけに洋子が嬉しそうに答えた。

「洋さんと、式場を探しに行くのよーっ！」
「ええっ？　また早いですね。」
「うん、洋さんの気が変わらないうちに決めないとね。」
「洋子、俺の気が変わるわけないだろう。」
「ウフフッ・・・行こっ、洋さん。」

　洋子は、洋と腕を組んで食堂を出て行った。

（何が、ウフフだよ。こっちの身にもなれってんだ・・・）

　亜美が、薄笑いを浮かべて裕二に喋りかけてくる。

「ね、裕二さん、早速、今夜から出掛けるんでしょ。」
「ああ。今日は、お前と一緒に居る事が出来んな。ついてねぇーよ。」
「下調べを兼ねて一緒についていってあげようか？」
「えぇ？」

　裕二は、暫し考えた。
　ＳＭパブへ、一人で入っても目立つだけだ。
　どうせなら、作戦を実行する前に亜美の言うとおり下調べに１日費やしても遅くはないだろうと考え亜美の意見に承諾する。

「よし、わかった。付き合ってくれ。」
「やったぁー。」
「おい、亜美、言っとくが遊びじゃないからな・・・・」
「わ、わかってます・・・」

　亜美は、恥かしそうにコーヒーを啜った。

　終業近くになり鏑木が裕二のデスクに歩いてきた。

「香坂、フェニックスの店員データだ。」
「ありがとうございます。」
「一応、分析しておいたが、１５人いる女性店員のうち稲葉真央というラストメインショーを務める女性が一番古参だし使えるような気がする。」
「稲葉・・・真央・・」
「ああ、口コミ情報もあるが真性のサディストだ。」
「サ・・サド・・・・ですか？」
「ああ、男も女も構わず痛めつけるのが趣味らしいぞ。」
「俗に言う女王様ってやつですか？」
「でもな、男女問わずに彼女を目当てとするファンも多いらしいぜ。」
「ほぉう・・・・人気者なんですねぇ。」
「らしいな。ま、店ではＭ役も引き受けるようだが、喜ばすだけの演技らしい。」
「へぇー、Ｍもこなすんですか？」
「ああ。ま、桜山専務の奥さんは、その逆で、同じくサディストの大塚正という男に調教プレーで仕込まれたらしいが、かなりの衝撃だったんだろう。遊びのつもりが惚れちまったというわけだ。大塚も満更ではないようだがな。桜山専務の奥さんも美人だし不思議じゃない。データを渡したのは、たぶん大塚だ。意外と手強いぜ。」

　裕二を脅かしている割には、鏑木の顔が笑っているように見える。
　鏑木は、裕二の肩を励ますように叩いて席を離れていった。

（・・・んーむ・・・違う意味で面倒くさいかも・・・）

　そう思いながら裕二は、急いで資料の内容を頭に叩き込んでいった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　裕二と亜美は、ＳＭパブ、フェニックスのフロントで会員手続きをしていた。

「すみませんが、一応身分証明書を提示願いますか？」

　裕二は、鏑木が作ってくれた偽造の身分証明書を店員に出す。

「それでは、今回の入会金と入店料で７万５千円頂きます。」
「カードでもいいかい？」
「はい。結構です。」

　裕二は、センター所有のカードを渡した。

「では、ボックスにご案内いたします。」

　裕二と亜美が店員に連れられ中央にあるステージ横のボックスに案内された。
　既に１回目のショーが始まっており縄に縛られた女性スタッフが男性スタッフに激しく虐められている最中だった。
　椅子に座った亜美がテーブルの上にある籠を指差して裕二に質問をする。

「裕二さん、これ何かしら？」

　亜美が指差したテーブル上の籠の中には何種類もの仮面が入っていた。
　よく見ると周りの客達も仮面をつけている。

「たぶん、変装用じゃないかな？　みんな着けてるぜ。」
「ははぁ、そうみたいね。じゃ、私も付けよっと。」

　そう言って亜美が赤色のビーズが散りばめられた仮面を装着した。
　裕二が、横に座る亜美を見つめる。

（ほー、仮面一つで、まるっきり別人に見えるな・・・）

　裕二は、つい亜美のスカートの中に手を入れてしまった。

「な・・裕二さん・・・何してるのよ。」
「あ・・すまん。つ、つい・・・」

　しかし、周りを見ると皆、遠慮なく触りあっているし男性の股間に顔を埋めている女性もいる。
　中には、上半身を皮の固定帯で拘束されている者もいた。

「でも、裕二さん・・・周りのお客さんも遠慮ないわね。」
「そ、そのようだな。」

　今度は、反対に亜美が裕二の股間を触り始めた。

「ま、待て、亜美・・・下調べしてからだ。」
「・・・えぇー、裕二さんから触ってきたくせにぃ。」
「・・・・・」

　裕二は、体裁悪そうに亜美を促す・・・・

「あ、あとで・・・な。」

　そう言うと裕二は何気なく店内を見渡した。
　３箇所あるカウンターの中に、スタッフらしき店員が分かれて配置していた。
　裕二がスタッフの店員を数えながら顔を確認していく。

（いた・・・あいつが大塚正だな・・・）

　更に見渡すと奥のカウンターには、稲葉真央が皮製の女王ルックでカクテルを作っている。

（・・・・彼女が稲葉真央か。写真とは、ちょうと違うな・・・）

　裕二は、鏑木からもらった資料で既に作戦は立てていた。
　何とか稲葉真央と接触し協力者になってもらおうと考えたいたのだ・・・・・・・

（１９）

　既に１回目のショーが終了しようとしていた。
　亜美は、始めてみるステージに目が釘付けになっている。

「・・・す・・・凄い・・ゎ・・」

　逆さまに寝かせられた女性の亀裂に荒縄が激しく食い込んでいる。
　男性スタッフが菊門に指を挿入し厭らしく音を立てながら出し入れを繰り返していた。
　演技とはいえ涙を流しながら男の責めに声を漏らす女性・・・・

　そして起こされた女性が男性スタッフの肉棒を口に差し込まれ強引にピストン運動をされていた。女性の口から涎が垂れ始める・・・・
　目元からは、わざとアイシャドーが取れるようにしてあるのだろう。
　黒い涙が顎を伝っていった。
　そして、男性の合図と共に大声で絶叫する・・・・

「んあぁぁー・・・下さいぃぃぃーっ！」

　男性は自ら手で擦り上げながら口を開けて待つ女性に向けて白い爆弾を発射させた。

「ングゥゥゥー・・・・あぁ・・あぁぁぁ・・・あ、ありがとうございますぅ・・・」

　男の爆弾で顔を汚した女性が、足を大きく開いて縄を左右に分けた。
　客に見せながらステージが３６０度回転すると音楽と共にステージが下降していった。

「はぁー・・・凄いショーね・・・・裕二さん。」
「ああ、俺は何度か見た事あるけどな。」
「でも、縛られるって気持ちいいのかな？」
「今度やってみようか？」

　亜美が目を吊り上げて裕二を睨んだ。

「じょ、冗談だって、亜美・・」
「縄は、柔らかいのにしてね。」
「え・・？」
「・・・・・裕二さんの要望なら、何でもＯＫよぉー。」
「あ、ハハ・・・、あ、ありがと・・・です。」

　裕二は、苦笑いをしながら席を立った。

「ちょっとトイレにいってくるよ。」
「ええ。」

　裕二は、フロントの奥にあるトイレに向かった。
　用を足して戻ろうとした時、スタッフの控え室から偶然にも稲葉真央が衣装ケースを抱えて現れた。
　稲葉真央は裕二に気付くと顔色一つ変えずに見据えてた。
　裕二も動じることなく真央に対して神経を研ぎ澄ませる。

　真央が裕二の前を通り過ぎようとした時、裕二の身体から発する雰囲気に恐怖感を抱いたのか衣装ケースを落としてしまった。
　通り過ぎて行く裕二に、真央は恐々と声を掛ける。

「ちょ、ちょっと・・・・」

　裕二が真央の声に立ち止まり振り向いた。

「あんた、何者だい？」
「え、・・・俺は、ただの客だよ。」
「ふぅーん、そうは、見えないけどねぇ。」
「気のせいじゃないのかい・・・」

　裕二は、何気に真央に質問をした。

「ところで、君の、そのタトゥは、本物かい？」

　真央の穿く皮製のショーツの真ん中は、ラインに沿ってくり抜かれ恥丘に施されている蜘蛛のタトゥがはっきりと確認できる。

「まぁね。・・・・アンタも、あたいの蜘蛛の巣に引っかかってみるかい？」
「俺は、Ｍじゃないからな。どちらかというとアンタと同じタイプなんだ。」

　そう言って裕二が、不敵な笑いを見せると真央の全身に鳥肌が立った。
　裕二も、真央の異常を見抜いたのか、サディストにありがちなプライドを崩していく。

「どうしたんだい。身体が震えてるぜ。」
「・・・・ふ、震えてなんかないわ・・・」
「アンタ、かなりの熱烈なファンがいる真性サドらしいが、今まで、反対に虐められた事は無いようだな。違うかな。」
「私は、男にイカされるのが嫌いなんだよ。男をイカせる顔を見ながら子宮に刺激を与えて果てるのが快感なんだ。・・・試してみるかい？」
「俺とは逆だな。・・・アンタこそ試してみるかい？」
「・・・・・」

　裕二は、無言の真央にクールな笑いを投げると静かにボックスに戻っていった。
　真央は、裕二の発していた雰囲気から開放され一気に身体から力が抜けていく。
　気がつくと、全身に冷や汗をかいていた。

（あの・・・・男・・・・）

「遅かったわね、裕二さん。」
「ああ、ごめん。稲葉真央とそこで偶然会ったんだよ。」
「え、そうなの。　それで頼んできたの？」
「いや、まだ言ってない。・・・・・なかなか強情そうな感じだったからな。」
「そう・・・。」

　けたたましい音楽が鳴り響き、亜美が、ステージに目を向けた。
　２回目のショーは、希望客を相手にスタッフがプレーを行うようだ。

「うわぁー、凄いわ・・・ね、ね、裕二さん、何人も手を上げてるわよ。」
「そりゃそうだろ。みんな本物のＳＭ家なんだから。」
「・・・え、という事は桜山専務も・・・・」
「・・・・だろうな。」

　裕二は、閉店まで時間を潰す事にした。
　鏑木の調査では真央の単独ショーは週末だけだ。
　ウィークデーは、もっぱら指名が無い限り、カウンターでの仕事が中心なのだ。

　裕二が、煙草に火を付けて大塚のいるカウンターに目を向ける。

（！・・・あれは・・）

　大塚が接待するカウンター席には、桜山専務の夫人、涼子が来ていた。

「亜美、見ろ。・・・・・桜山専務の奥さんだ。」
「えぇ？」

　裕二は、気付かれぬよう二人を監視した。
　なにやら、大塚が涼子に耳打ちをしている。
　涼子は、大塚に笑顔で頷いて席を立った。
　どうやら、個室に移動するようだ。

「チッ・・・場所を変えるようだな。」
「でも、裕二さん、取り返すくらい簡単なんじゃないの？」
「ああ、関係者以外ならな。しかし、相手は桜山専務の奥さんだ。なるべく今後の事も考えて傷つけづスマートに解決したいんだ。」
「でも、奥さんのやってる事も専務に対しての脅迫と一緒でしょ？」
「ああ、ただ、奥さんが大塚に渡した商品データの場所がわからないと。」
「問い詰めたら？」
「はっきり言って、手荒な真似は出来ない。奥さんの大塚に対する思いは相当のようだ。逆上させて悪用されるとも限らないし、大塚自信が金になる事を知ったらヤバイからな。まず、データが何処に隠してあるかだ。」

　裕二の言葉に納得しながら頷く亜美・・・・
　そして裕二の予想通り、とんでもない事件に発展していく・・・・・・

　裕二は、亜美の肩を抱きながらショーを見学していた。
　その時、携帯にセンターからの緊急着信音が鳴った。
　亜美も着信音に気付き裕二と顔を見合った。

「・・もしもし、香坂です。・・・はい、いまフェニックスに来ています。」

　電話の相手は、第三課長の野口からだった。
　野口が裕二に、早口で内容を説明した。

「えぇー、なんですってぇ！」

　野口からの電話の内容はこうだった。
　太平洋エレクトロニクスの商品データのサンプルが、既に漏洩されているとの事だった。
　出先は、五条エンジニアで、個人通報のようだ。
　運良く五条エンジニアは、太平洋のグループ傘下であったため、担当告知により発覚できたのだが、漏洩が五条だけとは限らない。
　鏑木が、急遽、センターに呼び出され、現在、追跡調査をしているようだ。

『香坂、お前は、そこに、そのまま残って続けてくれ。もう、大塚には、全く遠慮する必要はないからな。』
「わかりました。」
『シンディも呼び出した。今、ここにいるんだが、ちょっと電話を変わる。』
「はい。」
『もしもし、裕二君。』
「おう、ご苦労さん。」
『今から、洋さんが怪しいと睨んだ会社に行くのよ。亜美をセンターに向かわせてくれるかしら。翔子は今から向かうって連絡が入ったわ。』
「わかった。」

　裕二は、電話を切ると亜美に内容を告げる。

「わかった。じゃ、裕二さん、私、行くわ。」
「ああ、気をつけろ。」
「うん。」
「・・・亜美、この仕事が終わったら、ロープを買ってくるから。」
「・・・・も、もぉぅ・・・裕二さん、こんな時に・・・」

　亜美は、苦笑いして店を後にした。

　裕二は、亜美が店から出て行くと急いで作戦を練った。
　遠慮する必要がないとはいえ、涼子を巻き添えには出来ない。
　考えに考えた末、裕二は、やむなく稲葉真央を指名し何としてでも協力を承諾させようとした。

　早速、フロントに手続きをしにいく裕二・・・・
　ＳＭ嬢の紹介写真を見て稲葉真央を確認するとフロント店員に指名をした。

「魔子ですね。」

（魔子っていうのか・・・）

「お客様のご希望をお選び下さい。」

　そう言って店員が裕二に料金コースとプレー内容を見せた。

（ほぉぅ、色々あるんだな・・・・ＳかＭを選ぶわけか。）

　裕二は、迷わずＳを選んだ。

「かしこまりました。お待ち下さいませ。」

　店員が確認をとっているようだ。

「お客様、お待たせしました。パールという個室でお待ち下さい。」
「パール？」
「はい。魔子の専用室です。指名料は直接、魔子にお支払い下さい。」
「わかった。」

　裕二は、店員に指定されたパールという個室に向かった。
　中に入ると色々な道具が揃っている。
　裕二は、簡易ベッドに座って真央を待った。

　暫くして、皮のコスチュームを纏い仮面をつけた真央が部屋に入ってきた。

「お待たせしました。魔子・・・・・・・あ、あんたは・・」
「驚くなよ。それとも指名しちゃ悪かったかい。」
「べ、別に構わないわ・・・・お客だから・・・」

　真央は、平静を装って裕二にプレー内容を説明し始めた。
　説明している間、一切、裕二を見ることはなかった。

「これだけよ。絶対に守ってね。」
「ああ。優しくさせてもらうよ。」

　薄笑いを浮かべて言う裕二に真央の背筋が僅かに震えた。

「私にＭを指名してきた客はあんたが２人目だよ。」
「そうかい・・・・でも何故？」
「珍しいと思ってね。」
「なるほど・・・。」

　真央は、仮面を取り外してベッドに横たわった。

「さ、どうすればいい？」
「・・・・・そうだな・・・」

　裕二は、少々考えた後、真央を調教柱に固定する事にした。
　真央をベッドから降ろし両手を拘束したあと天井の丸環に固定する。
　裕二の手際のよさに真央が言葉を吐いた・・・・

「あんた、慣れてるね？」
「・・・そうかな・・」

　裕二は、無愛想に答えると真央の皮ショーツを脱がし両膝にも拘束帯をはめて柱の上部に固定した。
　真央の両足は大きく開き蜜壷が真正面から見てもはっきりわかる。

　更に、真央の両乳首にクリップを挟むと鉛のボールをぶら下げた。
　そして、棚からノーズフックを取り出す裕二をみて真央の顔が微かに歪む・・・
　裕二は、真央の頭に、それを被せるとダブルフックを鼻の穴に挿し込み上に引き上げた。

「どうだい？　こういう格好にされた気分は？」
「・・・・ええ、感じるわ。」
「そうかな？　マゾっ気は、全然ないんだろう？　本来、虐める方が主なのにされるほうだからな。」
「商売だからね、演技してでも喜ばすのがプロさ。」
「そりゃ、さすがだ・・・・・演技されずにイカせてみたくなったぜ。真央さん。」
「！・・・・・・な、何で私の本名を知ってんだいっ！」

　裕二が、目だけで笑いを見せて真央を睨んだ。
　その瞬間、真央の全身に戦慄が走り冷や汗が脇の下を流れた・・・・・・・