（２０）

　真央が、裕二に向かって叫んでいる。

「答えなさいよ。何故、私の名前を知ってるんだい。」

　裕二は、真央を敵にしようとは思っていなかった。
　むしろ味方につけて事を上手く運びたかったのだ。
　方法はいくらでもあるが、急がなくてはいけないため手段を選んでる暇がなくなった。

「稲葉真央さん、そう警戒すんなって。」
「み、名字まで‥‥あ、あんた‥‥一体、何者なのよ。」
「君に頼みがあるんだ。」
「‥‥‥な、なによ。」
「あんたの仲間で大塚正という同じサディストがいるだろう。」
「大塚‥‥フンッ‥‥‥あいつは偽サドさ。単なる上っ面だけよ。」
「ほぉう。」
「あいつとは関わりあいたくないわ。どんな頼みでもお断りよ。そんな筋合いないわ。」

　裕二は、困った。確かに真央の言うとおりである。
　無理矢理に頼む筋合いはないし断られても何も言えない。
　しかし、頼りは真央しかいないのだ。

「そこを何とか頼めないかな。金ならいくらでも出すぜ。」
「お金なんか必要ないわ。別に困ってないしね。」
「じゃ‥‥‥どうしたらいい。」
「だから、あいつに関わるのが嫌って言ってるじゃない。」

　裕二は、真央がやけに大塚に拘っているような気がしてならなかった。
　何か、原因があるような気がしてならない。

「それより、早くプレーしてよ。時間がなくなるわ。」

　裕二は、もはや手段が思いつかなかった。
　その時、裕二の携帯電話が鳴った。
　受信ボタンを押す裕二、相手は鏑木だった。

「はい。香坂です。」
『香坂、まだフェニックスか？』
「ええ、そうです。」
『稲葉真央を何としてでも落とせ。絶対使える。』
「はぁ、実はいま彼女を指名して個室にいるんです。しかし、なかなか思うようにならなくて困ってて。」

　真央が、裕二の会話を聞き怪訝そうな表情を見せる。

『そうか、よしっ！‥‥香坂、いい情報をやる、よく聞けよ‥』

　裕二は、鏑木の話を静かに聞いた。

「えぇ‥そ、そうなんですか。」
『ああ、それから遠藤所長からのアドバイスだ。もし稲葉真央を落とそうと思ったら‥‥‥‥‥‥』

　鏑木は時間を掛けて香坂に説明をした。

「ほぉう、なるほど‥‥そうすれば精神状態を不安定にさせれるんですね。」
『ああ、そうらしい。』
「解りました。やってみます。」

　説明が終わると笑みを見せて鏑木に礼を言う裕二‥‥
　裕二は電話を切って真央を眺めた。
　真央が裕二に怒鳴るように声を掛ける。

「あんた、からかうだけなら帰ってよ。」
「からかうつもりなど全くないぜ。ただ手伝って欲しいだけだ。」
「フンッ、そうかい、なら私をイカせてみな‥‥無理だろうけどさ。」
「そうか、もし、あんたを昇天させたら手伝ってくれるんだな。」
「どう考えても無理ね。男にはイカされないわ。それにもう、時間がないわよ。」
「もし、イカせたら？」
「アハハッ、あんたの下僕になってやるさ。」

　笑いながら裕二に答える真央、よほど自信があるのだろう‥‥‥‥‥‥

「さて、じゃ、プレーをさせてもらうか。‥‥その前に一つ言っておこう。真性のサドだろうが男にはイカされない女だろうが、この俺には通用しない。」
「‥‥‥」
「真性サドの女をイカせる方法が一つだけある。‥‥‥実行してやろう。」
「‥‥‥‥‥‥‥」

　裕二は、鏑木から聞いた、遠藤の助言どおりに真央を落とし始めた。

＜香坂、所長が言うには、真性サドは自由に心のコントロールや感受性を押える事が出来るらしい。それを崩してやれば簡単に落とせるそうだ。まず、稲葉真央が、心に抱えている悲哀痕を引き出させて動揺を与えるんだ。ただし的を外さないようにな。
　いいか、よく聞くんだぞ、稲葉真央はな‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥＞

　裕二は、鏑木の言葉を思い出しながら真央を責めはじめた。

　真央の女芯にローションを塗り指で擦り始める裕二‥‥

「フフッ‥‥気持ちいいわよ‥‥でもイクまでには程遠いわね。」
「そうかい。」

　裕二は、アナルプラグにもローションを塗りこむと真央の菊門に一気に挿入する。

「ンアァァーッ‥‥いいわねぇー‥‥感じるわよ‥‥フフッ‥‥」

　裕二が、薄笑いを浮かべて真央を見つめた。
　既に指は蜜壷に深く埋まっている。

「ところで真央さん、あんたが大塚に関わりたくない理由を言ってやろうか。」
「‥‥‥‥」

　裕二が、蜜壷に指を入れたまま女芯を親指で擦りつけながら喋りだした。

「５年前に、当時、あんたの彼氏だった篠塚章一さんが自殺しているね。」

　裕二の言葉に、真央の顔が一気に豹変する。蜜壷が急激に収縮したのがわかった。
　裕二は、指を抜くと真央を見つめたままバイブを挿入しスイッチを入れる。

「アンタは、篠塚章一さんを心の底から愛していた‥‥‥」
「‥‥ウッ‥‥ゥゥゥー‥‥」
「篠塚章一さんの自殺の原因は‥‥‥‥‥‥大塚正‥‥そうだな。」
「‥ゥ‥‥ク‥‥」

　そこまで言うと、今度はピタリと口を閉ざす裕二‥‥
　バイブの出し入れを丹念に繰り返している。
　真央は、無言になった裕二が気になってしょうがない。
　焦りなのか、我慢の集中が出来ないのか真央の頭と心のコントロールが不能になってくる。
　１０分程度、バイブで攻めた後、いきなり喋りだす裕二‥‥
　真央の身体がビクッっと反応した。

「あんたは、死んだ篠塚章一さんの妹、篠塚美貢さんと、その時から同居している。共通の目的のために一緒に暮らし始めたんだ‥‥‥‥そうだろう‥‥‥‥‥。」
「‥‥‥‥‥‥ゥ‥ゥ‥‥な、何で‥‥そんな事まで‥‥知って‥‥‥」
「それも、そのはず‥‥大塚は章一さんの妹、美貢を犯したんだからな。」
「‥‥‥ゥゥゥゥ‥‥‥‥」
「関わりたくないと言っているが、実は、仕返しを企んでる。違うか？」

　そう言いながら、子宮に刺激を与える裕二‥‥

「‥‥‥‥アッゥ‥‥ゥゥゥゥ‥‥‥」

　裕二の責めに反応しないよう必死に我慢する真央の身体から汗が流れ始めた。
　裕二は、プラグを菊門から抜くと、今度はバイブを挿入し蜜壷同様に出し入れを始める。

「‥ウググッ‥‥ウゥゥゥゥゥー‥‥」

　ローションとは違う液体が奥から流れてくるのを裕二は、はっきりと確認した。

（‥ん？‥来たかな‥‥‥）

　真央の乳首にぶら下る鉛のボールを揺らしながらバイブを動かすスピードを速めていく‥‥
　全身を通じて真央の鼓動が大きくなってくるのがわかった。

「アンタと章一さんは、全てにおいて、幸せの絶頂期だった。」

　当時を思い出したのだろうか、真央の瞳が虚ろになっていく‥‥‥
　そして、真央の眼に涙が浮かび始めた。

「章一さんとも、こうして、いつも愛を確かめ合ったんだろうな。」

（‥ゥ‥ゥ‥‥しょ‥‥章‥‥ちゃ‥‥‥ん。）

　真央は、裕二の言葉に、まるでマインドコントロールされてるような感じを受けていた。
　真央の、身体全体が赤みを帯びてくる。感じてきた証拠であろう。

　裕二は、頃合と判断しスラックスを脱いで肉棒を真央の前に出した。
　蜜壷のバイブを抜き肉棒を挿入するとノーズフックを外して真央に唇を合わせた。

「‥ゥゥゥ‥‥」

　真央が、裕二の接吻に確かに反応を示す。
　裕二は、真央の唇から離すと話を続けた。

「そして真央さん、章一さんの妹、美貢さんは、その時のショックで不感症になってしまった。男性に対して恐怖心を抱くようになっちまったんだろうな。
　あんたは、一緒に暮らすようになって、それを知った。そして、美貢さんのその状態を直してやろうと必死だったが結局無理だった。そうだな真央さん。」
「‥‥‥ゥゥ‥」

　真央の眼から、とうとう涙が零れはじめた。同時に蜜壷の収縮が激しくなる。

「貴方は、章一さんと２ヵ月後に結婚するはずだった。幸せな生活を送っていたんだ。楽しかったろうな。」
「‥‥ァァァー‥‥ゥッ、ゥッ‥‥い、‥‥言わないで‥‥」

　裕二は、一度、真央から身体を離した。
　真央は、口には出さないが、入れて欲しいと眼で訴えている。

「そして遂に、あんたは、愛していた彼氏の妹と、自分自身のために大塚を追っかけてＳＭの世界に入り、奴に復讐する機会を待った。
　ところが真央さん、アンタ自身が本来持つサドの性質に気がついた。」

　真央は、すでに感受性をコントロールできない状態だった。
　女性が持つ本来の快感が奥から沸いてきたのだろう。
　蜜壷からは、大量に愛液が流れ始めていた。

（‥‥よし、そろそろ、いいだろう‥‥）

　再度、真央の蜜壷に肉棒を挿入して腰をゆっくりと動かす裕二‥‥
　真央の表情が妖しく崩れていく。明らかに子宮に刺激が伝わっているようだ。

「真央さん、アンタは、章一さんを心の底から愛していた。」

　真央が裕二の顔を見つめる。口を半開きにし荒い息を吐き始めた。
　裕二は、乳房を鷲掴みにすると激しく腰を打ちつけていく。

「ァゥ、‥‥ァゥ‥アァァァァー‥‥‥ァァ‥‥」
「あんた‥‥‥章一さんにも、こうやって愛されたんだろう。」
「‥ァァ‥‥アッゥ‥‥ィ‥‥ゥゥゥゥ‥‥ゥゥ‥‥ァゥ‥‥‥‥」

　真央が、裕二を見て顎を上げ始める‥‥‥
　裕二は、またしても無言になると間音のプレーを無言で続けた。
　明らかに快感を表す真央‥‥‥

　裕二は、慎重に真央を観察しながら頃合を探る。

「‥‥‥ァァ‥‥‥ウックゥゥゥゥゥ‥‥‥」

　タイミングを見計らって裕二が、大きな声で真央の名を呼んだ。

「真央ぉーっ‥‥‥‥」

　その瞬間、真央の顔が一気に淫艶な表情に変化する。

「ンアァァァァー‥‥しょ、章ちゃんっ‥‥イックゥゥゥゥゥゥゥゥゥー‥」

　けたたましい声を発して真央は果てた。
　真央の蜜壷上の小穴からは、何度も飛沫が上がり裕二の下腹部を打ち付けている。

　裕二が、息を吐きながら、ゆっくりと真央の蜜壷から肉棒を引き抜くと真央の腰が、小刻みに痙攣し力を失っていった。
　まだ、透明な液体が真央の蜜壷から流れている。
　裕二は、スラックスを穿き、真央の拘束帯を外し始めた。

　真央が、裕二に身体を預けてくる。
　もはや、強がった様子は微塵もなかった。
　裕二は、真央をベッドに寝かすと静かに囁いた。
　虚ろな眼で裕二を見ている‥‥‥‥‥

「‥‥‥真央さん、‥‥‥悪かったな。思い出させちまって‥‥‥」

　真央は、裕二の言葉に答えない‥‥
　声を出さずに涙を流し続けていた。

「俺は、太平洋グループの中央管理センターに勤めている香坂裕二という。君に力を貸してもらいたい。手伝ってくれないか。そして君と美貢さんの敵も一緒に取る。大塚正は、うちの関連会社の重要資料を使って金儲けを企んでいるんだ。また、君みたいな人を作ってしまう恐れもある。頼むっ！」

　裕二の言葉に、真央が涙を拭きながらゆっくりと起き上がった。

「‥‥‥イカされちゃったね‥‥‥‥‥アンタに‥‥」
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥何を‥‥‥やればいいんだい‥‥‥」
「手伝ってくれるのか？」

　小さく頷く真央‥‥

「アンタは、約束どおりイカせたわ。私も約束を守る人間よ。」
「‥‥すまん。奴がデータの入ったＣＤを持ってるんだ。取り返したい。」
「‥‥でも、私には、解らないわ。」
「既に、データは漏洩されてるんだ。という事は、この店の奴のロッカーにあるとは考えられない。それにパソコンがないと中身は確認できないはず。
　奴の自宅か共謀者がいるかを調べたいんだ。君が、一番この店では古いし色々な意味で奴の事を知ってると思う。調査するには時間が掛かるんだ。何とか出来る限りの大塚の詳しい情報を教えて欲しい。協力してくれ。」
「‥‥‥ちょっと待ってて。」

　真央は、裕二を待たせて部屋を出て行った。
　裕二が、ホッっと溜息をつきながら煙草を咥える。
　火を付けて深く煙を吸い込んだ‥‥‥‥

（‥‥ふぅー、シンドかったぜ‥‥‥しかし遠藤所長も‥よく‥）

　真央が、部屋に戻ってきた。
　一冊のノートを裕二に渡す。

「私が５年間、大塚の事を調べてきた内容よ。あいつの交友関係や普段の行動とか趣味も全て書いてあるわ。あいつを殺すための、完全犯罪を成功させるためにね。」

　裕二は、真央の言葉を聞いてノートを開いた。
　それは、事細かく大塚の事が調べ上げてあり、中には、裕二の知っている会社や重役の名前も掛かれてあった。

「凄い調べ上げてるな‥‥‥」
「執念よ‥‥‥私と美貢の‥‥」
「コレはかなり使えるよ。助かるぜ。」

　裕二は、ノートの中身を確認し終わると静かにしている真央を眺めた。

「‥‥‥‥‥さっきは済まなかった。」
「‥‥昔の事よ。‥‥あんたに抱かれて少し思い出しただけ。吹っ切れてるわ。」
「‥‥今の、あんたの顔‥‥とても女らしいぜ。」
「フッ、馬鹿言っちゃいけないわ。私はずっと男を甚振るサディストよ。」

　裕二は、真央が最初に言った言葉を思い出した。

「そう言えば、責められたのは、俺が二人目だって言ってたけど？」
「ええ。まだ、私がここに来て２年目くらいだったかな。皮肉にも、その一人目の男にもイカされちまったけどね。」
「ほぉう‥‥そりゃ凄い男だな。」
「さっき、あんたの正体を聞いて驚いたさ。あんたと同じ会社の人間だよ。」
「な‥‥ほ、本当か？　‥‥‥何ていう名前なんだ‥‥」
「忘れもしないわ。遠藤っていうおっさんさ。」
「え、遠藤‥‥お、おっさん‥‥‥‥‥‥？」

（しょ、所長か‥‥‥）

「ひょっとして、背の高い目尻にホクロのある‥‥‥‥」
「ああ‥‥そうだよ‥‥‥全然笑わないポーカーフェイスな男だったね。」

（ど‥‥どおりで‥‥）

「で‥‥なんで遠藤さんが、ここに？」
「アンタと同じこと言ったさ。手伝ってくれって‥‥」
「で‥‥君はなんて？」

　真央が、思い出すように薄笑いをして答えた。

「手伝って欲しかったら、‥‥‥‥‥私をイカせてみなって‥‥」

　そう言って真央は声を出して笑い始めた。
　つられて笑い出す裕二‥‥
　裕二は、真央の心の奥にある何かを感じ取った気分だった。